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289コメント285KB
【ひぐらし】こちらスネーク 雛見沢村に潜入した6
0001創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/10/03(日) 23:39:52ID:x5k6r0Vu
■MGSのスネークが雛見沢に来たら……という二次創作(ネタ)スレだ。
単発TIPS・短編・長編構わず投稿してくれ。

※同人ゲーム板より移転致しました。

テンプレは>>2-4

■過去ログ■
(初代〜4スレ目は同人ゲーム板です)
こちらスネーク 雛見沢村に潜入した
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1144941095/
こちらスネーク 雛見沢村に潜入した2
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1175824936/
こちらスネーク雛見沢に潜入した3
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1194857842/
【ひぐらし】こちらスネーク雛見沢村に潜入した4
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1210075518/l50



■まとめwiki■
ttp://www29.atwiki.jp/sne_hina

■したらば■
※ネタバレ注意!
こちらスネーク、雛見沢に潜入した職人様用掲示板
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/10902/
(職人様用掲示板とありますが、ネタバレおkな人は職人じゃなくても大丈夫です)


【本編ストーリーについて】
※本編はキャラ予約制のリレー方式なので、誰でも好きなように続きを書けます。

※続きを書きたい職人さんは「○○と○○予約します(○=キャラ名)」と宣言して下さい。

※登場が未定、または回想シーンのみなどのキャラには( )をつけて下さい。
例:スネーク、梨花、(羽入)予約します」

※( )付きのキャラ以外、予約を重複させないで下さい。
例:A「スネーク+部活メンバー予約します」
  B「スネーク、オセロット、忍者予約します」 と予約が重なった場合は、早い者順となりAの方の予約が優先されます。

※他の職人の展開によって予約して執筆していた分が使えなくなった場合、「予約を破棄します」と宣言して下さい。

※本編職人が、予約した日から、二週間以上も続きを更新しない場合、あるいは予約解除の宣言がない場合、
自動的に予約が解除されます。 その場合、再び募集となります。

※本編職人さんは必ずトリップを付けて下さい。第三者による脱退宣言の成り済ましを防ぐ為です。

0035本編 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2010/11/07(日) 23:35:21ID:7vJZm9c5
 私と羽入ちゃん、そしてジョニーさんと、山狗や兵士の人達からなるチーム、“みんみんぜみ”。
 部活メンバーは少ないけど、戦える人は多いし、……それに、羽入ちゃんと一緒になれた。
 羽入ちゃんとスネーク先生は、お祭りの時しか喋っていないはずだけど、羽入ちゃんはこうして私たちと一緒に来てくれている。
 それは、羽入ちゃんもスネーク先生もみんなも、“仲間”だから、だと思う。
 ……これは、とっても嬉しいこと。私たちには、こんなにもたくさんの仲間がいるんだから。
 仲間が力を合わせれば、たとえこんな場所でも、怖いものはない。

「……でも、スネーク先生見つからないねー」
「そうなのです。……こっちに人が来た形跡が無いのです。あぅ」

 先生は絶対にここに来ているし、さっき、先生が来ていたらしき証拠もあった。
 けど、入れ違っているのか、スネーク先生がどんどん先に進んでいるのか、中々会えない。
 ……それは、寂しいことだった。

「こちらみんみんぜみ。どうした、リーダー?」

 ジョニーさんが通信を傍受し、無線機に向かって話し始める。
 「リーダー」って言ってたから、魅ぃちゃんと連絡をとってるみたいだ。

「…………、…………それは本当か!? ……なら良かった!」
 彼の声のトーンがあがる。何かいい報告があったらしい。
「こちらは異常なし。有益な情報は手に入れてないが、負傷者もいない。…………分かった。後で合流しよう」

 通信を終えて、こちらを振り返った。
 何の話をしていたのか、私は早速尋ねることにした。

「何があったんですか?」
「スネークと連絡が取れたらしい」
「「本当(なの)ですか!?」」

 私と羽入ちゃんの声が被さる。
 さっき、魅ぃちゃんが敵の通信機器をいじっていたら、スネーク先生と無線が通じた、らしい。
 敵が使ってるものから何でスネーク先生に通じるんだろう、とは思ったけど、魅ぃちゃんは先生と合流の約束もしたみたいだった。

「もう少し下に降りると、研究区の中層に出る。そこには大きめの広間があるんだ。そこでスネークと合流するらしい」
「それじゃあ、私たちの目的地は、決まったね」
「下へ向けてれっつごー! なのです!」
「早速向かうとするか。……と言っても、この辺からは下に降りられないな。一旦来た道を引き返そう」

 ジョニーさんがそう言って、みんなが頷いた。
 二度手間になっちゃったけど、仕方が無い。引き返すと言っても、私たちは確実に前に進んでいる。
 ――やっとスネーク先生に会える。
 そう思っていると、羽入ちゃんが話しかけてきた。

「レナ、なんだか嬉しそうなのです」
「あれほどみんなで探していたスネーク先生に、ようやく会えるからね。レナたちと先生が力を合わせれば無敵だよ」
 羽入ちゃんは微笑んだ。
「……それに、ね。ここでこんなこと言うのは変かもしれないけど、羽入ちゃんと一緒にいれて、嬉しいって思ってる」
「……僕と? あぅあぅ、どうしてなのですか?」
 少し困惑した様子で、尋ねてきた。

「んー……、レナの勘違いかもしれないけど、…………羽入ちゃん、ずっと前から一緒だったような気がしたんだ。
お祭りの時、初対面って感じがしなかったもの。だから、『やっと一緒に遊べるんだ』って思って……」

 言葉にしてみて、少し変だな、って自分で思った。
 羽入ちゃんは梨花ちゃんの遠い親戚で、今までは遠くに暮らしていたはず。
 雛見沢に遊びに来ていたのかもしれないけど、……そうじゃなくて、……もっともっと前から、私たちのことを、少し離れたところから見ていたような気がした。
 ……でも、何だか変だよね。私は首を振って、自分の言葉を否定した。
0036本編 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2010/11/07(日) 23:36:02ID:7vJZm9c5


「あまり気にしないで。どうしてこう思ったのか……、自分でもよく分からないの。……あはは、ちょっとおかしいよね」
「……そんな事はないのです。……レナ、ありがとうなのです」
「……?? お礼を言われることなのかな、かな」
 なぜだかお礼を言われて、ちょっと戸惑った。

「確かに僕は、綿流しのお祭りの時に、レナや魅音、圭一、沙都子、詩音、……そしてスネークと、『初めて』会いました。
でも、……ずっと、…………ずっとずっと前から、僕も、みんなと一緒に遊びたかったのです。レナはきっと、そんな僕の気持ちに気づいてくれたのです。
だから、初めて会ったような気がしなかったのだと思いますよ。……僕だって同じなのです。みんなとは昔からの友達だったような気がしています」

 どこか遠い所を見つめながら、感慨深いように喋る。

「……みんなが僕を受け入れてくれて、とても感謝しています。さっきだって、弱音を吐いたのに、みんなは突き放したりせず励ましてくれました。
僕も、レナ達と一緒にいれて嬉しいのです。……ありがとう、レナ」

 羽入ちゃんがまた、にっこりと微笑んだ。
「どういたしまして、なんだよ。……私たちは仲間なんだから、羽入ちゃんが傷つくようなことはしないよ。
私たちにとっては、当たり前のことなんだから。そんなに遠慮しないでね」
「ぁぅぁぅ、ありがとうなのです」
 ちょうどその時、付近の偵察に行っていた人達が戻ってきた。
 さっき通ってきた道だから、この辺りには敵はいないらしい。
 ……なら、進もう。

「じゃあ、行こうか」
「はい、なのです!」

 決意を新たに、“仲間”たちと共に、一歩前へ踏み出した。
0037本編 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2010/11/07(日) 23:38:11ID:7vJZm9c5
以上です。
>>32
指摘どうもです。誤字脱字は遠慮せずにどんどん言って下さると助かります。

>>34
そんなこと言われると、おじさんはりきっちゃうよ?
……しかしオリスクは最近あまり進められてないです。
とりあえず、ある程度の所まで本編をとにかく進めます。ノシ
0038メサルギア
垢版 |
2010/11/08(月) 03:55:47ID:HOAaiORz
お久しぶりです、メサルギアです、新しくスレ発見したので続き書きます
朝になり俺は梨花に言われたとおりに入江に話した
「そうですが、学校の先生でしたか」
「ああ、昨日は少し混乱してた」
「しかし体もたいしたもんですねあれだけの怪我も完治してるようですから退院してもいいでしょう」
「ああ、ありがとう先生」俺は診療所を出て真っ先に梨花の家に向かうと家の前に20代後半の男が立っていた
「ん?」彼は梨花の家に用があるのだろうか、うろうろしていた
「おい!」俺は声かけるやいなや構え俺に向かってきた
(山犬部隊か)俺も構え、彼の攻撃が来る
「お前は誰だ?東京の一員か?」彼が攻撃しながら俺に問う
「違う」彼の攻撃をいなし、CQCで彼を飛ばすが彼もきれいに着地し、俺に向かってきた
「次の質問だ、お前は何故攻撃してこない」
「俺はお前と戦うつもりで着たんじゃない」
「そうよ赤坂、朝から喧嘩とは穏やかじゃないわ」玄関から梨花が眠い顔をしていた
「梨花こいつは?」
「おはようスネ、デイビット先生、この人は私たちの味方よ」
「先生?その割には動きが素人じゃない」
「先生としての当然のスキルだ」
「・・・まるで歴戦の兵士」
「君の体術もな」
「二人とも余計な詮索はしないで、それにこれ以上やると私も怒るわよ」
赤坂も彼女の言葉を聞いて構えを説いた
「じゃあ、朝御飯にしましょう」
「梨花誰ですの?」玄関から2人の少女がでてきた
「すまない、起こしたようだね?」
「またあなたですの赤坂?」金髪の少女はあきれた顔であくびをした
「梨花、もう一人の外人さんは誰なのですか?」もう一人の少女はおそらく羽入だろう、未来での面影がある
「紹介するのです、新しい先生なのですよ」相変わらずの早変わりだ、スパイになれるな
「デイビットだ」
「外人の先生なんて初めてなので、朝御飯に呼んだのですよ」
「今ちょうどできたところなのです」
「じゃあ、みんなで食べるのです」これが日本の朝食か、食べるのは良いが・・・これがうわさに聞く箸か
「どうしたのですかスネ、デイビット先生」
「おおかた箸の使い方が分からんのだろう」
「赤坂そんな喧嘩腰で話したらだめなのです」
「すまない」
「デイビット先生、フォークどうぞですわ」
「すまない」俺はうわさに聞く味噌スープから飲んでみた
「デイビット先生のお口に合いますかしら?」
「・・・旨すぎる!!」
続く
TIPS帰ってきた雷電@
「ジャック聞こえる?」俺は次世代強化骨格の為に実験室にいた
「ああ、聞こえるよローズ」
「では始めるわよ、まずベルトにそこに置いてあるゼクターを腰につけて」
「これか」カブトムシのような物を着けた
『マスクドフォーム』
「うお!」全身に鎧のような物が体に装着された
「これが新しい強化骨格か」
「いいえ、ジャックこれには新しい機能があるの、一度角の上げて」
『キャストオフ!!』全身の鎧が無くなり体が自由になった
『チェンジビートル!!』
「これが次世代強化骨格か」
「では実験スタート」
「まだあるのか?」
「もちろん、これから本番よ、腰のボタンを押して」
『クロックアップ』
「うお!」世界が遅く感じる、否、俺が早くなっているのか
「実験は成功のようね」
「これが俺の新しい力か」
0040本編 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2010/11/14(日) 22:54:38ID:PcFNsy+k
連絡がぎりぎりになってしまいましたが、投下が遅れます。申し訳ありません。
0044本編@規制中
垢版 |
2010/12/01(水) 21:08:29ID:CICSqhwI
ただ今長期規制中なので、代理の人にレスを頼んでいます。
したらばにTIPSを投下させて頂きました。
どなたか手が空いていらっしゃったら代理投下お願いします。
また、今後しばらくはしたらばに投下することになると思いますので、ご了承下さい。
0046創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/12/19(日) 13:42:31ID:xaTTkWvY
したらばから本編の代理投下

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TIPS:「終末に向けて」

 星が瞬き、満月が辺りを照らしている夜中。一台の車が、路肩に止まっていた。
 車内には女がおり、彼女は車載電話の受話器を手にし、どこかに電話をしていた。

「野村です。…………ええ、そちらの状況は知っていますよ。……ふふふ、ですから念の為にもう一つ、作戦を考えたんじゃありませんの。
施設に踏み込まれるなんて予想外でしたけど、……所詮は地下でのこと。地上では誰も、この事態に気づいていませんわ。
…………ふふふふ、その通り、逆もそうですわね。地下からは、地上の様子は分かりません。施設の連絡網はこちらの手中にありますわよね。
なら、この事を知っているのは我々だけになります。たとえ知ろうとしても、我々が制御している限り知る事はできないでしょう。
…………ええ。確かに彼女なら通信出来るでしょうが、妨害しなくても構いません。そのうち私に泣きついてくるでしょうね。
どう足掻こうとしても、たった一人では何も出来ませんわ。だから力ある者に頼ろうとし、部下をこき使おうとする。……ふふ、全てが無駄ですけどね。
……その後は、作戦通りにお願いします。必ず捕まえて下さいね。
…………、――ええ、勿論です。それではよろしくお願いします。また連絡します」


 女は受話器を置き、一呼吸をするとまた別の所へと電話を掛けた。


「渡辺です。…………はい。こちらは順調です。多少予定が狂いましたが、結果的には問題はありません。
現地作戦は間もなく決行いたします。…………はい。筋書き通りに行う予定です。彼らの協力のおかげで、警察を押さえ込むだけの武力もあります。
勿論作戦終了後には、奥野・千葉派、旧小泉派らは発言力を大きく失うでしょう。あとは我々の時代です。
…………ご心配無く。アルファベットプロジェクトの抜本的見直しも行われ、くだらないことに使われていたカネは中国へ回すことになります。
……仰る通りですわね。確かに彼らは強大な力を持っていますが、米国を牛耳っている輩と協力するよりは、中国と手を組んだ方が遙かに良いでしょうね。
これからは中国の権益も増していき、益々中国との協力が必要とされるでしょう。
先の長い話ですが――、我々の目的を達成するためには、不本意ですが彼らの協力も必要です。
その為の第一歩じゃありませんの。…………ええ、ですから今直ぐに――」


 女はそこで言葉を切って、口元に笑みを浮かべてから、告げた。


「――滅菌作戦を、実行します。」
0048元本編 ◆k7GDmgD5wQ
垢版 |
2010/12/23(木) 22:49:20ID:/M5O07OA
――居住区の、地図上ではほぼ中央に位置する、巨大エレベーター。主に物資の運搬、人員の移動に利用され、この施設が建造されてから1秒たりとも稼動が絶えたことがない。
そのエレベーターには、この重厚な鉄扉に似つかわしくない、少年と少女が立っていた。
「……ここか」
圭一が呟く。
「なんとか、到着しましたわね」
沙都子が、一息つくように、言う。
「ああ。このエレベーターで移動すれば、スネークのとこまですぐだぜ」
にか、と笑って圭一は希望を口にする。
「ドアが開いたら蜂の巣……なんてことにならないといいのですけど」
沙都子が当然のように起こりうる、待ち伏せの危険を口にする。
「わかってるって……だからこうしてエレベーターの中が見えるところから確認しようってんだろ」
エレベーターの前の通路には、遮蔽物となるようなものはなく、誰であっても、敵がいれば的になることは目に見えていた。

そこを、圭一と沙都子――大人より体躯の小さい子供達が、他の仲間達の目となり、危険を確認しようと志願したのだった。
当然、大人達は反対した。特に入江は二人の無謀ともいえる案に強く首を横に振った。
しかし、二人は入江に対して、笑顔で答えた。
「大丈夫だって監督。俺達は死にに行くわけじゃない。スネークに会いに行くんだ」
「で、でも、なにも二人がそんな危険な目に遭わなくても」
「監督、ここにいる以上、危険なんてどこにでもありますわ。それに、エレベーターの中がどうなっているかだけ確認するだけですもの。……ちょっとは怖

いですけど、大丈夫ですわ」
「でも……」
入江の表情は悲観的なものだったが。
「入江先生……彼らを信じてみましょう」
仲間になった兵士の一人が、圭一達の意見を押す。
「万が一のことがあっても、この子達は俺達が守りますよ」
別な兵士が、その言葉に同意する。
「あ、貴方達……」
入江の吃驚したような顔に、圭一と沙都子が、くす、と笑った。
「入江先生。私も圭一君と、沙都子ちゃんを信じてみます」
赤坂が言うと、そこで、ようやく入江も納得したように、頷いた。
0049元本編 ◆k7GDmgD5wQ
垢版 |
2010/12/23(木) 22:51:32ID:/M5O07OA
「これを渡しておくぞ」
兵士の一人が、沙都子に双眼鏡のような機械を渡した。
「これは?」
「ソナー探知機の一種だ。動くものがあれば反応する」
「中に誰かいれば、分かるというわけですわね」
「ああ、だが気をつけろ。機械は決して万能じゃない」
「まさか、見えないやつが乗ってるわけじゃあるまいし」
圭一のふざけたような言葉に、微かに、入江が眉をひそめた。
「……見えない、敵……?」
「じゃあ行ってくるぜ! 監督! 赤坂さん!」
圭一が元気よく走り出す。
その後を、沙都子と二人の兵士が追う。

入江がこのとき、“あの老人”のことを思い出していれば、……きっと、この後の結果は、違っていたのかも、しれない。

エレベーターのスイッチを、圭一が押す。
沙都子は、ソナー探知機の画面を見つめる。
兵士達は、少し離れた位置――しかし、万が一の時は、二人を庇える位置に伏せ、銃口をエレベーターの中に向ける。
「……沙都子、探知機はどうだ?」
「エレベーターが動いているから、その反応だけですわ」
「く〜、緊張すんなぁ」
「反応がどんどん大きくなってる……エレベーターが近づいてきてるのですわ」
「長げーなー。どんだけ遠いんだよ」
「相当広い施設のようですから……深さも相当ですわね」
やがて、エレベーターが上がってくる機械音は、圭一の耳にも聞こえ始め。
沙都子は緊張と不安を紛らわせるように、圭一の手を握った。
そして、低く鈍重な音を響かせながら、エレベーターは停止し、その奇怪な化け物を連想させるように、口を開いた。

……エレベーターの中は、がらんの、空洞そのものだった。
0050元本編 ◆k7GDmgD5wQ
垢版 |
2010/12/23(木) 22:53:44ID:/M5O07OA
ちょうちょい投下2回目……遅すぎるわ。
しかもまだ続きあるし。

いやー凡ミスでパソ壊しちゃって、復旧手間取っちゃたんです。本編氏、ごめんなさい。
次回ももう少し早く上げたいです。努力します。
0053オリスク制作委員会 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2011/01/10(月) 19:34:51ID:ahoebUX5
遅くなりましたがあけましておめでとうございます。
オリスクを更新致しました。「スネークキャプチャー作戦」まで収録しています。
ttp://www.rupan.net/uploader/download/1294655485.zip
pass:sunehina
よろしかったらダウンロードして下さいませ。
0055オリスク制作委員会 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2011/01/11(火) 21:47:55ID:V/a5je+Z
>>54
すみません、こっちのミスみたいです。
別のあぷろだに上げ直しました↓
ttp://www1.axfc.net/uploader/Ne/so/99414
pass:sunehina
こちらからどうぞ。
0057創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/01/16(日) 12:48:37ID:tocCpjKx
>>55
ちょっと質問。
もしかしてまたジャンプモード上手く組めてない?

前にうpしたバージョンで組み方怪しかったけど
(シナリオが複数になる場合にジャンプモードで使うサンプルが勘違いして間違ってる)
システム組んだ時に渡したキャプ画像を見返せば分かるだろうと
場当たり的な対処で様子見したんだけど
0058元本編 ◆k7GDmgD5wQ
垢版 |
2011/01/17(月) 00:03:04ID:6R/qGMsr
「……あ、あれ?」
 あまりにも拍子抜けに、がらんとした空間を見た圭一が、気落ちした声を漏らした。
「エレベーターの中には……誰もいませんでしたわね」
 沙都子も、ほっとしたように言う。
「なんだよ、緊張して損したぜ」
 脱力した圭一が、がくっと肩を落とし、残念そうに言った。
「待ってくださいませ圭一さん。人がいないといって、何もトラップが仕掛けられていないとは限りませんわ」
 そう言うと、沙都子はエレベーターの中を凝視する。どんなに細い糸でも見落とすまいと、トラップを熟知した沙都子がエレーベーターの中を見通した。
「……ど、どうだ沙都子?」
 圭一が尋ねると、エレーベーターの中をチェックした沙都子が、ふぅ、と息を漏らした。
「ワイヤーや釣り糸などはありませんし、連動した爆発物やブービートラップの類もありませんわ。……ま、要するに何もないってことですわね」
「そ……そっか。なーんだ。心配して損したぜ!」
 にやっと笑った圭一が、元気を取り戻す。
「何もないってんならさっさと入って移動しようぜ! おーい! みん――」
 後ろを振り向いて全員に呼びかけようと圭一が手を上げた。
 その時だった。
 沙都子と――、圭一の体が、浮いた。いや、それは大きな、うねり。そして、振動。
 フロアの壁が軋んで、今にも崩れそうな――それほどの、地響きだった。
「なっ?!」
 圭一がよろめく。
 沙都子も、尻餅をついて倒れた。
 おそらくは――震度5以上の直下型地震を思わせるその地響き――は、暫くの間続き……そして、ようやく止まった。
「い、いつつ……」
 圭一がよろめいてついた膝をさすりながら立ち上がった。
「なんだよ、こんな時に地震なんて……エレーベーター動くかな?」
 そう、ぶつくさ零しながら、エレベーターに近づこうとした。
 その圭一の襟元を、不意に、誰かが掴む。倒すように引っ張られ、圭一も尻を強く打った。
 沙都子が圭一を乱暴に、物陰に引きずりこんだのだ。
「な、なにすんだ沙都子……」
 圭一が自分の尻をさすりながら、沙都子を見る。
 沙都子は、片手を高く上げ、指を奇妙な形に曲げる。それを見て、圭一もようやく理解した。
 ここに来る前に、皆で決めた簡単なサイン。
“敵がいる”
 そのサインは、それを意味していた。
 すぐさま離れていた兵士達が、遮蔽物に隠れ、臨戦態勢をとる。
「……今、見えましたの」
「え……見えたって、何が?」
 沙都子が呟くように言った言葉を、圭一は反復した。
「地震……起きましたわよね」
「あ、……ああ」
「あのとき、私はよろめいて倒れて、そのとき、エレベーターの中を見たんですの」
「ん? エレベーターって……」
 あの、誰もいないエレーベーターに、何が。
「埃が舞って……見えましたの。ぼんやりと、人影が、5つ……」
「人影……? 人影って、じゃ、じゃあ、あの中には、人がいるってのか?! 5人も?!」
「気付くのが遅すぎる!」
 誰もいなかったはずのエレベーターから、突如怒声が聞こえた。
「圭一! 沙都子! 逃げろ!」
 すぐさま、離れていた兵士達が駆け寄り、エレベーターの中に向かって発砲する。
「いや、全員死ね!」
 見えない敵達の、悪意と殺意が、銃声と共にばら撒かれる。
「圭一さん! 逃げますわよ!」
「……あ、あ、ああ!」
 見えない、敵。それが、回避不能の最大のトラップだった。
 まるで土の中に巣を作る蜘蛛の真上にいる虫のように、愕然とした気分で、圭一はそこから逃げようと懸命に足を動かす。

 逃げ場のないような、絶望的な逃走劇――、そんな映画があったようなことを、圭一は恐怖と共に思い出していた。
0059元本編 ◆k7GDmgD5wQ
垢版 |
2011/01/17(月) 00:05:37ID:6R/qGMsr
新年とっくに明けまして投下しました。

……遅い。

しかもまだ終わらなくて本編氏にタッチ交代できない。

なんてこったい。
0061オリスク制作委員会 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2011/01/18(火) 23:47:59ID:S3NKyN3N
元本編氏、乙ですー
今のうちに書きためておくので、大丈夫ですよ。

>>57
……仰る通りです、はい。
オリスクに触ったのが久しぶりだから忘れてた、って言うのもあります。
あの画像をどうやら誤解しているみたいなので、もう一度サンプル下さると助かります。
0062創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/01/21(金) 23:14:27ID:Z6zEDuxo
>>61
えーっと、遅レスでスマンです

申し訳ないですが既にサンプルとか無いです
改めて作れないことも無いですが手に余裕がないので
直に取り掛かれません
なので今後の展開を考えるならselect命令に戻すとか
自分で理解できる構造に組み直したほうが早いかもしれません
0063元本編 ◆k7GDmgD5wQ
垢版 |
2011/01/24(月) 23:33:40ID:4rwSNv0f
 100メートル走の記録に、これほど不満を持ったことは無いと、圭一は思った。
 走っても走っても、その先にゴールなんて見えない。――しかし、止まったら、命を奪われる。
 顔も、姿も見えない――だが確実にそこにある、殺意に。
「あうっ!」
 沙都子が悲鳴を上げる。敵の放った銃弾が、沙都子の持っていた探知機を弾き飛ばした。
「さ、沙都子?!」
 圭一が沙都子の手を見た。傷は――無い。
「だ、大丈夫ですわ! それよりも今は!」
 ――そうだ。
 逃げなければ。
「逃げろ!」
 沙都子を案じた圭一を庇うように、兵士が前に立つ。見えない敵に向かって闇雲に銃弾を浴びせる。――が。
 銃声が聞こえた。
 いや、それは自分たちの頭の上で、耳騒しく、ばん、ばんと言っている――音ではなかった。
 もっと自分の頭の近く――その、すぐ、そばで、何か柔らかなものが、刺されて、穿たれたような。
 ぐっ――。
 そう、人の呻き声を聞いた。
 圭一が見上げる。彼らを守るべく盾になった兵士の両足が、真っ赤に染まっている。
 そのまま、彼は倒れた。
 錆臭い匂いを間近に嗅いで、圭一は自分が呼吸が上手く出来ていないことに、気付く。
 呼吸だけじゃない。
 心臓の鼓動もおかしい。
 血液が逆流している気がする。
 瞳孔も変だ。前がよく見えない。
 ――おかしい。
 変だ。
 なんだよ、これ。
 ――嫌だ。酷く、嫌だ。
 死ぬのは――――――嫌だ。
「圭一さん!」
 はっと、圭一は我に返る。沙都子が圭一の手を無理やり引っ張って、前に連れて行こうとしている。
「さ、沙都子?」
「しっかりしてくださいませ圭一さん! 今、私達にできることはなんですの!? 考えてくださいませ!」
 できること。――それは、逃げることだ。
 生き延びることだ。
 それだけしか、できない。
 しかし。
 撃鉄の、上がる音がした。
 圭一達のすぐ、傍で。
 見えない誰かが。圭一達に向けて。
 でも見えなくとも、その悪意は。
 確かに――嗤っていたのだと、圭一は感じた。
「がああっ!」
 不意に、両足を撃たれた兵士が、銃を乱射する。圭一も感じた悪意の方向へ向けて、圭一と沙都子を守るため、動かない足とおびただしい出血を意に介さず、兵士は持てる力全てを両腕に込め、銃を撃った。
「逃げろぉ! お前たちぃーー!」
 銃を撃ちながら、なおも少年達を逃がそうと、もがく。
「け、圭一さん!」
 沙都子が、叫ぶ。
「あ、ああ! 逃げるぞ沙都子!」
 なりふり構わず、少年たちは逃げる。自分の首に触れかかった死神の鎌から逃れるべく。
 そうして、また走り出した少年達の背後で、銃声が、止んだ。
 血まみれの兵士が、両腕を撃ち抜かれ、今度こそ命の糸が切れたように、崩れ落ちる。
 だが、圭一達は、幸か、不幸か――その光景を見ることは無かった。
 駆け寄った赤坂が、二人の腕を掴み、そのまま血まみれの通路から二人を引き離す。
 そのまま、どう走ったのか――、二人が心臓の鼓動が張り裂けそうになってしゃがんだころには。
 居住区の一室で、見えない敵に背中が震々と震えっぱなしで。
「おいガキども! 取引だ! こいつら殺されたくなかったらさっさと出て来い!」
 血まみれの兵士――彼らを守るため身を挺した兵士達が、通路の中央で折り重なるように倒れていた。
0064元本編 ◆k7GDmgD5wQ
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2011/01/24(月) 23:35:55ID:4rwSNv0f
ちょっとずつ投下。
まとまって出せないので、小出し小出しで。
新聞の小説ってのも、大変だろうなぁと要らぬ心配をしてみるw
0065元本編 ◆k7GDmgD5wQ
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2011/01/28(金) 00:36:24ID:+nueEXpq
 ――最悪だと、入江は思った。
 敵の罠に、自分達がまんまと嵌ってしまったこともだが――それ以上に、入江が危惧していた事態が起きてしまったからだ。
 死の恐怖と共に引き起こされる、致命的な病――雛見沢症候群。それが今、少年達を蝕んでいるということに。
 必死になって逃げ、敵の目から逃れられたかも分からないこの状況――居住区の一室で、ひたすら縮まって震えている圭一の様子が、彼に雛見沢症候群――5段階の症状で分類し、L3段階の中期症状――が現れていた。
 過度の不安から与えられた精神へのダメージが、深刻な状態まで飛躍することが、雛見沢症候群の致命的な毒だ。
 それが、あの一瞬――目の前で、既知の人間が殺されかけた光景――で、一気に発症レベルまで引き上げられたのだ。
 死の恐怖。
 入江も過去の雛見沢症候群の研究結果から、発症要因として無視できないものであると知っていたはずなのに。
 これから向かう場所は、戦場そのものであるという認識が薄かったのか。
 それとも、まるで映画を見るような気軽さでこれからの結末を見物しに来たとでもいうのか。
 ――私は、馬鹿だ。
 悔やんでも始まらないことではあるが――入江は悔やまずには、いられなかった。
「しっかりしてくださいませ圭一さん! この状況をなんとかしないと、わたくし達も、あの人達も危ないですわ!」
 沙都子が動揺の収まらない圭一を鼓舞する。この中では雛見沢症候群が発症する危険性が一番高い彼女が気丈に周囲を気遣っている。入江の見立てでも、沙都子に発症の形跡は見られなかった。
「沙都子ちゃん、こんな時ですが、今日は注射は……?」
 入江が沙都子に質問する。沙都子は入江の言葉の真意が汲み取れないまでも、ここに来る前に、注射を打ったことを述べた。
「あれが最後の一本でしたけど……持ち歩いて壊すと大変ですし」
 入江は内心で、沙都子の行動に納得した。雛見沢症候群の治療薬であるC120を投与して間もないからこそ、あのような危機的な状況でも沙都子は平常心を保てたのだと。
 もし彼女が投薬を行っていなかったら、圭一以上の発症を引き起こしていたかもしれない。
(やはり、C120を早急に確保しないと……)
 入江は、医務室で薬品を確保できなかったことを悔やんだ。そして、今になって思い返す――診療所にも、C120の瓶が一本も無かったことを。
 誰かが、薬品を持ち去ったのだ。それは雛見沢症候群のことを知っている。そして、その治療薬の価値を。
 一体、誰が。そう考えた時、一番最初に思い浮かんだのが。
(……鷹野さんか)
 鷹野三四。
 彼女なら、入江以外にあの治療薬の価値を知っている。彼女が診療所のC120を根こそぎ持ち去ったのだとしたら――納得できる。
(しかし、一体、何のために?)
 そう、鷹野がC120を持ち去る動機が不明だ。そこだけがすっぽり抜け落ちてしまっている。
 ただの治療薬にしか過ぎないあの薬を持ち去る理由はなんなのか。
 入江はその答えに気がつかない。
 気が、つけない。
 そして、時間は入江に長考を許さなかった。
0066元本編 ◆k7GDmgD5wQ
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2011/01/28(金) 00:38:04ID:+nueEXpq
「……取引、か」
 赤坂が呟く。敵は言った。――取引、だと。
「全く割りに合わない取引ですね。向こうの取引材料はこちらの味方の命。対するこっちの取引材料は自分達の命です。出て行ったら殺されると分かっていて、出て行くと思っているのでしょうか?」
 入江が相手の言葉に苦言を呈す。確かに、取引にすらならない――脅迫だ。
 出て行けばこちらが殺される。
 しかし行かなければあの二人が死ぬ。
 どちらか選べの選択肢。どちらをとっても地獄行き。
「だけど……見捨てられるか?」
 赤坂が言った。それは、この場にいる全員に対して問いかけねばならない言葉だった。
「見捨てる……? 俺達が、自分を盾にしてまで守ってくれた人達を、見捨てていいのかよ!」
 動揺を振り払い、圭一が激昂する。それは人として、当然の感情だ。
 しかし、激昂は時に判断を鈍らせる。
 それを赤坂は知っている。
「私だってそうだよ。見捨てられない。見捨てられるわけがない。しかし……相手は姿が見えない。しかも複数人だ。闇雲に戦っても、撃ち殺されるのは目に見えている」
「だからって!」
「圭一君落ち着いてください! 感情に任せては、判断を誤ります」
 入江にそう、諭されて、圭一はしぶしぶ座る。その顔からは、不安は消えているようだったが、入江は注意深く様子を見た。
「敵は私達の想像を超えた技術を持っている。それを封じない限り、こちらからは手が出せない」
 赤坂の分析は正しい。
「そして私達には、時間的な猶予もありません。相手は私達にすぐにでも出てくることを要求しています。それに、撃たれた彼らも、あと数分以内に手当てしなければ、失血死の可能性も……」
 言いかけて、入江はハッとした。これ以上、子供達を不安にさせることを口に出してはいけないのに。
「……な、なんだよ監督! それじゃなおさらすぐにでも助けに行かなきゃならないじゃねぇか!」
 圭一が今すぐにでも飛び出さんばかりの勢いになる。
「け、圭一君、落ち着いて……」
「落ち着いていられるかよ! すぐにでも助けなきゃ――」
 圭一の肩を入江が掴んで止める。しかし圭一は弾丸のように外に飛び出そうとしている。
 その圭一の焦りを打ち消したのは。
「要は見えればいいのでしょう?」
 ――沙都子が、まるで天啓のように、言った。
「まったく、圭一さんも少しは落ち着いてくださいませ。あと数分以内にあの嫌味な連中を黙らせて、監督があの人達を手当てすれば万事解決でございましょう? だったら――方法はありますわ」
 無邪気な子供の笑みは、この場にいた男達を唖然とさせる。
「ほ、本当か沙都子?!」
「ええ。ただ、赤坂さんには危険な目に遭ってもらいますけど……それでよろしいかしら?」
「勿論だ。見えるなら、拳が当てられる。それなら――危険でもやるよ」
「決まり、ですわね。さあ圭一さん、準備いたしましょう。私達を、部活の部員を舐めたことを――そして私達の仲間を痛めつけたことを」
 存分に後悔してもらいますわ。と、沙都子が言ったのだった。
0067元本編 ◆k7GDmgD5wQ
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2011/01/28(金) 00:38:58ID:+nueEXpq
ちょこっと投下。
やっと反撃開始。
ペース配分、考え無しでゴメンネ。
0069元本編 ◆k7GDmgD5wQ
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2011/01/30(日) 01:10:22ID:yFbXJDfG
「出てきますかね?」
 見えない男の声が、通路に響く。
「出てこなくともいい。こちらからいぶり出すまでだ」
 別の声が、次の行動を口に出す。
 やはりこの男達は――姿が見えないから、声で判断しただけだが――圭一達を生かすつもりなど毛頭無いのだ。
「兎狩りですか。そりゃ面白い」
 くくく、と低く嗤う。
「山猫が山狗に取って代わって兎を噛み千切る……。前の仕事に比べれば遣り甲斐がありますんね」
 雛見沢弁を口に出した男の声が弾む。
 この男達は――、元は小此木率いる山狗部隊の精鋭達だった。
 しかし、愛国者が送り込んだ部隊に仕事を奪われ、本来の任務が行えず、鬱憤が溜まっていたのだが――、オセロットと小此木が共闘体制に入ったことにより、彼らはオセロットの傘下――“山猫部隊”に組み込まれたのだった。
 そして、彼らは驚くべき兵器を与えられた。
 “ステルス迷彩”――人間の肉眼から、己の姿を消し去る、魔法の装置。
 敵に姿を捉えられないことがどれほど優位か。そして敵の姿が見えないことがどれほど脅威か。彼らは知っている。
 この男達は、戦争の経験者であり、また殺戮の識者でもある。
 秘密裏に海外の紛争地域に侵入し、殺人とは、戦闘とはどのようなものかを肌で知ってきた者達だ。
 そう、少年達が知る、彼と同じ――戦争という環境に適応して生きる“グリーンカラー”なのだ。
「……これ以上待っても無駄だ。奴らは逃げたようだ……賢明だな」
 拳銃のスライドが引き絞られる。敵は少年達が負傷した兵士を置いて逃げたのだと判断した。
 戦争を経験した者なら、その判断は当然だと思うだろう。
 負傷者は荷物にもならない。不要物そのものなのだから。
 銃口を兵士の頭に向ける。
 瀕死の兵士達は呻くこともできずに、最後を迎えようとしていた。
「子供の戯言に付き合ったことを恨め。……まあ、裏切者にはふさわしい末期だな」
 そして引き金に力を込め。
「待てよ!」
 前方から、叫ぶ声がした。男達がそちらを見ると――、逃げたと思っていた少年――前原圭一が、そこに立っていた。
 その顔は走ってきたからか、真っ赤になっていた。
 息も乱れている。
 転んで怪我をしたのか――右足首には、包帯が巻かれていた。
「取引だ! その人達を放せ!」
 圭一が、再び叫んだ。
 圭一の行動に驚いたのか、見えない場所から、ほう、と声が漏れた。
「おいガキ、お前一人か? 他の奴らはどうした!」
 別な方向から、怒鳴り声が響く。
「途中ではぐれたからな……わかんねえよ。俺はお前らが出て来いと言ったから出てきた! さあ、その人達を放せ!」
 突然の破裂音。そして圭一の足元の床が、突然割れて弾けた。
 拳銃射撃による威嚇を、敵の一人が行った。
「いきがってんじゃねえぞガキ。俺達は、お前を蜂の巣にだってできるんだ。人にものを言う態度が違うだろうが!」
 男のがなり声が圭一に浴びせられる。しかし圭一は、銃声に一瞬たじろぎはしたものの、すぐに余裕ぶった表情を作った。
「へっ……姿が見えないからどんな精鋭部隊かと思ったけどよ……脅し文句が町のゴロツキと同じじゃお笑い草だぜ」
「いうじゃねえかよガキ……、鉛弾一発食らってみるか?」
 再び弾を装填する音が聞こえたが、別な方向から、待て、と声がかかる。
「命知らずなガキだな……。安心しろ、俺達はお前を拘束して連れて来いと言われている。お前を傷つけることはしない。大人しく投降しろ」
「投降……? その人達を助けてくれたら応じる。その人達を手当させてくれ」
 圭一の取引は、兵士達の命を助ける代わりに、自分が人質になろうというものだった。
0070元本編 ◆k7GDmgD5wQ
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2011/01/30(日) 01:11:14ID:yFbXJDfG
だが。
「駄目だ。こいつらは裏切者だ。生かしておくわけにはいかない」
「何だと?! お前ら、この人達を助けたいなら出て来いって言ったじゃねぇか!」
 圭一の声が、怒りを露にする。
「ああ〜、そうだな。確かに殺さなかったぜ。お前が出てくるまではな」
 愉快そうに不快な笑い声が響く。
「て、てめえら……」
「これ以上ガキの戯言に付き合う気はない。……拘束しろ」
 見えない男達の手が圭一に近づく。
「待て」
 突然、男達のリーダー格の声が、圭一に近づいた手を止める。
「何を企んでいる?」
 圭一は声がした方向をただ睨むばかりだったが。
「それは、どういうことです?」
 別の声が、理解できずに問う。
「このガキが、何の考えも無く、ただでここに来るような奴か?」
 敵の間に緊張の糸が張る。子供と油断していた意識は、瞬時に隙間無く周囲を見渡す。
「このガキが一人でここに来た……、と、思うことこそが罠だ。このガキは……囮だよ。本命は、そこだ!」
 銃声が通路を埋めた。
 破裂音、摩擦音、耳障りな破壊音がひとしきり聞こえた後、硝煙臭が残った向こうに、見えたものがあった。
 圭一達の下に人知れず近づいていた――ダンボール箱。
 それは蜂の巣のように無数に穴が空き、その底部からは、赤い染みが広がっていた。
「あ、……ああ!」
 圭一が愕然とした表情になる。
「このガキが俺達の注意を引き、その間に仲間が近づこうとしていたんだろうが……所詮、子供だましのトリックだ」
 犬死だな、と声が言った。
「な、なんてことをしやがる! お前ら、なんでそんな簡単に人を殺せるんだよ!」
「ああ? 誰にもの言ってんだよガキ。俺たちはなあ、人殺すのが仕事なんだよ! プロなんだ! そんな俺達に楯突いたお前が悪いんだろうが!」
「プロってなんだ?! 人殺すのにプロもアマもあるかよ! 人を殺すってのは、誰かが絶対悲しむことだろ! お前ら、そんなことも考えたことないのかよ!」
 圭一の叫びに、返ってきたのは――笑い声。
「だからガキなんだよ。いいか、世の中は死ぬ人間がいる。殺す人間と殺される人間がいるんだ。殺さなかったら死ぬんだよ! ここはそういうところで、俺達はそういう人間なんだ!」
「そこまでにしておけ」
 冷静な声が諌めた。
「ガキを拘束。残りは拘束ないし射殺だ。予定通りに運べ」
 圭一の腕を誰かが再び掴もうと動いた。
 その時、圭一の表情が――、変わった。
「……人殺すのが、あんた達の仕事なんだな」
「ああ? だからそう言ってんじゃ――」
「殺す人間と殺される人間がいる――そうだったよな? どんな人でも殺して、そうじゃなかったら死ぬんだろ。ここはそういうところで、あんた達はそういう人間なんだろ?」
 不気味なほど無表情で、口先だけの少年とは思えない雰囲気が、そこにあった。
「な、何言ってやがる……?」
「ここがそういうところだから、あんた達は仕方なくそうしているのかと思ったけど、……そうじゃねえよな。あんた達がそうしているから、ここはそういう場所になっちまってるんだよな」
 だから。
「たった今から――、ここはそういう場所じゃなくなる」
「何ぃ?」
 見えない男達の間に――僅かな、動揺。
「誰も死ななくて、誰も殺しあわなくていいように、たった今から、俺達がここの仕組みを変えてやるって言ってんだよ!」
 突然。
 あの――穴だらけで、赤色に染まったダンボール箱が、動いた。
0071元本編 ◆k7GDmgD5wQ
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2011/01/30(日) 01:12:05ID:yFbXJDfG
その動きは速く、撃たれた人間が出せる速度では、到底ない。
「何だと?!」
「撃てえ!」
 再び、銃撃がダンボールに向かう。その勢いに、被されていたダンボールが、剥がれた。
 その中にいたのは――いや、その中には、入っていただけだった。
 荷物を運ぶ台車。その下にはラジコンカーが括りつけられている。台車の上に乗っているのは、幾層にも重なったバケツと――、その前に積まれていたのは、ホールトマトの缶詰。
 さっきの赤い液体の正体が、これだ。
 そして、台車は勢い良く男達のいるであろう方向へ突っ込む。
 その台車の上に置かれている、バケツの中に詰まっていたのは。
「スタングレネード?!」
 信管が起動し、大量の閃光が敵の視界を遮ぎった。
 その瞬間、圭一は大きく右足を上げ、床を踏んだ。
 その場所は、沙都子が仕掛けたトラップがあった場所。
 スネア・トラップの一種だったが――踏んだ者を一瞬でフロアのはるか彼方まで引っ張っていくものだった。
 圭一は、ワイヤーで足を傷つけないように包帯で保護した右足でトラップを起動させ、倒れていた兵士達もろとも危険区域から脱出した。
 そして、その圭一が去った場所に、引っ張られて運び込まれたものがあった。
 圭一の腰に括りつけられていた釣り糸と、その糸がつながったロープに結ばれていた――大量の小麦粉。
 それが、圭一が移動したと同時に見えない男達のところまで引っ張られ、大量の小麦粉をあたりにぶちまけた。
 この事実と、この危険性に最もいち早く気付いた男は、エレベーターに乗って下に逃げようと翻ったが――、頭蓋が割れるような衝撃を受けて、意識が途絶えた。
 白い世界が、見えなかったはずの男たちを、浮かびあがらせていたのだった。
「な、なんだとぉ!?」
「いや、まったく――いや、ようやくか。ようやくこれで――君達を殴り飛ばせる」
 あの嘲笑で圭一をあざ笑った男は、戦うこともできず、赤坂の拳を受けた。
「人を殺すプロか。そんなもんになれて幸せなのか、お前ら」
「な……なんだとぉ?! 手前、知ったような口聞いてんじゃねぇ! 俺達はなぁ、その辺の人も撃ったことがねえ奴らとは違うんだ!」
「そうか、そりゃよかったな」
 容赦の無い。そして無駄の無い赤坂の一撃は、プロを自覚していた男達を、その誇りごと打ち砕く。

「――給料、幾らだ」

 何気ないその言葉を、男達は顔面を打ち抜かれた痛みと共に、永遠に覚えることになる。
0075元本編 ◆k7GDmgD5wQ
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2011/01/31(月) 23:27:15ID:5N8RWeu5
赤坂の拳は、まさに一撃必殺だった。
 打ち込んだ拳は五発。
 倒れた者も五人。
 初弾から躊躇無く打ち込んだその拳は、まさに無音の徹鋼弾だと形容するにふさわしいものだ。
 しかし、赤坂は知っている。
 この戦いは、決して自分一人では勝てないものだったことを。
 この戦いで、自分が一番危険な場所にいたことは事実だと、赤坂は自覚している。
 小麦粉が舞うこの白い世界は、確かに想像を遥かに超えた兵器を無力にしたが、その場所は一歩間違えば火の海になっていてもおかしくない場所だったか

らだ。
 敵の誰かが、命を顧みず――または半ば自棄的に銃を撃っていたら――粉塵爆発を起こしていた。それを相手も知っていた。
 撃ったら自分たちも炎に飲まれると、理解していたからだ。
 その結果、相手は何も出来ず、赤坂の拳を喰らってくれたのだが。
「ここまで計算の上か、あの子は」
 赤坂はこの作戦を立案した、北条沙都子に、頼もしさと同時に――薄く、恐怖心を覚えた。
「どうやら、終わりましたわね」
 沙都子が粉だらけになった通路にひょっこりと姿を出す。その手には居住区で拝借したラジコンカーのリモコンが握られていた。
 相手の絶対的優位――その自尊心をくすぐることから、相手の慢心を誘う。沙都子が立てた作戦は、そこから始まった。
 姿が見えない相手が、何故声を発して取引などと言ったか。
 それは、自分達が相手より上回っていると思っているからに他ならない。
 なら、そこを存分に――刺激してやればいい。
 圭一が味方の兵士達を助けるため、そして相手と交渉という名の油断を誘うため――敵の前に立った。
 そして相手と会話しながら、ある程度、相手の位置を赤坂に知らせる。
 相手から声を出させれば、どのあたりにいるか、おおよそ見当がついた。
 そして圭一以外に仲間が来ていると思わせるために、細工した台車にダンボールを被せたものを用意し、沙都子がそれをそろそろと敵に向かわせる。
 ホールトマトを入れていたのも、相手が撃ってくることを予想していたからだ。
 そして、後は――敵がまんまと罠にはまってくれるのを待っていた。
 その結果は……言うまでもないだろう。
「へへーっ! どうだ沙都子! 俺の演技もなかなかだったろ!」
 圭一がフロアの随分向こうから戻ってきた。今ごろは向こうで、入江が兵士達の治療を行っているだろう。
「どこがですの? あのダンボールが撃たれたときのリアクションなんか、本当、大根役者でしてよ」
 沙都子の酷評に圭一のテンションが下がる。
「ひでえや沙都子、俺結構頑張ったのによ」
「ま、それでもこうやって敵も倒すことができましたし、結果オーライですわ」
 子供達の間に笑顔が戻った。赤坂は分からなかったが、圭一は雛見沢症候群の発症が沈静化していたのだ。
「おっと……、そうだ」
 圭一が気絶した兵士の体をまさぐる。そうやって取り出したのは。
0076元本編 ◆k7GDmgD5wQ
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2011/01/31(月) 23:27:56ID:5N8RWeu5
「へへ、多分、これだぜ」
 そう言って、沙都子と赤坂に、奇妙な形の装置を見せた。
「何ですの圭一さん、その機械は?」
 沙都子の質問に答える代わりに、圭一がその装置のスイッチらしきところに指をあてる。
「この装置が、多分、こいつらが使っていた透明人間になれる機械だぜ! だからこうやってスイッチを押せば――」
 圭一がスイッチを押す。
 ……しかし、何も起こらない。
「あ、あれ? おっかしいな……」
 かちかちとスイッチを何度も押すが、機械は全く作動しない。
「壊れたんじゃありませんの?」
「えー、マジかよー。せっかくいいもの手に入れたと思ったのによー」
 圭一が、がくっ、と肩を落とした。
「まあ、壊れたなら仕方ありませんわね」
「くっそー、まだだ! 5台もあるんだから1台くらい……」
 圭一は何度も装置を試す。取替えながら全て試すが……作動はしなかった。
「ち、ちきしょー!」
「よくよく考えたら、圭一さんにこんな機械持たせたほうが恐ろしいことになりそうな気がしてきましたわ……壊れて正解ですわね」
 沙都子は直感でそう感じていたが、圭一はこの機械があれば、体育の前の着替えの時、女子だらけの教室の中に一人残ってもバレないぞと思っていた。
 いや、ああいうとこってさ、男にとっちゃ聖域だろ? いっぺんくらい見てみたいじゃん? 近くにあって遠い桃源郷ってすげえ浪漫じゃね?
「圭一さん……口にでてますわよ」
 沙都子の視線が、凄い痛かった。

「いよいよだな」
 圭一が武者震いする膝を抑えながら、エレベーターの振動に耐える。
 ここにいるのは圭一、沙都子と赤坂、そして入江の4人。
 負傷した兵士は傷が深く、居住区で待機することとなった。
「敵の中枢に入ることになる。これまでよりも警備は厳重だろう。皆、気を引き締めていこう」
 赤坂が注意を促す。
「大丈夫さ赤坂さん。もう俺達は油断しない。もう仲間を傷つけさせない。どんなことがあっても、俺達は負けないぜ!」
「圭一さんの言うとおりですわ。わたくし達はチームですもの。全員で困難に立ち向かえば、負けることなんて決してありませんわ」
 少年達の言葉に、赤坂も、入江も心に勇気が湧いてくるの感じた。
 どこまでも続く奈落への蜘蛛の糸にぶら下がった繭のように、エレベーターは静かに降りていく。
 この勇気が蝋燭の灯火のように頼りなくなるまで。
0077元本編 ◆k7GDmgD5wQ
垢版 |
2011/01/31(月) 23:31:30ID:5N8RWeu5
以上投下。
ここまででエレベーター戦終了。
蛇足TIPSを今後は予定。
0078創る名無しに見る名無し
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2011/01/31(月) 23:44:50ID:x7C9PR7/
おつおつです

> 初弾から躊躇無く打ち込んだその拳は、まさに無音の徹鋼弾だと形容するにふさわしいものだ。
徹甲弾 ですな
0079元本編 ◆k7GDmgD5wQ
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2011/02/02(水) 00:13:56ID:gC/ylif8
TIPS「魔法の限界」

 ――通信機のコール音が響く。
『こちらスネーク』
『よう、無事かスネーク?』
『……ディープスロート、お前か』
 俺の協力者である、謎の人物――ディープスロートからの通信だった。
『スネーク、今はどのあたりだ?』
『研究区の中層だ。もうすぐ中央付近に着く』
『そうか……スネーク、エレベーターに寄る用事はあるか?』
『急になんだ? エレベーターは動かないはずだ』
『動くようになったんだよ』
『本当か?』
『ああ。……そのエレベーターの床下に配電盤があるんだが、そこに武器を多少隠しておいた。よかったら使ってくれ』
『そりゃ助かる。……しかし、どうして急にエレベーターが動いたんだ?』
 当然の疑問だった。
『簡単な話さ……。中に入っていた奴が止めていたのさ』
『中に……? まさか?』
『ああ、ステルスだよ』
 ステルス迷彩だと?
『ステルス迷彩か……厄介だな』
『どうしたスネーク。まさか伝説の兵士があんな子供騙しを怖がるのか?』
『サーモグラフでもあれば別だが……肉眼では捉えられないというのは一筋縄ではいかない』
『おいおい、しっかりしてくれよスネーク。ステルスなんてこの中じゃ既存の兵器だぜ』
『なんだと? 他にもステルス迷彩を装備した兵士がいるというのか?』
『そうだな……まあ、ざっと300基』
『なっ……。300だと』
 300人ものステルス兵士がいるというのか?!
『心配するなスネーク。もうステルスは使い物になりゃしない』
『どういうことだ?』
『ステルス迷彩は俺が壊しておいたのさ……まあ持ち出された分もあったが、いま残りの5基も回収した。もうステルスを使える奴はいないはずだ』
『壊しただと……300基も、お前一人でか?』
『なに、手榴弾を投げるより簡単な仕事だ。……ボタン一つで済んだからな』
『ますます分からん。一体どうやった?』
『まあ待て。少し説明させろよ。……今のステルス迷彩は高性能過ぎるんだ。ステルスは本来、機械の中心に特殊な電磁場を発生させ光を屈折させる。
その電磁場は同じような電磁場があった場合、お互いに干渉しあってステルス効果を打ち消してしまうものだったんだがな。その弱点を克服したんだよ』
『つまり、さらに高性能になったと?』
『ああ、そのとおりだ。だが、いつの時代も便利になった分だけ厄介な問題を抱えることになるんだ』
『それは?』
『まずは……そうだな、単純にコストの問題……エネルギー問題だな。高性能になった分、バッテリーも消費するんだ。だから、ステルスは使わないものは全部充電することになっている』
『単純に使える時間が限られているということか』
『とんでもない。ステルスの稼働時間はフル活用でも24時間……1日はもつ』
『なに? それじゃ、性能が上がってるじゃないか』
『だからそう言っているだろう』
『ステルス自体の性能もアップし、使用時間も伸びたなら、弱点などないんじゃないか?』
『いやいや、スネーク。問題はここからだ。いいか? 単純に性能がアップしたからこそ、それによる弊害も生まれたんだよ』
0080元本編 ◆k7GDmgD5wQ
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2011/02/02(水) 00:14:40ID:gC/ylif8
『何だって?』
『ステルスの効果は電磁波により生み出される……が、これは今までは複数の装置が近くにあった場合、お互い干渉しあって打ち消してしまうんだ。
そもそもステルスの効果を生み出す電磁波は力場を形成する力が弱い。ちょっとした障害物にぶつかっただけで電磁波が消失するものだったんだ』
 俺はかつて使っていたステルス装置の効果を思い出す。確かに人にぶつかっただけで消えてしまうものだったはずだ。
『しかし、その弱点は克服したと言ったな』
『そうさ。いまここで使われている迷彩は、単純に効果を発揮したら、ちょっとした障害物くらいじゃ力場を邪魔されることなんか無くなった。それに、複数人が同時に使用しても電磁波の位相を自動的にチューンするんだ』
『つまり、電磁波同士の干渉が無い』
『ああ、そうだ。……だが、それこそがこの最新式のステルスの弱点でね。同時に複数の電磁波を感知すれば自動的に位相を変え、区別する。それはつまり、別な形でお互いに干渉しているといえる。
……さて、ここで問題だスネーク。もし、密集するほど近い場所で同時に300基ものステルス迷彩が起動し、さらにその全てがお互いの位相を変えるよう演算を繰り返したとしたら――どうなると思う?』
『お前、まさか』
『そういうことだスネーク。パソコンにとって円周率の無限の計算ほどCPUに負担をかけるものは無い。答えのない計算を延々と行った挙句――高性能な兵器は全部ショートして使い物にならなくなったのさ』
『とんでもないことを考える奴だ』
『いや、これは俺のアイディアじゃない……俺の“娘”さ』
『桜花……彼女か』
『ま、俺個人じゃステルス迷彩を管理するシステムにハッキングすることはできなかったからな。そして、残りのこの5基を壊せば、これでステルスは全部無くなる』
『壊すのか? 使えそうだが』
『こいつは銃と違ってIDチップが組み込まれているものとは違う。作成された段階でID登録され、こいつのID変更は敵の中枢にあるネットワークに介入しないと無理だ。どうやってもこいつをすぐ使えるようにはできないのさ』
『そいつは残念だ』
『機械は決して万能じゃない。こんなものがなくても、あんたなら何とかするだろう。期待しているぜ、スネーク』
『わかった』
 彼との通信を切り、俺は先に向かう。
 だが、俺は姿が見えない敵以上の脅威に、もうすぐ出会うことになることを。
 どこかで――感づいていたのかもしれない。
0081元本編 ◆k7GDmgD5wQ
垢版 |
2011/02/02(水) 00:16:39ID:gC/ylif8
以上TIPSまで投下終了。あとは本編氏にタッチ交代。
そして>78のとおり、また誤字だよ。いつまで経っても直んないね。ごめんね。
脳内変換よろしくです。
0082本編 ◆/PADlWx/sE
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2011/02/04(金) 23:29:22ID:VcFX/pjk
 魅音の持っている無線機が音を立てた。
『こちら“つくつくぼうし”、聞こえるか?』
『はいはーい、こちら“ひぐらし”。聞こえてるよー』
 無線機から聞こえてきた圭一の声に対し、魅音は明るく応じる。
『今、エレベーターの中にいる。もう少しで例の広間に着くと思うぜ』
『やっぱり圭ちゃん達が一番乗りか。じゃあどこかに隠れつつ待っててね――って、乗るまでに結構時間かかってない?』
 魅音の疑問に対し、圭一の声のトーンが若干下がる。
『……待ち伏せされてたんだ。エレベーターの中に、5人も……』
『あちゃー……。でも無事で何よりだよ』
 “無事”という言葉に対し、圭一は素直に喜べないようだった。
『俺と沙都子、監督と赤坂さんは大丈夫だったけどさ……、仲間になってくれた兵士の人達が、深手を負っちまった』
 「相手は戦闘のプロだからね」って言う魅音の言葉を実感したさ、と圭一が言う。
『俺も迂闊だったかもしれないけど、魅音達も気をつけた方がいいぜ』
『おじさん達なら大丈夫さ。圭ちゃんの心配には及ばないねぇ』
『いや、そうじゃなくてさ。待ち伏せしてた敵の兵士が、その――透明人間だったんだ』
『はぁ? 何それ?』
 予想外の答えに、魅音は素っ頓狂な声をあげた。
『信じられないかもしれないけど、本当だったんだ! 沙都子のトラップで小麦粉をぶちまけて、何とか見えるようになったから勝てたけど――』
 ――それが無かったら危なかった、と。
 うーむ、と魅音は難しい表情をした。
『その、透明になれる仕組みってのは何さ? 透明マントでも羽織ってるの?』
『いや、何かよく分からない装置みたいなのが、そいつらの体に付いてた。壊れちゃったみたいだから再利用は出来ないけど』
『うーん……厄介だねえ。赤外線ゴーグルがあれば見えそうだけど、持ってないから探すしか無いかぁ……』
 とにかく教えてくれてありがとう、気をつけるね、と魅音は礼を言う。
 ――だが、もうこの施設にあるステルス迷彩は全て無効になった事を、彼女は知らない。
『圭ちゃんも元気出しなよ。確実に前に進んでいるんだから、安心しなって!』
『大丈夫、もうそんなに落ち込んでねーよ』
『本当? 内心びびってるんじゃないの?』
『びびって無いさ! お前こそ「怖いよー助けてー」とか言って泣きついて来るなよ』
 それだけ軽口が叩けるなら大丈夫だねぇ、と魅音は笑った。
 後で会おう、と約束し、無線は切れた。
0083本編 ◆/PADlWx/sE
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2011/02/04(金) 23:30:09ID:VcFX/pjk
「おじさん達も急ごっか。早くスネークに会いに行こう」
 魅音は振り返って、私達にそう言った。
「でも、『急いては事をし損じる』って言うからね。気をつけよう」
 富竹がそんな魅音を軽く諫めた。……私から見れば、富竹は少し慎重すぎる気がする。
「ボク達ならきっと大丈夫なのですよ。魅ぃも富竹も、銃の扱いが上手いですし」
「そりゃそうさ! おじさんを舐めてもらっちゃ困るよ〜? ヘリの操縦だって出来るんだからねぇ!」
「いやぁ、魅音ちゃんは本当に凄いよ、あはは……」
 魅音が胸を張り、富竹はよく分からない笑いで誤魔化すのだった。
 さてと、と魅音が話題を切り替る。
「とにかく下に向かおうか。さっきの通信室の所で、結構時間取っちゃったしね」
 スネークと無線が通じた、あの部屋。
 敵の施設の設備からスネークに無線が通じるぐらいだから、もっと有効活用は出来ないものかと、魅音は徹底的に調べていた。
 けれど、他に得られる物は何も無かった。
 富竹も番犬部隊への連絡を試みていたが、やはり通じなかったみたいだ。
「集合は研究区中層の広間だったね。そこの階段からも近いみたいだ。進もうか」
 富竹が地図を見て、そう言った。
「よし。“ひぐらし”チームは順風満帆、このまま快調に突っ切るぞー!」
「ふぁいと、おー、なのです!」

 ――この時。私達はただの、無力な子供に過ぎないって事を。
 どこかで、忘れていてしまったのかもしれない。
0084本編 ◆/PADlWx/sE
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2011/02/04(金) 23:33:19ID:VcFX/pjk
以上です。
……風邪でぶっ倒れてました。インフルエンザじゃないのに38度の熱ってどうよ。
しかも寝ている時にL5を発症する夢を見ました。
ある程度書きためているのですが、しばらくは小出しにいきます。

>>62
こちらこそ亀レスで申し訳無いです。
自分で組み直すほどNスクを使いこなせていないので、
どうにか弄りつつ現状このままでいきます。
駄目そうでしたらselect命令にするかもしれません。助言ありがとうございました。
0085本編 ◆/PADlWx/sE
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2011/02/04(金) 23:34:41ID:VcFX/pjk
っと失礼。元本編氏乙&ありがとうございました!
0087本編 ◆/PADlWx/sE
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2011/02/07(月) 22:50:11ID:Lznbn/gJ
「敵がいる!」
「制圧しろ!」
 発砲音が連続する。敵も勿論反撃をしてくる。
「くそっ! 裏切り者めっ!」
「応戦しろ!」
 悪意と敵意がぶつかりあい、渦を巻く。
 兵士達は前線で戦い、戦えない者は――後方で身を潜めているしか無い。
 レナと羽入が、そうだった。
「みんな、大丈夫でしょうか……」
「信じよう。きっと大丈夫だ、って」
 二人はただ物陰に隠れ、息を潜めていた。
 彼女達には、敵と戦うだけの力も武器も無い。
 前線に居ても足手まといになってしまうことを、本人達もよく自覚していた。
「撃て撃て!」
「グレネードだ!」
 その前線では、相変わらず戦いが繰り広げられている。
 後方に隠れている者は、そこから聞こえてくる声や音から戦況を想像するしか無い。
 怒号。悲鳴。銃声。爆発音。それらがいくつも重なり合う。
 しばらくすると、それらが止み、辺りは静まりかえった。
 やがて、足音が後方へと近づいてくる。
 少しだけ顔を覗かせた二人に、その人物は言った。
「クリアした。もう出て来ていいぞ」
 ジョニーはそう言うと、レナと羽入に安堵の顔が広がった。
 通路の先を見ると、敵だった兵士は投降し、拘束されていた。
「みんな無事なのですか?」
 羽入がジョニーに尋ねる。
「ああ……何とかな。ちょっと怪我した奴もいるけど」
 心配するな、とジョニーは言う。
 ――銃撃戦になった以上、ある程度の怪我は避けられない。
 血なまぐさい所はなるべく見せたくないと、ジョニーは思っているのだが、それも難しかった。
 ――だから、敵側の兵士が死んだ場合でも、その死体を隠してから子供達に合図を出すのだった。
 勿論、ジョニー達は積極的に殺しにかかるような事はしていない。
 しかし、手段を問わず“制圧”するのと、非殺傷武器が少ないのに傷つけず殺さずで制圧するのとは、後者の方がはるかに難しい。
 たった一人で、敵を傷つけずに潜入している「伝説の男」の凄さを、ジョニーは改めて実感していた。
「さっき連絡があった。“つくつくぼうし”が広間付近に到着したらしい。俺達も急ごう」
「広間はもう目と鼻の先なんですよね?」
 レナが言う。彼女達も、もう研究区へと潜入していた。
「ああ。この先を抜ければすぐだ。あと一息で皆と合流出来る」
「なら行きましょうです。スネークもきっと待っているのですよ」
「よし。……準備も出来たみたいだし、行くか」
 再び、“みんみんぜみ”は移動を始めた。
 その先にあるものは、希望なのだと、信じ切って――。
0088本編 ◆/PADlWx/sE
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2011/02/07(月) 22:52:23ID:Lznbn/gJ
以上です。……また短いですが。
これで“ひぐらし”も“みんみんぜみ“も“つくつくぼうし”も移動完了です。
次か次の次ぐらいが山場になります。ノシ
0090本編 ◆/PADlWx/sE
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2011/02/08(火) 23:49:39ID:1OJAfNZr
 かつん、かつん、と一人分の足音が響く。
 ――ようやく、魅音が指定した“広間”らしき場所にたどり着いた。
 見た目的には一階と二階からなる構成になっていて、二階に当たる空間には何本かの空中通路が渡されていた。
 天井は高く、また吹き抜けとなっており、上からの見通しはかなり良い。
 勿論、数名の巡回兵がいた。
 下で下手に動くと兵士に見つかる。逆に上の吹き抜け部分なら、下から見つかる危険性は低くなる。
 ならば上に行こう。
 近くにあった階段を、足音と気配を殺しつつ上る。
 階段が終わるところにいた兵士のすぐ後ろまで迫り、M4を首筋に叩きつけた。
 兵士はぐうの音も出さずに倒れた。
 ……上に来たからと言っても見つからない保証は無い。
 慎重に空中通路に足を踏み入れる。すると、下の方からから複数の足音がした。
 先ほど手に入れたばかりのM4を構えつつ、振り返る。
 しかし、そこにいたのは、敵ではなかった。

「スネーク!!」
「お前ら……」

 予想よりはるかに早い合流に、驚きを隠せなかった。
 そこにあったのは、見慣れた顔ぶれ。なのに、どこか懐かしく感じた。
 下の広間には圭一、魅音、レナ、梨花、沙都子、羽入ら子供達と、入江、富竹、赤坂までもが揃っていた。
 圭一が説得して仲間に引きずり込んだという、山狗や兵士達の姿もある。
 皆、それぞれが、明確な意思を持って、こちらを見上げていた。

「やっと会えたね、スネーク」
 魅音の声が朗々と響く。
「……一体、何しに来たんだ」
 予想はしていたし、分かっていたつもりだったが、聞かずにはいられなかった。
「決まってるだろ、スネーク」
 圭一が、歯を見せて笑う。


「あんたを、助けに来たんだ!!」

0091本編 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2011/02/08(火) 23:50:36ID:1OJAfNZr
 

「それは――、どうかな?」


 唐突に、不気味な、しかししわがれた声が響いた。
 その声に、スネークが咄嗟に反応した。


「みんな逃げろ!」
「いや! 誰も動くな!」


 多数の人間の足音。
 一階にいる圭一達は、背後も前も、完全に兵士達の壁で、文字通り四方八方が塞がれた。
 銃を突きつけられ、彼らの中から困惑とも悲鳴ともつかない声があがる。

 そのどよめきやざわめきが、しん、と静まる。
 緊張が広がる空間が静寂に包まれた後で。
 ひとりの人物が、舞台に姿を現した。
 スネークがいる通路のもう一本向こう側に、彼はいた。
 靴に付いている拍車の音を鳴らしながら、その人物は、通路の中央へと移動する。
 一階の状況には見向きもせず、視線をスネークの方に向けた。
 彼とスネークの、目が合った。


「久しぶりだな。ソリッド・スネーク」


 その人物は――、紛れもなく、リボルバー・オセロットだった。
0095本編 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2011/02/10(木) 23:47:46ID:2Kt4/8/1
 鬼ヶ淵沼の側にある地下施設。
 雛見沢には不釣り合いなほど巨大なその施設の中心部。
 その広間には――完全に包囲された“侵入者達”と、圧倒的に優位な兵士達がいた。
 そして、今、この場の状況全てを掌握している人物が一人。彼は空中通路から全てを見下ろしていた。
「……残念だったな。お前達の行動は全て見通していた」
 彼――リボルバー・オセロットは表情を変えずに告げる。
「オセロット……!!」
 彼に一番近いところにいる蛇は、してやられたとばかりに歯ぎしりをした。
 一瞬のうちに、彼を含めて助けに来たはずの子供達も、危機に陥ってしまったのだ。
 悔しいはずが、無かった。

 だが、このとき、スネークよりも悔しさを感じていたのは。
「ち、畜生!」
 圭一はきつく拳を握りしめた。握った拳が白く色が変わり、食い込んだ爪が皮を破ろうというほどに。
 スネークを助けに来たはずなのに、自分たちの軽率な行動で一気に窮地に立たされてしまった。
 後悔、焦燥、そのような感情を、ここにいるほとんどの人間が抱いていた。

 ――しかし、羽入と梨花は、違う事を気にしていた。

「り、梨花……!!」
 羽入が小声で梨花に呼びかける。
 梨花は――答えることはなかったが、彼女の視線はオセロットに釘付けになっていた。

「――あいつだ」

 歪んでしまったカケラ。ノイズ混じりの記憶。雛見沢には本来いないはずの外国人。
 悟史を連れ去ったのもオセロットで、鷹野の仲間だと名乗ったと、梨花は聞いていた。
 そして、様子からして、彼がスネークの敵であることも、梨花は察した。
 ――ばらばらだったカケラが、繋がった。

「あいつが、私を――私達を、この歪んだ運命に閉じ込めているんだ」

 確かな証拠は無かったが、この状況、彼の行動、梨花の内側からざわめく“何か”がそれを物語っていた。
 犯人を見つけた、と確証した梨花は、自分達に突きつけられている銃口を無視し、一歩前に出て叫んだ。
0096本編 ◆/PADlWx/sE
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2011/02/10(木) 23:48:29ID:2Kt4/8/1
「オセロット! あんたは鷹野と手を組んで、私を――雛見沢のみんなを殺して、何をしようって言うの!?
ここで何の研究をしていたの!? 教えなさいっ!」
 山猫の視線が、初めて足下へと向けられた。
 彼女の叫びに対し、オセロットは。
「さあ、な」
 ただそう答えただけだった。
 畳みかけるようにして、今度はスネークが口を開く。
「ここの風土病を利用して、細菌兵器を作っていたのか? 核の代わりにメタルギアに取り付ければ、他国にとって十分な脅威になりうる」
「そんな事が……、まさか」
 「東京」の一員である入江が首を振る。
 スネークの言葉を否定しつつも、可能性としてはゼロではないため、彼の顔は蒼白となっていた。
 同じく、「東京」の監査役である富竹は無言だったが、唇を噛みしめて、オセロットの様子を窺っていた。
 オセロットはそんな二人の様子を気にせずに答える。
「細菌兵器か。確かに、一部の連中はそれを必要としていた。実際に開発もされていた」
「ちょっと待てよ……、その、細菌兵器って、一体何のことだ?」
 事情を知らない少年の当然の疑問に、入江が口を開きかけた。しかし、圭一の疑問に答えたのは、羽入だった。

「恐らく、その兵器というのは、人を雛見沢症候群に強制的に感染させ、末期発症を引き起こさせるものだと思います。
……末期発症に陥った人間は、雛見沢への強い帰巣本能を抱き、極度の被害妄想に陥り、周囲への強い猜疑心を募らせ――そして」

 羽入はそこで一度言葉を切った。

「誰も信じられなくなり、周囲を攻撃し、最後には――喉を掻きむしって死にます」
「……ほう?」

 オセロットは少し驚いたような顔をしてみせた。
 羽入のような子供が症候群についての知識を持っていて、さらに細菌兵器の中身を言い当てたことが意外だったようだ。
「そんな病気がここにあったとはな……。ここに来た時に皆注射を受けていたけど、それも関係あったのかな……?」
 ジョニーが言う。
 彼の言う通り、雛見沢症候群の存在は、一部の兵士にしか知らされていなかった。
 ジョニーは注射が苦手なため、それを受けなかったが――それが雛見沢症候群に関係あるものだという事は、彼にも容易に想像がついた。

「雛見沢症候群は、普通に暮らしていれば問題はないものです。……しかし、一度末期発症してしまうと、さっき言ったような現象が起こってしまいます。
落ち着くことも希にありますが……、兵器にした以上、それが不可能となっているはずです」

 羽入の説明は的確だった。それは入江の表情が、羽入の説明を肯定していたことからも明白だった。

「周りを攻撃して自分も死ぬって……、そ、そんなものを兵器に利用したってのかよ……!」

 SFホラーのような説明に、圭一は唇が震えるのを感じていた。

「雛見沢症候群は空気感染するからね。……詳しくは分からないけど、細菌をミサイルにでも入れれば『兵器』になるんじゃないかしら?
ありえない話じゃないわ」
 梨花が圭一とは対照的に、冷静に「兵器」を分析する。
「そんな恐ろしいものをここで開発していたって言うんですの? 信じられませんわ……」
 沙都子にとっても、今日まで普通に暮らしていた雛見沢の地下で、恐ろしいものが作られているとは、夢にも思わなかっただろう。
「……私も同感よ、沙都子。雛見沢症候群の研究は、診療所の中だけで行われていたとばかり思ってたけど、こんな所で悪用されていたとはね」
 梨花が苦々しく吐き捨てた。研究の第一人者――だったはずの入江は、ただ、ありえない、と呟いていた。
0097本編 ◆/PADlWx/sE
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2011/02/10(木) 23:49:21ID:2Kt4/8/1
「『一部の連中は』と言ったな、オセロット。ということは、その細菌兵器だけが目的では無いのか?」
 スネークはこういった状況に慣れているようで、あくまでも冷静だった。

「その通り。あんなものはどうでもいいのだ。本来の目的は――別にある」
「別に……?」

 スネークが訝しむ。同じく、圭一達も疑問に思った。
 ここで開発されていたという、恐ろしい細菌兵器。
 それだけで十分な脅威に思えたのに、それが「どうでもいい」と。

「人を殺し合わせてしまうミサイルがどうでもいい、って言うなら、……本当の目的は、もっと恐ろしい事なの?」
 当然湧き出る疑問を、レナが呟く。
「……そうかも知れないよ。私には想像が付かないけどね」
 魅音も、あまりにも非常識な説明に、動揺しながらも、冷静であろうとしていた。
 背後で言い合う子供達の声を聞いていたスネークが、オセロットに問い返す。

「そうだとするなら、真の目的とやらは何だ? わざわざここで研究をしていたという事は、雛見沢と関係があるんだろう?」

「そうだ。我々は――、雛見沢症候群に目をつけた」

 オセロットが通路を歩き出す。
 まるで、役者が観客に台詞を聞かせるかのように、芝居がかった様子で。

「雛見沢症候群の寄生虫は空気感染し、人の脳に巣くう。脳という高等な器官に侵入するにも関わらず、『感染した』との自覚が無い。
さらにL2以下の感染者――大抵の人間は、何も症状が出ない。これはあまり類例を見ない、特異な風土病だ」
 通路の端までいった所で、オセロットは一旦立ち止まった。
「L3からL5までの感染者に見られる症状――リンパ節の痒み、極度の疑心暗鬼や被害妄想は、その寄生虫の産物と言える」
 オセロットは再び歩き出した。
「それはつまり――、人間が寄生虫によって操られている、という事ではないか?」
「……寄生虫に操られている?」
 訳が分からない、というようにスネークは言った。

「我々は症候群の解明に全力をかけた。……その結果、ある程度寄生虫の行動を制御出来るようになった。
――『我々が寄生虫を操れるようになった』と言えば分かりやすいかな?」

「操るって……、まさか」
 梨花が感じたことは、スネークも薄々分かったようだった。
 彼らの想像を裏付けるように、オセロットは語る。
「我々が寄生虫を操り、寄生虫は人間を操る」
 つまり、と続ける。
 オセロットが、蛇の正面で立ち止まった。

「我々は、一人の人間を操ることが出来るようになった、という事だ」
0098本編 ◆/PADlWx/sE
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2011/02/10(木) 23:50:19ID:2Kt4/8/1
「……う、嘘だろそんなの!」
「実験も成功している。嘘ではない」

 この場にいる人間は知らないことだが、悟史がオセロットに「操られた」ようになっていたのは、そのためだった。
 山猫は尚も話し続ける。

「この寄生虫がミサイルで何千万とばらまかれ、さらにそれを、全世界の主要都市に撃ち込んだらどうなる?
……そう、感染はやがて広がり、パンデミックを起こし――、全ての人間が、寄生虫によって支配されることになる」

 雛見沢症候群は、一部の人間にしか知られていない病気だ。
 感染が拡大した所で――食い止める手立てが無い。
 ましてや、雛見沢の住人ですら症候群の存在に気づいていないというのに、他国の人々がこれを止められるだろうか?

「つまり、だ。――我々は、全人類を操れるということだ。“寄生虫による脳支配”。それこそが、この地にメタルギアを作った真の目的だったのだよ。
この地から“祟り”を引き起こし、人々の“意識”を“支配”する――戦略的核兵器とは違う、C3システムを確率するために、な」

 ――寄生虫によって全てを操られ、自分の意思を無くした人間達が織りなす社会。それを生み出すために作られた兵器。
 核兵器は“通信”“指揮”“管制”の3つのシステムで制御されている。その仕組みがC3システムと呼ばれていた。
 このメタルギアは、核兵器に代わる細菌ミサイルによって“祟り”でもって人間の“意識”を“支配”するシステムを確立していた。
 核兵器と名称が同じだが、内容は異なる“C3システム”。
 それが発動すれば。
 言葉も。文化も。
 思想も、宗教も。イデオロギーも。
 全てが、寄生虫によって支配されてしまう。
 操られた人間が織りなす社会。そこに君臨する、何か――とてつもなく巨大な組織。
 ひょっとすると、人々は自分が操られていることに気づかないかもしれない。
 自分の脳に入り込んだ寄生虫と共に生き、行動を支配され、そのまま死んでいく。
 そうした光景を思い浮かべて、蛇は、身震いをした。

「ミサイルは完成している。……そしてメタルギアも、だ。――全てが我々の支配下になる」

 山猫は、芝居がかった様子を見せながらも、こうした恐ろしい事を淡々と述べた。
 その様子はいたって正気だった。――だからこそ、蛇には狂って見えた。
 ――オセロットは、ただの兵士では無い。
 ――背後にある組織も、「東京」とは比べものにならないほどの物だ。
 ――シャドーモセス事件から生き延び、メタルギアのデータを世界中に流したのも、全てこいつの計算の上だった。
 スネークは、そう確信を得た。
 聞かされた衝撃的な“目的”に――、誰もが、言葉を失った。
0100本編 ◆/PADlWx/sE
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2011/02/13(日) 23:29:16ID:qKkAy9ta
「……ふざけるな」
 しかし、彼だけは自分の意思を、口にすることが出来た。
「……“雛見沢から、全世界にミサイルを撃ち込んで人類を操る?”」
 彼の目はまた、オセロットを見据えていた。

「それで村人全員を殺すって? ――――証拠隠滅のためか!? ……ふざけんなっ!!
ここは空気もおいしくて平和ないい村で、雛見沢症候群ってのがあっても、みんな仲良く暮らしてて!
何も悪い所なんて無い! それなのに、ここの風土病を悪用して、人間を操って、……みんなを殺すなんて、どうしてだよっ!!」

 彼――圭一は、魂の限り、叫んだ。

「理由など知らなくていい。今更知ったところで――無駄だろう?」
「させるかよそんなこと! 俺達の雛見沢を、みんなを、世界を、お前なんかの好きにさせねえ!」
 吼える圭一を、あくまでも山猫は冷静な目で見ていた。
「希望にすがって夢を見るのもいいがな、元凶は貴様だぞ」
「なにわけわかんねえことを!」
 熱くなった圭一とは対照的に、梨花は静かだった。
 自分の想像を遙かに超えた事を知り、未だに呆然としていたからだ。

「世界中の人間を操る……、なんて……何よそれ。いつから、こんな事を準備していたって言うの?」
「……この施設は、ダム戦争中から作られていたらしい。住民やマスコミが気を取られている間に、ここを完成させたそうだ」
 スネークが梨花達に背中を向けたまま答えた。
「あのダム戦争が、全て、茶番……?」

 赤坂が呆然として呟く。
 ダムを建設する計画を持ちかけ、住民を煽ったのも彼等で――頃合いを見て、終わらせたのも彼等だ、と。
 そのために。
 そのために、大石の恩人は、命を落としたのか。
 村を守る為に奮起した住民も。
 住民の抵抗に遭いながら、自分達の仕事をこなし続けた工事関係者も。
 大々的に報道したマスコミも。
 激しくなるデモの鎮圧をしていた警察も。
 全て。
 全部。
 最初から。
 オセロットや鷹野達の思惑通り、動かされていたのだ。
0101本編 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2011/02/13(日) 23:31:02ID:qKkAy9ta
「おじさん達はアンタ達の手のひらの上で踊ってた、ってわけかい。……気に入らないね」
 魅音が苦虫を噛みつぶしたような表情で言った。
「そんな昔から予定されてたことだなんて……、どうやって防げっていうのよ! 場所を鬼ヶ淵沼付近にしたのは鷹野の趣味かしら?
人目に付きにくいし、昔からの伝承もあるしね」
 梨花が憎憎しげに眉間をしかめた。
「……雛見沢の伝承って何だよ?」
 熱くなった反動で、疲れ切ったようにも見える圭一が、疑問を口にした。
「遙か昔。鬼ヶ淵沼から鬼がやってきて、人々を喰らい、争いが起きた。そして鬼と人を融和させるために、オヤシロさまが降臨した。
大雑把だけど、こんな感じだったと思うよ」
 魅音が簡単な説明をする。
「じゃあ……鷹野さんは」
「彼女は――オヤシロさまに、神になろうとしているのか? それが彼女の願い、いや、目的だと」
 そう言ったスネークに対して、オセロットは。
「さあな。あの女の考えていることなど――それこそ、どうでもいいことだ」
「……鷹野三四は、一体…………」
 ――入江京介や富竹ジロウについて調べた時、鷹野三四についても調べておくべきだった、と。
 スネークは、後悔した。

「……鷹野さん」
 富竹が呟く。スネークとは異なる“後悔”を抱えながら。
 どうすれば止められたのか。
 何故、こんなことを考えたのか。
 何故、自分が力になってあげられなかったのか――。
 様々な想いを、彼は抱えていた。

0102本編 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2011/02/13(日) 23:31:59ID:qKkAy9ta
「鷹野さんは、オヤシロさまになれないよ」

 唐突に、だがはっきりと、レナが言った。

「このまま上手く行って、私達を殺したとしても、絶対になれない。――オヤシロさまは、“い”るから」
 レナに続くようにして、魅音も口を開く。
「アンタがどこの誰か知らないけどね……雛見沢舐めてると、痛い目みるよ!」

 そんな二人を見て、オセロットは。

「神もこの土地も救われない。お前達と同じく、何も出来ず滅ぶのだ」

 そう、笑った老人の瞳に、レナも、魅音も、一瞬竦んだ。

「ま、待って下さい! あ……貴方! 貴方に聞きたいことがあります!」
 出し抜けに入江が叫ぶ。
「何だ? 今更命乞いか?」
「連れ去った……人質の、少年がいるはずです! 彼は一体どこに!」
「知らんな。“スネーク”に聞いたらどうだ?」
「スネークさんに? それは、どういう……」
 下を向いて、何かを考えているようだったスネークは弾かれたように顔を上げた。
「オセロット、お前は園崎詩音に会ったはずだ。……彼女に何を言った?」
「『お前の友人に会いたくないか』と聞いただけだ。元からあの小娘には何も期待してなかったさ」
 詩音の名前を聞いて、魅音が叫ぶ。
「こいつが詩音に!? アンタ、詩音に何をしたの!? 詩音は今どこにいるのっ!」
「それも“スネーク”に聞け」
「何よそれ、どういう意味よ!」
 入江も魅音も、オセロットの言葉の真意を測れずにいたが、――スネークだけは、その意味を理解した。
「まさか……、リキッドが?」
「――今頃どうなっているのかは知らないがな」
「……詩音、どうしてだ……」
 オセロットは何も言わなかった。
 ――彼は、全てを明かさず、いくつかの謎を煙に巻いたままで、全てを終わらせようとしていた。

「さて。お喋りはここまでだ」

 死刑宣告を――、彼は、告げた。
0105本編 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2011/02/16(水) 23:33:18ID:Lpokwldh
「嫌よ……」

 梨花が、羽入以外に聞こえないくらいの声で呟く。
「せっかく敵の本拠地もつかんで、目的も分かったって言うのに……、ここで死んだら、せっかくの記憶が無駄になってしまう!」
「梨花……」
 感情が高ぶってきたのか、梨花の声はだんだんと大きくなっていった。

「それだけじゃないわ。スネークだって、また味方になってくれるかどうかも分からない! 私達の敵になることだってあるのに!
この世界は予想外のことだってあったけど、全体的には上手く行ってた。あと少しまで鷹野達を追い詰めていた。
なのに……、この世界はもう――終わりなの?」

 オセロットは全てを見透かしたように、ただ一言告げた。


「ああ。これで――終わりだ」



 オセロットが右手を挙げると、兵士達が一歩前に出て、銃を構え直した。
 俺を取り囲んでいる兵士も、……おそらく圭一達を包囲している兵士も、そうだ。
 合図が下されれば――彼らは一斉に引き金を引く。
 そうなれば、誰も生き残れない。
 自分も、子供達も含めて――誰も。
 ――ここで、終わりなのか。
 メタルギアを目と鼻の先にして、あえなく死んでいくのか。
 俺を助けに来た、……彼らも巻き込んで。
 1983年の世界で、“未来”に戻ることも敵わずに、ただの肉塊へと成り果てるのか。
 ……勿論死にたくは無いし、死ぬわけにもいかない。
 この絶望的な状況を、どうやったら切り抜けられる――?
 自分を包囲している兵士をなんとかしても、子供達は殺されてしまう。
 さらに、目の前にはあのオセロットがいるのだ。彼は早撃ちを得意とし、跳弾さえも操る。
 ――――どう足掻いても、状況は良くならない。
 ……畜生。
 ここで終わるしか――無い。
 絶望に包まれた心境を知ってか知らずか、オセロットは僅かに笑みを浮かべた。
 そして――挙げた右手を、振り下ろそうとして。
0106本編 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2011/02/16(水) 23:34:11ID:Lpokwldh
 
 地面が、突如大きく揺れた。

「何っ……!?」
 地震だろうか。それにしては、その揺れはあまりにも不規則すぎた。
 立っていられないほどの揺れが来て、様々な人々が声をあげる。
 左右や上下に激しく起こる揺れと同時に、大きな音が、右側の方から接近してくる。
 ……何だ? 何が起きている?
 そして、壁の一部から、細くて早い水流が飛び出た。
 ウォーターカッターのようにも見えるそれは、壁を切り裂く。
 上から下まで、ケーキを切るかのようにあっさりと。
 水流が収まると直ぐに、――壁が崩落した。
 がらがらと壁が崩れ落ち、砂塵が舞い上がり、顔を腕で庇う。
 崩落が収まった所で、顔を上げた。
 金属音を立てながら現れた“ソレ”は、地響きを立てながら内部へと侵入してきた。
 その姿を認識すると、心臓が跳ね上がった。
 ――まさか。
 自分が知っているものとは種類が違う様だったが、巨大な竜のような設計、二足歩行をし、様々な兵器が搭載されているのは――。

「……メタル、ギア…………?」

 俺の声に応えるように、竜が一声、大きく鳴いた。


0107本編 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2011/02/16(水) 23:36:59ID:Lpokwldh
以上です。ここで一旦元本編氏に交代。
これで終盤の中盤ぐらいに入れたかなー、ぐらいの進度です。
まだまだ続きます。ノシ
0110 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2011/02/22(火) 18:00:59.54ID:9HXiheIT
パソコン壊れました・・・。
復旧に時間がかかりそうなので報告です。
進展がありましたら、また連絡致します。
0113本編 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2011/02/28(月) 23:42:20.85ID:Q6WmxhFq
とりあえず報告。
つい先日修理に出したのですが、最低でも一週間〜二週間はかかるそうです。
執筆データはUSBに入ってるので、直るor買い換えるまではノートパソコンでしのぎます。
現実でも話の中でも時が進んだら、また投下いたします。ノシ
0116本編 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2011/03/15(火) 22:48:20.79ID:cGZIecUs
お久しぶりです。
PCは何とかなっています。つい先ほども地震に遭いましたが、無事です。
被害に遭われた方々に深くお見舞いを申し上げます。
大震災に見舞われた中、この物語は「地面が揺れる」だの「人が死ぬ」だの、
不謹慎この上ない描写が展開上ありますが、ご了承下さい。
今は元本編氏にバトンを渡していますが、ひょっとしたら私が書くことになるかもしれません。

それと元本編氏、大変な状況だとは思いますが、もしスレを見ていらしたらご一報下さい。
したらばでもメールでも構いません。
0119オリスク製作委員会 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2011/03/28(月) 23:19:28.83ID:M42YzojQ
オリスクをアップしました。
シナリオ的にはそんなに進んでいません。が、前回の問題点を改正しました。
変更点は、
・TIPSの入手タイミングの修正
・シナリオ追加(スネークが入江診療所を離れるところまで)
・一部演出・誤字の修正
です。
こちらからダウンロードして下さい↓
ttp://www1.axfc.net/uploader/Ne/so/105102.zip
pass:sunehina
0120創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/04/04(月) 06:59:33.30ID:dq2qPBGW
乙。でもオリスク見れねー。
窓7だからかな。
0122本編 ◆/PADlWx/sE
垢版 |
2011/04/11(月) 17:54:35.71ID:U9tDhB+L
地震の影響で元本編氏が執筆困難な状況にあるようです。
もうしばらくお待ち下さい。
その代わり、こちらでオリスクを進めております。
windows7に対応したものをup出来るように努力します。
0126元本編 ◆k7GDmgD5wQ
垢版 |
2011/05/01(日) 02:08:10.05ID:pELuBb+l
 それは、あまりにも暗く、大きい闇だと思った。
 施設の重厚な壁を突き破り現れたソレは、この広いはずの天井から降り注ぐ照明を遮っていた。
 竜。
 そう思った。
 ファンタジー小説や漫画の世界にしかいないはずの怪物。
 それが火を吐くかのように大口を開け、圭一達を覗き見るように下を向く。
 圭一はその無機質な目を見る。
 生きているわけがない。もちろん生き物であるわけがない。
 一目見ればそれは明らかなのに、頭が――、心が、それを認めない。
 何故なら、あれは動いているから。そして、はっきりと意思を持っているから。
 自分達を殺す――それほどに明確な目的をもって、ここに現れたのだと、わかってしまうから。
「な、なんですの、あれ……?」
 沙都子が怯えた声を上げる。
 無理もない。あれを見た瞬間、圭一も叫びたくなった。
 ファンタジーのように剣と鎧を渡されても、いや、銃を渡されたとしても、勝てる気すら起こらない、化物に。
 だが二人は、ソレを竜だとは思わなかった。
 一人は、あれを兵器だと、認識している。
 そう、彼は――ソリッド・スネークはあの化物を、自分が斃すべき対象だと知っている。
 そして、もう一人、――羽入は、あれを“人”だと思った。
 さらに正確に言うなら、あれは「人の悪意」そのものであると。
 神すら貶め、殺す力の根源は――人の、悪意であると。
 小さな神は、その大きな力に、ただ目を見開いて、見つめるしかできなかった。

「来たか」

 山猫が呟く。その口は嗤っている。
 まるで――この化物が来ることが当然であるかのように。予定調和であると知っていたように。
 壁の一部がまた剥がれ、床に落ちて地響きと共に大量の砂埃を巻き上げた。
 異様な光景に、そこにいる大部分の人間が、自分の見ているものが現実かと疑った。
 その、一瞬の隙を。
「伏せろ!」
 力強い言葉が響いた。
 その言葉の意味を理解できた者は、即座にそれに従う。
 圭一が、沙都子が、魅音が、レナが、梨花が、羽入が、入江が、富竹が、一斉にその身を伏せた。
 竜の登場に動揺した兵士達は、その銃口を圭一達から逸らしていた。
 その一瞬の隙で、まず2人が空中に浮いた。
 スネークが1人を投げ飛ばした。
 赤坂の拳が一人の顔面にめり込んだ。
 正気を取り戻した兵士が再び銃を構えたが、その照準が合わないうちに富竹が放った銃弾により、銃そのものが弾かれた。
0127元本編 ◆k7GDmgD5wQ
垢版 |
2011/05/01(日) 02:09:29.28ID:pELuBb+l
 ジョニーが包囲網に開いた突破口にめがけ、銃を撃ちながら突っ込む。
「みんな! こっちだ! 逃げるぞ!」
 その言葉に、沙都子が、圭一が、レナが、次々と続いて駆け出す。
 誰よりも多く敵を相手にしていたスネークが、必然的に彼らの最後尾を守る形をなった。
 魅音がスネークのほうに振り向き、大声で叫んだ。
「スネーク! こっち!」
「わかった!」
 近くにいた全ての敵を無力化したスネークが、魅音へ駆け寄ろうとした。
 だが、そう、うまくはいかない。
 スネークが広間からあと少しで通路に入ろうとしたその直前、唐突に轟音が目の前で爆発したように、振動と重なって弾けた。
 恐るべき風圧がスネークの全身を通り抜け、大量の砂埃が舞った。
 魅音の姿が見えていた通路は、無残に潰されて瓦礫の山へと変わっていた。

「兄弟!! 貴様は逃がさんぞ!」

 竜が叫ぶ。
 いや、その声は、化物ではない。
 そう、彼にとっては、化物以上の脅威となる男の、懐かしくも、忌むべき声。
 自らの運命に、永遠に断てぬ呪いの言葉。
 だから、彼は抑えられない。憎悪にも似たその感情を封じ込める手立てがない。
「やはり貴様か!」
 オセロットが叫ぶ。それはこれから始まる舞台への賛辞のようでもあり。

「そうだ! 俺だよ! スネェェェェェク!!!」

 これから起こるその戦いに、やはりその声は歓喜のようでもあり。

「リィィキッドォォォォォォォッッッ!!!!!」

 その声は、自らの運命に抗おうと、あらんかぎりの叫びだった。
0128元本編 ◆k7GDmgD5wQ
垢版 |
2011/05/01(日) 02:10:43.38ID:pELuBb+l
 ちょ、ちょこっととはいえ小出し投下。

 地震こえー。でもだいぶ元通りになった
0130元本編 ◆k7GDmgD5wQ
垢版 |
2011/05/06(金) 00:27:34.11ID:WSxDSmK3
 その叫びを、子供達はどう聞いたのだろう。
 彼がここまで感情を、怒りを露わにする瞬間など、彼と出会ってからの数日間に、一度もなかった。
 これが、あの叫びこそが初めてだったのだ。彼が持つ運命に対する、怒りの姿が見えた気がしたのは。
 憎しみ、怒り……人なら持ちうる当たり前の感情……だが、ここまで、一人の人間に対して怒りを持つことができるのかと、そう思わせるに足る、叫びだった。
「ス、スネーク!」
 圭一が潰れた通路の向こうにいる彼に対し叫ぶ。だがその声は重なる崩落の音に掻き消えた。
「け、圭ちゃん! スネークは大丈夫だよ! それよりもおじさん達のほうが!」
 潰れた通路に一番近くにいた魅音だったが、怪我もなく無事だ。その健脚で一気に圭一達のほうに駆け寄ると、そのまま退却を全員に指示する。
「けど!」
 納得のいかない圭一の表情に、魅音が何かを言いかけようとしたその時、砂埃が舞う通路の向こう側から、誰かの人影が這い寄るように出てくる。
 誰もが、彼の姿を期待した。
 だがその姿は、あまりにも異質だった。
 異質すぎた。
 特殊な防護服は、全身を覆い、外見から男女の区別をさせにくくなっている。
 そして、その人物が一歩、また一歩と踏みしめるたびに、埃臭い通路には似合わない、びしゃ、びしゃという湿っぽい音が響く。
 その姿を見たのは、このときは圭一と魅音だけだった。沙都子も、梨花も、そしてレナも、ジョニーの先導で通路を曲がっていたから。
 だがわかる。その理由が、湿り気を帯びた音の正体が。
 その人物が両手に持っている二振りの大きな鉈――それが酷く真っ赤に染まっている。そこから滴る液体が、一歩、一歩と歩くたび、振られて、床に滴っているのだ。
 やがてその人物がぴたりと止まった距離で、圭一はようやく、彼女だと知る。
 返り血にべっとりと染まった胸元に、二つの膨らみがあったことを、こんな土壇場で分かってしまったから。
「……え? ……あ、あれ……だ、……誰、で、すか?」
 絞るように出た声。
 しかし返事はない。その代わり彼女は、ゆっくりと大きく右手の鉈を振り上げて――。
「圭ちゃん! どいて!」
 魅音がその手に持っていたスナイパーライフル――モシン・ナガン――を構えて、彼女に向けて発砲した。
 ほんの数メートル、弾丸の初速を理解している魅音は、この距離なら確実にあたると――確信していた。
 だが。嫌な音――金属音――が聞こえ、弾丸が対象に着弾しなかったことを悟る。
 彼女は左手に持っていた鉈で、当然のようにライフルの弾丸を弾いたのだ。
 そして彼女は、そのまま右手の鉈を振り下ろす――沙都子の兄の、悟史のバットを振り上げることすらできずに立ち尽くしていた、圭一に向けて。
「圭ちゃん!」
 魅音が叫ぶ。だが、その鉈は声よりも早く。命がまた一つ終ろうとして。
 また――耳障りな音が聞こえた。
 圭一の前に、大きな影があった。
 大振りの鉈を受け止めたのは、長く鋭い日本刀。
 最近出会った――スネークの仲間、と彼らは思っている――グレイ・フォックスが、彼女の鉈を受け止めている。
0131元本編 ◆k7GDmgD5wQ
垢版 |
2011/05/06(金) 00:28:51.94ID:WSxDSmK3
「……え、あ、に、忍者! ……さん?!」
 圭一がその姿を認識してびっくりした声を上げたと同時に。
「逃げろ」
 彼はそう、そっけなく言った。
 魅音が、まだ少し呆けたような圭一の手を掴み、強引に駆け出す。
 彼女は、その圭一達の姿を追いかけるように一歩、動いたが。
「どこを見ている」
 グレイ・フォックスが重心の崩れた鉈の一撃をあっさりと跳ね返す。
「鉈か……それも懐かしい」
 狐が再び、刀を構える。
 鋭い狐の牙のように、一瞬で敵の喉笛を掻き切るかのように。
 彼女は、その獣の構えに対し、両手に持った鉈をぶら下げるように持った姿勢のまま。
「………………じゃま、だよ」
 そう小さく言った。
 途端、高く跳ぶ。
 そのまま通路の天井を蹴り上げ、彼めがけて斬りつける。いや、その鉈を勢いのまま、叩き付けてくる。
 その動きを、フォックスは紙一重で避けた。
 受けることはしない。
 受けてしまえば――それは自らの牙が折られてしまうものであると、理解したから。
 彼女は狐に必殺の一撃を避けられたことなど意に介さず、相手目がけて横薙ぎにしたかと思えば、再び跳躍する。
 まるで小鳥が空で旋回をするかのように地面まで近づくと、跳ねてから天井をまた蹴りつけた。
 その動きで、両者の間合いは広がった――と、同時に、彼女は獣に対し背を向けると、一目散に向こうに向かって駆け出す。
 私の相手は、お前じゃないと言いたげに。
 その足を、獣は追いかけようとして――、止めた。
「確かに……お前の相手は俺じゃないな」
 そう言うと、狐は彼女が駆けていった反対側を向く。
 その向こうには瓦礫の山が――さらにその向こうには、彼が、そして自分の敵がいた。
 足が一歩その方向に向いたと同時に、かれの姿は再び掻き消えた。
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