コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ46
ここはPS2/PSPソフト「コードギアス反逆のルルーシュ LOST COLORS」SS投稿スレです。感想等もこちらで。
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・コードギアス LOST COLORS 保管庫 Ver.1.35 /スレッド41中途まで作品収納
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■前スレ(45)
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■コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS SSスレ 32(新スレ誘導用)
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■関連スレ (外部板)
・コードギアス ロスカラのライ 彼の世界は十人10色 /主人公キャラスレ
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コードギアス反逆のルルーシュ LOST COLORS SSスレ避難所(仮)
・代理投下依頼専用スレッド
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・議論用スレ
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・連絡スレッド
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・感想スレッド
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・コードギアス【ロスカラエロパロSSスレ】 (18歳未満は立ち入り禁止です)
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・801SS投稿スレ (18歳未満は立ち入り禁止です)
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■アニメ公式サイト http://www.geass.jp/
■攻略wiki http://www9.atwiki.jp/codegeasslc/
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三周年記念祭ってことでソロモンよわたしは帰ってきた!
投下しまふ 皇暦2018年、春。
街角に寒風が吹きすさぶ。
打ち棄てられた屍と瓦礫の山。
ただそれだけが半年前に日本人──イレブンたちが手に入れたモノの総てだった。
ブラックリベリオンという祭の終わりに、
遺された総てだったのだ。
【騎士たちの帰還】
「で、本部からの新しい情報にはなんと?」
そう問いかけるブランドン少尉はソファにふんぞり返っており、差し出されたコーヒーを受け取る様は上官に対する態度とは到底かけ離れているものだった。
「たいした情報ではなかったと言えますし、これはたいへんな情報だとも言えますな」
しかしメッケナム中尉は気にしない。もっとも、この場合、気にしないよう努力していると言った方が正しい。
部屋の中は暑い。外の寒さが嘘のようだ。メッケナム中尉は早くも自分の背中に汗の筋が流れるのを感じている。
どっちなんです? 聞き返すブランドン少尉の言葉には呆れた──馬鹿にしたような色が混じっている。メッケナム中尉もさすがに少しムっとした。
だが抑えるしかない。相手は士官学校出のエリートだ。いくらもしないうちに自分の上役に出世するのは目に見えている、とメッケナム中尉は自分に言い聞かせ続ける。
二十歳を前に少尉に任官したこの男、この“少尉殿”は酷いミスでも犯しさえしなければ1年ほどの内に中尉に昇進することだろう。そしたら次は大尉殿。もう自分の上官様ということになるのだ。
だったら心証を悪くするような振る舞いは慎むべきだろうとメッケナム中尉は思うのだ。
自分が何年もかけて……それこそ血の滲む思いで上った階段を、目の前のこの男は汗をかくことなくエレベーターで昇っていくのだ。
そう思うとなんとも言い難い思いに目の前が真っ赤になる。
が、所詮軍隊というものはそういう場所であるのだし、この世界はそういうところなのだと彼は自分に言い聞かせた。
神様というものは、実に世界を不平等な代物に創り上げたものだと彼は慨嘆する。まさに我らの皇帝陛下が口にするとおりに。
「どっちと言いますかな。現在我が中隊が追っている黒の騎士団残党を指揮する人物の名が判明したとのことですよ」
「数機のナイトメアを有するだけの残党を指揮する人物の名前? 確かにたいしたことのない情報に思えますね」
「ただ、その指揮官というのが」
「いうのが?」
「ゼロの直属で戦闘部隊を指揮した隊長とも、参謀として作戦立案の補佐を行ったとも言われている人物だったそうなのですよ」
へぇとブランドン少尉はうなった。
「直属の部下なのか」
コーヒーを舐めるように啜り、ブランドン少尉はもう一度「直属の部下か」と繰り返した。
ゼロ。
それは奇跡をも起こすと言われた帝国の怨敵。捕縛され、処刑されたとは言うものの、トウキョウ租界での決戦で巻き起こした甚大な被害には今でも眩暈を覚えるほどだ。そのゼロが直々に従えた人物。
「で、その名前は?」
「えぇ、その名前というのが──」
メッケナムは“彼”の名前を口にした。
その名前を、ライと言う。
自分の名前にブリタニア軍士官二名が身震いをしていたことなど、当のライ本人が知る由ももない。
ブリタニア軍に“ペテン師”と呼ばれ、他方“悪魔の様な男”と称されるゼロ。そのゼロの近侍に従っていたからといって、ライが人智を超越した悪魔であるわけはないのだ。
「へっくしょん」
「くしゃみ? 風邪でも引いたんじゃない?」
ティッシュを差し出すカレンにライは頭を振った。
「いや、体調はキチンと管理しているよ。誰かが噂でもしていたのかな?」
受け取ったティッシュで鼻をかむライ。
「きっと女の子ね」
「なんでそう言い切れるんだい?」
「うぅん。知らないけど、きっとそうよ!」
そんなことを言われてもなぁとぼやきながらライは立て膝をついて降着姿勢を取っているナイトメア・紅蓮弐式の肩口から身を躍らせた。
膝をついているとはいえ、それでも3mはある高さから飛び降りて、しかしライは階段を数段飛び降りただけのように地面に降り立つのだ。
「よくあんな高さから飛び降りて大丈夫ね」
「カレンだったらもっと高い所から飛んでも大丈夫だと思うよ?」
ライは真顔だ。
「それって褒め言葉になってないと思う……」
「そうかな?」
ライには冗談を言ってるつもりはない。
もちろん皮肉を言ってるわけでもない。つまり、そういう男なのだ。
渡された手ぬぐいで額に浮かんだ汗を拭う。作業用のツナギも胸の中ほどは汗でびっしょりになっている。
それもしょうがない話だ。いくら整備が容易とはいえ、ナイトメアフレームの整備は一人二人でサッと行えるものではないのだから。
「それにしても……」
紅蓮を見上げるライにカレンも思わずそれに続いた。
「やっぱり、紅蓮はもう限界だよ」
「そんな……」
冬を越え、春になり、そろそろ初夏を迎えようかという頃の北陸の夜。
しかし、夜空に雪は凄惨な美しさを広げていて、風は刺すように冷たかった。
【ブラックリベリオン】とは黒の騎士団による反ブリタニアの一大反抗作戦の名前だった。
冬のトウキョウ租界を舞台としたこの決戦。当初有利に戦局を進めていた黒の騎士団だったが、副指令扇要の負傷やエリア総督コーネリアの腹心ギルバート・ギルフォードの奮戦、何よりもゼロの戦線離脱という異常事態が重なり続け……、
黒の騎士団は──日本人は敗北した。
国外脱出を遂げた者は極少数に過ぎず、藤堂鏡志郎、扇要を始めとした主だった幹部は逮捕され、ゼロの行方はようとして知れない。
逮捕され、処刑されたという報道がある。
ゼロは神聖皇帝シャルル・ジ・ブリタニアの前に引き出され、処刑されたのだと。
だが、ライはそれを信じていなかった。
ゼロは生きている。
そして、再起の道は必ずやある。
信じている。
なぜなら、彼こそは“奇跡を起こす男”であり、自分は彼の──友だから。
そして今、彼らは北陸の山中にあった。
・
・
・ 放棄された旧軍の基地。そこがライたち黒の騎士団残党の現在の隠れ家だ。
基地と言っても大した設備があるわけではない。あるのは兵舎と重機の格納庫。それに山岳輸送用のロープウェイがあるだけだ。
「元々軍の施設だったってわけじゃないんだ。そんなだからブリタニアも把握してなかったんだろうってとこだな」
それがこの場所を紹介した卜部の説明だ。
「少尉任官したあと、俺はしばらく石川の駐屯地に勤務していたんだよ。藤堂中佐と出会ったのはその後、東立川の技研本部に移ってからでな」
「技研? 技術研究本部ですか?」
似合わないか? と卜部はライに笑ってみせたものだ。
「まぁ人は変わっていくものさ。良きにつけ、悪しきにつけ、な。ライ、君はどうなんだろうな」
ライの質問に卜部が答えることはなかった。卜部の問い掛けにライが答えることも。
自分のこれまでの変化について、そしてこれから如何に変わっていくのか。ライにとって、それは今現在深く思索するべきものではなかった。
黒の騎士団の残党を率い、雌伏して決起の時を待つこと。その為に全知を尽くすことが今現在彼がするべきことであったからだ。
技研にいたと言うだけあって、卜部のマシンに関する知識確かなものであったから、ナイトメアに関する限りライの負担は軽いものになった。
ただ、それにも限界はあったのだ。
兵舎に戻ったライとカレンは他のメンバーとは別に設けた幹部用の会議室に卜部を訪ねた。
寒い。兵たちの部屋と違って、ここにはストーブがない。唯一の暖房器具は固くゴワゴワとした膝掛けが数枚あるだけだ。
入ってきた二人を、卜部は軽く手を挙げて迎えた。
「おかえり。機体の様子はどうだ?」
「いかんともし難いですね」
まぁ、しょうがないかと卜部は手と手を合わせて擦る。
「ブラックリベリオンからもう6ヶ月だ。C整備も行えない状態で、よくここまでもったと言うべきなんだろうな」
「紅蓮の状態は最悪を通り越しています。電装系ももうどうにもなりません。でもそれ以上に酷いのは脚部です。耐用限度はとっくに越えています」
すまなさそうに紅蓮の状態を話すライに、カレンはそれ以上に深く俯く。
今日まで生きてこれたのは紅蓮の突破力とカレンの力に拠る部分が大きい。それだけに紅蓮の消耗は他のナイトメアよりも激しかったのだ。
なにより、ブラックリベリオンの決戦の際に紅蓮は右腕部──輻射波動機構を失っている。
決定打を欠く紅蓮はそれまで以上にその俊敏さを生かした戦闘を行うしかなかった、ゆえに限界は想定していたよりも早く来た。
「私がもっと上手く紅蓮を使えていたら……」
「そう自分を責めるな、紅月」
「だけど……」
「嘆いてみても始まらん。現状は何も変わりはせん」
そうだね、とライも頷いた。
「要は今をどう行動するか、だよ。どうするかを考えて如何に行動するかだ」
このような状況なら出来た人間でも多少は腐るものだがと卜部は思うのだけど、見た目ライは将校としての役割を完璧に演じ切っている。
この残党の士気がぎりぎりのところで一つの組織としてまとまっているのも彼の功績によるところが大きいと卜部は認めていた。
だからいまだにここに留まっているのだと。
それで、と卜部はライに視線を向けた。
「わざわざ愚痴を言う為だけにここに来たわけじゃあるまい。ライには何か考えがあるんじゃないのか?」
「考えがあるって程の大仰なものではないんだけど……」
見てくださいと言ってライは卜部が座するデスクの上に紅蓮の図面を広げた。
「紅蓮の今の問題箇所なんですが──」
「フム……」
相槌を打ちながら、実際の所──と卜部は思う。
『このライという男。パイロットとしての腕は確かだし、大局を見る目もある。さすがにゼロが重用していただけのことはあるか……』
卜部が最初にライと顔を合わせたのは収監された藤堂鏡志朗奪還の為に黒の騎士団に合流した際だ。
その時、新型ナイトメア・月下の操縦に習熟した者として機種転換訓練に付き合ってもらった時以来なのだが……その頃とは大きく印象が変わったと言っていい。
そう、随分と……人間らしくなったと卜部は感じるのだ。
千葉が「何を考えているかわからない辺り、ゼロと同じだ」などと言っていたことを思い出す。
確かにそうだ。いや、
「そうだった、だな」
「はい?」
たはは……と苦笑しながら卜部はなんでもないと手を振った。
「それより続けてくれ。ライの“解決策”をな」
そんなんじゃないですよ、と言いながらライは広げた図面を指し示す。卜部とカレンは身を乗り出すようにしてその様子を見つめる。
「まずは、これらのポイントを踏まえた上で──紅蓮を生き返らせます」 ・
・
・
「以上です」
フム、と卜部は唸った。
「確かにここならある程度の工作機械はある。重機の整備用のな。元々ナイトメアは整備が容易な機械だし作業自体は問題なかろう」
「通常ナイトメアの本格的な分解再整備には144人時かかります。整備兵と工兵経験者にパイロットを合わせて12人……あるだけの人員をかりだして、なんとか作業時間12時間弱ってところでしょうか」
「追手のことを考えるとギリギリ……いや、それでも少し足りないと思えるな」
「ただ、これを間に合わせることが出来れば例の『柳の下の泥鰌作戦』は問題なくやれます。そうすれば追手への対応もかなり楽になります」
手を顎にあて、再びフムと卜部は唸った。
ライはまっすぐに卜部を見つめている。カレンの視線はそんな二人の顔をいったりきたりだ。
正直なところ、ライの提案した“解決策”は卜部も考え付かないではなかった案だ。
言い出さなかったのはライに気兼ねをしたからと言っていい。
しかし、それをライは自分から卜部に提案してきた。
「……フム」
確かにこの逃避行を続ける黒の騎士団残党において、卜部は自分が最年長者であることを自覚している。自分が残党勢力を糾合している中心人物であるということも承知している。
しかし、組織としての黒の騎士団での上位者はライであり、またカレンの方なのだ。
その上位者であるはずのライがわざわざ自分に意見を求めてきている。
『これが日本解放戦線での話しなら、事後の責任を押し付けるためにあえて意見を求めているというポーズを見せているのだ、なんて邪推をするところだな……』
机の上に広げられた図面に目を落とし、そして卜部はライの視線に目を向けた。
「ライ、時間に関しては極力短縮を図るとして……これでやれると思うかね」
「やれます」
「単純戦力が低下することには?」
「総合的な戦力はむしろ増すことになります」
ならば、と卜部は膝掛けの毛布を脇に除けて立ち上がった。
「よし、やろう」
下手な考え休むに似たりというのが座右の銘だった。壁に引っ掛けられていた作業服を手に取り、卜部は二人を振り返る。
「いいかげん毛布に包まって丸くなっているのにも飽きていたところだ。菜っ葉服を着込んで暖まるとするか!」
ほっと胸を撫で下ろしたカレンの表情。
対称的なのは、卜部ならそう言ってくれると心の底から信じていたといった体のライの落ち着いた笑顔だ。
卜部はなるほど、と胸の内でつぶやいた。
『パイロットの腕、大局を読む眼、それらは確かにこの男の長所であるし、武器であることは間違いない』
しかし、と卜部は思うのだ。それは彼の本質の一端に過ぎないと。
『この男の本質はもっと、何か、違うものだ』
その何かが何であるのか、それはまだ卜部の胸の内に確固とした言葉となって表れていない。
ただ、卜部がこの青年のことを好きになり始めていることは確かだった。
異常気象が叫ばれて久しいこの2018年、もうじき初夏を迎えようという時期であるのにこの北陸の地は吹雪いてさえいた。
さすがに積雪量はそれほどでもない。しかし、そうであっても銀世界と化した山中はナイトメアの行軍には厳しいものがある。
ゆえにメッケナム中尉の愚痴はその胸の内でますますうず高く積み重なっていくのだ。
それでもメッケナム中尉は胸のむかむかを抑え、指揮車コンソールのマイクを手にとって自分の責務を果たさんとしている。
「トレボーより各機へ。これより想定される敵勢力圏内に侵入。フォーメーションはこのまま、以降無線封鎖とする。オーバー」
ブリタニア帝国正規軍──陸軍のナイトメアフレーム部隊の編成は5機で1小隊となっている。
アサルトライフル装備の前衛担当が3機、
バズーカ砲もしくは対戦車ミサイルランチャー装備の後衛担当が2機、
合わせて5機という編成が標準となっていて、
これに歩兵戦闘車両一台を軸とした機械化歩兵分隊が随伴歩兵として同行する。これが基本戦闘単位とされるのだ。
その小隊を4個小隊でまとめ、さらに戦闘指揮車両一台を組み込んだ編成が正式なナイトメアフレーム1個中隊である。
今回の作戦では随伴歩兵は付随していない。季節外れの吹雪という悪天候では歩兵の随伴は危険を伴う。
また、本来バズーカ砲などを装備する後衛担当の機体も雪山での作戦活動ゆえに銃火器を外した基準兵装で出動している。
よって雪上用機材を装備した基準兵装のナイトメア部隊と指揮車両だけで作戦は実施されていた。
今、メッケナム中尉は中隊副官として指揮車に乗り込んでいる。
後ろには中隊長のブック大尉が鎮座し、脇には情報将校のマスケラ少尉がいる。
前部には操縦主のデボラ軍曹が、上部には彼らを見下ろす様な位置で機関銃主のバーナビー上等兵が座っていた。
「ソーズマン──ブランドン少尉の隊が先行し過ぎていないか?」
「いえ、彼の隊にはベテランのジョンスン准尉にロベルト曹長もつけています。間違いはないと判断します」
フウ……ブック大尉は戦術情報モニターから目を離さずに鼻を鳴らした。
メッケナム中尉はブランドン少尉とは別の意味でこの中隊長を苦手としている。
数々の戦場を渡り歩いた歴戦の勇士。本来ならばもっと出世しているはずの万年大尉。
その身に漂わせる“出来る男”の匂いがキライなのだ。
仕えるにせよ、配下に置くにせよ、どちらにしろもっと扱い易い人物に来て欲しいものだと思うのがメッケナム中尉の人となりであった。
そんな考えだからそれなりの出世しか出来ないんだと非難されるかもしれない──いや非難されるだろうと彼は理解している。
が、「しかし」と彼は思うのだ。
それの何が悪いんだと彼は思うのだ。
能力至上主義のお国柄とはいえ、所詮貴族体制の国家である以上「家柄」というものは絶対的な価値を持つ。
そのような社会ではよほどの能力──あるいはよほどの強運なしに下層階級の人間がのし上がることなど有り得ないのだ。
学者としての栄達? 学問には金がかかる。企業家としての栄達? その企業に如何にして入り込むというのか。
やはり下層民が栄達する道などこの国にはないのか?
何もないところから何かを掴もうとすることなど出来ないのか?
一つだけあった。
それが軍に進むという道だったのだ。
そうして手に入れた道、手に入れた中尉という地位なのだ。
その地位をさざ波を立てることなく保っていきたいと考えることの何が悪い、とメッケナム中尉は思う。
一兵卒から士官になり、中尉という立場にまで上り詰めるまでは紆余曲折があった。
綱渡りにも似た選択を迫られる状況も幾度となくあったし、危険の中でいちかばちかの賭けに討って出たことも一度や二度ではない。
そうして死ぬ思いで手に入れたこれが「中尉」という成果なのだ。
それだけに彼の「成果」を危うくさせうる総てのものが彼にとっては敵だ。
ブランドンもブックも、彼の精神をささくれ立たせる総ての者が彼にとっては敵なのだ。
「敵はあのゼロの双璧に四聖剣とかいうエースパイロットの生き残りだが……」
「大尉殿、1個中隊全20機での包囲殲滅戦です。要員も装備も総て万全であると確信しております。たとえ、」
「たとえ?」
「あのゼロの双璧と四聖剣であっても、ろくに補給も整備もできないまま逃げ回っての六ヶ月。もはや年貢の納め時と言うものでしょう」
いつになく雄弁な自身の副官にブック大尉は少し驚いたようだった。
「随分自信があるようだが……黒の騎士団は強力なナイトメアを擁しているのだぞ?」
「赤い奴は……《グレン》はトウキョウ戦においてダメージを負っております。もはや残党は脅威ではないと判断しますが」
「だが指揮官はあのゼロが重用した人物なのだろう? 確かライとか言う」
「そうです。あくまでゼロではありません、大尉殿」
フウ……とまたしてもブック大尉は鼻を鳴らし、メッケナム中尉はイライラを募らせる。
「中尉、一つ確認して──」
「大尉殿、一つ確認し──」
同時に喋りかけた二人がお互いに虚をつかれ、共に「何か?」と聞き返そうとした時、警告音が車内に鳴り響いた。
「最右翼プリーストチームが敵性戦力からの攻撃を受けた模様です。金属反応感アリ、機種確認……機種はナイトメアフレーム《ブライ》を二機を確認!」
マスケラ少尉の甲高い声が警告音と入れ替わりに彼らの鼓膜に癇に障る不快さを与えて、今為すべき事へと意識を向けさせた。
ブック大尉が頷き、マスケラ少尉はブリーフィングで決められた通りにコンソールを叩き、指示を飛ばしていく。
「全機、こちらトレボー。無線封鎖解除、交戦開始。全機、こちらトレボー。これよりタクティカルデータリンクを開始する」
中隊の配置は右翼からプリースト小隊、ソーズマン小隊、メイジ小隊、戦闘指揮車、ビショップ小隊の順だ。攻撃は最右翼のプリースト隊から受けている。
この戦闘指揮車両は簡易のEWACS(電子戦支援機)としての運用も可能だから、すぐに最新のデータが全中隊機にリンクされる。
「トレボーはこの地点に停車。……襲撃は《ブライ》だけか? 《ゲッカ》と《グレンニシキ》は出てきていない……陽動か?」
「連中のいつもの手です。別働隊をけしかけて陽動とし、指揮系統を狙う。連中はこちらを狙ってきますな」
言わずもがなのことと言った体でメッケナム中尉はブック大尉に進言した。言われるまでもないことだとブック大尉は目だけで頷く。
そうなのだ。過少戦力で多数の敵と戦おうというのだから陽動をかけて戦力を分散し、各個撃破を図るのは当然のこと。
『だが何かがまだある』
しかしブック大尉の中の、歴戦の兵士の勘がそれだけではないと警鐘を鳴らしていた。
「ビショップとメイジを呼び戻しましょう。プリーストにはソーズマンを。連中の主力がこちらに襲撃をかけてきたところで、右翼の敵を撃退したプリーストとソーズマンの隊で挟み撃ちの形に持ち込めます!」
そう、そうなのだ。何もおかしくはない。なのになぜ納得出来ない? ブック大尉は胸に手を当てる。メッケナム中尉はそんなブック大尉に何をしているんだと言わんばかりに詰め寄るのだ。
「大尉殿、ご命令を!」
彼にしてみれば「何を躊躇っている」と罵倒したい気分で一杯だ。
敵に各個撃破の隙を見せずに部隊を集結させ、一気に叩くチャンスだというのに何故動かないのかと。
だがブック大尉は動けない。自分でもなぜ動けないのかがわからない。
『なんだ、この胸のざわつきは? 部隊を終結させ、戦力を糾合させるべきだ。なのになぜ踏み切れん!?』
その時、戦術情報モニター内のマーカーが一斉に動き始めた。
ブランドン少尉指揮下のソーズマン隊が戦闘中のプリースト隊の方へと最大戦速で向かい始めたのだ。
そうなれば部隊と部隊の間の距離、その均衡が破れる。『えぇい、くそっ』ブック大尉は胸の内で激しく舌打ちをした。『あの青二才の少尉めが功を焦りおって』と。
「仕方ない。ビショップとメイジを呼び戻す。ソーズマン・プリーストとの距離を保ちつつ、合流して正面に進むぞ」
不安は未だに止まない。しかし、問題はないはずだとブック大尉は強引にその胸の震えを押し留めることにした。
「索敵、全周警戒を維持しつつ前進。敵に隙を見せるなよ」
そうだ、メッケナム中尉も言っているではないか。敵は旧型のコピー機体に稼動がやっとの半壊したナイトメアしか持っていない敗残兵に過ぎない。こちらは20機もの戦力を持ち込んでいるのだ。
ましてこちらは雪上用装備も完備している。このような悪天候でも移動も戦闘もなんら問題はない。
「ビショップ小隊合流までおよそ180sec。メイジ小隊合流までおよそ380sec」
報告を無言で受け止め、ブック大尉は座りの悪いシートに身を埋める。
フィーンンンという静かな振動と共にエンジンが鳴動を再開させ、ギュルルルルといった喧しい音を立てて強化樹脂製の履帯が動き出して指揮車が移動を開始した。 「急がなくていい。急進すれば間に合うだけの距離を保っていればいい」
戦術の基本は機動性と戦力の集中。倍以上の戦力を集め、相互に支援をとれる配置も取っている。そうだ、心配することは何一つない……ブック大尉はもう一度自分に言い聞かせた。
「ビショップ小隊を肉眼で確認、合流までおよそ60sec。メイジ小隊合流までおよそ260sec」
そうだ、とブック大尉は“心配すべきこと”を一つ思いついた。
考慮しなければならないとしたら──「せいぜい移動を慎重にせねばならぬことくらいだな」ブック大尉は誰にともなく呟く。たいしたことのない積雪量だとはいえ、山の機嫌はいつ変化するかわからないのだからと。
山、
雪、
それに斜面。
──斜面。
「ビショップ小隊を肉眼で確認、合流までおよそ60sec。メイジ小隊合流までおよそ260sec」
マスケラ少尉が淡々と報告を行い、
メッケナム中尉が鷹揚に頷き、
ブック大尉が目を見開いて座席から腰を浮かせ、叫んだ。
「ぜ、全速でこの戦域から離脱するんだ!!」
車内の全員がブック大尉を振り返る。
そして、地響きが彼らの何もかもを揺らし始めた。
「な、何が起きたんだ? 各機状況確認! ソーズマン1、ブランドン少尉! トレボーはなんと?」
ジョンスン准尉の呼びかけにようやくハッとしたブランドン少尉は自分が操縦桿から手を離して頭を抱えていることに気が付いた。
「わ、わかっている!」
それが答えになっていないことは承知の上だったが、怯えを気取られぬためにはそう言う他になかったブランドン少尉だ。
襲い掛かってきたのは衝撃。音。真っ白に閉ざされた視界。機体各部の反応が鈍いのは関節に想定以上の負荷を受けたせいなのだが、パニックを起こしている彼がそれに気付く事はない。
「トレボー、こちらソーズマン1。トレボー状況を知らせ。トレボー! ソーズマンだ! マスケラ少尉! 応答をしろ!!」
返事はない。無線はノイズを撒き散らすばかりだ。ドンっと肘掛けを怒りにまかせて叩く。
「いけませんね、データリンクも切れている」
それはロベルト曹長の声だ。その言葉にようやくブランドン少尉もトレボー──戦闘指揮車とのデータリンクが途切れていることに気が付いた。
失態だ──まず彼の胸に浮かんだのはその二文字だった。
自分が気が付かなかったことを部下に……平民出身の下士官などから指摘されるなど屈辱だ! 次に浮かんだのはその二文字が象徴する怒りだ。
今の地響きと巨大な振動は一体なんだったのだ。モニターが白一色で何も写っていないのはなんでだ!
「おそらく雪崩が起きたのではないか。この分だとトレボーはそれに……」
「雪崩ですって? このタイミングでですか? それは……向こうにとってだけ都合の良すぎる話ですね」
「そう、その通りだ。タイミングが良すぎる話だ。そんなことはありえない。だが──」
ジョンスン准尉が一瞬口篭り、そして言い放った。
「ロベルト、君もいただろう? ナリタ攻略戦に」
──ナリタ攻略戦。それはエリア11駐留ブリタニア軍にとって口にすることが憚られる、汚点の一つと言っていい戦いだ。
ナリタ連山要塞を基地とする日本解放戦線の掃討を企図した大作戦。その最中、終始優勢に戦いを進めていたブリタニア軍を突如土石流が襲った。
戦力の過半を喪失させたその土石流を起こしたのは黒の騎士団──ゼロの策であったと言われている。
「あれをこの山で再現したとおっしゃるのですか、准尉殿」
「そうとしか思えん話だ。だが有り得るだろう、相手はゼロの腹心だった男なのだからな。とにかく──」
「貴様ら、いつまでくっちゃべっている!」
ジョンスン准尉を遮るようにブランドン少尉が割って入る。
「とにかくこうしていても仕方ないんだ。早くトレボーの救助に向かわないと」
だが今度はそのジョンスン准尉がブランドン少尉の言葉に割って入った。
「おそらく無駄でしょう。それよりは交戦中のプリーストと合流すべきです。でなくては、我々は各個撃破の憂き目にあいます」
「なん……だと……」
「この雪崩は恐らく──いえ、間違いなく黒の騎士団残党の仕業と判断します。であれば、確実にトレボーを潰しているでしょう。そして次の目標は我々です!」
部下の断定的な口調に「しかしな……」とブランドン少尉は異を口にしようとした。
その時、コックピット内に甲高い警告音が鳴り響いた。
「敵襲!」という悲鳴にも似た部下のパイロットに瞬間うろたえたブランドン少尉機を押し退けるようにして、ジョンスン准尉のサザーランドが前に出る。
「敵は上だ! 迎撃!」
カメラは白を写すばかりで用を足さない。ジョンスン達はすでにモニターを切り替えていた。
ファクトスフィア──統合情報センサーが捉えた熱源や音といったデータをコンピューターが複合的にまとめ、判断してモニターに表示する。
画質は良くないが──
「捉えきれる!」
ジョンスン准尉は自機が手に持つアサルトライフルをセンサーが捉えた敵機に向けた。ロックオン。識別機能が働いて敵機の正体を報せる。
「《グレン》か!」
イレブンが開発した第七世代相当のナイトメアフレーム。嘘か真か先のトウキョウ決戦では十数機ものサザーランドやグロースターを屠ったという……。
「だが《グレン》ならトウキョウ決戦でダメージを負ったはずだ!」
ならば戦う方策はまだあるとジョンスン准尉は判断した。
アサルトライフルを斉射するが、《紅蓮弐式》は危なげなく回避する。しかし、その動きはシュミレーション上の《紅蓮弐式》の動きより緩慢なように思えた。
やれる。それが彼の感じた印象だった。
こちらに向かって来たのが《グレン》ならプリーストに向かったのは《ゲッカ》と《ブライ》だろうと彼は判断する。
それならばプリーストはもってくれる。そちらを指揮しているのはベテランのバッジェス少尉の隊だからだ。
「ロベルト、ボディー、《グレン》を囲い込むぞ。奴には例の腕はもうない。メッチェ、距離を取って支援しろ」
もはやブランドン──お飾りの──小隊長のことはジョンスン准尉の頭から消えていた。彼は平民からの叩き上げの熟練下士官であったから、
戦いが目の前にあれば、それに必要な総て以外のことが頭の中から消える。勝つために。
ジョンスン准尉は確信を持っていた。フォーメーションを崩さなければ必殺の“輻射波動機構”を失っている紅蓮弐式に勝機はないはずだ、と。
「いくら腕が立つと言えど所詮はゲリラに過ぎん。やれっ!」
1対多数の戦いとはいえジョンスン准尉には手を抜くつもりはない。どんな優勢な立場であっても気を抜けば殺される。それが戦場なのだから。
だから彼は自機とボディー機とで左右に別れ、紅蓮弐式を十字砲火に捉えようと動いた。後衛担当のメッチェ機はロケットランチャーの代わりに装備したロングバレルのライフルで牽制の援護射撃を行う。
そこを敵から見て左舷からロベルト機が肉薄する。このチームでの必勝パターンだ。
モニターに映し出されたCGの《グレン》に向かってアサルトライフルの銃口が火を噴く。5発に1発の割合で曳光弾の軌跡は当然ながら見えない。
しかしモニターにはCGの《グレン》へと向かう銃弾の軌跡が補正されたCGとして表示される。
恐るべきは《紅蓮弐式》と言うべきか。彼奴は小刻みに回避運動を続け、致命弾を避けているようだ。 「化物め……」
思わずクチをついて出る。が、この十字砲火と牽制の射撃は《紅蓮弐式》の機動を阻害するためのものだ。
本命は彼奴の死角となる左弦から強襲をかけるロベルト機──!
火線を途切れさせることなくジョンスン准尉は撃ち続けていた。弾を撃ちつくしても弾倉交換時には互いにフォロー出来るようにボディーとタイミングを合わせている。
最中、メッチェの放った何射目かのライフル弾がグレンを捉えてその体勢を大きく崩した。
好機!
一気に前進してより濃密な弾幕でグレンを囲い込む。しかしこれはフェイクだ。ロベルト機の機動を隠す為の陽動なのだ。
よしんば気付いたとしても、この濃密な近距離からの十字砲火の中では避けられまい!
通常の《サザーランド》と違い、黒の騎士団残党の追撃を主任務とするこの部隊には特別に先行生産分のMVSが支給されている。
MVS──メーザーバイブレーションソードと呼ばれるこの斬撃兵装は刃と重さとで目標を叩き切る兵装ではない。
刀身にマイクロ波を増幅・発振させた高周波振動を起こし、触れる物の総てをバターの様に自在に切り裂くという正しく“剣”そのものといった武器なのだ。
例え紅蓮弐式といえども、このMVSをもってすれば……。
モニターにロベルト機の表示が現れる。《紅蓮弐式》の左斜め後方。絶好の位置。
ジョンスン准尉たちはロベルト機の強襲を邪魔せぬ様に火線を逸らした。それと知らねば分からぬくらいの絶妙な角度でだ。
そして刹那、無残に切り伏せられる《紅蓮弐式》を幻視した彼らは次の瞬間、一瞬で真っ赤に灼熱して弾け飛ぶロベルト軍曹の《サザーランド》を見た。
癇に障るBEEP音が鳴る。瞬間何が起こったのか分からなかったジョンスン准尉は呆けた目をモニターの中の表示に向けた。
《ソーズマン3 撃墜》
長年チームを組んできた相棒の、それが最期を示すワードだった。
「……一瞬で機体が弾け飛んだ。輻射波動だと言うのか……?」
半年前のトウキョウ決戦の際、《グレン》の切り札である輻射波動機構が内蔵されている右腕は特派の嚮導KMF《ランスロット》によって破壊されたはずだった。
修復された?
崩壊した黒の騎士団にそんな余裕があるとでも?
予備パーツがあった?
撤退時に予備パーツは総て破棄されたとの情報が吸い出されている。
ではこれは。これはなんだ?!
一瞬の隙をついて《紅蓮弐式》の赤いボディが宙を舞う。
その時、ジョンスン准尉は見た。
《紅蓮弐式》が半年前に失ったはずの右腕、捉えたモノに等しく平等なる“死”与える右腕を。
その部屋はだいぶ明るかった。その明るい部屋の中ほどにライがつくデスクはあり、彼は着席したまま、正面に立つ年長の下士官の報告を受けていた。
「自在戦闘装甲騎隊の撃墜戦果は総計8機、拿捕は2機。捕虜の拘束2名。我が方の損害は機体、人員共に0です!」
下士官の報告した内容はすでに知っていることではあったが、指揮官としては“報告を受ける”ことも仕事のうちなのだ。
数度頷いてみせてからご苦労と答えて下士官を下がらせるとライは窓から外を覗いた。
吹雪はすでにやんでいる。陽の光さえ差し込んでいる。
良好な視界のその先には《紅蓮弐式》と卜部の《月下》そして数機の《無頼》が駐機していて、その周りで黒の騎士団の団員たちが忙しそうに動いている。
久しぶりの勝ち戦に皆が皆沸いているようだ。
「一個小隊そこそこの戦力で中隊規模の敵を。それも追撃専任部隊を全滅させたのだからな。そりゃあ士気も上がるってものさ」
扉を開けて入ってきた卜部はパイロットスーツのままだった。
「ご苦労様でした。撃墜3、さすがですね」
よせよ、と苦笑して卜部は部屋の隅に立てかけてあったパイプ椅子を引き摺ってきて座り込む。
「まさかナリタのあの地すべりを再現して敵の戦力の過半を奪うとはな……今となってはあの時の事を怒る気にもならん。感心するよ」
そうして彼もまた窓の外を覗いた。
彼の視線の先にあるのは《紅蓮弐式》と自身の《月下》だ。
「君はよかったのか?」
「これが最良の選択ですよ」
そう言ってライも再び《紅蓮弐式》たちの方を見る。脱落したはずの《紅蓮弐式》の右舷に“右腕”が付いていた。
ライの搭乗機《月下・先行生産機》の甲壱型腕だ。
「今の僕達の最大戦力はやはりカレンと卜部さんですよ。だったら僕がするべき事はお二人が最大限戦えるようにすることです」
「その為には自分の《月下》を潰してもいい、かい?」
「充分に実力を発揮できない壊れかけの機体3機よりは完全稼動状態の2機の方が戦力として信頼できますからね」
ライはどうということもなさそうに言い、ますます卜部は苦笑を消せなくなってしまう。
そう思いはしてもそれを思い切れる者などそうはいないのだ。
ライの提案は驚くべきものだった。予想はしていても、いざそれを打ち明けられれば面食らいもする。
自分の愛機を潰して、《紅蓮弐式》と《月下・卜部機》の補修用パーツとする、などということは。
「機体に愛着はあります。でも、それよりも優先することがあるのなら思い切ります。僕には夢がありますから」 夢──ゼロを取り戻すこと。日本を取り返すこと。
卜部にはゼロの正体が異能の力を手にした学生だと言われてもピンとこない。だからどうしたってやつだ。
最初ライとカレンから打ち明けられたときも、後のことはともかくとしてしばらくは同行しようと決めた。解放戦線からの部下もいたし、騎士団に参入してからの部下もいた。彼らを養わなければならなかったからだ。
つまり、必要にかられたからライたちと同行している。それ以上でもそれ以下でもなかったのだ。
──今は?
そうだ、以前は以前、今は今だ。
今は──少し違う。
ゼロに対する不信感を隠そうとしない千葉や朝比奈などはまた違う考えに至るだろうが……と卜部は思う。至るだろうが、自分は彼らではない。
卜部自身はゼロに対して強く思うことはない、が──この青年、ライが信じるゼロならば信じてみてもいいと思うのだ。
『昔に比べて俺も変わったのかな』
望んでいたエリートコースから外され、金沢の駐屯地に送られたころの自分を思い出す。
あの頃はなにもかもが嫌でたまらなくて、目に見える者の総てが敵であるかのように思えたものだ。信用とか信頼とかそんな言葉は有り得なかった。
だけど、
『人は変わっていくもの、だからな』
昨日ライに向かって笑った言葉を卜部はそのまま自分に返していた。
そのように笑っていた二人の和やかな時間は唐突に途切れた。
「ライ! と、卜部さん? ……連絡がついたわ!」
部屋に飛び込むように入ってきたカレンをライは思わず腰を浮かして迎える。「トウキョウからかい」聞き返すライの語尾は震えていた。
それは待ち望んでいた一報なのだ。
「そうよ。先行したC.C.たちからの連絡……《坊やは楽園に舞い戻った》だ、そうよ」
ドサっと深く腰を下ろし、ライは「そうか」と呟いた。一度目は放心したように微かな声で。そうしてもう一度、
「そうか──!」
それは希望を見出した人間の強い言葉だった。
「取り戻しに行くんだな」
卜部の問いかけにライは強く頷く。
「取り返します。奪われた何もかもを」
ライの心中はその言葉程単純なもので埋め尽くされてはいない。
目的を果たすための戦略はどうしようか、戦術はどうする、人員は、装備は、資金は……なにもかもがまだ手詰まりのままだ。
だけど、
いまここに希望が生まれた。
生きているかどうかわからない、あやふやな希望ではない。確かな希望が生まれたのだ。
『ルルーシュ、もうじき君を取り戻しに行く』
これまでの戦いが、死者が、総ての犠牲が無駄ではなかったことを確かめるために。
この六ヵ月後、トウキョウ租界にて
黒の騎士団残党によるバベルタワー襲撃事件が起こる
そしてライたちは再び
自ら陰謀と戦火に飛び込み
幾百の怨嗟
幾千の悲憤
それを目にすることになる
たった一つ、捨てきれない希望を手にせんが為に──
久しぶり過ぎて1レスの行数とか文字数がガガガガガ……
なんとか投下できてよかった
では、そういうことでー >>116
乙です。オリキャラも出てきてオリジナル要素満載なのに
描写が細かいので不思議と全然気にならないです。
風景も、人も、見える感じがするのがすごい。
状況の緊迫感は漂いつつも人間味のある言葉を交わす日々の描写もいい…
俺は物書かないんできちんとしたことはわからないけど
こういう別サイドのラノベとか本当に出てそうなほどうまいっすね。
なんかすげぇ感心してしまいました >>116
乙です。
いいなあと思いつつ、可動機体がしっかり本編準拠になって
やっぱり揺るぎなさそうな卜部さんの死亡フラグにちょっと笑った。 >>116
投下乙でした
相変わらず細かい軍事描写と本当に居そうなオリキャラが素敵でした
「手を取り合って」の方も期待しております お疲れ様です!
細かい描写が多くとても解りやすかったです
とても楽しく読めました! 久々に投下します。よろしくお願いします。
ライ×ミレイです。 「まあ、薬を飲んで十分な睡眠をとることだね。そうすれば、2、3日のうちに良くなると思いますよ」
白髪混じりの初老の医師はそう口にすると、薬の処方の仕方を伝え、部屋から立ち去っていく。
「どうも、ありがとうございました」
部屋の扉が閉まるまで医師を見送った少女は、医師の言葉にほっと安堵のため息をついて、部屋の奥の、居住スペースとなっている一角にあるベッドへ向かう。
「よかったわね、ライ。ただの風邪だから2、3日もすれば良くなるって」
ベッドに寝転がって苦しそうに息を上げている少年、ライに対してミレイは声をかける。
「そう……ですね……」
ライは、搾り出すように声を出してなんとかミレイに返答する。ただの風邪、といっても、現在40度近い熱に悩まされているライの状態はライ本人には軽々しいものではなく、ミレイから見ても多量の汗を額に浮かべて耐えている様子は見ていて痛々しいものがある。
そもそもの事の発端はライが無断で学園を休んだことから始まった。
仮入学という形で学園に通っているライは、その立場や状況から、出欠等に関しての規律は他の生徒と比べて甘くなっている。
記憶喪失のライにとって、学業よりも優先すべきことは自らの記憶を思い出すことであり、そのため、所謂「記憶探し」に出かけることから授業を欠席せざるを得ない事情があるからだ。
しかし、ライは、そういった事情で学園に来れないとき、少なくとも保護者を自称するミレイに連絡するなどして、なんらかの形で伝えていた。
だから、事情が事情とはいえ、ミレイにとって無断欠席などは関心できることではなかった。それに、真面目なライが連絡の一つもよこさないことには一抹の不安を覚えた。
放課後、早々と生徒会を切り上げたミレイは、ライの居室となっている学園の施設の一室へと向かった。
「ねえ、ライ。いるの?」
ライの部屋をノックして呼びかけてみても返事はない。もしかして出かけているのかもしれないと思い、引き返そうかどうかミレイは逡巡する。
だが、なんとなしに手をかけた部屋のドアノブが思いもせず回ってしまったことによって、その思いは立ち消えてしまった。ここまで来たのだから確かめよう、とミレイの考えは完全に決まっていた。
ライの保護者を自称しているとはいえ、勝手に異性の部屋に入ることに、ミレイは少しの罪悪感を覚えていた。
部屋にいるかどうかさっさと確認して帰ろう、と罪悪感を振り払うかのようにそう決めて、部屋の中に入り込んだミレイだったが、夕方だというのに電気もつけていない部屋は、まるで部屋の主の不在を暗示するように、静けさで満たされていた。
夕焼けだけが部屋を照らし出し様子に、やっぱり帰ろうかとミレイが思い始めた矢先、不意に部屋の奥から呻き声のようなものが聞こえた。ミレイは驚くと同時に、咄嗟に部屋の奥へと駆け出した。
「ライ!?」
そこにいたのは、寝巻き姿のまま苦しそうにベッドに横たわるライだった。
「あのときは本当に驚いたわよ」
明るく話しかけるミレイだが、口でいう以上にライを見つけたときのことは衝撃だった。
明らかに異常なライの状態にミレイは、一瞬頭の中が真っ白な気分になった。
だが、ミレイは慌てずにすぐに平静を取り戻し、ライの額に手を当てて、体温が高いことを確認すると、急いで学園かかりつけの医師を呼び出した。
「どうしたのかと思ったわ」
そんなミレイにとって先ほどの医師から聞かされた診断結果には、本当に安心させられた。これで重い病気の可能性がある、だなんて言われていたらと思うと、ミレイは心底良かったと感じた。
「すい……ません。心配……かけて……」
だが、ミレイの安堵とは裏腹に、当の病人であるライは熱にうなされている。
ただの風邪だといっても、苦しんでいる当人にとっては、症状が治まらない現状はきついのだろう。
「そんなこといいから。ほら、薬飲んで」
激しく息を吐き出しているライに、ミレイはコップから水を差して薬を飲ませる。そうしてしばらくすると、落ち着いてきたのかライの呼吸が安定してきた。
「ミレイさん、本当に……迷惑かけて」
「いいのよ、そんなことは。あ、でも━━」
何か思いついたという風に口元を緩めて、ミレイは、熱のせいで赤くなっているライの顔を見つめる。
「ねえ、ライ。今は一生懸命看病してあげるからさ、風邪が治ったら、何かご褒美くれない?」
「ご褒美……ですか?」
ぼうっとして、うつらうつら聞き返してくるライに、ミレイは意地悪そうな笑みを浮かべる。
「そう、なんでもいいから言うことを一つ聞いて欲しいの。だめ?」
「いい、ですよ。風邪が治ったら。ミレイさんの言うこと……なんでも……」
そう言って言葉を言い終える前に、薬が効いてきたのかライは眠ってしまった。
「あれ、ライ。寝ちゃった?」
さっきまでと違って穏やかな息遣いで眠るライに、ミレイはふっと微笑む。ただ穏やかに眠るライの様子を見ていたら、どんなことをさせてやろうかと考えていた邪な考えなんて、どうでもよく思えてきてしまった。
「今回は勘弁してあげるわ」
整ったキレイな顔立ちのライの寝顔を見つめていたら、愛しさがこみ上げてくる。ミレイが自称している保護者という立場以上の感情だ。
「でも、ご褒美はもらうからね」
返答のないライに対して、呟くようにミレイは問いかける。そして、ベッドの脇からすっと体を浮かせて、お互いの顔を近づけていく。やがて、互いの距離はゼロとなって、顔の一部分同士が触れ合った。
「早く良くなってね」
ライの手を握って、ミレイは再び、今度は頬を赤らめて、薄く笑った。
短文でした。あとタイトルを忘れてました。
タイトルは『Have a fever』です。 投下おっつ乙
ライとミレイさんはしばらく見かけなかったね
ご褒美いいねぇ。あげる方ももらう方も
うちもまた書いて落とすか! 投下オツカレ様です!
なんか青春してる!って感じでいいですね! 投下乙です!
弱っているライとそれを看病するミレイさん。
個人的にたまらないシチュエーションです!
ミレイさんがどんなご褒美をもらうのか凄く気になります。 全力でGJ!!
こんなに時間が経ってるのに書いてくれる職人様にただただ感謝です 全力でGJ!!
こんなに時間が経ってるのに書いてくれる職人様にただただ感謝です やっほ。
こんな時間にこんばんは。
暗くなるのが早くなって、もう秋ですね。
夏に痩せられなかった分、今年の秋は食欲の秋を控えたいと思います。
ムリだと思うけど。
んでは、突発的に書いた一本──投下しちゃいます。
従軍牧師に一分間だ! “西”暦2022年10月25日、事件は合衆国日本中部州──静岡の富士霊廟にて起こった。
「現時刻をもって指揮権が合衆国日本警察庁から黒の騎士団に移行いたしました。ご指示を」
「対テロチーム1番から3番までの配置を急げ。4番、5番はバックアップ。合衆国連合のネゴシエイターには引き続き交渉を続けさせてくれ」
映画などでよく目にする部屋である。狭い部屋の中には照明はなく、いくつかのディスプレーモニターが照明代わりのように瞬いている。そんな部屋に数人の男女が詰めているのだ。
作戦指揮所──であるのだろう。
その暗い部屋の中ではボウっと輝くモニターの灯り以外に存在感を強く主張しているものはない。
違う──もう一つ強く自己主張している存在がいた。その室内で蠢く人々の中、一際異様を発している男がいる。
漆黒のマント、異貌の仮面。一目で誰とわかるその姿。
その男の名をゼロと言う。
「どうか?」
短く問うたその言葉に、
「悪くはないが、良くもない」
彼の幕僚総監たる周香凛も短く答えた。
「連中は旧帝国過激派だ。こちらとの交渉に耳を傾けるとは思えないな」
「やはり《白の騎士団》とやらか」
「先ほど東京市の南たちから連絡がついた。入国を手引きした元名誉ブリタニア人の旧帝国シンパを逮捕したとな」
ゼロは「そうか」とつぶやいただけで、それについて何の感想も発しなかった。
周は最近ようやくゼロとの付き合い方というものを悟れてきたように思う。
つまり、こういう時に余計な口出しはするべきでない……ということをだ。
合衆国連合の平和維持活動局から派遣されたネゴシエーターの交渉はうまくいっていない。いくはずがないと周は思っている。
それがわかっていないゼロではないはずなのだから、自分は余計な口を挟むべきではない。
「内部の状況はまだわからないか?」
「現在人質は総て第二階セレモニーホールに集められている模様だ。判明しているテロリストの配置は第一階正面ゲート奥に重火器で武装した者が6名、第二階セレモニーホールに4名……」
「続けてくれ」
「第三階と第四階の人数は不明。確認人数10名。東京からの連絡によると総数は21名とあるから……」
「3、4階にはテロリスト11人が散らばっているということか」
「突入は難しくあるな」
「当たり前の方法では難しいと思えるが……」
「当たり前の方法ではいかないということか?」
ゼロは再び「さて、な」とはぐらかす。そういうところは“前のゼロ”とまったく同じように思えて、周は奥歯を噛みしめるのだ。
だから、
「いいのか?」
思わず周は“しなくていいこと”を口にした。
「いいのか、とは?」
その返答に一瞬鼻白んでしまった周は、口を挟んだことに「またやってしまった」と後悔をおぼえたものの、生来の気の強さは気後れした自分を認めたがらないようであった。
彼女はズイっと一歩ゼロにつめよると押し殺した声でゼロに言った。
「あそこにはナナリー公女がいるのだろう?」
ゼロは何も答えない。
「いいのか?」
またしても、周は口を挟んだ。
ナナリー 19歳:birthday
静かにしろと強制されていたとしても、シンと静まりかえるなんてことはないのね。
必ずしも無音ではない──静かにざわめいているセレモニーホールの片隅で、そんなことをぼんやりと考えていた。
ギュと握り締められた手が少し痛い。
「セーラさん……」
そっと声をかけると、彼女はハッと我にかえったようだった。
「あ……申し訳ありません。痛かったですか?」
「大丈夫です。みな、心細いでしょうから」
もういちど謝罪を繰り返してセーラは壁の方を向く。
そこには銃を抱えた男たちが一人……二人……三人とこちらを監視しているのだ。
「大丈夫です……きっと大丈夫ですからね」
そのセーラの言葉はきっと自分で自分に言い聞かせているのだ。わたしは手でそっと彼女の髪を撫でる。
「えぇ、きっと大丈夫。きっと助かるわ」
「ナナリーさま……」
余人には聞かれぬようにそっとセーラがわたしの名前を呼ぶ。彼女が口を開くたび、その語尾が震えていることにわたしはとっくに気が付いていた。
セレモニーホールに集められたわたしたちは全部で200人程になるのでしょうか。ひしめきあって、肌を寄せ合って、そうして奪われた自由に恐れおののいている。
《白の騎士団》と自称するテロリストが富士霊廟を占拠してからもうじき3時間。一時の狂騒は治まってくれたけど……わたしは車イスの背もたれに軽く身を預けて息を吐く。
見た感じ手に持つ自動小銃も、身を守るボディアーマーもそれなりの装備のようだ。顔を隠す仮面はいつかテレビでみた《ルルーシュ親衛軍》のものだろう。
耳にかけたインカムで常時連絡を取りながら行動している辺り、訓練された人々だということもわかる。きっと綿密な準備を重ねてきたのだ。
それはつまり、彼らには余裕がないんだろうということなのだとわたしは思った。本当は合衆国連合の要人が集まる《式典》を襲いたかったのだろうけど……今日、この場所で《式典》は行われていない。
季節外れの台風のせいでこの国への飛行機が飛ばなかったことで、ぎりぎりのタイミングで《式典》は延期ということになってしまったのだ。
当てが外れたというのに襲撃を強行せざるを得なかったということは、彼らに“次”はなかったということなのだろう。
だから政治的メリットがもはや失せてしまった襲撃でも行った。行うしかなかった。だから修学旅行の学生くらいしかいないこの富士霊廟を占拠しているということなのだ。
『もっとも……』
軽く首をめぐらせてみると肩の辺りがポキポキと音を立てた。ずっと身体を縮こませていれば肩もこってしまう。
『その要人の一人であるところの“ナナリー公女”が今ここにいるなんて、彼らが知ったらどうなるかしら』
なんて間の悪いことだろうとわたしは思わず小さく笑ってしまった。
見つかってしまうのは時間の問題かもしれないけど、とりあえずはもうしばらく縮こまっていましょうか。
微かに震えているセーラの様子を見れば、自分がしっかりしなきゃと思うしかないもの。
「大丈夫。大丈夫よセーラ」
わたしは世話役の少女の髪を撫でる。せめてこうしている間だけは、多少なりとも彼女とわたしの恐怖心は和らぐことであろうから。
『恐くても恐いと言ってはいけない時があるものよね。そうでしょう? お兄様……』
そっと胸の中で語りかけて、わたしはもう一度辺りを見回した。
人質は全部で200……もうちょっといるかもしれない? 学生とその引率の教師らしい大人が数人だけ。
学生服ばかりのその光景はすこし懐かしさを感じさせてくれるのだけど、物々しい雰囲気がそんな気持ちになるのを許してはくれない。
「グスッ……」
どこかから女の子が嗚咽する声が聞こえたのはわたしがセーラに何度目かの「大丈夫」を囁いた時だった。
「いやよぉ……もうこんなのいやぁ……」
音がよく響くセレモニーホールの中ですもの。その声は遠くまではっきりと届いたはず。
『いけない!』
わたしが思うよりも早く、その声は大きな波として人々に伝播していった。
「もうやだ……こんなの、やだ!」
「出してくれよ! ここから出してくれよ!!」
「まだ死にたくないよぉ……」
「助けて! 死にたくない!!」
「お母さん! 助けて!!」
その動揺は異なる言葉で同じ混乱を周りに、それも伝播するにしたがってより大きなものに変えて拡がっていった。
さっきまでの静かなざわめきは一転凶暴なまでの騒音となって……そして!
「黙れイレブンども!!」
より凶暴な怒声、そして暴力によって頂点を極めてしまうのだった……。
・
「銃声?」
「ハッ、5分前の1820(ヒトゴーニーマル)に二階セレモニーホールにて銃撃音がしたと観測班より報告がありました」
下士官の報告に周はチッと舌打ちをすると、側のデスクに座っている情報士官からインカムを奪うと彼女は声を荒げた。
「狙撃班! 一番隊! 二番隊! テロリストの様子はどうか!」
(ネガティブ。一番隊は第三階の動向は把握出来ず)
(二番隊もネガティブ。屋上からの侵入路の確保は困難)
「くそっ!」
外はすでに作戦指揮所に負けぬ暗さになっている。雲も出ていて月はその姿を見せていない。
『何も出来ないまま日暮れを迎えてしまうとはな!』
もちろん富士霊廟は完全に包囲しているから夜陰に乗じて逃げ出すようなことを許すつもりはない。
しかし夜の闇がこちらの行動を妨げ、敵を利することは確かなのだ。
事件発生からすでに3時間を超過し、もうじき4時間にもなろうとしているのに、ゼロの指示は鈍い。相変わらず期待の出来ないネゴシエーションを続けさせているだけだ。
『なにをやっているんだ?』
疑問は不信に変わり、やがて苛立ちに変わるものだ。が、周にとってその段階はすでに終わっていて今は《疑問》の段階に移っていた。
つまり、『ゼロが手をこまねいている理由とは何なのだろう?』という疑問を抱く段階に、だ。
「不思議かね?」
だから、その唐突なゼロの言葉は《疑問》について考え込んでいた周を驚かせ、ビクっと身体を震わさせたのだった。
「不思議というか、疑問ではある」
ゴホンと咳払いをして答える。言いながら周は手元に届いた最新の配置表をゼロに渡す。
「なぜ常に迅速果断たる卿がこうも手をこまねいているか、とな」
周に限った話ではないが、黒の騎士団の中でも元中華連邦組の人物はたとえ相手がゼロでも口調を変えて慇懃に対応することは殆どない。
もちろん組織の長としてのゼロには従うが、かつての戦いにおいて対等の立場として黒の騎士団に加わった者達であるゆえに、決して下風には立たないという自負心があるのだろう。
特に周香凛と言えばかつての黒の騎士団総司令であった黎星刻の懐刀でもあった人物であったから、なおのことなのかもしれない。
そしてゼロはそれらの言動や行いを咎めるようなことは言わなかった。むしろそれを楽しんでいるようであった。
「手をこまねいているように見える、か」
フッとゼロは息を吐いた。
「ことさらに間違いを指摘する趣味はないが──それは大間違いだと言わせてもらおう」
「と言うと?」
「手をこまねいているのではないよ、周香凛。私は──」
ゼロの言葉に周は驚くとともに、やはりとも思うのだった。
つまり、やはりゼロはゼロであったのか、と。
彼はこう言った。
「打つべき手は既に打ち終わっている。だからこうして安んじているのだよ」
と。
銃弾が天井に穴を穿ち、悲鳴と怒声が一通りの合唱を済ませた後、《白の騎士団》の人は銃を構えたまま学生達を威嚇するようにその群れの中に分け入ってきた。
「こちらを見つけたんでしょうか……」
「いえ、そうではないでしょう」
怯えるセーラをなだめながら、それでもわたしも鼓動が落ち着くために何度も深く呼吸をしなければならなかった。
恐い。助けてと叫びたい。
そんな気持ちはあるけれど、そんな無様な姿を晒したくはないとも思う。
だってわたしはあの人たちの妹だから。
男がこちらへ向く。その表情は仮面のバイザーに阻まれてわからない。
セーラが「ヒッ」と息を吐く。
歯をくいしばる、わたし。
「立て! イレブンの小娘!!」
男はわたしたちからほんの2mも離れていないところに座り込んでいた少女に目を付けたようだった。
嫌がる少女に銃を突きつけて無理矢理立たせようとしてる。
「貴様ァ、今携帯電話を弄っていただろう! どこに連絡を付けるつもりだったんだ!」
「違う……わたし、そんなこと……ッ」
グイっと引っ張った拍子に髪留めが外れたのでしょう。長い髪がふぁさっとほどけて拡がって……。
わたしは目を閉じていました。
理不尽……そう、こんなことは理不尽だ。この男たちはなんでこんなことをするのだろう。
世界が自分たちの思い通りにならないから。だから、この学生たちを思い通りにするの? 暴力をもって人の心を捻じ曲げて、尊厳を踏み躙ろうというの?
「それは──」
わたしの胸の奥に何かが灯ったのを感じた。
許せない。最初に灯った言葉はそれ。
次に灯ったイメージは──兄の顔だった。
お兄様──貴方は強かった。今でもその行いの100%総てが正しかったとは思えない。うぅん、今でもわたしは貴方の行いを「間違っている」と言いたい。
でも……でもお兄様、貴方は決して言い訳をしなかった。そして最後には……。
うぅん、泣かない。決して泣かない。
暴力に屈することは、その暴力を認めてしまうことだ。抗おう。わたしはそうしなければならない。
そうでなければあの人たちに顔向けが出来ない。そうだ!
わたしは目を開いた。
わたしが誇りを失うということは、わたしに未来を託してくれたあの人たちの人生を汚してしまうということなのだから。
「おやめなさい」
言葉は自然にこぼれおちた。
そばで驚きのあまり言葉を失っているセーラはそのままに、わたしは車イスを前に出す。
「おやめなさい。……わたしを貴方達のリーダーに会わせなさい。わたしはナナリー……。ブリタニアのナナリー・ヴィ・ブリタニアです」
キッとテロリストの目を睨んでわたしはさらに一歩踏み出す。
車イスで良かったなと思うとちょっと顔がほころんだ。自分の足でだったら恐くて歩けなかったかもしれないから。
「その手をお放しなさい。乱暴をお止めなさい」
呆然としているのだろう。テロリストは少女の手を握り締めたままこちらを凝視している。
恐い。
でも!
ぐっと睨み返して、わたしは勇気を振り絞る。
「その手をお放しなさいと言っているのです。卑しくも騎士を名乗っていながら、無辜の民に手をあげるとは何事か!」
その芝居がかった言葉に男は──多分意図してではないのだろう──手を放してくれた。良かった。わたしは解放されたその女の子に微笑んで「大丈夫」と声をかける。
「大丈夫。えぇ、大丈夫よ。もう心配いらないわ」
そしてもう一度わたしは振り返った。
お兄様。スザクさん。──さん。
わたしに……勇気を。
「さぁ、わたしを貴方達のリーダーのところに連れていきなさい。かつてのブリタニア皇帝の娘、そしてその次の皇帝の妹です。相手として不足はないでしょう」
わたしは弱い。自分一人では何も出来ない。自分の事ですら何も。
でも……そうよ、でも!
そんな自分を卑下しても何も始まらない。自分が出来ないことを認めて、わたしは自分に出来ることを知ればいい。
わたしはそれを学んだはずだ。
本当の自分を受け入れて、世界に向かって一歩を踏み出す強さ──わたしの勇気!
「ば、売国奴の癖に……。尊い血筋でありながら国を売った不孝姫のナナリー……」 男はチャキっと音を立てて銃口をわたしに向ける。でも、もうそんな物は恐くはなかった。
本当に恐いのはそんな物ではない──!
「わたしを撃ちますか? その覚悟が貴方にありますか?」
わたしは車イスを前に進める。
銃を構えたまま、彼は二歩、三歩と下がる。
「よくお聞きなさい。撃っていいのは、撃たれる覚悟のある者だけです。貴方にその覚悟が、撃たれる覚悟がありますか」
異常に気が付いたのだろう。ざわめきの中、床を蹴る軍靴の音が近付いてくる。
だけどわたしは引くことはできない。いいえ、引くものですか。
お兄様が、──さんが作った平和を、わたしが守ろうとしないでどうするの!
本当に恐いのはそれが出来ないことだ。
それがわたしの覚悟なのだ。
「おい、どうした!」
「抵抗する者に容赦はしなくていいと言っただろう」
集まってきたテロリストは2……3……4人。立ち尽くす男を入れて5人。
「こいつ……ナナリーだ。ナナリー・ヴィ・ブリタニアがここにいるぞ!」
動揺する男たち、わたしを守ろうというのか間に割って入ろうとするセーラ、それを押し留めようとする近くにいた学生さん。
彼らが波が引くように離れていく。そう、もっとわたしから離れて。わたしが守る──あの人たちが守ろうとしたものを、今度はわたしが!
わたしは吠えた。
「わたくしは何処にも逃げません。そして……わたくし、ナナリー・ヴィ・ブリタニアが命じます。この場にいる方々に無用の乱暴をすることは許しません!」
「なるほど」
男のうちの一人が相槌を打った。
「素晴らしい覚悟だ。賞賛に値する。好意を感じる程にだ。しかし、同時に無謀であるともとも思えるな」
その男は集まった男たちの一番後ろから、ようやっと聞こえる程度の大きさの声で語りかけてきた。
小さい声。聞こえないほどではないけど、少し聞き取り難い。
「無謀……ですか?」
「そうではないかな? 平地に波瀾を起こそうとする輩に理を説くことは無謀なのでは?」
「それを行っているのはあなた方ではありませんか。自らの行いが平和を乱すこととおわかりならば、今すぐ投降してください。そして、罪を償ってください」
返事はなかった。返事の変わりに返ってきたのはクックックという押し殺した笑い声だった。
「おい」「貴様なにを言っているんだ」と仲間たちから詰め寄られている。
だけど、その人はまるで関知しないでいる。まるで自分とわたし以外はこの場に誰もいないかのように。
「やはり君も獅子の血統であるということか。しかし、それでも勇気と無謀を履き違えることはいけない。わかるかい? 僕は君の行為を叱っているんだ」
叱っている? その言葉にわたしは戸惑いを覚えた。
その時だ。
「貴様……誰だ?」
テロリストたちのより戸惑った声があがる。
それでも彼は変わらず、同じように聞き取り辛い小さな声でささやいた。
「……とはいえ、目の前で理不尽が行われていれば、それを見ぬ振りをして放置していられるナナリーではないのだろう、ね」
え? とわたしは一瞬息を止めた。
この人は今、わたしを名前で──
「だからさ。卿ら……もう無益な行いは止めよ。──が命じる。皆、ナナリー公女の御心に従え」
おそらく、その言葉は彼と、彼らと、わたし以外には聞こえなかったはずだ。
4人の男たちがいっせいにその場に跪き、まるで臣下の礼を取るように、わたしの方を向いて頭を垂れる。
そして、わたしの……意識が遠のいていく。
わかる。これは──ギアスだ。あの時お兄様がわたしにギアスをかけた時と同じ感覚。
『わたしの心に従え』それが呪縛の言葉……お兄様とは違う“声”のギアス。それは、その持ち主は──!
──待って。
言葉が口をついて出ない。
──お願い、待って!
出てくれない。
「ナナリー」
ささやきがわたしの耳朶を打つ。
「自分の心の赴くままに、自分の心に従えばいい。この世界に君の主人は君だけなんだから」
限界だった。
そこで、わたしの意識は、真っ暗闇の中に落ちていってしまった。
・
西暦2022年10月25日─19:02 富士霊廟
およそ4時間振りに解放された人質たちは全員が無事であり、事件当初に抵抗した施設職員数名の軽傷者以外にはケガ人も出なかったそうである。
周香凛は部下から渡された報告書を手に、作戦指揮所から出た。
大駐車場に止められた巨大なトレーラー。それが作戦指揮所であった。
外は既に暗い。だが、その夜の闇に負けぬ喧騒が辺りを支配している。
最初に飛び込んできたのは《ナナリー公女》とその世話係りの少女だった。
そして、そのナナリーを取り囲むようにしている学生服の少女たち。
「警備上の問題があるのでは?」
傍らに立つ部下が囁くが、
「好きにさせるがいいさ。事件解決の立役者だ、公女殿は」
聞けばテロリストに銃を突きつけられ、乱暴されそうになった少女を公女殿は自らの危険を省みることなく助けに入ったという。
その彼女の威厳に圧倒されたテロリストたちはその場で自ら投降したというのだ。
「にわかには信じがたい話だが……」
周はゼロをちらと見た。
「被害者がナナリー公女に感謝の言を述べたいと言い、公女殿もそれを了承されたのだ。我々が口を出す余地はあるまい?」
「了解であります」
それ以上は何も言わずに部下は下がり、作戦指揮所へと戻っていった。まだまだ片付ける仕事は多いのだ。
「どんな魔法を使ったのか……とは聞かん」
「ほう?」
「私は軍人だ。結果が総てなのだよ。──この件に関してはそういうことにしたいと私は思っている」
「そうか」
「見たまえ」
そう言って周はナナリーたちの方を指差した。
長い髪の少女がナナリーの手を両の手で握り、何度も、何度も頭を下げている情景がある。
「あの救ってもらった娘にとってはナナリー公女が英雄であるわけだ。四の五の言って、その夢を潰すようなことは野暮ではないか」
ゼロは少し首を傾げた。少し驚いたように周には見えた。
「周香凛、失礼なようだが……君からそういう類の言葉を聞くとは思わなかった」
大して気を悪くした体もなく、周も「私とて木の股から生まれたわけではないからな」と軽口を叩く。
そうして報告書をゼロに押し付けると周は彼に背中を向けた。
「日本政府との細々した突っつきあいは私にまかせてもらおう」
「すまない、助かる」
これからまた忙しくなるのであろう周は歩き始め、10歩歩いたところでその歩を止めた。
「ゼロ、一つ頼みがある」
「私に可能なことであれば?」
少し鼻白んだようながら、周はため息をついて気をとりなおす。そう、ゼロと仕事をするのであればこの程度の言動を一々気にしてなどいられないのだ。
「私からも礼を言っていたと告げてもらいたい。その卿が打った“手”なる人物にな」
「覚えておこう」
それだけ聞いて周は足早に歩き始めた。今日の彼女は遅くまで掛かりきりになることだろう。
そしてゼロもまた歩き始める。
ナナリーと学生達の会談は終わったようであった。
・
「ゼロ……?」
セーラが送っていく学生達の背中を見送っていたわたしの前に影が立つ。
学生たちから解放されるのを待っていたかのように、いつも通りの“彼”がわたしの前に現れた。
「無事でなによりでした。……しかし」
「わかっています」
遮るように言って、わたしは「見てください」と彼の前に両の手を差し出す。
その手はパッと見てわかる程にブルブルと震えていた。
「今頃、今頃になって恐いのが戻ってきて……震えているんです」
「ナナリー公女……」
「わかっています」
もう一度何かを言おうとする“彼”を遮ってわたしは言った。
「もう……叱られちゃいました」
「……怒られた?」
えぇと頷いてわたしは胸元のポケットから“それ”を取り出す。
それは花を模ったキレイな和紙の折り紙だ。
「サクラ……ですか?」
「ええ、サクラを模った折り紙です。気が付いたら手元に置かれていました」
それをわたしは大事に、大事に胸に抱いた。
「いくら覚悟あっての行いでも、無謀なことはダメって……叱られちゃいました」
ゼロは誰に、とは聞かなかった。
わたしも誰から、とは言わなかった。
どちらも分かり過ぎるほど分かってる相手だったから。
「そうか、彼がナナリー公女を叱ったというのなら……わたしから改めて言うようなことはないでしょう」
「フフ……一日に何度も同じことで叱られないで済んでよかったです」
グッと声を詰まらせるゼロ。ちょっと調子に乗ってしまっただろうか?
わたしはもう一度サクラの折り紙を見つめた。
「でも、おかしいんですよ」
少し照れくさいけど、わたしは言うことにした。
「自分の心の赴くままに生きればいいって。この世界に君の主人は君だけなんだからってあの人はそうも言ってくれたんです。おかしいですよね」
「その行為を叱ると言ったのと同じ口で心の赴くままに生きればいい、か。矛盾していますな」
「ホントに」
ゼロはそれっきり何も言わなかった。
でも、わたしにはわかる。ゼロも一緒に笑っているのがわかる。
「このサクラはその約束の証なのでしょうね」
そう言ってわたしはサクラの折り紙にキスをする。
和紙からは微かに良い匂いが香ってくる。これは……なんの匂いなんだろう? 柑橘系の良い匂い。
「違うな。間違っているよ、ナナリー」
ゼロの優しい声がした。
「常にない異常事態ゆえに失念していたのだと思うが……今日は10月25日だ。何の日かわからないかい?」
いきなりの問いかけにわたしは言葉を失った。今日は何の日? 何の日だったろうか……。
少し呆れたように、でも優しく──少しだけ昔のように──ゼロはわたしに言った。
「ハッピーバースデー、ナナリー。きっとそれは彼なりに考えた誕生日プレゼントだったのだろう」
それは余りにも唐突で……わたしは息が止まるほど驚いて……驚いて、
「あ、ありがとうございます!」
酷く、赤面した。
《おわり》 本当なら10/25に投下するのが良かったんでしょうが、待ちきれませんでした(ヲイ
ちなみに西暦ってなってんのは間違いじゃねーのです。
皇暦ってブリタニア帝国の暦じゃないですか。
ルルーシュ戦争が終わってブリタニア帝国の世界支配が終わったら皇暦って使われなくなるんじゃないかなーと思って
西暦にしてみますた
でもEUとか中華じゃ元々使われていそうですよね。鰤とは敵国なわけですし。
そういうわけで今回の投下はしゅーりょーです。
感想もらえたら嬉しいな。
んじゃまたっ 投下乙です!
彼かっこいいですね!それにナナリーも立派になっていて良かったです!
柑橘系の匂いってことは…
ホントに面白かったです! 青さん、投下乙です。
ナナリーを守る彼の優しさが伝わり、よかったです。
ただ背景が掴みにくいのでよくわからないうちに話が終わったように感じました。設定を少し前書き等に書いてほしかったです。 >>144
腐女子の妄想駄文に触るなよ
そっとしておいてやれ いや、さすがにそれは本気で言ってるわけじゃないよね?
煽ってるだけなんだとは思うけど、ちょっと心配になった。
>>141
乙でした。
どういう状況なのかはおおむね分かりましたが、逆に描写中心というか事態の推移が主で、
若干キャラクターを追いかけにくいというのはあると思います。
ロスカラSSじゃないというのは暴論でしょうが、ロスカラらしさは薄めかもとは感じました。
ただ、表に出ずに見守り続ける、というあたりはギアス編の雰囲気っぽくて個人的には好きです。
次の機会をお待ちしております。 自分のHPでやってろと思ったのは俺くらいだったのか
こういうのならいらんわ この人がスレにくるといつも荒れるから嫌なんだ
149の言う通り自分の巣に引っ込んでいてほしい
一度はいなくなってすっきりしたのになんでまた帰ってきたのか理解できない こういう勘違いな作文が投下されるくらいなら何も投下されないほうがいい スレを荒しているのは青さんではなく、執拗に文句を言う連中だろう。
あの人が嫌いなら作品を読まなければいいだけ。投下しなければいいなんてスレに書く必要はない。 別に読まなかったからどうでもいい
文句あるならこの人のホームページだかブログに書いてこればいいだろ
ここに書くな、まとめてウザいわ 伸びてるから来てみれば下らんことで騒ぎおって
自治厨様が大活躍すると投下されにくくなる事がわからないのかな どうも〜♪
少し間が空きましたが続きを投下したいと思います。
●アッシュフォード学園生徒会 ミレイ編 その弐●
ライは目の前のポスターを見て深く溜息をついた。
その様子をルルーシュが苦笑して眺めている。
それに気がつかないまま、再びライの口から溜息が漏れる。
その様子を見てやれやれといった表情を浮かべると、ルルーシュがポンと肩を叩いた。
「こうなるのは予想できただろう?」
その言葉に、ライはまた深い溜息を吐き出すと、ゆっくりとポスターの方に向いていた視線をルルーシュに向けた。
「ああ、わかってはいたんだけどね。それでも実際に目にすると……ねぇ……」
ポンポンと再び肩を軽く叩くルルーシュ。慰めか同意の意味だろう。いや、或いは両方かもしれない。
なぜなら、ルルーシュにとっても他人事ではない。なんせ、ライが来るまでは自分がライの位置にいたのだから。
再びライの視線がポスターに向かう。
そこには、大きくライの写真が載っており、彼が生徒会主催の劇の主演のやることが告知されていたが、それはポスター全
体のほんの三分の一程度で、残りはでかでかと大きな文字か躍っている。
もちろん、劇の相手を投票で決めるという告知だ。
だが、その謳い文句はとてもじゃないがあまりにも飛躍しすぎる想像を駆り立てるに十分なものだったのである。
銀髪美少年のお相手投票決定戦。
あの幻の美少年のお相手は誰?
よく知らない人が読んだらどんなことを想像するだろうか。
下手すると変な週刊誌の記事あたりを想像してもおかしくないなと思ってしまう。
そう考えると、ライの背筋に寒いものが走る。
そうなったら、とてもじゃないが収集がつくとは思えない。
ただ、唯一の救いは、小さくながらも生徒会役員から選んでくださいの文字が小さくながらも書かれていることだろうか。
そして、投票の方法と締め切り、結果発表の日が記入してある。
そこら辺もいたってまともな文面である。 「しばらくの我慢だよ。それに見出しこそあおっている感じはするが、それ以外は問題ないみたいだしな」
「ああ、そうだな。そうなんだよな……」
そのライの言葉に怪訝そうなルルーシュの声が続く。
「どうしたんだ?らしくないじゃないか……」
その問いに、納得できないような表情でライが答えた。
「いや、なんか引っかかってるんだ」
その言葉に今度はルルーシュが納得できないような表情を作る。
「ふむ〜……。確かに……。会長にしてはあっさりしすぎている気がするな」
「だろう?」
「確かにな……」
二人とも腕を組み考え込む。
しかし、考えれば考えるほど恐ろしい考えが浮かんだのだろう。二人は慌てて頭を振った。
「か、考えすぎかもな……」
「そ、そうだな。そのとおりだ」
二人は共に顔を合わせると苦笑いを浮かべた。
まさかな……。
しかし、この時、ライとルルーシュは検討すべきだったのかもしれない。
もちろん、あらゆる可能性を……。
だが、今の彼らにはそこまで考えることを放棄した。
いくらミレイさんでもそこまではしないだろう。
そんな楽観的思考を彼らは後で後悔することになる。
そして、その後悔は一週間後に現実になった。
「なんだ、これはっ……!?」
「うそだろ……、これは……」
結果発表されたポスターを見て僕とルルーシュは愕然とした。
そこには、投票結果がでかでかと書いてある。
いや、別にそれは驚く事ではない。
最初からわかっていたことだ。
問題は別にある。
結果の内容が問題なのである。
そこにはでかでかとこう書かれていた。
銀髪美少年の相手方決まる!!
お相手(お姫様役)には、生徒会副会長 ルルーシュ・ランペルージュ!!
美少年二人による素晴らしき競演にみんな期待せよ!!
僕ら二人が唖然として(放心して)その場に立ち尽くしていると、何とか笑いを堪え様としているものの、まったく堪えきれ
ていない様子でリヴァルが声をかけてきた。
「いやぁ、おめでとう……、二人ともっ……」
実に楽しそうである。
その様子があまりにもムカついたので思わず睨みつける。もちろん、ルルーシュもである。
「お、おおっと……、そう睨まないでくれよぉ、二人とも」
「睨まれたくなかったら黙ってろ、リヴァル」
ルルーシュの棘のある言葉に僕も頷く。
その言葉にリヴァルは苦笑しながらわかったとジェスチャーする。
確かに自分に火の粉がかからなければ、実に楽しい状況だという事は僕でもわかる。
だからリヴァルを責める筋合いはないのだが、愚痴のひとつも言いたくなるのが人情なのである。
なんかそれを考えれば、自分自身、最初のころの無表情に比べるとなんか感情の動きが出るようになったなぁと思ってしま
う。
もっとも、今はそれを素直に喜べない状況なのだが……。
「しかし、やっぱ、会長の予想通りになったか……」
そんなことをぼんやりと思っていた僕の耳にリヴァルの聞き捨てならない言葉が入ってくる。
それはルルーシュにもそう聞こえたのだろう。
二人同時にリヴァルに詰め寄った。
「「どういうことだっ」」
その迫力に押されたのだろう。
さっきまで浮かんでいた苦笑はかき消すように消え、一歩後ずさりした後に驚きと戸惑いが顔に浮かぶ。
「な、何がだよ……」
「「だから、会長の予想通りってどういうことだ」」
呼吸を合わせたわけでも、タイミングを見ていったわけでもないのに、きちんとシンクロしてしまうあたり、多分、僕とル
ルーシュのタイミングや思考パターンは似ているのだろう。
「あ……。そのことか……」
理由がわかり、ほっとした表情を見せるリヴァル。
つまり、その態度からこの件に関してはリヴァルが大きく関わっていないという事がわかる。
という事は……。
「いやぁさぁ、会長が残念そうな声で言ってたのを聞いたからな」
そう言いながらリヴァルは僕らに説明しだした。
「うちの生徒会の女子ってさ、それぞれ熱心なファンが結構いるだろ。そういうファンからしたら美少年のお相手なんてさ
せたくないじゃん。やっぱさ……」
その言葉に、僕とルルーシュは頷く。
確かに気になる子が劇とはいえ別の男との恋愛シーンなんて見たくないだろう。
僕だって、嫉妬ぐらいするかもしれない。
「それは女の子にも当てはまるわけよ。どうのこうの言いながら、ライの隠れファン結構いるって話しだしなぁ」
「しかしだ。それらがどうして俺の票につながるんだ?」
確かにその通りである。
生徒会の女生徒に票があまり集まらないのは納得できる。しかし、それがどうして圧倒的なルルーシュへの投票になるのか
。それがまだ納得できない。
そんな僕とルルーシュの態度に、リヴァルはため息を吐いて哀れそうに僕らを見た。
その目には同情というより、なんでこんな連中がという哀れみに近い色が見える。 「ほんと、わかんないのかねぇ……」
「「わからん」」
「つまりだ。男性にしてみれば気になる女の子を選ぶわけがなく、ましてや、女の子にモテモテの様子なんて見たくない。
女性にしても気になる男子が他の女の子とイチャイチャするのは嫌だ。つまり、それで選択肢の中で女子は消え去った」
ふむふむ。
思わず、僕とルルーシュは頷く。
言われてみれば納得できる。
「でだ、残ったのは男子だが、ここで問題は知名度ってことになる」
その瞬間、ルルーシュが頭を抱えた。
何か思いつくことがあるらしい。
「そういうことかっ」
思わず口走るルルーシュに、よくわからない僕。
だからだろうか。
リヴァルはニタリと笑いながら言葉を続けた。
「ルルーシュはわかったみたいだね」
「もう、言わなくていい……」
その会話だけではわからない僕は聞き返す。
「どういうことだ?」
ちらりとルルーシュを見た後、リヴァルは口をひらいた。
その表情には優越感と満足感に満たされている。
「いやねぇ、以前、男女逆転祭りがあってね……」
「言うなっ!!}
ルルーシュがリヴァルに睨みつける様な視線を向ける。
その視線の鋭さに思わず開きかけたリヴァルの口が止まったが、もうそれ以上の言葉は要らなかった。
「わかったよ……。そういうことか……」
そう呟いた後、自然とため息が漏れる。
「くそっ。不覚だった……」
ルルーシュの口から言葉がこぼれる。
僕も頭を抱え、唸る。
その様子をみて、リヴァルが呟いた。
「しかしさ、本当に二人とも頭はいいのに、こういうことに関してはまったく駄目だなぁ……。考えたら思いつきそうなこ
となのにさ。多分、二人以外は思いついたと思うぜ、こういう予想は……」
無慈悲なその言葉に、ぷちんと何かが切れた。
うつむいていた視線を上げると同じように視線を上げたルルーシュと目が合う。
こくり。
頷きあうと拳に力を入れた。
どかっ!!
その後に続くのは何かを殴りつける音が二つ。
そして、リヴァルの悲鳴だった。
しかし、劇どうしよう……。
まさか、本当に……。
思わずルルーシュの方を見る。
なぜかルルーシュもこっちの方を見ていた。
目と目が合う。
そして……、目を伏せるルルーシュ。
なぜか頬が赤い……。
なんで頬が紅いんだよっと心の中で突っ込みつつも僕も追わず目を背けた。
勘弁してくれよぉ……。
つづく
以上です。
楽しんでいただければ幸いです。
では、また〜♪ 最初に
>>160 ランペルージュじゃないよ、ランペルージだよ
つづきに期待します。乙 投下、乙です。
この2人もミレイの前では形無しですね。『Re:コードギアス』の方も楽しみにしています。 ただいま小説を書こうとしている者です。
ルートではEUの方で書こうと思っているのですが
EUの設定が曖昧なので書こうにも書けない状態です。
そこで質問なのですが、EUの設定を完全オリジナルでいいでしょうか?
>>167
汝の欲するがままに為すがよい。
書きたいように書けばいいと思いますよ。 >>167
EUって本編でもあまり描写されてないし、いいんじゃない?
そういやバミデスだっけ?アレしか描写されてないような気が・・・ 完全オリジナルの方向でいきたいと思います。
ありがとうございました。
キャラまで完全オリジナルだと少し前あったみたいに文句言う人がでるかもしれないぞ 別に文句言われてもいいんじゃね
読みたい人間は読むだろうし読みたくない人間は読まないだろう
大体2ちゃんの掲示板に書き込む以上叩かれるくらいは覚悟してるだろ普通 あのさ…コードギアスの創作スレとは違うよ?そこは注意なんで
オリ主とかあんまり違う話やるとスレチだよ ライ自体がオリ主なのにさらにオリ主増やすとか意味分からん
オリジナルキャラ作りたいならライで事足りるだろ >>178
前にオリ主で書いてここに投下した奴がいたんだよ 違う。正真正銘オリキャラ
ライと一緒に封印されてたとか一緒に逃げ出したとか
なんか夢小説みたいなやつ ライさんほど使い勝手の良い主人公はそういないだろうに… まあ使い勝手悪いオリキャラとかオリキャラとして出す意味ないからな >>182
夢小説? クローンの話じゃなさそうだし、さっぱりわからん EUに所属するオリキャラを作るとかもだめかな?原作キャラの所属を改変するとかのほうがいい? ていうかなんでそこまで改変したいのか分からん
そういうのはテクニック?がないとかなり難しいよ
ここスレで言うのも変だが、R2の時中華連邦のキャラは出て
EUはキャラは出ていない。
それって新作アニメ『亡国のアキト(仮)』の為なのか?って最近
思っているのは俺だけでしょうか?
1. 初恋ばれんたいん スペシャル
2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. ONE 〜輝く季節へ〜 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司のSS
茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司を主人公にして、
中学生時代の里村茜、柚木詩子、南条先生を攻略する OR 城島司ルート、城島司 帰還END(茜以外の
他のヒロインEND後なら大丈夫なのに。)
5. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
6. ファーランド サーガ1、ファーランド サーガ2
ファーランド シリーズ 歴代最高名作 RPG
7. MinDeaD BlooD 〜支配者の為の狂死曲〜
8. Phantom of Inferno
END.11 終わりなき悪夢(帰国end)後 玲二×美緒
9. 銀色-完全版-、朱
『銀色』『朱』に連なる 現代を 背景で 輪廻転生した久世がが通ってる学園に
ラッテが転校生,石切が先生である 石切×久世
SS予定は無いのでしょうか? めだ○ボックスに出てきた新キャラがライにそっくりだったよ >>196
そう思ったのは俺だけじゃなかったんだね。
髪形だけだと思うけどw 一般的なライのイメージってああいうキモい変態仮面だったのか
俺の印象とは随分違うんだな