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【没ネタ】未完成作品の墓場【殴りがき】 Part2
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0003創る名無しに見る名無し
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2010/08/18(水) 22:10:54ID:fkI7sIEM
こんなところがあったとは・・・
今描いてる創作がどうにもならなくなったときは、お世話になろうと思います。
0004創る名無しに見る名無し
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2010/08/18(水) 22:17:22ID:XrTfrKvb
ほっしゅっしゅ
自分もそのうちにお世話になります
00051/3
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2010/08/19(木) 00:33:12ID:5lPDTJB3
いつもは静かなマンションの一室。
それが三毛猫の皮を被った、小さな竜巻によって一気にうるさくなってしまった。

「ハルコ、皿」
「うーごーけーまーせーん〜」
「じゃあグラタンは無し。そうだ、カップ麺にしよう。お前が嫌いな味噌味の
カップ麺だ」
「あああん、ごめんなさいごめんなさい」

二人掛けのソファでだらりと横になっていたハルコが、カップ麺という味気ない言葉に
よって飛び起きる。
ハルコのグラタン発言が現実になってしまい、淺川は帰宅してからも忙しなく動く
羽目になっていたのだ。材料を揃え、鍋で煮詰め、具材を皿に盛って……
何故自宅で――それも恋人でもない女のために!――こんな労働をしなければ
ならないのか。だらだらとした動作で皿を持ってきたハルコの太ももに、淺川の
鍵尾がぺそり。不満を漏らすように当たっていた。

               ♪

淺川手作りの夕飯を食べてからというもの、ハルコの機嫌はとにかく良かった。久々に
美味いグラタンを食べただの、ホワイトソースが絶妙だの。
こいつが他人を褒める時は必ず何かが起こる。そう、例えば

「トランジット〜。お願い!お酒飲んでも良い?」
「だめ。無理。禁止。お前が飲むとろくなこと無いから」
「一口だけ!ね?お猪口で一杯分でいいからさあ…ね、ね」

要は酒だった。
わがまなな三毛猫姫がこれほど懇願しても、淺川は頑なに断った。だって本当に、ろくな
事がないのだから。
別に酒癖が悪い訳ではない。下戸でもない。ただ、とにかくだらしなくなってしまうのだ。
ある男は「彼女はファム・ファタールを見せる」とか、またある男は「橙色の長髪
くんかくんか」だとか。
ハルコは酒を飲むと、そこいらの男と寝てしまうくらい、だらしなかった。
それで結局、最後に慰めるのは淺川であり、寝かしつけるのも彼の役目だった。こんな事に
過去何度も遭っていれば、そりゃ嫌気がさしても仕方の無いことだった。
00062/3
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2010/08/19(木) 00:34:06ID:5lPDTJB3
「良いじゃない、今日くらい!どうせトランジットの部屋で飲むんだから。
どこにも出かけません!部屋から出ません!だからー…ね」
「半月前、まったく同じこと言って俺の部屋で飲んだよな?そんであっさり部屋から出て
慌てて追いかけて行ったら路上でドーベルマンの男とちゅっちゅしてたよな?
そんな奴をどう信用しろってんだ。世話かけさせんのもいい加減にしろよ」
「…ごめんなさい」

急にしおらしくなる。きっと他の男性はこの上目遣いとしょんぼりにやられるのでしょうね。
でも俺は違います。だってこの三毛猫、あっという間に態度が戻るんですから。
淺川がため息を吐き、ハルコの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。それに対しハルコが笑顔を
見せるが、その数秒後。彼女の顔から笑顔が消えることとなる。
足袋の足で全力ダッシュ。淺川が冷蔵庫を開け、1本だけ入っていた缶チューハイを勢いよく
飲み出したのだ。ハルコが声にならない声を上げ、淺川に走りより「ひどい!」だの「鬼!」
だの罵声を浴びせる。ジャンプをして缶を奪い取ろうとするが、悲しい事に身長差約20数センチ。

「ぶわははははは!ばーか!飲みたいって予告されりゃ誰だって自分で飲み干すっての!」
「うわあああん!」

ここでもまた子供の痴話喧嘩。淺川の喉が熱くなり、缶を持つ手に力が入る。それでも
何とかハルコが缶を奪い取り、最後の最後、ほんのちょっぴり残っていたチューハイを飲み干す。
それでも不味いのは、ハルコは一口でも酒を飲めば服を脱ぐということだった。

空の缶を片手に持ち、ふにゃふにゃとソファーに沈み込む。尻尾で床を力なくぺしぺしと
叩き、ジーンズのホックとチャックを開く。淺川が「ぱんつ見えてるぞ」と注意するが
ハルコの両耳はそれを逃がす。
何て奴だ、と思う。もし俺相手じゃなかったら襲われているに違いない、と淺川は
ハルコから空の缶を取り返し、飲み口に音を立てて噛む。
金切り音に、床に触れている斑の尻尾がぴくり。それに合わせてハルコが、傍らに
立っていた淺川の足を頼り無さそうに掴む。ついでにジーンズに爪が食い込む。
00073/3
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2010/08/19(木) 00:35:06ID:5lPDTJB3

「なに」
「ねえ、どこにも出かけないから許して。私のこと見張ってて」
「…あのねえハルコ。この場に居る男が俺じゃなかったら、どうなってるかちゃんと
理解してんの?」
「ごめんなさい」
「口先ばっかり」
「ちゅうするから許してー」
「間に合ってます」

小さい子供をあやす様に、淺川が床に座りハルコの頭に手を置く。愛の無いちゅうは
間に合っていると断っているものを、ハルコはまるで聞いていなかった。
半ば噛り付くように、淺川の唇にがぶりとハルコが唇を重ねていた。
ときめきも、どきどきもあったもんじゃない。まったくここまで渇いた関係などどこに
あるというのか。

「ここで寝てると冷えるぞ」
「ベッドに連れてって〜」
「嫌だよ、重いし」
「重くない」

噛み付かれた唇が熱い。きっと缶チューハイのせいだと、淺川は信じて疑わなかった。
00111/3
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2010/09/05(日) 09:00:05ID:pAYFJOkM
片桐アリサという女は、とにかく頑固で薄情だった。

楽しみにしていた雑誌の発売日になったら、例え大雨だろうが風邪をひいていようが
2本の足で歩き、目的地まで向かう。
「何だか今日は嫌な予感がする」そう思った日は、例え喫茶店のバイトがあろうが
外が晴天であろうが、絶対に出歩かなかった。しかし、その予想が当たる方が
珍しいのだが。当たった場合は大抵、どうでもいいようなことしか起こらない。
トイレが詰まったとか、自転車がパンクしていたとか。

そんな彼女も、外では人懐こいし愛想が良く、誰にでも好かれるようなお姉さんだった。

でも、それは「外」だけの話。

               ♪

喫茶フレンドでのバイトや、近場の雀壮で遊ぶことはアリサにとって空白を埋めてくれる
唯一の場所だった。

彼女はとにかく”無関心”という感情が、普段から強かった。

それでも「外」に居れば、客やマスター、知り合いと雑談することによって、普段の「愛想の良い
アリサ」を演じ続けられていられる。きっと「無愛想なアリサ」は見破られないだろう。
心の中でそれに安堵し、アリサは心地よさと絶望のような無関心さを交互に繰り返す。

(だってきっと、無愛想で冷たい私を見たら皆嫌っていくに違いないわ)

アリサにとって、人に嫌われるのは恐ろしいものでしかなかった。
13歳の頃、祖母が亡くなった。
果たしてその時、自身は悲しみを感じただろうか?
「アリサ、髪の毛が随分と伸びたね」と、骨と皮と皺だらけの手で、いつも頭を優しく
撫でてくれた祖母。アリサは微笑み、一言二言交わす。あれだけ可愛がってくれていたというのに、
今となっては祖母の声すら中々思い出せなかった。
――それは薄情というのだろう。
16歳の頃、飼い犬が亡くなった。
アリサが生まれた時から一緒に暮らしていた、柴犬のコロ。寿命だった。
それでも彼女は、一筋の涙すら流すこともなかった。家族や友人は「いきなりの事で、
きっと理解したくないのだろう」と同情していた。アリサはそれを知った時、ひどく
恥ずかしくなった。
――ああ!自分はなんて薄情で人で無しなのだろう!
00122/3
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2010/09/05(日) 09:01:06ID:pAYFJOkM
それ以来、彼女は「愛想の良いアリサ」をなるべく、できるだけ、ばれないように、
演じてきたという訳だった。頑固者のアリサは、きっとこの先、それを捻じ曲げることも
ないだろう。幸い、今のところ誰にもばれていないようだ。

               ♪

「栄太さーん、フリーで空いてるー?」

雀壮・デリカの店内に、明るい声が響いてくる。
床を鳴らすミュールの音、煙草の煙とは不釣合いな愛嬌のある声。フリルをまとったブラウス、
短いデニムのスカート。アリサが片手をふりながら、この雀壮の社長であろう”栄太さん”に
笑顔で歩み近づく。

「やあ、アリサちゃん。残念だけど閉店間際に来られちゃ無謀ってもんだぜえ」
「ええーっ…でもでも、私とおじさんとけーちゃんで三人!これでサンマできるじゃない」
「桂介はテスト勉強だとさ。アリサちゃんこそ、こんな夜更けに出歩いちゃ危ないだろう」

栄太さんが居るから平気だもの!自称最高の笑顔を返し、雀卓用の椅子に腰をかける。栄太が
無造作に伸びた自身の髪を、右手で触る。そして返答代わりにアリサの頭をぽんぽんと撫でた。
周りの人間から見れば、ヤの字に拉致されたいたいけな娘、という感じだろうか。

砂のように埋もれていく感覚を椅子で感じていると、栄太がぼさぼさの前髪越しに
まっすぐアリサを見つめ、ふいに尋ねた。

「麻雀しにきた訳じゃないんだろう」
「えー?」
「アリサちゃんはいつもそうだよな。賭けをしに来てる面じゃないよ」
「またまた!私が可憐でキュートで、こんな博打の場所に似合わないからって!それに私、
スリリングな遊び好きですよ」

どきり。
アリサの心臓が、時計の長針でさされたように動く。大丈夫、この人にはきっとばれてない。
私が空白を埋めているなんて、ばれやしないんだから!

精一杯、嫌われないように当たり障りの無い生温い返事をする。
店内の時計が時を刻む。秒針の音がやたらとうるさく感じる。きっと客が誰もいないせいだ、
きっと焦っているせいだ、きっと店内に音楽が流れていないせいだ。
秒針の音と合うように、アリサの鼓動も早くなる。
00133/3
垢版 |
2010/09/05(日) 09:02:06ID:pAYFJOkM
(麻雀しにきた訳じゃない?いいえ、私は遊びに来ただけよ。そうよ。ばれてない。
でも、でも麻雀をするのは、つまらない生活を、埋めるためだけじゃないの!)

「えへへ…閉店時に来ちゃってごめんなさい。また明日来ます!その時はけーちゃんも
誘ってサンマしてね、栄太さん」

半ば椅子から飛び跳ねるように、勢いよく立ち上がり足早に立去ろうとする。
駄目だ、駄目だ駄目だ、この人と居ると怖い!どうして今まで気づかなかったの!
頭をフルにして、自己嫌悪と「無愛想なアリサ」を抑える。

店から出ようとした瞬間、急にアリサの左腕が熱を伝えた。

「お遊戯はもうやめたら?アリサちゃん。ここは幼稚園じゃないんだから」
「…な、んの」
「ばれてるよ。目が違うもの」
「栄太さん、腕…痛いから離して」
「俺んとこにお嫁に来たら離してあげる」

くすくすとアリサが笑い、左腕を握っている栄太の手を払い除けようとするが、まるで接着剤かの
ように、それは離してくれなかった。

「ねえほんと、栄太さん腕…」
「うちにはさ、色んな人が来るけどアリサちゃんは目が笑ってないよねえ、いつも。
笑顔は可愛いけど、もっと心の底から笑ってみたら?今以上にキュートになるって」
「…だから何の話」
「ははは、怒れるじゃないの」

はっとして気づく。もうばれている。もう遅い。どうしてどうして!今までばれなかったのに!
途端にアリサの心の中に真っ暗な闇が訪れる。黒一色で塗りつぶされたように、もう笑顔すら
作れないように。

「アリサちゃんは可愛いなあ」

栄太がアリサの左腕を引き寄せ、柔らかく抱きしめる。煙草の匂いがアリサの長いポニーテールと
鼻にまとわりつく。

「…嫌だなあ、栄太さん酔ってるんですか?」
「ほら、また。演劇ごっこしてる」

口角は上がれど、アリサの両目はもう笑ってなどいなかった。栄太はそれでも、アリサを
離さなかった。
秒針の音が、お前にはもう愛想など無い、薄情で冷酷な女なのだと、叫び続けているように聞こえた。
0014創る名無しに見る名無し
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2010/09/06(月) 23:11:13ID:MzXaI1IT
おお、おもしろいぞな
0015創る名無しに見る名無し
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2010/10/29(金) 22:30:29ID:sQJYqn6I
 タバコに火をつけると麻紀子が横からそれを奪った。
 裸にうすいタオルケットを巻きつけ、俺の顔に煙を吹きつけた。
「これから?」
「ああ」
「よくも懲りずにいくわね」
 病院の面会時間は八時までだ。
 時計を見ると短針が六と七のあいだを指している。
 ベッドから抜け出し、ジーンズに足を通す。
 麻紀子の部屋はベッドと食器棚、マガジンラックがあるくらいで
女性のぬくもりも愛らしさもなく、ただ蜜月に利用するためだけの
空間のようだった。
 少なくとも俺はここで彼女を抱く以外のことをした覚えがない。
「明日の昼はどうする?」
「インスタントかダイエットで断食」
「ならメシを食いにいこう。一時に駅前、三番バス停前で」
 麻紀子は口からタバコを離し、ふかく煙を吐き出した。
 窓の外を誰かが横切った。
 ブラインドの隙間から差し込む光が俺と彼女のあいだで明滅する。
「三万」
 俺にむかって手を差し出した。
「いつから売春婦になった」
「そろそろ金取ってもいいんじゃないかって思い始めたところ」
 彼女と会うのはパチンコ屋かベッドの中だけだ。
 大学時代はさまざまな場所で時間を共有した。
 いつしか麻紀子に会わせる顔も時間も減っていったが、俺には
それが特別、悲しむべきことではないように感じられた。
 部屋に充満した紫煙を追い払うように手を振った。
「また明日な」
 俺は寂れたアパートの一室をあとにした。
0016創る名無しに見る名無し
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2010/11/01(月) 00:49:10ID:I0bvmRDK
 夏も終わりが近づき、日が落ちるのも早くなった。
 季節はいつも淡々とめぐり、時間が足をとめることはない。
 誰しも子どもから大人へ成長して社会の歯車に
組み込まれていくものだ。
 俺とて例外ではなかった。
 歯車になれない者は表の世界から姿を消し、
主張すらできない人間は裏にも表にも居場所はない。
 もはや生きているとはいえない、形としてのオブジェに
過ぎないのだ。

 病院に着くと面会時間が終わる寸前だった。
「こんばんは。もうぎりぎりですよ」
「いつもすみません。ひと目見るだけでいいので」
 八時まであと十五分足らず。
 一瞥するには五秒あれば事足りる。
「五分前には見回りますので」
「わかりました」
 ナースステーションを背にエレベーターで五階へ上がる。
 奥から二つ目の個室。飾り気はないが広く、清潔でいい部屋だ。
「ただいま、静子」
 月明かりがわずかに差し込むうす暗い室内で、
妻はしずかな寝息を立てていた。
 一年前からずっとこうだ。
 何を話しかけてやっても返事ひとつしない。
 新しい時事ネタも懐かしい思い出も、いまの静子には
べつの世界の出来事に過ぎない。
 そっと静子の唇に指をあてる。
 彼女に意識があればくすぐったがって払いのけるだろう。
 渇いた唇を撫でてやっても妻は眠りから覚めることはなかった。
0017創る名無しに見る名無し
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2010/11/01(月) 01:15:59ID:I0bvmRDK
 毎日から一日おき、二日おき、三日おき。
 いまでは週に一度になった見舞いを終えて病院を去ろうとした。
「こんばんは。来てくれてたんですね」
 駐車場でうしろから声をかけられてふり返った。
 薄手のカーディガンにこげ茶の地味なスカート。
目もと以外はほとんど静子に似ていない根暗な少女。
 あまり会いたくない人物だった。
「美穂ちゃんもお見舞いに?」
「お義兄さんが入っていくのが見えたので」
「今日はもう面会終了だよ。また今度にしたほうがいい」
 俺は逃げるように車のドアを開けた。
 ドン、と背中に重たいものがぶつかり、それは
逃がすまいと腕をまわして俺に抱きついた。
「……姉さんはどうでしたか?」
「良くもなってないし悪くもなってない」
「そう、ですか」
 俺を抱きすくめる腕のちからが強くなった。
 街灯が俺たちを照らし、地面にひとつの影をつくった。
 秋を感じさせる夜風が吹いた。
 逃げられないことから逃げる方法はただひとつ。
 すべてを投げ捨てて見なかったことにするだけだ。
0018創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/11/01(月) 01:45:50ID:I0bvmRDK
 美穂も大学を卒業して就職はしていたらしい。
 だが姉である静子が事故に遭ったショックで仕事が手につかず、
いまは実家で家事の手伝いをしていると聞いた。
 俺より二つ下の静子よりさらに三つ下だったので、
はじめて顔を会わせたときはまだ子どもだった。
 いつも静子の陰に隠れておどおどしたそぶりで様子をうかがう、
いたいけな少女だったはずの美穂もすっかり大人になっていた。
「……お義兄さんは明日も仕事ですか?」
「ああ、会社の奴隷みたいなものだから遅刻もできない」
 ホテルに泊まっていくわけにもいかないと暗に断った。
 美穂は腕枕に目をほそめ、俺の体にすがるように抱きついてくる。

 彼女は根暗ではあったが姉の静子よりも豊満な体つきをしていた。
 静子をありふれた標準的な女とするならば、美穂は容姿と性格で
多少の遅れを取るものの男を魅了する性質には長けていた。
「そうなんですか、残念です」
「美穂ちゃんも男をつくったらどうだ。できない話じゃないだろう」
「わたしはただの家事手伝いですから、そういうのは難しいです」
 そういう問題でないのは互いにわかっていたが
あえて言うことはしなかった。
 最愛の肉親を失った美穂はもちろん、それなりに妻を
愛していた俺も行き場のない気持ちを溜め込んでいる。
 見ず知らずの他人で憂さを晴らせるものではない。
 人となりを知っている人にこそ支えてもらいたいと思う気持ちは
けっして悪いものではないはずだ。
 ただし、それに罪悪感を覚えなくなるときがくれば、
きっと俺にせよ美穂にせよ、いまのままの関係を
続けていくことは難しくなるだろう。
「……美穂ちゃん」
「はい」
「もう一回いいかい?」
 朝までまだ時間がある。
 俺はむさぼるように美穂の唇を奪った。
0019創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/11/04(木) 08:32:07ID:xXLYx3zw
 物事がうまく立ち行かなくなることを俗にケチがつくというらしい。
 だが、俺もいい大人になったからそう思うのか、万事うまくいっている
人間などこの世に存在するのだろうか。
 若くして親類縁者を亡くす人もいるだろうし、事業に失敗して
路頭に迷う人もいるだろう。愛する人に捨てられることだって
あるはずだ。
 思うに、その人間が幸せか不幸せかを論じるのに客観性など
まったく必要ないのではないかとこのごろ俺はよく考える。
 それは体感しなければ実感となりえず、またそれを確かめることは
当事者にしかできないからだ。
 動物園でオリに入れられたクマをかわいそうと同情しても
エサに困らない生活に存外クマは満足しているかもしれないし、
貯蓄のない人を哀れんでも生きるか死ぬか、スリル満点の
日々を楽しめる人もいるかもしれない。
 ただひとつ、これは真理なのではないかとせつに思うのは
幸不幸には磁力のようなものが備わっており、幸せには
幸せが、不幸せにはなぜか不幸せが寄せ付けられる傾向が
あるということだ。
 この仮説はおそらく偶然性や運命論といった言葉からほど遠い、
納得のいく論理によって裏打ちされていると思われる。

 課長から呼び出しを受けた。
「渡辺、夕方は空いてるな?」
「急ぎの予定はありませんが」
「佐藤商事との会談が入った」
 眼鏡を指で押し上げ、禿げ上がった額をハンカチで拭った。
0021創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/11/22(月) 03:49:09ID:EGhB68Kb
>>15-19
これは気になるだろ

でもここに投下したってことは、未完なんかな?
あるいはボツにしたものか? 面白そうだけど…
0022創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/11/24(水) 09:13:57ID:WNNnyb6E
昼下がりのぼんやり停滞した空気に、微かに混じる嗅いだことのある香り。
どうやらお隣りさんの昼食は、ラーメンのようだ。
持ち帰った仕事の山をユンケルに缶コーヒーという低エネルギーで崩し中の俺には、なんとも辛い誘惑だ。
ちゃぶ台に積んだ書類とパソコンモニタを付き合わせながら頭脳をフル回転させ、誘惑に耐える。しかし5分もたたないうちに姿勢はそのまま、思考は何処かへと消え去ってしまった。じわりと唾が湧く。

ゴマ油とにんにく、にらかな、ベースは味噌……いや醤油かと微かな香りでは我慢できず、コソコソベランダへ近づいて忙しく鼻をうごめかせる。
閉じた瞼の裏側には白地に朱の鳳凰が縁を飾った丼、ネギが山のように盛られ、肉厚のチャーシュー、ぷりっとしたしなちくに深緑にも見える焼き海苔を備えた、魅惑の醤油ラーメンが出現していた。
素敵な香りと共にズルズル、ズ、と堪らない音がお隣りから続けざまに聞こえる。
溜まった唾を飲み下したら、熱い鳥ガラ醤油風味のスープと、それに混じった葱の香りが鼻先に抜ける至福を思い出し、妄想と現実が触れ合いそうに近づく。もうあと三回麺を啜りあげる音を聞いたら、 葱のシャキシャキした食感までもが蘇りそうだ。
「限界……」
残り少ない全身のエネルギーを足に集中させて、フルスピードで俺は外に飛び出した。
仕事なんか知らない、資料なんか知らない、会議なんて糞ったれだ。俺は今、ラーメンを食すんだ。
一番近いラーメン屋を目指しながら燃え尽きる前の輝きで俺の足は、ボルトの様に筋肉をしならせ、風をきって跳び進む。徹夜による鈍痛がする事なんて、今は大した問題じゃない。
全身のエネルギーを一カ所に集めたため頭が回らずに着の身着のまま、裸足で駆けてく陽気なサザエさんとは俺の事よ。
0023創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/11/24(水) 22:18:53ID:J8vaQtvK
サザエさんかいwww
財布忘れて食えなかった orz とか?


食べ物を美味しそうに描写するって、けっこう難しいよね
以前そんなお題があったのを見た(ハードル高くて挑戦しなかったけどww)
002422
垢版 |
2010/11/25(木) 12:37:27ID:TVnZGV8Z
食べ物描写練習したかったんだけど、難しくて投げた。そもそもラーメンすきじゃなかったんだ…
餃子でリベンジ練習してる
0025創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/11/29(月) 03:17:53ID:voFsIW9w
http://loda.jp/mitemite/?id=1572.jpg

昔描いた漫画。もはやアナログでは描けなくなってるのでここに埋葬。
0026創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/11/29(月) 20:44:39ID:JfH//f2R
ちょっと読んでみたくなってしまうんだがww


デジタルで描いた版が見られるのはどこですか?
0027創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/01/05(水) 22:15:11ID:dcM9Lm57
夢の中で聞いた話。

 ある山中に祠が建っていた。その前を渓流が流れており、旅をする者は
その渓流に沿って山を登ったり降りたりする必要があった。

 深い山の中である。飢えと疲労で動けなくなる旅人も少なくなかった。
そんな旅人たちに呼びかけるように、心の中で声が響くという。
その声に導かれるようにして祠の近くまでたどり着くと、旅人の目の前には
小さな扉があった。

 扉の中には小さな釣竿と折釘が入っていた。餌は無い。川の流れも急である。
旅人は思う。こんなもので魚が釣れる筈が無い、と。
しかし心の中に声は呼びかける。
 その声に従って、旅人は流れに糸を垂れた。竿を片手に、
もう片方の手で折釘を持ち、岩を打つ。
旅人には聞き取れるか聞き取れないかという、高く澄んだ音が響き始める。

 程なくして、魚が現れた。旅人の目には魚の姿がはっきりと見えた。
そして、魚は餌の付いていない釣針に食いついた。


 中には、その釣竿と折釘さえあれば魚が釣れると考え、それらを持ち去ろうと
した者もいたのだが、




※ ここまで思い出しながら(多少膨らませて)書いてみたが、後は忘れてしまった。
   夢の中で見つけた良いアイデアを真空パックして保存できる方法は無いものだろうか。
0030創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/01/30(日) 02:33:10ID:Yea8Z8GW
 夜空にまたたく星は数知れねども、この手に掴める星はひとつとして無い。
 その歴史の大半を、重力という井戸の底に囚われたまま綴ってきた人類にとって、
この言葉は永らく真理であり続けた。
 制御不能となった人工ブラックホールが太陽に落ち、小規模な超新星爆発が
不可避のものとなったとき、人々は決断を迫られた。太陽系全域が吹き飛ぶという
未曾有の人災から逃れるために、故郷を追い出された宇宙の迷子となるか。
あるいは滅びゆく星たちと共に死を選ぶか。
 大半の人間は前者、外宇宙への脱出を採った――が、後者を実行した人々もいた。
事態を楽観視していた者、生地の運命に殉ずることを選んだ者。最も多かったのは
様々な事由から脱出船に乗ることを許されなかった者だった。そもそも全人類を
脱出させるだけの船を用意する時間などあるはずもなかったのだ。
 限られたパイを奪い合って、太陽系最後の戦争が起きた。この戦いと、
ついに訪れた恒星爆発の衝撃波によって塵となった人命は、合計すれば
当時の総人口の半数に上るとも言われる。

 夜空にまたたく星は数知れねども、この手に掴める星はひとつとして無い。
 事ここに至って、生き残ったすべての人はようやく知る。今まで無意識下で
常識だと思い込み、大衆に地球人たることを強要し続けたフレーズは、
しょせん出来の悪いポエムの断章に過ぎなかったのだと。
 救世主が現れることなく世界が終わり、二千年以上続いてきた西暦が廃されたとき、
人類は何を失い、何を得たのだろうか? 悲嘆に暮れる人々を星の大海へと導き、
弁舌巧みに彼らを煽り立てた指導者の言が今も残る。

「諸君、この船出は人類誕生の瞬間である。往古、人類は類人猿より進化して地上に現れた。
 しかしこれは、人類を一つの生き物として見るならば、せいぜい胚が生まれた段階でしかなかった。
 ガガーリンが宇宙に軌跡を残し、やがてスペース・コロニーで暮らす人が現れるようになった
 時でさえ、胚が子宮に着床した程度のことと言っていい。
 先人は言った。『夜空の星は数知れないが、この手に掴める星はひとつも無い』と。だが、
 見るがいい! ヒトはその手に届かぬ星を掴むべく、自らが高く飛ぶことを覚えた。
 核融合エンジンが吐き出す、蒼きプラズマの光輝を翼として、遥けき大宇宙を翔ける船を作り上げたのだ!
 我々はこの喪失を忘れまい。過ぎ去りし日々を永久に悼もう。だが、同時に今こそ我ら人類が、
 太陽系という子宮より出でて世界に生まれ落ちる瞬間であると、私は確信する! 
 前途に広がるはとこしえの夜空、苦難も危機も待つであろう。しかし、大いなる母の胎内で
 過ごす数千年に培ってきた叡智は、必ずや我らを新天地に導いてくれると信じている。
 人類よ、涙を拭い歩みだせ! 言語や文化の隔たりを越えて手を取り合い、共に久遠の彼方で
 輝く星へとその手を伸ばそうではないか。
 誇りあれ、我ら『銀河船団連邦』に。栄えあれかし、総ての人類に――!」

 その言葉が数万隻の移民船を駆け巡り、狂騒とも言うべき賛辞の唱和が無音の宇宙に
高らかな残響を刻んだ、記念すべき統一銀河暦(C.G.C)元年から六世紀あまり。
 時はCGC暦0614。直径およそ十万光年の銀河系は、その七割以上を人類の手で開拓されていた。
0031創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/01/30(日) 02:42:24ID:Yea8Z8GW
「浅薄なアジテーションだな」
 エネルギー・スクリーンの投影面を絶え間なく横切る雨によって著しく歪んだ映像の
中で演説する男に、青年は簡潔で手厳しい評価を下した。

 その映像は連邦発足当初の指導者、フェリックス・アドラーが打った伝説的な演説時のものだ。
連邦政府広報では未だに名演説として賛美し、毎日のようにこうして垂れ流している。
 が、青年に言わせればこの『煽動』の価値は「これほどチープな演説で心を動かされるほど
動転していた当時の民衆」の心境が大いに推察できる点にしかない。猜疑も批判も心に余裕の
ある者しか口にし得ないものであったし、そうした人間は決して多数派ではなかった。

 むろん彼がそんな映像を好んで見ているはずもなく、それはビル群の壁面近くを回遊する
浮き看板から出力されていた。こんな地上近くで飛ばしたとて、宣伝効果は望めないだろうに。
 無価値と断じた過去の映像から目を離した青年だが、代わりに視神経が認識した「現在」も、
さして感慨を呼び起こすものではなかった。ゆうに数千メートルの高さで林立するビル群はその頂を
雲の中へ届かせ、低空にたゆたう黒雲の天蓋を支える柱として、地上に暗影を投げかけている。
 ビルの隙間はエアカーやエアバイクの類が飛び交い、その数は高さに比例して多くなる。逆に言えば、
その男が両の足で歩む地上付近などは殆ど人がいない。生まれてから一度も大地を踏まぬ人間が
少なくないことで知られるこの町において、地上はスラム同然の扱いを受けているのだ。
 青年は再び浮き看板に目をやり、理想論とすら呼べぬ妄言を吐き続ける煽動屋に無言の野次を投げた。

 ――人類文明の中心地にしてこの有り様じゃあ、あんたの描いた青写真はとうの昔に忘れ去られたみたいだな?
 昼間から薄闇に包まれたこの都市こそが、統一銀河星団連邦の政治機構の中枢たる地。
 主星アースガルドの赤道付近に位置する、“星都ガストロープ”。
 晴天であれば、ビル群の鏡のような壁面に乱反射した陽光が蒼穹をバックに絶え間なくきらめき、
息を呑むほど美しい街のはずだ。しかしその美景も、視界を灰色に染めてしまう豪雨に見舞われては
片鱗すら窺うことができない。

 もっとも、浮浪者らを尻目に歩を進める『彼』にとっては、目的地まで歩けるだけの道があれば、
雨などいくら降っても構わなかった。どうせその一滴とて、防雨力場を抜けて服を濡らすことはできないのだ。
 力場の表面を、卵形のカーテンとなって流れ落ちる水越しに見える、ひときわ巨大なビル。
それこそが彼の目的地、連邦宇宙軍本部であった。


↑プロローグで力尽きたスペースオペラ(´・ω・`)
いま読み返すと設定が甘すぎベタ過ぎで
過去の自分をタンホイザに叩きこんでやりたくなります
0034創る名無しに見る名無し
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2011/02/05(土) 15:15:22ID:+qSRTgFg
こんなところが有ったとは。流石は創発板。
スレの空気が変わって、投下出来なくなった長編ネタを抱え込んでいる自分には
正にうってつけの場所。

書き殴りで恐縮ですが、近日中に投下させて頂きたく。
003634
垢版 |
2011/02/13(日) 14:12:22ID:mP3UeJUa
>>35
現在規制中の為、転載依頼且つプロットの形で投下致します。申し訳ありません。


 昨秋、ネット世界に忽然と現れた謎のキャラクター、日本鬼子とは何なのか?
 東方やボカロの様な現物を持たないキャラの為、その正体を言霊が実体化したものと
して、それを説明・表現するSSを作成した。

 @ キャラの特徴や外観等は、まとめwikiで構築中のものを参照する
    まとめwiki
    http://www16.atwiki.jp/hinomotooniko/
 A @の都合で、作中の時間は現実のそれにシンクロさせる(リアルタイム進行)
 B 鬼子自体が構築中のものの為、地の文は周辺のキャラのものとする
 C 周辺のキャラの物語を主軸とし、オチを先述する事によって時間軸をずらし、現実
   時間との差異を物語進行の原動力とする
 D 言霊というものに対する認識を強調する為、舞台と登場人物を日本と米国の二箇所
   に設定する(但し中国関係は極力出さない)。
 E 鬼子の代表デザインが決定した時点で前半の、小日本の代表デザインが決定した
   時点で後半のオチを書く程度の段取り

【プロット】
 ・米国での舞台を国防総省とし、主人公はそこの所員(ケン)とする
 ・ケンは日本通の米国人とし、まとめwikiも作中で見させる(ネット漬けの皮肉)
 ・サイバーテロの電気信号が実体化した“虎”(悪役)を登場させ、ケンとそのボスの
   眼前でこれまた唐突に鬼子を登場させ且つ退治するシーンを見させる
 ・ケンに、それらは人間の認識の段差が生み出したものと推測させる(オチ)

 ・ケンの同僚であるクリスをお台場に登場させ、鬼子・小日本と遭遇させる
 ・クリスの暗い性格を表現しつつ、それが外部から宿らされた悪心である事を、鬼子の
  祓い(萌え散らし)によって表現する

 ・(幕間・ヨタ話)クリスから土産として渡された銀の銃弾で、ケンをまとめwikiの
  世界に入れ、その中でサブキャラ達から、仕事は真摯な行いが大事との示唆を与える

 ・国防総省内の局間ミーティング。そこでサイバーテロに関しては、CIAの関与が有る事
  を示唆。鬼子の存在はケン達の極秘扱いになっている事も
 ・鬼子との恋愛的な雰囲気を排除する為、ケンに適当な女性を宛がう。話には絡めない
003734
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2011/02/13(日) 14:13:27ID:mP3UeJUa
 ・(廃村編)日本での主人公・山都 武士(以下タケ)を山奥の廃村に登場させる
 ・タケは不動産屋の外注(ハウスキーパーという架空の職業=ニートの皮肉)
 ・そこで鬼子・小日本と会わせ、タケに犬の埋葬をさせる
 ・タケに犬の形見であるペンダントとUSBメモリを入手させる
 ・ケンに連絡をとらせる(学生時代の友人という設定)
 ・役場の人間(悪役に操られている)を登場させ、鬼子に撃退させる
 ・虎と鷲(電脳の獣)を登場させ、鬼子に苦戦させる
 ・狗(狛犬の片割れ)を登場させ、鬼子を助けさせる
 ・在日米軍の航空機を登場させ、悪役の親玉は米国由来である事を示唆する

 ・(幕間・謎解き編)USBメモリの中身を解読する話
 ・鬼子との恋愛的な雰囲気を排除する為、タケに妹(巫女)を宛がう。
 ・タケとケン、それぞれに謎解きをさせる。着眼点と導き出された答えの違いから、
  現実での言霊の存在を示唆する
 ・タケを不動産屋に走らせ、獅子(狛犬の片割れ=悪役の親玉)に襲わせる
 ・ケンには中身を対虎のワクチンであると正しく見抜かせる
 ・クリスを凶行に及ばせ、ケンとボスを昏倒させる

 ・(虹編)夢の世界で、ケンと鬼子に禅問答をさせる。中途半端に終わらせる
 ・妹と人化した狗をタケの元に向かわせ、助ける
 ・獅子を廃村に逃がし、タケ達に追いかけさせる
 ・(鬼子視点)クリスが不動産屋の社長と会う
 ・(鬼子視点)社長は元内閣調査室の室長であり、タケの元上司である事を示す
 ・(鬼子視点)虎や獅子は左前になったCIAが開発したものであり、今はウィキリークスが使用
  している事を表す。また、クリスはその尖兵であった事も
 ・(鬼子視点)クリスに改心を吐かせ、同時にCIAからの襲撃に遭わせる
 ・復活したケンとボスに、市警相手にワシントンDC内で派手なカーチェイスをさせる

 ・(オチ編)クリス・ボス・ケンを国防総省内に集める
 ・タケ・狗・妹・小日本に、廃村で獅子を追い詰めさせ、獅子の抵抗に遭わせる
 ・狗は鬼子達を新時代の神と認め仕えようとするが、獅子は拒絶した過去を語らせる
 ・ワクチンは社長の犬に憑いていた狗の自作である事、またそれをエサにして廃村に
  獅子をおびき出そうとした事を語らせる。廃村は社長の実家、鬼子とは無関係
 ・クリスに社長から渡されたワクチンで、国防総省内のサーバを健全化させる
 ・が、CIAに唆された他の局員たちの抵抗に遭わせる
 ・タケに獅子を調伏させる。獅子に反省の言を吐かせるも、逃亡させる
 ・獅子の調伏の影響でCIA絡みの人間の勢力が消滅した事を表す
 ・残った凶悪な電脳の獣を、鬼子に撃退させる。その様子が全米に放映されてしまう
 ・それで鬼子を怯ませ、ケンに銀の銃弾を発射させる事で獣退治を完遂させ、最後は
  人の力である事を表す

 ・(エピローグ)ビッグサイト近くのホテルのレストランに集まった日米の面々
 ・眼下に広がる冬の祭典の様子を眺めさせ、笑わせたりウンザリさせたりする
 ・それを遠くの高層ビルの屋上(電脳的に空中庭園の設えになっている)から
  笑顔の鬼子と小日本が眺めていて、幕。


 ……という様なお話だったのですが、虹編を始めたあたりでどうにも投下出来る様な
雰囲気ではなくなって来た為、作製を断念し現在に至ります。
 こうして書き出してみると、思ったほど大した話ではなかったなと苦笑しきりです。
 その事に気付かせてくれた、この書き込みの機会を与えて下さったこのスレと>>35さん
及び転載頂きました方、また該スレで私の駄文をお読み下さいました方々へ、心からの
感謝を申し上げます。

 ありがとうございました。
0038創る名無しに見る名無し
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2011/03/03(木) 03:27:51.56ID:TlY+4W8C
何かか爆発してしばらくたったころあさみはようやく気がついた。
しかし首都にいたはずのあさみは砂漠の中にいる。向こうを見れば首都がみえている。
あさみが起き上がろうとしたらあることに気づいてしまった。それはあさみの首から下がどっかに行ってしまったのだ。何かおかしいと思ったら首から下が無い。大変深刻な状況のはずだが実はあさみには再生機能が備わっているので妙に落ち着いていた。
ところがなかなか再生できない。理由はエネルギーが足りないからである。
そこに一人の少女が通りかかった。あさみは必死に叫んだ。
その少女、ひとみは生首が必死に助けを求めていることに驚愕するも取り合えず近寄りエネルギー補給を施したのだった。
そしてあさみは無事再生したものも全裸である。二人は近くに転がっていたあさみの元胴体から上着を剥ぎ取りあさみに着させた。
二人はあさみの手足を探したが見つからない。ようやく下半身を見つけたらズボンが同じなだけでよく見ると男の下半身だった。
二人は興味にかられズボンのファスナーを開けようとしたその時、やめろ!という少年の怒声が聞こえてきた。
その声の主は寝袋から不十分な再生をした体を少し出してやってきた。その少年、彰は二人から下半身を奪い下半身から服を剥ぎ取ったと思ったら何と自分の局部などを食べたのだった。
これにはあさみとひとみも青ざめるも完全に再生した彰は以前よりパワーアップしたといって寝袋から出てきた。
そして心臓と肝臓を探すといって彰は上半身裸のままどこかに行こうとした。
0039創る名無しに見る名無し
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2011/03/05(土) 14:28:00.29ID:8TINw80Q
何年か前にワードパッドに書いた架空歴史(教科書風)

・中国と朝鮮の革命
中国では列強による植民地支配とその言いなりである政府への不満が強まり、暴動が頻発し革命へと発展した。
危機感を抱いた列強諸国は中国へ軍隊を派遣し、イギリス・フランス・アメリカ・イタリア・ギリシャの五カ国からなる連合軍が
革命政府の成立した広東を占領、ドイツ軍も権益のある山東半島に出兵し、ロシア軍は満州を占領下に置いた。
こうした列強諸国の侵攻を前に革命軍は粘り強く抵抗を続けた。
朝鮮でも中国の影響を受けて革命が起こり、朝鮮王朝を倒し朝鮮共和国が成立した。しかしアメリカの艦船と交戦した
江華島事件をきっかけに列強の侵攻を招き、朝鮮南部は日本・フランス・キューバの三カ国連合軍に、北部はロシア軍に
占領され、漢城と平壌にそれぞれ傀儡政権が成立した。しかし革命派は列強の支配に対しその後も抵抗を続けた。

・ロシアの北京掌握と日本による南京政府樹立
華北では革命軍の勢力が優勢になり、北京政府の親露派は状況を打破するために満州のロシア軍に援軍を要請した。
ロシア軍は革命軍の鎮圧を名目にモンゴルと中国北部一帯を占領し、北京政府にクーデターを起こし親露派に政権を独占させた。
一方大陸の権益拡大を狙う日本は中国南部に出兵し、革命軍の一部と手を結び南京に傀儡政権(南京政府)を樹立した。
このことは革命派や中国人民だけでなく米英など列強諸国の反発も買った。
0040創る名無しに見る名無し
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2011/03/16(水) 20:31:02.14ID:Fu9nmC1z
社会控え室


社会「おい! どういうことだよ!」

少年「何がだ?」

社会「俺のセコンドは少女ちゃんがやってくれるって話だったろ!
   どうしてお前が来てるんだ! むさ苦しい!」

少年「あいつなら、中庭の花の元気がないとかで、手入れをしなきゃいけないから
   来られないって、もう何度も言っただろう」

社会「少女ちゃん、今日は庭のことは用務員に任せて応援に来てくれるって言ってたのに!」

少年「そんなに庭が心配なら、社会なんか放っておいてそっちを見に行けって、
   理事が強引に決めてしまったからな」

社会「余計なことを……」

少年「まあ、向こうが一段落したら応援に来るんじゃないか?
   それまでに負けてなければの話だが」

社会「どうせすぐ負けるんだろうみたいな目をするんじゃない!
   馬鹿にしやがって! 少女ちゃんが来るまで絶対勝ち残ってやる」

少年「どうだかな」
0041創る名無しに見る名無し
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2011/03/16(水) 20:31:25.80ID:Fu9nmC1z
串子控え室


アジョ中「それにしても、今まであんたどうしてたんだい?
     G解散からずいぶん経つが」

串子「なに、屋台を引いてほうぼうさまよってただけだよ。
   Gがなくなっても、求めるものは変わらない。
   あんただって一緒だろ? アジョ中」

アジョ中「俺は鯵クーダだ。なるほど、姿は見えなくてもどこかで
     精進は続けてたってわけだ。なら、今回も期待できるな?」

串子「もちろんだよ、アジョ中」

アジョ中「鯵クーダだ。前回は一瞬の隙を突かれて、一回戦敗退となったが
     あんたの潜在能力は上位入賞者にも匹敵する。それは俺がよくわかってる」

串子「それに、今回は隠し球もある。伊達に放浪をしてたわけじゃないってことを
   新必殺技で見せてあげるよ、アジョ中」

アジョ中「鯵クー……何!? 必殺技? それはどういう――」

係員「串子さん、まもなく試合のお時間です。会場へ移動を」

串子「さて、一暴れしてこようかな」
0042創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/03/16(水) 20:32:42.73ID:Fu9nmC1z
闘技場


ワーワーワー

アンテナ「さあ、数々の激戦を生んだ一回戦も残すところあと一試合となりました。
     最後の一組は一体どんな戦いを見せてくれるのでしょう」

アンテナ「西側入場門! 前大会からお馴染み! 串子がチャイナ服で登場です!」

ゥォォォォッォォン!!!

串子「フフフ……前のような不覚は取らないよ」

アンテナ「東側入場門! どう戦うのか高校教師! 社会です!」

ゥォォォォッォォン!!!

社会「対戦相手の娘といい、この大会、結構カワイコちゃんが出場してるな」

少年「相変わらず気持ち悪い奴だ」


よし子「武器の持ち込み以外は全てを認めるぞーっ! いいなーっ!?
    それでは試合開始っ!」

ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!

アンテナ「一回戦最終試合開始です!!!!!!!!」
0047自作で使いどころが無くなった回想
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2011/03/22(火) 15:57:36.79ID:MrZCmaAd
 ―幕間劇 呪われし英雄―

 男は――眠っていた。
 永い眠りの中で、久遠の悪夢を見続ける。
 ただ観ることしか出来ぬ、それは贖罪。
 それだけでよかった。彼は敗残者なのだ。死んでいった友たちに続くことすら
許されぬ男には、己を呪縛し封印することしかできなかった。
 何らの償いにもならぬ逃避だと、心の底では知れども。

 しかし――幾星霜のあいだ光が射すことのなかった地底に、白い燐光をまとって
訪れる者があった。その人物は黒い外套に身を包み、貌形は影となって見えず。
「安心したわ。“彼”より先にあなたを見つけられて」
「……何者だ」
 呪いもて自縛せる男は問う。かつて大蛇のごとく地の底を這った水脈の抜け殻、
ここミドガルズオルム大空洞に入って来られる時点で、ただ者ではありえない。

「とりあえず、リューネと名乗っておくわ。あなたの力を借りたいのだけれど」
「帰るがいい。私が成すべきことはすべて、成されぬままに終わったのだ」
 そう言って、男はわずかな目覚めこそ夢であったかのように、果てしない悪夢の
淵へとその精神を沈めてゆく。呪縛は彼自身でさえ破れない。
 破れるとしたら――かつての彼と同じ力を持つ者か、その敵だけだ。
 そのはずだった。

「いいえ、あなたはまだ存在している。あなたが死ねないのなら、その使命もまた
 存在し続けるのよ――たとえ、ラストブレードは次代に受け継がれようともね」
 黒い外套の女がそう言ったとき、男はにわかに時空が『ずれる』のを感じ取った。
同時に、彼を縛り付けていた強力な呪いが、なんの抵抗もなく無力化される。
 ありえないことだった。この力は、まさしく。

「剣を介して流れ込んだ残留思念が、これほどの力を与えているのね……充分よ。
 守るべきもの、戦う理由は失ったかもしれない。けど、あなたにはまだやれる
 ことがある。だから、お願い――ディオノメ」
「どういうことだ……なぜ私の名を知る? まして貴様、“奴”ではないはずだ。
 それがなぜ、“奴”と同じ力を……」
 女は婉然と微笑んだ。
「ちょっとね。複雑な事情があるの」
0048創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/04/21(木) 22:24:26.50ID:Jh6GmyYe
「ぽぽぽぽ〜ん」
共用冷蔵庫の扉に貼ってあるアドバタイジングモニタに
ここ数日でいやというほど目にしたCMが映った瞬間、
ぶしゅるるるるぴー、と音を立てて手元の1.5?コーラの栓が弾けとんだ。
「?あっ!?」
慌てて飲み口を親指でおさえるも、コーラは茶色い泡の奔流となって飛び散り、
俺の頭やら冷蔵庫やら休憩室のこきたない壁に降り注いだ。
コーラのシャワーが落ち着いた所で、中身を確認すると、半分に減っていた。
思わず舌打ちする。
くそっ! 誰か思いっきり振りやがったな!
辺りを見渡せばぷつぷつと泡の立つ茶色い水たまりがそこかしこにできている。
「わちゃー…」
情けない思いでとりあえず雑巾を探そうとしたその時、頭上のスピーカーから
サイレンが鳴った。
『緊急召集。第7から第13管区で信号停止。信号員は至急担当管区に急行せよ』
今日はツイてなさそうだ。
俺は片手に雑巾、もう片方に半分に減ったコーラを持ち、ため息をついた。

大雑把にコーラの後始末をして現場に向かうと、同じ隊の隊員たちはすべて
持ち場についていた。やばい、と思う間もなく隊長の怒号が飛んできた。
「遅い!! 何をしていた!!」
「すみません!」
反射的に答えて、敬礼する。だが、隊長はぎらりとナイフのように光る眼で
俺を睨みつけている。
「この非常時に何をしていた! 理由を言え!」
コーラがこぼれて片付けていました、と言っても眉を吊り上げている
隊長に分かってもらえるとは思えないが、どうせウソをついてもばれるだろう。
俺は直情的でまじめ一本槍のこの隊長が苦手だった。
「は、こぼれたコーラの後始末をしていて遅れました」
「コーラ?」
「は、休憩室の冷蔵庫にあったコーラを飲もうと栓を明けた所、
突然噴き出てきました。いたずらで誰かが振ったものと思われます」
「……」
ビンタの一つも食らう事を覚悟して言ったが、意外や隊長は表情を
いつもの無愛想に戻し、わかった、と言って持ち場につくよう俺に命じた。
しかし、踵を返した俺の後ろでぶつくさ言う声が聞こえた。
「まったく…猿の手も借りたいというのに…」
「それ、間違ってますよ、隊長。正しくは猫の手です」
思わず訂正すると、隊長はこちらを見てふんっと冷笑した。
「阿呆。猿とはお前の事だ。猫では可愛すぎるだろう? マヌケな猿め。
さっさと持ち場につけ!」
そう言い捨てると靴音を響かせて行ってしまった。
聞こえるように言いやがったんだな、性格悪い。
やっぱり、あの隊長は苦手だ。
0049創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/04/21(木) 22:29:50.53ID:Jh6GmyYe
持ち場の信号はすべて停止していた。
複雑に絡み合う道路を走る車は、普段は複雑に組み立てられた
信号システムが完璧に制御しているが、電力の供給がなければ当然使い物にならない。
そこで俺たち信号員の出番となる。
こう言うとさも高度なことをやるような感じだが、何の事はない、
俺たちは昔ながらのアナログな手旗信号で交通整理をするのだ。
しかし、この階層都市では三叉路は当たり前、場所によっては上や下の層に
行く道もつながっている立体四叉路などもあり、手旗だろうが何だろうが
信号がなければ事故は免れえないのだから責任は重大だ。
しかし…責任ある仕事とはいえ、馬鹿の一つ覚えのように手旗信号を繰り返すのは
あまりぱっとしたものではない。小さい頃、停電したときに
信号塔に登って旗ひとつで車の流れを操る信号員がとてもかっこ良く見えて
この仕事に就いたというのに、実際は停電したとなれば寝ているときでも叩き起こされ、
ひたすら旗を振る日々。目立つような業績が立てられる訳でもなし、世間から顧みられもせず、
したがってモテない。
何を憧れてたんだか、昔の俺は。
あほらしい。
俺は信号を無視して進もうとした車に鋭く警笛を鳴らして「止マレ」のサインを出した。

「あー…疲れた…」
「お疲れ」
休憩室の扉をあけた俺に同僚が声をかけた。
あの後ほとんど休みもなく、あっちこっちの停電現場に回され、結局12時間近く旗を振っていた。
「こんなのありかよ…腕がぱんぱんだ」
「まあなあ、一応俺らも軍属だし、緊急時はこんなもんだ」
「あーあーあー、理想と現実はどうしてこうも違うものなのかねぇ」
缶コーヒーを飲みながら雑誌を見ていた同僚は目を上げずに薄く笑った。
「理想?」
「そう。小さい頃はカッコイイと思ったんだがな。
停電の危機を救う紺色の制服!翻る紅白の旗!あっ危ない!お嬢さん!
いえいえ、御礼には及びませんよ、仕事ですから!みたいな!!」
「たのしいねぇ」
「あーあーあー何か大きな手柄立ててみたい!昇進したい!
んでもって、女の子にモテてみたい!」
「そうかー、まあ、がんばれ」
「ううう…」
気のない相槌にため息をついてソファに沈み込む。
「そういや、お前」
同僚がやっと雑誌から目を離して言った。
「コーラ、開けたんだってな」
「それがどうした。要らねえよ、どうせ気が抜けちまってる」
「ああ、飲まない方がいい」
「全く、誰だか知らんが思いっきり振っておいたんだぜ、あれは。噴水みたいに噴き出してきた」
愚痴を言い始めると同僚がまた興味をなくしたように雑誌に戻ったので、俺はTVをつけた。
『ま・ほ・うのことばで たぁーのし〜ぃなかまぁ〜が』
鬱陶しい例のCMが流れてきたので、すぐに消す。
ソファに凭れて安っぽい天井を見上げる。自然と溜息が漏れる。
「つまんねー…」
「おい」
「何だよ」
「大変なことになった」
同僚の目線の先の道路状況をモニタしている液晶を見た。
一番交通量が多く、交差点が連なっている第38から49路に事故を表す
赤い点が点滅し、渋滞を表す真っ赤な線が道路を埋め尽くしていく。
「事故だ」
そう同僚がつぶやいた瞬間、頭上のスピーカーががなり立てた。
「緊急召集。事故発生。総員各隊ごとに集合せよ」
0050創る名無しに見る名無し
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2011/07/08(金) 11:25:29.68ID:HqPhFgK3
7月4日(月)7:00

リング・らせん、という創作作品の中に「貞子」というホラーヒロインが登場したのは、
今からもう数年前のことで、当時の俺は原作の小説を先に読んでいたため、その姿に儚い
薄幸の美少女を思い描いていたものだった。

ところが映像化されるにあたって俺の目の前に現れた貞子は、長い髪で顔を隠した、恐ろ
しい目つきを持つ奇怪な女であり、その登場シーンのショックと恐怖から、俺の記憶の中
にいた美少女は、得体のしれない不気味な生物へと置き換えられてしまった。

最初はその違和感に嫌悪すら感じていたものの、貞子のビジョンはここ数年のホラー作品
に登場する幽霊(というか妖怪というか)像に示されるとおり、模倣され、デフォルメ
され、ある種恐ろしい女の「記号」のように扱われている。俺も時が経つと共にいつしか
その扱いに感化され、今となっては増殖しすぎた「貞子」の姿に、どちらかと言えば魅力
すら感じざるを得ない。

――さて、何故今このタイミングで俺がこんなことを書いているのかというと、先日(日
付としては最初に書いた7月4日になるが)貞子と出会ったからである。
0051創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/07/08(金) 11:27:18.25ID:HqPhFgK3
痴呆の進行していた祖母を施設に預けたので、祖母の荷物(収集癖があったのでほとんど
ゴミである)を整理して、必要のない箪笥等を粗大ゴミに出すため、早朝、台車に乗せる。
我が家は割と急勾配な坂の上にあり、収集所はさらにその上にあるので台車も安定せず、
起き抜けには重労働だといえよう。ただ、初夏の朝風というのは思いのほか気持ちがよく、
Tシャツに滲んだ汗を、さらさらと吹き飛ばしてくれる。そんな感覚にふと、子供のころ
に通っていたラジオ体操を思い出し、自然と顔もほころんだ。

ひとつ、ふたつと箪笥を運び(もともと祖母が拾ってきたもので、大量にある)、みっつ
めの箪笥を取りに戻ろうとしたとき、見下ろす町並みの中央、坂の下からぽつりと少女が
登ってくるのに気がついた。

ゆっくりと、しかしリズミカルに揺れる長い黒髪と白いワンピース。この時はまだ俺の中
に「貞子」という言葉は浮かび上がってはいなかった。
彼女は自分の身体の3分の2ほどもあるゴミ袋を両手で横に持ち、ある程度重量があるの
だろう、小さな体躯でバランスを取るべく、身体を逆に倒しながら細い二の腕を震わせて
いた。

(小さいのに偉いなあ)

そう思ったのが一瞬、身体を斜めに倒しているがゆえに、長い黒髪が顔を覆っているのを
見て、俺は思わず口元を押さえた。彼女の姿は記憶の中にあるあの「貞子」だ、とここで
ようやく気がついたからだ。
0052創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/07/08(金) 11:29:02.82ID:HqPhFgK3
いや分かる。貞子でないことは分かる。坂に対して少々前屈しているために髪が前に全部
下りてしまっているのに、一生懸命に大きなゴミ袋を持ち、両手がふさがっているからか、
それをかきあげることすらできない。

(こいつは貞子じゃない、一生懸命な偉い子だ。でも貞子ということにしておきたい)

次第に近づいてくる幼い貞子を目の前にして、俺は呆然とすることしかできなかった。
鼓動が早まる。もし呪われてしまったらどうしよう。いや、小さい貞子だから助けないと
いけないのか、それとも接触したらまずいのだろうか。
巡る思考をまとめられず、呼気だけが荒いでいく末、ついに貞子が俺とすれ違う。

俺の脳裏に、あの不気味な目つきが蘇る。横を向いてはいけない。彼女と目をあわせては
いけない。あの目で見られたらきっと恐怖で死んでしまうに違いない。

――でも、見たい。
0053創る名無しに見る名無し
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2011/07/08(金) 11:31:24.62ID:HqPhFgK3
ふと沸いた好奇心が、恐怖を凌駕した。
身体は動かさず、呼吸を殺し、思い切ってすっと視線だけを彼女に向ける。
すると、垂れきった前髪の隙間から覗く、彼女の小さな瞳もこちらを伺っていた。

(ひいっ!)

その瞳は、ちょっと疲れたような、困ったような、そして何かを訴えるような、そんな瞳
だった。

(貞子だ! ウチの近所にちっさい貞子が住んでた!)

もう限界だった。
俺は堰を切るように台車を押して、家の敷地に駆け込んだ。
荒ぶる心臓をを抑え、靴を脱ぎ捨て、中にいる妻に向かって叫ぶ。

「い、今! ちっさい貞子がゴミ出ししてた!」
「バカじゃないの?」

家の外で「あら、えらいわねー」と近所のおばさんの声がした。
頑張れ、小さい貞子。
0054創る名無しに見る名無し
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2011/08/22(月) 21:43:34.47ID:QP+v5Tw6
http://loda.jp/mitemite/?id=2364.jpg
下描きまで描いてなんか違うなーとか思って
途中で止まっているのをいくつか
0057創る名無しに見る名無し
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2011/08/25(木) 07:47:24.28ID:Gob6Wzqk
橿原研二記念館
神奈川県横浜市青葉区柿の木台28-18
0059創る名無しに見る名無し
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2011/08/27(土) 11:40:11.90ID:uwVbmHRT
 私が“彼女”を初めて見たのは、今の仕事を始めて間もなかった頃だったと思う。
急に降り出した天気雨に慌てて近くの竹林に駆け込んだ私の、目の前を通り過ぎていった花嫁行列。
その中に、年のころ十代前半とおぼしき少女がいた。時折、淡い黄色の尻尾がちらついていた。


 それから数年後、私は職人に頼んであった品物を引き取りに行き、その帰りに
町外れの道を歩いていた。
名も知らぬ小さな花が咲き乱れる小川の岸に二十歳前くらいの女が佇んでいた。
その黒髪は日の光を受けて赤みを帯び、つややかに光っていた。
 しかしそれは同時に、狐の姿でもあった。
狐の姿と女の姿が重なり合って見え、これは化かされるかと身構えさせるには充分だった。
彼女は私の姿に気付くと、にこやかに話しかけてきた。

「良いお天気ですね」

 彼女は近くにある商家の娘だと名乗った。私には聞き覚えの無い名前だったが、
世間では新しい姓が次々と名乗られていたので、それ自体は奇異な事ではなかった。
 彼女は年季奉公から戻ってきて間もなく、この辺りの様子にどんな変化があったのか
聞きたかったのだという。少し話をするうちに、彼女は私の仕事に興味を持ったらしかった。

「何のご商売をされているんですか?」
「筆の卸売りを」
「ふうん、この近くでは筆作りが盛んですものね」
「もしお家の方で何か筆をご入用でしたら、ぜひご用命を」
「あら、商売熱心だこと」
「そりゃまあ、こんなご時世ですから」

 その時は少しばかり立ち話をして別れた。あの辺りに行く事は少ないので
彼女にも再び会うことは無いだろう、そう思っていたのだが……
0060創る名無しに見る名無し
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2011/08/27(土) 11:40:54.31ID:uwVbmHRT
 再会したのは、雨の季節に変わった頃だった。



 季節は変わり、夏になった。


鎮守の森に入ると、暑さも多少は和らいで感じられる。



「狐の毛を使った筆はあるんですか?」
「うーん、主として使ったものは少ないですね」
「それはどうして?」
「毛質が軟らかいので、使い道が限られるんですよ」
「そうなんですか」
「狸毛の筆は書道用として珍重されるんですけどね」
「あら、化ける生き物同士なのに、えらい違いなのね」

彼女はそう言って、くすくすと笑った。その顔が、何故か魅力的に見えた。

「化ける生き物では、鼬の筆が一番高級品ですね」
「それじゃ、沢山捕れたらお金持ちかしら」
「知り合いにイタチ捕り名人の方、いませんか?」



 都会で彼女を見かけるようになった。
何度か立ち話をしたが、家の用事だと



 新顔の妙な猟師が現れたのだという。
その猟師は決まって一度に4〜5匹のイタチを持ち込み、ほとんど口を利かない。
そして金を受け取るとすぐに消えてしまうらしかった。
0061創る名無しに見る名無し
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2011/08/27(土) 11:41:37.40ID:uwVbmHRT
 その後3年程の間に彼女はどんどん魅力的になっていった。
光を受けると赤い艶を見せる彼女の黒髪は

いつだったか、彼女とこんな会話を交わした事がある。

「随分とあでやかな感じになりましたね。いつか見た時とは大違いだ」
「そりゃ女は化けますから。狐みたいにね」
「ははは、あまり男たちを化かして不幸にしないでくださいよ」
「化かすのは狸親父に限っていますから、ご心配なく」
「おや、それじゃ私も危ないな。それはそうと、こちらが頼まれていた品です」
「いつもありがとうね。はい、お代。木の葉のお金かもしれないわよ」
「それは困った、音を確かめてみなければ」
「あら大丈夫よ。それよりも、妹分の子が良い筆を欲しがっているんだけど……」

 こんな調子であったから、彼女は私の小さな得意先でもあった。
品物の受け渡しは稲荷神社の境内が多く、その静かな雰囲気の中で彼女と話している時間は
日常生活と異なるような感じがしたものである。


 だから、彼女が故郷の町外れにある寂れた花街にいると聞いた時には驚いた。


 その後も時折見掛ける事はあったが、彼女の身なりは次第に悪くなっているようだった。
そしてある日、彼女からの手紙を受け取ったのだ。

 手紙を受け取って翌々日の朝、私はあの狐に出会った小川へ向かった。
果たして彼女は若い男と一緒に立っていた。なかなかの美男子で、彼女の肩に手を回している。
だが私には、同時にそれが偽りだということも分かってしまった。
彼女は私に向かって、精一杯の幸せそうな顔をしてこう言った。

「今までお世話になりました、もう会う事も無いかもしれませんが、どうかお元気で」

 狐の毛並みは悪く、幾分痩せているだろうか。道端の地蔵のそばに立っていた。
そんな彼女には、かつての清楚さも妖艶さも無く、老いた異形の生き物がただ見栄を
張っているようにしか見えなかった。私は狐に声を掛けられず、黙って深々と頭を下げた。
そして何も言わずに立ち去ったのだった。

 それが2年前の事である。
0062創る名無しに見る名無し
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2011/08/27(土) 11:42:19.71ID:uwVbmHRT
 さて、ついこの間、私はある筆職人の家を訪れていた。
身寄りの無い彼は数年前に大きな病を得、人づてに死んだと聞いていたのだが
最近になって手紙を受け取ったので、その住所へ訪ねてみたのだ。

 職人の家は古びた一軒家だった。隣の家までは歩いて十数分は掛かるだろうか。
“彼”は元気そうに振舞ってはいた。実際、健康状態は良くなっていたのかもしれない。
しかしそれでも私には、“彼”が私に衰えを見せまいとして無理をしているように感じられた。

「その後、お体の方は大丈夫なんですか?」
「ええ、何とかやっていますよ。手紙を出したのは、この筆を見てもらいたいと思ったからでね」
「見た事の無い感じの筆ですね」
「狐の毛ですよ。知り合いが毛皮を持ち込んだのですが、思いのほか毛の質が上等でしてね」
「ほう、狐を単独で……変わった事をなさる」
「最近、その動物だけの毛を使う事で、それぞれの動物の個性が活きると思うようになったんですよ」
「なるほど……」
「まあテンやイタチには及びませんがね。でも狸なんかよりは上等じゃありませんか?」


 その筆は、あまり良いものとは思えなかった。毛の質自体は確かに悪くないが、
特に上等と呼べるものでもない。この感じは若い狐の毛ではないだろう。
それに熟練の職人の作にしては作りが雑というか、どうも作り慣れていない感じがする。
彼が病気を患った後の作だからなのだろうか。“彼”は私の様子を心配そうに見ているようだ。

 顔を上げてみる。向こうの机にも筆が並んでいた。
使い古しの雑多な筆。どれもが見覚えのあるものだ。
最初に彼女に納めた化粧筆、いつだったか特注で作った白粉刷毛、
確か最後に納めたのは、あの最後の手紙を書いたであろう小筆だったか……

 一瞬、目の前に、あの妖しげな赤い艶のある黒が見えたような気がした。
今、私の目の前にあるのは何の変哲も無い、淡い灰色の穂先を持った数本の筆である。
窓から入ってくる日の光を浴びて、机の上で静かに並んでいる小筆。
もしこれを引き取っても売る当ては無いだろう。だが……


 しばしの沈黙の後、“彼”が声を発した。

「雨が……降ってきましたね」
「本当だ、天気雨ですね。傘を持ってきておけば良かった」
「狐に化かされないようにしなければ」
「あはは、気をつけて帰ります。……それで、この筆なんですが」
「……はい」

 職人の家を出て少し歩くと、竹林の中を通る。
少し立ち止まって何かを待ってみたが、何も起こらなかった。
竹林を出て空を見上げると、そこには細くて淡い、七色の虹が出ていた。
ふと、遠くで嫁入り行列の声が聞こえた気がした。


 私の机の上には今、行く当ての無い数本の筆が並んでいる。
0063創る名無しに見る名無し
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2011/08/27(土) 11:44:49.58ID:uwVbmHRT
以上投下終了。

見た夢を元に書いてみたけど途中の展開に行き詰まり、1年ほど放置してた代物。
化けて出てくる前に供養供養。
0064創る名無しに見る名無し
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2011/08/27(土) 12:23:35.56ID:xFDJvwUJ
乙です
なんか懐かしさみたいなものを感じるお話でした

さて、わたしも祭りに投下するお話を書くお仕事にもどりますかねw
0068創る名無しに見る名無し
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2011/08/27(土) 23:58:47.88ID:OhA0mDgL
なにか「写真を撮られるのでVサインをしている」といった感じの不自然さを感じたので没にしたラフです。
描き直したラフがあるので、そっちは完成させるかも。
http://loda.jp/mitemite/?id=2386.bmp

それと某スレに書き込もうとしたら規制中でそのままにしてた駄文も貼らせて頂いてみます。
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 何かの本で見たのかそれともテレビで聞いたのかなんて忘れたが、現代人は視覚に頼りすぎだなんて言ってる人間がいる。
曰く、そのため他の感覚が普段ないがしろにされているんだと。
そんなのは、またよくある安っぽい現代文明批判の一つに過ぎないと思ってたが、
こうしていざ自分が視覚に頼れない状況に突き落されてみると、
なるほど確かにその通りなんだなあと解らされざるを得なかった。

 右手で携帯のいろいろなボタンを無軌道に押しつつ、俺は一歩一歩を恐る恐る踏み出していく。
 ここにはまるで光というものが存在しない、何かを見るという行為は全く出来ない。
そのうち目が暗さに慣れてくれるだろうという甘い願望が、完全な闇に消し去られてからもう10分も経っているのだろうか。
 今持っているものの中で、たった一つだけなにがしかの光をもたらしてくれる可能性のある携帯は、
この家の扉を開けてからすぐに電池切れのメッセージ音を鳴らしやがった。
何かのはずみで少しの間だけでも電源が入ってくれないかと、とにかくいろいろ押しているのだが、
普段時々遭遇するそういう小さい幸運は、今は全く俺のところに降りてきてくれない。

 こんな中で足を踏み出していくのは怖いものだ。次の一歩の先に何があるのかわからない。
 しかし、俺が怖がっているのは本当にそのことだろうか?
俺の足が床に落ち、押し込み、軋みを残して離れていく音が、そういうふうに一つ一つ区別できるほどはっきり聞こえる。
それはまるで自分以外の何かの足音を聞いているよう。
一体、俺が怖がっているのはどちらなのか。
 いや、本当は理解している。自分が怖がっているのはどちらなのか、本当は理解している。
しかし、それを認めてしまったら、何かが崩れていきそうで、俺は頑迷なまでにそれをわかってしまうのを拒む。

 鋭敏になっているのは聴覚だけじゃない。右手は携帯をいじっているが、左手のほうは壁をなぞっている。
その左手が、壁にうっすらと付着している埃を掻き分けるのか、押し退けるのかの違いさえ感じられる。
 左手を壁に這わせているのは、照明のスイッチが見付けられないかなどと考えているからではない。
電気なんかとうに来ていないだろうなんて、誰だってこの家の外観からすぐ予測がつく。
壁に手を添えていなければ、こんな闇の中ではただ真っ直ぐに進むのだって難しいからだ。
 左手に伝わってくる壁の感触に、周囲の状況が少しは理解出来ることからの、ある種の安堵が得られている。
しかし、この安堵は、本当にそれだけのわけから来るものか?
もしかしたら俺は、ここには少なくとも床の他に壁もある、
つまり自分は、まったくわけのわからない異界にいるのではない、ということが確認出来るから安堵しているんじゃなかろうか。
 ……何を馬鹿なことを。
 そう、まったく馬鹿げた発想だ。そんな当たり前のことに、確認も、確認出来ての安堵もあるものか。
 俺は自分で自分のことを少し嘲笑した。

 だが、そんなこと、自分が異界にいるのではないのは当たり前なんてことを、
思っていられたうちはまだしも幸せだったと思い知らされることになろうとは、
淀んだ空気を押し分けて進んでいたあの時には、俺はまだ気付いていなかった。
0070創る名無しに見る名無し
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2011/09/19(月) 21:44:08.51ID:KVaguPes
アースとはさみさんがかっこいいけどそんなのどうでもいいくらいに、いかづちが可愛いw
0071創る名無しに見る名無し
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2011/09/19(月) 22:59:50.08ID:nqYFWHcY
墓場だからsageてくれると有難かったり。前スレもsage行進
気味だったから。
あと恥ずかしいから…
0072創る名無しに見る名無し
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2011/11/03(木) 05:53:55.17ID:P/WkyT8C
その少女の股間には、あってはならない物が根を下ろしていた。
それが男根だったら、まだ、ありかもしれない。
だが少女の陰部に取り憑いているのは、この世の物ではあらざる異形――
一本の触手であった。
0073『アヘ顔ダブルピース』
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2011/11/07(月) 20:21:14.12ID:LKknrKV4

 因幡リオがウーロン茶を口にした途端、親友の芹沢モエが藪から棒に「アヘ顔ダブルピース、見たくね?」と言い出したので、
机の上にぶちまけそうになった。大好物のサンドウィッチと共に平和なまま過ぎていくはずだった学園のお昼休みも、
真顔でとぼけたことをしゃべるモエのおかげですっかり掻き乱されてしまった。

 仲良く机を合わせたお昼ご飯のひと時。モエとリオは何気ない女子高生の会話できゃっきゃしていたのに、
いきなり放り込まれた取り扱いに困る話題がリオを困らせる。リアルでネットことばを持ち出されると居た堪れない気持ちになる。
ネットことばにあかるいと尚更だ。残念なことにリオはその部類の子だった。ニーソックスの脚をぎゅっと合わせて背を丸める。

 (頼むから、リアルの世界で『アヘ顔ダブルピース』だなんて言わないでくれ!)

 一方、モエはハイテンションのまま短いスカートをばたばたと脚で揺らして、昨晩勃発した『芹沢姉弟・アヘ顔ダブルピース事件』の
一部始終を語る。長いウサギの耳を傾けて、リオは黙ってウーロン茶のペットボトルを机に置いた。

 モエが自宅のPCでネットを彷徨っていると、ふと好奇心で弟の閲覧履歴を覗きたくなってしまった。
 ちょっと前まで弟が使っていた。だから、弟はどんなページを覗いていたんだろうかと、姉として余計な気遣いが回る。
開けてはいけない箱ほど開けなければならない。おそるおそるカーソルを合わせ、お気に入りを開き、履歴タブを左クリックすると
ずらりと曜日順に履歴がモニタ上に並ぶ。当日を選ぶ。検索内容を覗き見したいから、グーグルを選ぼうとモエは目を細める。

 「ちょ……。何?『アヘ顔ダブルピース』??」

 聞きなれない言葉ほど、その内容を知りたくなってしまう。知るは楽しみなりと昔から言うではないか。

 画像検索された跡がある。誘われるがまま開くと、モニタ上に『アヘ顔ダブルピース』が小画面として並んだ。壮観だ。
恍惚と天に昇ったような表情、だらしなくもありこの世の快感を全て独り占めしてしまった夢心地。人はこれを他になんと呼ぶのだ。
 その言葉は。

 『アヘ顔』

 歯と舌に粘りつく唾液は白く光り、つややかに反射している。誘惑とも解釈してもよかろう。瞳から流れ、口元から微かに流れる
汚れなき雫を誰も拒まない。生まれたての乳呑み児でさえも羨む地上での絶頂への喜び。そして頬には無抵抗の印が重なる。
 その言葉は。

 『ダブルピース』

 己の快楽を誰かに見せ付けるのは、手放すことの出来ない幸せを握ったの証拠ではないか。
 見ているうちにモエは獲物を追うケモノの血が騒ぎ出した。

 「ちょーうける!」

 尻尾を振りながら、モエはPCを閉じて弟のもとへ駆け寄ったのだった。

 「……で、タスクくんに?」
 「でも、アイツったら全然よがらねーの」
0074『アヘ顔ダブルピース』
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2011/11/07(月) 20:23:14.81ID:LKknrKV4
 『アヘ顔ダブルピース』の肝は「誰かに見せ付けるダブルピース」だ。
だが、身内とあって照れに負けた弟のタスクは拒否してしまった。不完全燃焼の『アヘ顔ダブルピース』などいらない。
「こんなものは『アヘ顔ダブルピース』じゃない!」と、拳をドンと机に叩き付けると、リオのウーロン茶が波を打つ。リオはリオで
(早くこの話題が過ぎ去って欲しい)と冷や汗をかいていた。

 「リオー。リアルに見てみたいよね。アヘ顔」
 「い、いや……別に」
 「クラスの男子にさせちゃう?させちゃおうよ!うけるし!」

 ひょいとリオのサンドウィッチをモエがひったくり、むしゃむしゃと口にしてしまうのをじっと見ながらリオは自分のメガネを直した。
ルーズソックスに包まれて女子高生の香りふんふんと撒き散らすモエの脚が、話にイマイチ消極的なリオの脛をつんつんと突付いていた。
 ネットの上では平気に口に出来ても、教室の中じゃ裸にされるより恥ずかしい。リオは人一倍それに敏感だ。
 自分のテリトリーにずかずかと入り込まれるのは胸が痛む。相手に悪気がなければ尚更だ。

 「誰にさせちゃおっか?」
 「……大柄な男子の方がいいかも」

 ようやく話に乗ったリオの言葉には理由があった。

 一つは「もしかして自分がさせられるかもしれない」という危機の回避のため。
 そして、もう一つの理由。

 「例えば、ちっちゃい女子が厳ついマシンガンを振り回す。ちっちゃい女子がベースやギターを上手に扱う。ちっちゃい女子が
  バイクに跨り風になる。相手が大きく、そして立派な体格なほど『アヘ顔ダブルピース』は破壊力があるんじゃないのかなあ」
 「もしかして、それって」
 「萌え……っていうの?よく知らないけど」
 「そっか!さすが、風紀委員長。あったまいい!」

 (『よく知らないけど』って言っちゃった……)

 本当は自分の得意分野だ。薄い本に住む二次元の子に向かって「むっはー」だなんて、だらしないセリフをはいている。
リオはウソツキな自分がつくづく嫌になってきた。だが、モエが非常に乗り気なのであわせてあげることにした。

 (わたしの方がアヘアヘされちゃう!)
 
 でも、モエの笑顔が見たいから……。
 モエが手を打って叫ぶ。

「張本丈!」

 クラスの男子の名前。身長は2メートルに近い巨漢、それでいて気は優しいオオカミ男子。
 リオの脳裏には丈の『アヘ顔ダブルピース』が浮かんでは消えて、浮かんでは消えていた。

0075『アヘ顔ダブルピース』
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2011/11/07(月) 20:25:16.08ID:LKknrKV4
 「張本なら、学校の下のコンビニにいたよ」

 お昼を買いに出かけた際、リオは丈を見かけていた。丈は無類の甘い物好き。コンビニの甘味フェアを見逃すはずがなかった。
背中を丸めてじっくりと大柄な男子高校生が女子に混じってデザートコーナーで物色する光景。見慣れると自然に見えてくるものだ。
 だが、お昼休みも半分以上過ぎているのに……。

 「もうすぐお昼時間終わるのに、張本戻ってこないよ」
 「もしかして。丈くん、悩んでる系?」
 「かも」
 「尚更させてー!」

 休み時間が残り少なくなってきたけど、食後は外の風に当たろうとリオとモエは教室を出た。にこにこと人生でも
短い女子高生の時間を楽しむようにモエが頬を緩めるが、リオはまだ頭から離れない『アヘ顔ダブルピース』のことを考えていた。
 いまどきの女の子のモエは相手に遠慮がいらない子。

 「そういえば。この間メール、うさ返さんきゅー!」
 「え?あぁ。うん」
 「次の時間、移動教室だよね。まじきつくね?午前にマラソンあって、体動かねーって感じ?」
 
 くるくると目まぐるしく話題を変えるモエは刹那的だ。階段を降りてしまうころには、きっとまた別の話題に移っているに違いない。
同い年のはず。育った環境も、食べてきたものもそんなに変わらないはず。なのにリオは不思議とモエのことがあかぬてけ見える。
昨日も、今日も、明日も、モエの目には違う景色が広がっているのだろう。リオと違って。
 だって、リオの頭の中は『アヘ顔ダブルピース』でいっぱいだから。
すれ違う誰もがアヘ顔、周りの誰もがダブルピースで突き抜ける享楽的で産まれたての屈託のない笑顔をリオに焼き付けるような
自分勝手な被害妄想。リオは軌道修正して放課後蒸し返されないように、敢えてモエに『アヘ顔』の話題を振ってみた。

 「ねえ、モエ。ア……」
 「やっべぇ!教科書忘れたかも?」

 モエの会話のローテーションに振り回されて、肝心の話題が振れずにいると、噂をすれば影。

 息も絶え絶えにコンビニの袋を手にして急いで学園に戻ってきた。ぱんぱんに膨らんだ袋の中身はシュークリームに
メロンパン、そしてバームクーヘンと全て甘味類。口を開いて目もうつろ。肩で呼吸をしながら髪を振り乱す。
モエは丈の姿を見逃すはずがなかった。彼女は鼻の効くイヌだ。首輪を解かれた猟犬は、まっすぐに獲物の首へと牙をむいて飛びついた。
0076『アヘ顔ダブルピース』
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2011/11/07(月) 20:29:35.85ID:LKknrKV4
 「張本!『アヘ顔ダブルピース』して!」
 「なに?なに?それ……はぁはぁ」
 
 理解する余裕の無い丈はモエへ顔を向けるだけで精一杯。モエはお手本を見せるように『ダブルピース』を丈に見せ付けた。
モエは花も実もある女子高生。女子高生から誘われて断る男子なんかいるもんか。張本丈も男子高校生だが、彼は大人しい。
果たしてモエの言うことを聞いてくれるのかどうか。しかし、悩むに及ばず。

 「こ、こう?はあはあ……」
 
 迷わず丈はダブルピースをモエのやる通りに真似て、口を半開きにしてコンビニの袋を腕にぶら下げていた。 

 「きゃはははは!アヘった!ばか!ばか!まん……」
 「モエ!」

 口元から湯気を吐き出すように息を荒くして、丈は疑うことなくモエの言葉通りに動いた。
 それがおかしくて、おかしくて。がたいのよい男子が可憐な女子高生の言葉にそそのかされているのが、モエには愉快だった。
一方、訳が分からないまま『ダブルピース』を強要された丈の顔面はとろけそうであった。シューの割れたシュークリームのように。
 とろけた顔は無様だ。優越感さえ漂う。だから人々の加虐的快感を喚起させ、拍車をかける。

 「うけるー!もっとあえげー!」
 「あえ……ぐぅ?」

 ツンとモエが丈の両腕の肘の裏をくすぐる。両手をふさがれた巨漢は小柄な少女になすすべもなく、溺れ沈むような声をあげる。
丈が被虐の蜜を吸えばすうほど、モエの加虐の花弁が咲き乱れる。けらけらと少女の笑い声が廊下に響いた。
 リオはリオでモエから写メを撮るように指示をされ、言われるがままに、自分の身を守るために携帯のシャッターを切った。

 「むっはー」

 生気の無いリオの声。
 丈の『アヘ顔ダブルピース』は二人が想像していた以上に板についていた。

 生身でアヘ顔を見てしまったことの罪悪感、二次元だけの者が見せることの出来る特権だと信じていた過ち。
そしてモエとの間に芽生えた共犯意識がリオを苛めていた。
 それでも友のために、携帯電話はリオのシャッターを切り続け丈のアヘ顔を撮り続けた。


  おしまい。

                                   

0077創る名無しに見る名無し
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2011/12/01(木) 05:43:32.38ID:MRIrn+zf
「今、俺はちんちんが立っている」
「それで?」
「お前とやりたい」
「ただでさせるわけにはいかんな」
「金ならあるぜ」
「五百円硬貨! やす!」
「服を脱げ」
「安いって言ってんだろ。こら離せ」
「入れる。ちんちん入れる。俺気持ち良くなる。お前もたまらなくなる」
0078創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/12/01(木) 09:28:04.97ID:JGOgMaGt

                        /|   _,.-''"´フ
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             ',.:/.:.,{、:   .: ,ノ 丶:::..  -、  ヽ   l、    │ LRを正しく守って
           _,.-‐一''"ヽ、__, イ  ヽ_`゙ヾ  ノ   ./. ,\l:ヽ  <  楽しい創発活動♪
       ,.-‐''"´             ヽゝ }   ,/  .l  l:.:(丶、│ 獣羽鶏からのお願いだよ!!
     /     _    __,.-‐一''"´フノ    /   ,' ,':.:.:`ヾヽ \__________
     /  _,,. -‐ '' " ´ ̄ ̄::::::::::::::::::::::/   / /   / /:.:.:.:.:.:.} ト―-- ,,_
 一 '' "´    //:::::__,.-‐一''"´ ̄   /,r'"    / /:.:.:.:.:.:.:ノ,ノ |      ``丶、
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        〆´ ̄  `丶、 ``"二ユ、_,.,____/__,/;: -‐ '"  /
00791/1
垢版 |
2011/12/23(金) 02:03:54.65ID:ofS947Lb
「淺川くーん、これさぁこれさぁ俺が着ても似合わねんだよ。だから君が着てよ。
 ね、助けると思って。それにこんな女物の服置いてたら彼女に疑われるし」
「彼女なんて居たっけ」
「いないよ、今は。今はね!」

藤森がいつもどおりまくし立て、淺川に大き目の紙袋を手渡す。半ば押し付ける形に
近いが。
紙袋を覗くと、どこかのブランド製の洋服が丁寧に折りたたまれていた。
包装されているビニールががさがさと音をたてる。

「俺こんなの着れるかなー。なんだか若者向けというか…」
「何言ってんの、俺達まだ20台だからいいんだって。知り合いがさぁ、
 注文間違って返品きかないからって俺に押し付けやがったんだよ。でもほら!
 俺はこういう服装よりパリっとした格好が似合うから」

回りに回って、タダで服が回ってきたのである。
根無し草、金欠、服装に金をかけない。こんな男には幸運の産物だった。女性用の服は
ミィちゃんにでもあげてよ、と手をふりながら藤森がバスに乗り込んでいく。

                ♪
0080マチガッチャッタ 2/3
垢版 |
2011/12/23(金) 02:05:52.61ID:ofS947Lb
鋼鉄の馬を乗り回す騎手であろうと、たまには2本の足で歩くこともある。
自宅で”幸運の産物”に着替え、電車に乗り込む。普段着ないような服で着飾ると、
周囲のどうでもいいような声でさえ自分に宛てられているのではないかと
そわそわしてしまう。アノヒトカッコイイネとか、アノヒトガンバリスギとか。
淺川の場合、後者の思考であった。
こんな!こんなどちらかというと自分より若い子向けの服装なんかして!恥ずかしいと
感じないのかしら!
どうでもよい声が、どうでもよい槍に変わり、無き右耳へ突き刺さる。
車内のアナウンスが響く。ドアが開くと同時に、逃げるように降りてゆく。
首に巻かれているストールが、まるで締め付けてくるようだった。

恋焦がれている猫のもとへ着くと、いつもとはまるで正反対のようにそっと
窓ガラスを覗く。

「ああ、居た居た。良かった。すーぎもーとさん!」
「淺川君?……あれ、なんだかいつもと雰囲気が違うね」
「杉本さん!何も言わずこれ着てよ、フジ君から押し付けられたんだ。俺一人じゃ
 恥ずかしいから。人助けだと思って!お洒落すると思って!」
「え?え?なに?」

都合の良いまくし立て方だった。藤森から言葉を借り、紙袋をミナに無理やり
押し付ける。
ミナは、「人助け」「お洒落」という言葉にまんまと釣られてしまう。だって、
こんなオイルまみれだって中身は女の子なのだから。
左頬についた汚れを、ミナはバイクの艶やかな体越しに見つけ慌てて拭った。

                ♪


「うひあー。似合う似合う!すっげ可愛いよ杉本さん。これでフリーだなんて
 勿体無い」
「ワンピースなんて久しぶりに着た…本当にもらっちゃっていいのかな?
 高そうな服なのに」
「いいんだって。俺も着てるし。素直にもらったほうが服も喜ぶよ」
00813/3
垢版 |
2011/12/23(金) 02:07:20.30ID:ofS947Lb
実家が鉄の生き物に囲まれていると、フリルやレースの服なんか着られないから。
頬を緩ませながらミナがスカートの裾をつまむ。
紺色の布地には、雪のような白いドット。ブラウンの上着に真っ赤なタイツ。
色濃い服装に、ミナの白い毛並みが映えた。
淺川は自身の服装は余所に、ミナの姿を携帯電話で撮ろうとしていた。

「ちょ、ちょっと待って何で撮るのっ」
「え?だって可愛いから」

ファインダーは無い。写真家はストレートにミナの心へ入り込もうとする。
可愛いなんて、まるで安売りのようにぽんぽんと言うのではないかしらと
いじわるな思考がよぎる。だってミナは以前、ストレートヘアのきれいな三毛猫も
見かけているのだ。

「浅川君も撮ってあげよう」
「えー…いいよ。俺あんまりこういうの着ないしさあ」
「だから記念に、ね」
「じ、じゃあツーショット!で!」

しょうがないな、とケラケラ笑いながらミナがテーブルに淺川の携帯電話を
置く。
他人の手を握る行方など、どこにもなかった。果たして自分は、他人と触れ合う
資格などあったのか。
淺川は両手をポケットにつっこむしかなかった。
データと両目に、ミナの姿を焼き付けた。

杉本オートをあとにし、近場の喫茶店へ避難する。この姿のままふらつくのは、
少々危険だ。
木島に見つかろうものなら「何だその高そうな服は。そんな金あるなら奢れ。
お前はいつから金持ちの一人前になった。若造め」と、笑われるに違いない。
ハルコに見つかろうものなら「たっかそーな服!財布兄ちゃん、ご飯とお酒
ご馳走してよ」と、たかられるに違いない。

藤森には感謝している。真新しい服、ミナと出会えるチャンスの二つの幸運と
巡り会えた。

この服を着慣れるには、まだ時間がかかりそうだけれど。
0082創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/30(金) 18:46:18.23ID:WzCU9cSW
イイハナシダナー
0085春の始まりオリジナル
垢版 |
2012/04/03(火) 00:42:29.19ID:LFF1xx5M
「ああ、さよならかけがえのない君よ……君は私を満たし、包み、寝食を共にしたね。忘れないよ……」
私は君と共に辛く苦しい時を歩んだ。けど、君がいたから私は生きてこれた。
地獄のような世界に、甘く優しい希望をくれた。
ありがとう。ごめんなさい。
悪魔の手にかかってしまうのを非力な私は助けられない。
ああ、君ともっと生きていたかった。
愛おしい君と。いつまでも。
「バカ言ってないで手伝いなさいよ。アンタの方が力あるんだから」
「え〜。なんで私の友を私の手で殺めなきゃいけないのさ」
「たかがこたつの毛布じゃない。どうせ冬になったら会えるわよ、バカ」
「あー!またバカって言った!」
「何よバカ。馬鹿力で、しょっちゅうバカなことして、終いにゃバカだからどうしようもなくなって家に転がり込んで来たんじゃない」
「もぉー。ゼッタイ後で仕返ししてやる」
「……もぉー。絶対仕返しされたら食料供給ストップしてやる」
「いいもん。ご飯くれる人他にもいるもん」
「で、また大笑いされるの?」
「うっ」
ダメージいち。
「アンタの交友関係なんて、あたしと大差ないんだから言いふらすわよ?」
「ぐにゅっ」
ダメージに。
「それとも適当に男でも探す?また泣きをみるわよ?」
ダメージさん。のっくだうん。
「ひどいやっ。ばかっ!」
「アンタよか賢いわよ。そんなことよりこたつを部屋の真ん中まで動かしといてよ」
仕事を任されました!デレ期!?
「りょーかいですっ、ふーちゃん!」
「……軽いノリがアンタの一番のウリよね……」


春。ふつうは始まりと終わりの季節だろうけど、私とふーちゃんこと文月ちゃんの共同生活の始まりは十一月だ。
私は実家を飛び出し、当時付き合ってたカレの家にお邪魔していたのだが、カレが唐突に「飽きた」と言って私を追い出した。
満足させてあげていたから良いと思っていたけど甘かった。大誤算。
いっちょ前に「つくしてあげたい」とか考えていたからバチがあたってしまった。
そんなもんで私だって高校生なのに寒空に独り。替えの服はイン追い出された家。
「友だちと一緒に暮らす」といってあるので実家には帰りづらい。
仕方がないので一番近所で独り暮らしをしているふーちゃんハウスに突撃。
そうしたら「男を見る目もなければ生活能力もないのか」と笑われてしまった。
生活費をワリカンにする条件で迎え入れてくれたし、一度もごはんをつくらない私のことを邪魔にしないから文句は言うまい。
けどひとつ。
イマドキ普通の女子高生に、生活能力はナイデスヨ?
0087創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/03(火) 19:35:27.80ID:daaDuBJ8
あげわすれたよ
0098創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/09(月) 12:57:49.65ID:SainoBww
「長い間とても…辛い苦しい思いをさせたな……もう大丈夫…戦いは終わったんだよ」

そっと頭を撫でてやる。
暖かい。

年老いた彼は返事をするかのように、一度ゆっくりとまばたきをした。

目眩がするくらい綺麗な、透明の風が吹きわたる。
木々が揺れ、美しい生命の歌を聴いているようだった。

彼はゆっくりと目を閉じた。

「…ご苦労だったな。ゆっくり…眠ってくれ……お前と共に戦えたことを誇りに思う…」

私は、それ以上言葉をかけてやれなかった。
彼が目を閉じた瞬間に、幼い頃から今まで共に過ごした日々が駆け巡った。

丘の向こうの鐘の音が響き、戦いの終わりを告げた。
鐘の音と共に、彼の魂も空へ昇っていったような気がした。

http://imefix.info/20120409/281056/
0102創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/22(日) 15:41:37.56ID:A2tchoD7
>>59
今さらで申し訳ないのだけど、今読んだので。
とても素敵なお話だと思いました。ボツなんてもったいない!

途中の展開が、ということでしたが(確かに文中にいくつか歯抜け箇所がw)
うまいこと端折って体裁整えれば、十分に作品として完成しているのでは?
どこかのスレにでも投下すればいいのになぁ、と思ったので

最終的には作者さんが納得しているかどうかですが……
ROMの無責任なレスでした
0103創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/27(金) 19:12:44.72ID:9ehqn8yf
同じようなもんばっかりでたのしくない
http://imefix.info/20120427/611235/
なんか違うもん描きたい
0104創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/27(金) 21:30:29.17ID:9ehqn8yf
http://imefix.info/20120427/601262/
勢いとか迫力だすのとかムズい
こんなことしてる場合ちゃうのに
0113創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/25(月) 13:42:34.33ID:XzfYME0Q
当方は、自他の埋没していくネタを救い上げて、再利用の日を待てたらそれが幸せと感じる派です。

書ける人とか設定を作り込める人だけしか、参加できないのでしょうか。
当方は、思いついた時にエクセルで設定を書いていくだけスタイルです。

ttps://box.yahoo.co.jp/guest/viewer?sid=box-l-2zlooonvtuwycv67tp25d4sexi-1001&uniqid=7a9e8f8b-2d9f-4c39-a19f-b227d73b3041&viewtype=detail

YahooBoxから公開しました、自分のエクセルブック集です。
クリエイティブ・コモンズの画像を同封してあるので、著作権フリーです。

これを使ってシェアれますでしょうか。
0114創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/25(月) 17:32:27.48ID:XzfYME0Q
ttps://box.yahoo.co.jp/guest/viewer?sid=box-l-7wlsbrgm4vbtt4elo2sfjj33za-1001&uniqid=68d36b14-e5d9-4ce0-b44d-16af927234f3&viewtype=detail

URL変わりました。
0118創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/26(木) 01:44:15.94ID:LqLHaIsN
ハ〜ァ
国是もねえ 覚悟もねえ 支持率それほど残っでねえ
政策ねえ 国益ねえ 首相は毎年ぐ〜るぐる
夜更げて 秘書連れて 二時間ちょっとの密談中
人材ねえ 統制ねえ ヤジは一日百度来る
オラこんな国イヤだ オラこんな国イヤだ 投票へ行ぐだ
投票さ出だならペンこ取って 投票で馬鹿消すだ
0119創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/17(金) 17:20:39.23ID:WrbxzO9M
敗北1

堀川が死んだ夜、報告、その他諸々の整理等を部下に任せ、一人公園のベンチに座る。

上層部は堀川の死亡をもって事件を終了させる気だ。
それでいいと思う。
全ての容疑者が「溺死」
し、謎の「黒い海水」が検出されたなど誰も信じまい。
そして死者が人を殺害したことも。
これ以上調べた所で何もでない。
関係者全てが死んだのだから。

しかし、この敗北感はなんだ。
小野寺が誰に殺害され、
誰が小野寺の死体を九十岬に遺棄したのか、
この事件は何も解決していない。
今後も解決する事など有り得ない。
死んだ人間が幽霊となり、復讐したなど誰が信じるのか。
せいぜい三流週刊誌のネタになるだけだ。

無力だ。誰か教えてくれ、神でも仏でもいい。
何故、この俺に役にも立たない霊感など与えたのか。
0120創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/17(金) 17:37:46.51ID:WrbxzO9M
敗北2

そうだ、他人に見えない者が俺には見える。
ずっと前、まだ交番勤務の時、酷い交通事故の処理に当たった事があった。
たった今救急車で運ばれたはずの瀕死の被害者が、俺の横に立ち、何事なもなかったような顔で
「僕、ひょっとして死ぬんですかね。」
なんて聞かれた事もあった。

そう、いつもそうだ。
ただ俺は見えるだけなんだ。死んで行く者達や、すでに死亡し、ただ街をさ迷うだけの存在になった者達..俺は彼らに何もしてやれない。

今回もそうだった。
ただ予感がする、それだけだ。
0121創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/17(金) 17:55:52.83ID:WrbxzO9M
敗北3

ふと見ると着物を着た少女が俺の数メートル前に立っていた。外灯は彼女の真上にあったが、影はない。よく見ると顔に見覚えがあった。
九十村で出会った少女の霊だ。
少女は少し駆け足で俺の目の前に来て、俺の右手をさすった。
「慰めてくれるのか」
冗談ぽく幽霊に話かける。
少女は無言だ。ただ俺の右手を摩りつつ。おれの目を見ていた。
そしてか細い声で。
「あなたも気をつけて」
と、呟いた。何となく背筋が寒い。「..次は俺の番か?」
問い質してみたが彼女は無言だ。
「これ..」と何かを差し出す。櫛だ。
「おねえちゃんからもらったの。」
少女が続ける。
「でも、おねえちゃんがあなたにこれを渡せってあなたを守ってくれるって」
「俺にか?」

少女は消えた。

だが、しばらくして
「大事にしてね。」
と俺の中で彼女が言った。
0122創る名無しに見る名無し
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2012/08/19(日) 15:14:55.46ID:aXXyraMB
三人揃う1

午後8時、丸山巡査部長から呼び出しがあった。
「とにかく会いたい」
と。
待ち合わせ場所はS県刑務所。妙な所に呼び出されたものだ。

受け付けに行くと、片桐と言う人が僕を待っていた。
「まあ、君がマルちゃんから呼び出しを喰らった理由の遠因は俺にあるんだが。」
僕は不満だった。なんの予告も訳もなく、突然だ。
しかし、上官からの出頭命令を断る訳にも行かず、交番の引き継ぎもそこそこに急いで自転車を走らせた。
「いくら上官の命令とはいえ、少し憤慨しております。」率直に答える。
「命令じゃないよ、個人的に会いたいって事なんだ」
「は?」ますます憤慨した。個人的、と言うのならば、いろいろと順番という物があるだろう。

ここだ、と片桐氏は廊下の1番奥の部屋へと案内する。
「私は、ここまでだ。大丈夫、マルちゃんはいい人だから。」
そういうと片桐氏は去っていった。
廊下の1番奥に僕一人。
扉の隙間からうっすらと光が漏れている。
ネクタイを正し、ノックする。
「入ってくれ」と中年の男の声。
「結城優巡査、出頭致しました。」
0123創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/19(日) 15:40:03.98ID:aXXyraMB
三人揃う2

そこには三人用のソファーの真ん中に座る男、
髪がボサボサで少し垂れ目の中年。和製コロンボのような出で立ちだ。
もう一人、男が座るソファーの後ろに立つ若い女性。
美人だ。歳も僕とさほど変わらないだろう。
「まあ、座れ」和製コロンボが僕を真っ直ぐ見ている。恐らく、こうしてる間にも僕の人と成りを
見ているのだろう。
刑事と言うのはそういう癖がある。
言われた通り、テーブルを挟んで、彼の正面に座る。
「出身は?」
「九十村であります。」
「白木丈一は知ってるか?」
知っている。かつて九十村名士第四位の位にあった家の長男。悪さが過ぎて破門された。
「奴は故郷の恥であります。」
事件を起こして懲役を喰らった事も知っている。
この刑務所で死んだ事も。
「..小野寺順一の事件は知っているか?」
なんなんだこれは?立て続けに質問だ。要点がまるで掴めない。
「これは尋問ですか?」
思わず口走る。
「小野寺順一死体遺棄事件は知っているのかと聞いている!!!」
怒鳴り声に前進が硬直した。
0124創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/19(日) 16:07:15.05ID:aXXyraMB
三人揃う3

「..済まない、ちょっと前に文字通り、死ぬような思いをしたんでちょっと気が立ってる。
で知っているか、小野寺の件..」
今の怒声で、僕は臆病になっていた。
「ニュースで少し..」
丸山巡査部長はここで一冊のノートを取り出す。
そのノートを見た僕は血の気が引いた。一瞬でこのノートには恐ろしい事が書いてあるに違いないと直感した。
丸山巡査部長は僕のその表情を見逃さなかったに違いない。
「白木が死ぬ前に書いたノートだよ。中身は見ない方がいい。」

そして巡査部長は今までの事を事細かに話し出す。
容疑者の変死は小野寺の仕業だと。とても刑事の口から出た言葉とは思えない。そして、つい数時間前、自分も小野寺の幽霊に殺されかかった事も。
さらにとんでもない事を言いだす。
「俺は、休暇を取って、幽霊になった小野寺を追う。それしか俺が助かる道はない。」
唖然とした。幽霊を追う刑事など聞いた事もない。
沈黙が続いた。
「で、私に何をしろ、と?」僕が呼ばれたのは多分、九十村関連だろう。
0125創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/19(日) 16:29:08.20ID:aXXyraMB
三人揃う4

「俺と九十村に付いてきて欲しい」
そら来た、言いたい事は解っている。土地勘もなく、村民は閉鎖的、そこへ地元民の僕と行けば、
その幽霊捜査もやりやすい、そんな事だろうと思った。
「お断り致します。」
今度は臆病なく、率直に言えた。
「私は二度と故郷には帰らないと誓っております。」
「何故だ」巡査部長が尋ねる。
「巡査部長殿も九十村へと足を運んでいるなら、解っているはずであります。私はあそこの風土、宗教に嫌気がさしておるのです。あそことはもう縁を切りたいのです。」
また沈黙、巡査部長は僕の目を見詰め、やれやれといったジェスチャーで
「..まあ、仕方ない、か。俺一人でやるしかないか。」と、初めて笑顔を見せた。
「解っていただけましたか。」僕は呟いた。
「そうそう、紹介を忘れていたが、この娘さんは、早苗君と言って、S大で民族学やってる大学院生だ。話を聞いてやってくれないか。」
0126創る名無しに見る名無し
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2012/08/19(日) 16:55:45.21ID:aXXyraMB
三人揃う5

「小塚早苗です..」
美人のその人ははにかみながら自己紹介する。
「結城優と申します。」
「...いきなりだけど、確か結城家って九十村では名士ですよね。確か井塚家に次ぐ第二位の」
「は、家業は兄が継いでおります。」
「家門...結城家の家門てなんですか?」
また、変な事を聞かれるな。幽霊捜査の次は家門の話か。
「はあ、百合でありますが」
「ふーん、百合。」
早苗嬢は何か考え込む。

「九十岬の話は知ってる?」
だから僕はそういった戒律やら儀式やらが嫌いなんだ。と思ったが半場投げやりで、
「一揆に纏わる伝承程度なら。」
彼女の目が輝く。
「そう、それ!!牛田五郎エ門!!、私達、あの岬に言ってみたいの、何か方法ある?」
後ろで黙っていた巡査部長も話に割り込んできた。
「あの辺りで小野寺順一の死体が遺棄されたんだ。できれば俺もこの目で見てみたい。」
もう沢山だ。伝承だの、一揆だの、首無し牛の岬だの。
「不可能です。あそこは村民が決して立ち寄らない不浄の地です。私も入った事はない。..ですが。」 とある儀式を思い出す。
「井塚村長に相談すれば、あるいは」
まあ、よそ者では許可はでないだろうけど。
0127創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/19(日) 17:07:58.60ID:aXXyraMB
三人揃う6

「では、私はこの辺で」
これ以上この和製コロンボ、いや和製モルダーと
何だかよく解らない学生には付き合ってられない。
「結城君」早苗嬢が呼び止める。
「何でしょう?」語気を強める。
「あなたの親類で、留美ちゃんって娘いる?髪が長くて、綺麗な娘」

留美、何故彼女が留美さんの事を知ってるんだ?

「..長谷川家の留美さんですか?」

「苗字までは解らないけど...うん、いるのね。」
少し引っ掛かる言い方だったが、
「失礼します。」
頭を下げて部屋を後にする。
後ろを振り返る事はなかった。


この夜、また例の夢を見た。足跡の量は前より増えていた。
0128創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/09/13(木) 18:02:11.26ID:xStR1T7d
僕は東大卒の灯台の管理人。
年がら年中ほぼ人と交わらぬこの暮らしを初めて五年になる。
が、そんな暮らしを変えるかもしれない一つの申し出が舞い込んだ。
官僚のお偉い方の娘さんが受験シーズンであり、
その娘さんを夏休みの間、この灯台に置いてやって欲しいという。
この静かな環境で娘に勉強を教えてやってほしい、家庭教師をやってくれというわけだ。
どんな子か素性が分からないので、すぐには返答しかねた。
というか、よく若い男の下に娘一人だけ寄越す気になったものだな…
監視役の人が付いてくる訳ではないのか…
あれこれ考えたが、結局引き受けることにした。
基本暇だし。提示された金額は、大いに結構なものであったので。
さて、娘さんがやってくる日と相成った。
近くの町の駅まで迎えに行く約束だ。
駅の改札前で待つ。娘さんの容姿の特徴は事前に聞いていた。
背は150cm程。髪は長いが、腰に届くほどでもない。
どこにでもいそうな特徴だが、この駅で降りる人は少ないので、間違えることもないだろう。
しばらくして、それと思しき若い女の子が、暗がりの奥に姿を現した。
相手と目が合う。すぐに僕が目的の人物だと気づいたようだ。
娘さんはニコッと笑った。そのまま、改札を通る。
外の明るみに姿を見せると、
「こんにちは!」と言った。
僕は「はい、こんにちは」と返した。
一応、「佐々木京香さんだね?」と確認すると、
「はい、そうです」と言う。
「僕が木村武治。灯台の管理人をやってる」
「あ、聞いてますよ。灯台で暮らしているって」
「そうだね。まあ、僕のような人はなかなか珍しいだろうね。」
娘さんは愛想笑いをした。
「じゃあ、行こうか。車をすぐそこに止めてあるから。」
「はい」
0129創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/09/14(金) 21:47:16.42ID:DKC2s0ms
娘さんの荷物は長期の滞在にしては、随分こざっぱりしたものと思えた。
肩から提げる布製のバッグであり、最も、彼女の体格からすれば、大きいとも言えるのだが。
そのバッグは今、車中の後部座席に置いてある。
娘さんは助手席で正面を向いている。
「長旅はどうだった?大変じゃなかった?」
「いえ、楽しかったですよ。一人でこんなに遠くまで来たの初めてで。」
「そうか。ちょっとした旅行みたいなものだろうね。」
「ええ。少しの間、勉強のこと、忘れていられましたし。」
「ハハ…」
この道路を走る車は少ない。時折すれ違うぐらいだ。
トンネルを潜る。
「ここら辺は何もない土地でね。海が近いけど、
海水浴場があるわけでも無いしね。
山ばかりで、遊ぶ所なんて、ホントに無いんだ。」
「はい」と頷く。
「強いて言うなら、温泉宿が一軒あるぐらいかな。少し遠いけど。
まあ、だから、勉強するのなら、もってこいの場所ではあるよ。」
「…その方がいいです。勉強に集中できるなら。」
「うん。なら、ここを気に入ると思うよ。」
娘さんは少し笑った。
しばし、山道を進み続けると、正面の山間に濃青の海が覗いた。
もう少しで、我が家、我が職場が見える。
0130創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/09/15(土) 23:42:28.74ID:82IO2buB
道の在り処は、山中から海岸沿いへと移った。
先の山道より交通量は随分多く、トラックやダンプといった大型の車両が行き交っている。
助手席側の窓から望める流れ行く景色は、大海原と青空がその座を占めている。
娘さんの視線は、海に向いている。
もうじき、目的地に着くのではあるが、何か音楽なりラジオなりを鳴らしておくべきだったか、と思いもした。
海沿いの山の斜面を切り開き敷かれた道路はカーブに満ちたものであり、
その内の一つの大きなカーブを行き過ぎることで、ある山の裾を経巡ると、
景色が前方にぐっと広がり、その景色の片隅に、白色の直立した建造物が認められた。
灯台が、見えてきた。
娘さんは少し身を乗り出した。
「あ、あそこに建っているの、そうですよね?」
「うん、そうだよ。」
「大きいですねー。」
「そうかい?確か、全長で22メートルだったかな。」
「へえ…」
木立ちもまばらな陸地が海へと突出している。
それは岬であり、岬の名は須緒岬という。
灯台はこの岬の先端にある。
岬の付け根にて、道は本道と脇道の二手に分かれた。
本道をそれ、車を脇道に入れた。この先が灯台となっている。
松の木の寂しい枝振りの隙間をうめるコンクリートの曲壁は、日光によって塗料の白さを際立たせていた。
0131創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/09/16(日) 23:19:54.75ID:6uNC4JCj
車を止め、エンジンを切る。
「さあ、出ようか。荷物忘れないで。」
車から降りると、日光と潮風を直に浴びた。
岬の先端部にはコンクリートで基礎を固められた区画があり、
そこを土台として灯台は建っている。
白い壁は上方へやや細まりながら延びている。
窓や採光部はあちらこちらに位置している。
頂上は、手すり付きの円形テラス風といえばいいだろうか。
「入口はこっち」
見上げている娘さんに、付いてくるよう促す。
周囲を回り込みながら、鍵束をポケットの中から探り当てる。
途中、屋上まで通ずる外部階段の登り口を通り過ぎる。
すぐに、正面玄関と呼ぶべき扉前にやってきた。
金属製の扉は横にスライドするタイプのものだ。
郵便箱を一瞥するが届け物は無し。
新聞はとっていない。配達が可能なのかは知らないし、勧誘は来たことがない。
鍵の一つを鍵穴に差込み、回す。
扉の取っ手を掴み、扉を横へと滑らせた。
先に中へと入り、電気を点ける。
緑の床、クリーム色の壁。パイプや電源部がむき出しとなっている。
丸く縁どられた窓のカーテンは締め切ったままにしてある。
暑いからだ。
「どうぞ、入って」
「おじゃましまーす」
「部屋、用意してあるんだ。案内するよ」
「あ、そうなんですか。ありがとうございます。」
僕は扉を閉め、入口正面にある、昇降機の前へと進み出て、スイッチを押す。
一階に留まっていた昇降機はすぐに扉を開けた。
0132創る名無しに見る名無し
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2012/09/17(月) 22:50:51.97ID:OmXjsq5P
昇降機は至極ゆったりと昇っていく。
じき、目的の階へと到着した。
廊下へと出る。
娘さんの表情に疲れといったものは見受けられなかった。
廊下が左右へ分かたれている。
右へと進む。すぐに木製の扉が設えられた壁に突き当たる。
扉には名札受けが付いているが、現在は空である。
再び鍵束をポケットから取り出し、目当ての鍵の見当をつける。
その鍵は鍵束の輪から外しておいた。
後で娘さんに渡すつもりであったので。
開錠する。
扉を開け、「さあ、どうぞ。」
靴を脱ぐための玄関は小さいので僕一人が先にそこで靴を脱ぐ。
壁際には小さい下駄箱があるので、そこに靴を置いた。
続いて入ってきた娘さんも靴を脱ぎ、下駄箱に置いた。
「とりあえず、荷物を下ろすといいよ。」
言いながら、僕は窓に歩み寄り、カーテンを開け、窓を開け放った。
風が入り込んでくる。
外は海空が広がるばかり。
娘さんは荷物を肩から下ろしながらも、部屋を眺め回している。
この部屋の形状についてであるが、外界との堺界壁は丸く湾曲しているが、
内部空間を分け隔てる壁の方は平面である。
丁度、ロールケーキの四分の一カットといった感じだ。
床は、外縁部は木製であり、内奥部には畳が五畳、長方形に敷かれている。
畳の上には素っ気ない机が一つ。
娘さんは窓際にいる。
「どうかな?景色はいいでしょ?」
「ええ、綺麗ですね。」
「一応、この部屋でいいかな?ま、別の部屋もあることにはあるよ。
見に行きたいなら案内するけど?」
「んー、この部屋でもいいですけど、クーラーはありますか?」
「もちろん」
奥まった位置に備えられているクーラーの方へ手を差し向ける。
「あー、でも動くのかな。確認しないとね。」
クーラーは無事、動作が確認された。
そうして、この部屋は娘さんの住まいとなったのだ。
0133創る名無しに見る名無し
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2012/09/19(水) 23:09:08.42ID:t4CmTG4C
「昼ごはんは食べたの?」
そう訊くと、電車内で弁当を買って食べた、ということらしい。
僕はというと、昼食はまだであったのでお腹が空いていた。
台所へ行って、一人分の昼食をこさえたい訳であったが、
来て早々の娘さんに、この部屋で一人待ってもらうという考えは却下せざるを得なかった。
この部屋、テレビも無いのである。
まさかいきなり、「することないなら勉強していれば?」等と言えるはずもない。
結局、テレビの置いてあるリビング兼食堂に移動し、僕はテーブルにて食事に向かい、
娘さんにはソファにて、お昼のバラエティ番組と冷えたウーロン茶を肴とし、寛いでもらっている。
今日の昼はざる蕎麦である。使用した麺は割と値の張る上質のものであり、
歯ごたえというかコシというか、確かにお値段据え置き品とは異なるようである。
娘さんはバラエティ番組を一応見てはいるようで、笑ったりはしないものの表情は幾分柔らかいと見えた。
旅先のホテルなどで、テレビを点け、そこにお馴染みの番組や芸能人が映ると、妙に安心する心地を覚えることはないだろうか。
今、娘さんはそういう感興なのかなと、僕はふと思った。
番組は一旦コマーシャルに入った。
すると、娘さんは上衣の懐から何やら取り出した。
携帯電話であった。
「ウチへ電話しますね」
「あ、うん。それはした方がいいね。」
ややあって、
「あ、もしもし、お母さん?さっき着いたよ。…うん、したよ。…あー、それも大丈夫。」
…色々気掛かりな母と心配させまいとする娘の会話、であろうか。
その内、僕の方にもお鉢が回ってくるかと思ったが、
「…また、電話するから。…うん、わかってるって、勉強ちゃんとするから。それじゃ。」
娘さんは電話を切った。
僕は既にざる蕎麦を平らげていた。
0134某シェアワ用に書いてて頓挫したヤツ
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2012/12/06(木) 00:21:59.35ID:k/7hRpV/
「くっ!」

“魔人”といえど、連中の数の多さには旗色が悪い。
そこへきて力と執念深さがあるために、一撃で振り払うことはなおかなわない。

「アグゼス! どうにかならないか?」
「考えうる最高のパフォーマンスで処理している」

っふ、と舌打ち混じりの溜め息をつく。
連中は今現在も増えている。
最近はイヌ型ばかりではなく、翼手のような造形や地を這うタコのような造形など、バラエティに富んできた。

ダガーを両手に、襲い来るミュータントを捌く。
背後の“魔人”は、鉤爪のついた三本指で連中を切り裂く。

「もうじき群れが切れる。そこを見て抜け出す」
「どうやって!」
「抱える」

言うが早いか、背後から太い腕が私の腰に巻きついた。
私は即座に、衝撃に備えて腹に力を入れる。
魔人、アグゼスが跳んだ。

コウモリとヒトがくっついたような、翼手が追いすがってくる。
ダガーを投げつけようとしたその時、眼前の翼手の身体がビクンと跳ね、次の瞬間には視界の下方へ去っていた。

「助っ人と呼んでも差し支えない存在が出現したようだ」
「……会いたくもない奴だけれどね」


翼手が墜ちた場所のそばに、一人の男が立っていた。
0135創る名無しに見る名無し
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2012/12/06(木) 00:23:04.61ID:k/7hRpV/
アグゼスの跳躍は見事にミュータントたちの群れを抜けだした。
まだ数体、翼手が追ってきていたが、そのくらいの数ならば十分対処可能だ。

「“助っ人”はずいぶん手を貸してくれたようだ」

アグゼスの無機質・無感動な声が、気に障る。

「バッカじゃないの。あいつはあいつの“オシゴト”してるだけでしょうが」

つい、ヒステリックに叫んでしまった。
言った後から気づく。

――こんなところが、ダメなんだ。

「そろそろ時間だ」

“魔人”アグゼスは、私の剣幕など意に介さない。
うっすらと東の空が明るくなってきているのを見て、私は漸く腕時計を見たのだった。



連中も、日中には活動性を落とすタイプだった。もう大人しくなるだろう。
始発は動いているだろうか……と頭を巡らす。
数年前まで新興住宅地だった、郊外の町。
今は誰も住んでいない、ゴーストタウン。
例の隕石災害、そしてその後現れ始めた奇妙な“生き物”たち。

――予想はしていたけど、こんなに増えてるとは思わなかった……。

ここには、用事があったのだ。
私は、最初の目的地に戻ることにした。
0136創る名無しに見る名無し
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2012/12/06(木) 00:25:13.06ID:k/7hRpV/
「……」

男は、道路の真中に立っている。
さきほど翼手を一体撃ち落とした、アグゼス言うところの――私はそれを認めないけれど――“助っ人”だ。
無言で、こっちを見ている。

私は無視して、道路の端を歩いて通りすぎようとした。

「『アイビス』」

男が言い、私の行く手を塞ぐ。

「何をしている」

鷹揚な物言い。
目を合わさず、極めて不機嫌に、言ってやる。

「……その名前で呼ぶのはやめてくれないかな。私はもうあんたたちの仲間じゃない」

男はフン、と鼻で笑い、皮肉っぽい笑みを浮かべて言った。

「一般人だ、とでも? ならばなおさらだ、ここは特別禁止区域に指定されている。理由は……分かっているだろう」

昔から、変わっていない。

――だから、こいつは嫌いなんだ。

「それが何? 私は忘れ物を取りに来ただけ。用が済んだらすぐ帰るし、自分の身は自分で護れる」

言いながら、奴の脇をすり抜ける。
男は私を通らせたが、背中から声を掛けた。

「昼行性のガーゴイルも出てきているぞ。昼間に、昨夜のような事が起こる可能性は十分にある」

――ちっ。やっぱりそうなるんだ。

私は、奴がどういう人間か比較的知っている。私が奴を嫌いなのも、そのせいだ。
もっとも、最大の理由はもっと別のところになるのだけれど。

私は、奴を無視してスタスタと歩く。
振り返らずに、捨て台詞を吐く。

「あんたは、頭痛の心配でもしてれば!?」
0137創る名無しに見る名無し
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2012/12/06(木) 00:28:14.93ID:k/7hRpV/
Code name;アイビス。
とうに捨てた、私の昔の名前。

馬鹿の集まり。カッコつけに○班、なんてナンバリングしている。
あの頃は5班まであった。今はもっと増えているだろう。そんな勢いだった。
私は、その「1班」に所属となった。
今はその班は無い。
他の班はどうなっているか知らないけれど、知りたいとも思わない。


警察学校を卒業する時、教官から呼び出された。

「三島、貴様に話がある。後でここに来るように」

教官の立場を利用したセクハラとは。私はこの手の犯罪に虫酸が走る。
この教官がそういう肚ならちょうどいい、社会のダニを駆除するいい機会だ。

そう思った。
私はまだ二十を過ぎたばかりで、自分でも恥ずかしくなるくらい、血の気が多かった。


教官から手渡されたのは、一枚の地図だった。
“そういうこと”をするなら教官室とかを指定しそうなものだが、ラブホテルの場所でも書いてあるのだろうか、私は軽蔑の念を込めてその紙を受け取った。

「1時間で塵になる。光学処理されているので、複写および撮影は出来ない。よく頭に入れろ」
教官は、そう言った。

手渡された紙は不思議な質感を持っていた。
0138創る名無しに見る名無し
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2012/12/06(木) 00:31:04.70ID:k/7hRpV/
地図は、一般常識からいうと不親切極まりないシロモノだった。
グーグルマップで言えば、「色分けおよび建物名が一切記載されない市街図」。
後で気付くのだが、北を上に記載されているでもなかった。

そして、指定の場所は地図に明記されていない。
地図の下部に数字の羅列が並んでいるだけだ。

「3時間後、現地だ」
教官はそう言うと、さっさと教室から出ていった。


約一時間が経つ頃、その紙はボロボロと崩れ始めた。
手に持ったさきから粉になり、表面もどんどん色褪せてくる。
私はこの時初めて、地図を覚えるのに必死になった。
それまで、教官の言った意味や目的などを、漠然と想像して遊んでいたのだ。

“地図”には特徴的な図形が一つ描かれている。
私は学校から少し行ったところにある建物を思い浮かべた。
すぐに(一般の)地図を検索する。

おそらく、間違いない。
そっちの“地図”はもう無くなってしまったから、突き合わせることは出来ないが……あの“図形”は、この建物を指しているはず。
だとすると、あの“地図”は北が上ではない。

ああ、なんとややこしいことを! まるでスパイの情報戦じゃないか。
私は髪をぐしゃぐしゃとかき上げながら、周辺図をプリントアウトする。
頭の中にある“地図”と重なるように、それを回して東西南北を合わせる。


……待てよ。
はたと気づいた。
目的地は示されていないのだ。
あの地図に、目印のようなものは何一つ無かった。
あるとしたら、変な数字の羅列……

あれが、目的地を示す“記号”なのか?
それだけはメモした。
メモを見返し、プリントアウトした図と見比べる。
あの“地図”の中心に来ていたのは、この建物だ。
数値は座標を示すものか? 仮にそうだとするなら、かなり端っこに寄った地点にある。
けれどそこには建物はない。大通りが走っているど真ん中だ。

こんなこと、前にもあったような……

私は、以前に姉から聞いた話を思い出した。
0139創る名無しに見る名無し
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2012/12/06(木) 00:33:29.20ID:k/7hRpV/
この“座標”が、「中心点からの距離」を指すものだとしたら……?

目的地は、中心からややそれた場所にあり、それを示すために数値が与えられている。
それであらためて図を見返す。
“座標”の示す位置に、果たして“それ”はあった。
商店街の外れにある喫茶店に、“それ”はピタリと合っていた。


時計を見る。
あの通達から3時間後、ということはあと40分。

いつの間にこんなに時間が経っていたのか。
こんなことなら、ダメ元でもっと早くからあらゆる検討を重ねるべきだった。
歯噛みする思いをしながら、私は急いで支度をした。

化粧と洋服? とんでもない。
何が待っているか分からないのだ。
実技で満点だった短刀を両腿に仕込み、GPS発信機を封入したピアスに付け替える。
24時間以内に外して解除処理をしないと、現在地を通報されるものだ。

今となっては、それも無駄な足掻きだと分かるのだが、当時はそれが最先端の護身技術だと信じて疑わなかった。


電車を使って行く発想は無かった。
なぜか、こういうことになったら公共機関はヤバいと思ったのだ。
で、自転車を漕いで行くことになる。
時間的に、目的地まではギリギリだ。

ここで、なんでそうしたのか、当時の私の愚行を責めないで欲しい。
とうの私が「バッカじゃないの!?」と言いたい気分なのだ。
若かりし頃、というのは、そういうものだ。それから4年しか経ってないのだけれど。
0140創る名無しに見る名無し
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2012/12/06(木) 00:36:57.07ID:k/7hRpV/
結果を先に言うと、時間には間に合わなかった。
けれど、約束には間に合った。
もったいぶっているわけじゃない、話を進める。


自転車を漕いでる途中で、時計のアラームが鳴った。

タイムリミットか……!
私は、脱力感に襲われた。

けれど、思えば得体の知れない“指令”に振り回されただけのこと。
守れなくても、卒業がどうにかなるものでもないだろう……
私は早くも諦める理由を考え始めた。

しかし、気にかかることがある。
私だけでは無いにしろ、まるでゲームを解けるかどうか試されているかのように、教官から呼び出しを受けている。
その場に居るのがどんなメンツなのか、それに興味があった。
そんなことを考えているうち、目的としていた喫茶店に辿り着いた。


何の変哲もない、ともすれば明日にでも潰れてしまいそうな、古い喫茶店だ。
私はドアを押し、数秒(数十秒、あるいは数分だったかもしれない)あってから「いらっしゃいませ〜」の声を聞いた。

店内には、客が一人だけ。よく見慣れた人物だった。
0141創る名無しに見る名無し
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2012/12/06(木) 00:43:30.45ID:k/7hRpV/
「2分オーバーだ、三島柚子」
「すみません……」
言い訳をする余裕は無かった。それよりも、この“密会”の目的が気になってしょうがなかったのだ。

「三島、貴様は捨てるものがあるか」
教官は、世間話をするようなふうで言った。

……?

意味が飲み込めない。
あの、お冷いただいていいですか。あ、これですね。ふう。えっと? あ、はい。

「貴様の『能力』は非常に優秀だ」
教官は静かに言い、コーヒーカップを口に運ぶ。

「『バッフ』あるいは『エグザ』とも呼ばれる、特殊能力。これを使った犯罪が後を絶たない」

黙っている。

「そうした犯罪を専門に扱う課、というのがある。……もちろん非公式だが」

教官が私を睨む。この時の目ほど、“眼力(めぢから)”のある目を、私は見たことがない。

「過酷な仕事だ。犯罪組織と、第一線で殺り合う。頭脳戦も情報戦もある。『能力』を使ったテロ行為は毎日のように起こっている」

私はただ、教官の目から視線を逸らすことが出来ず、ただ見返して、黙っている。

「戦闘に特化した、優れた『能力』のある者でなければ、この課の人員は務まらない。私の言うことは、つまり、それだ」

言い終えて、教官は再びコーヒーカップを口に運んだ。
何故か顔を苦そうにしかめる。

砂糖なりミルクなり入れればいいのに。



私の『能力』。

私以外の、人型の何者かを召喚できる能力。
“そいつ”について、私は詳しく知らない。

でも、召喚すると、なぜか昔から知っている古い友人か、疎遠になっている親戚かのような感覚が私の中に満ちる。
何を命令するでもないのに、私の思うとおりに動いてくれる。
ただし、殴る蹴るなんかの単純な作業だけ。


“魔人”アグゼスを十分に認識していなかった頃の私は、こんな感じだったのだ。
0142創る名無しに見る名無し
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2013/05/05(日) 23:35:02.38ID:deY5it8h
 ガチャリ、とオーブンを開けると、熱気と共に甘い香りが漂った。
 ミトンを嵌めた手を伸ばし、鉄板を引き寄せる。柑橘と蜂蜜が熱に混じって鼻をくすぐる。綺麗に焼けたマドレーヌに思わず頬を緩ませながら、網棚の上に手早く取り出していく。
 袋とリボンを用意してる内に粗熱が取れたので、綻びや割れのあるものを取り除いていく――とその時。

どたどたどたどた!

 廊下を走る騒がしい足音。反射的に手元にあるマドレーヌを一つ掴む。

 ばーん!

「おやつ――もがっ!」

 勢い良く開け放たれた扉に向かって鋭く投擲。狙い違わずターゲットの口に飛び込み、その動きを止める。
 が、次の瞬間には全て咀嚼されて口の中から消えていた。相変わらずの早食いだ。
 嘆息し、意味が無いと分かりつつも忠告する。

「心美。厨房に飛び込むなといつも言ってるだろう」

「だって甘い匂いがしたんだもーん。要人お兄ちゃんこそ食べ物を粗末に扱っちゃダメじゃないのー?」

「今投げたのは一番焦げてた奴だからな。元々捨てようと思ってたから丁度良かった」

「ひ、ひどい! でも美味しかった!」

 この焦げたマドレーヌで満足する食わせ甲斐の無い少女は、妹である心美だ。
 菓子が焼き上がると何処からともなく嗅ぎ付け、厨房に飛び込んでくる。
 餌を与えないと暴れて埃が舞うのでロスを提供して黙らせるのが常だ。
0143創る名無しに見る名無し
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2013/05/05(日) 23:37:43.56ID:deY5it8h
「で、何の用だ?」

 溜め息混じりに聞くと、心美は思い出したように言った。

「そうそう、朝御飯できたから来いってお母さんが」

「最初に言え。……今行くから先に用意手伝ってろ」

 はーい、と元気に返事をして騒がしく飛び出していく心美を尻目に、マドレーヌに触れて温度を確認する。
 袋詰めするにはもう少し冷ましてからの方がいいだろう。
 幾つも並ぶ焼き菓子にペーパーを被せてから手早く手を洗い、厨房を出る。
 廊下を歩きながら腰に巻いたサロンと頭に被ったタオルを外し、居間の扉を開けた。

「おはよう、早かったね。もう少しで準備終わるから待っててな」

「その言葉はオレが言うべきだと思うぞ」

 ぐってりと机に伏しながら顔だけ向けてこっちを向いたのは母である陽子。
 仕事の途中だったのか目の下に酷い隈が出来ている。
 それにツッコミを入れながらキッチンから顔を出したのは、父親の陰之。
 猛禽の如き鋭い目つきはカタギと思えないレベルだが、この家の家事全般を片付けているのはこの陰之である。
 つまり主夫だ。
 何も知らない人が見れば怯えて愛想笑いを浮かべながら逃げそうな視線をじろりとこちらへ向けた。
0144創る名無しに見る名無し
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2013/05/05(日) 23:39:06.95ID:deY5it8h
「仕込みは終わったか?」

「一段落ついた。あとは袋詰めと、追加分くらい」

「そうか。テーブルに着いてろ、すぐに運ぶ」

「あ、いや手伝うよ」

「いらん。大した量じゃない。心美だけで十分だ」

 言い残してまたキッチンに引っ込んだ。態度で誤解されがちだが優しい父親なのである。
 程なくして心美が料理の載った皿を持ってきた。こちらも邪魔な人間を動かし箸や取り皿を並べて準備をする。

「……大事な母親に対して、何か言うことは?」

「ジャムはバナナでいいよね?」

「邪魔な物を退かすように扱ったことに謝罪はないのね……あ、新作?それちょうだい」

 背もたれにぐったり体重を預けながらトーストに強い匂いを放つジャムを塗っていく陽子。
 要人はジャムも作って販売しているので時折試作品を食卓に置くのだ。
 今回はバナナ。我ながら良い出来だとは思うのだが、濃厚なバナナの風味と同じくらい強烈なバナナの芳香が漂う物となってしまった。
 バナナ嫌いが一人でもいる家庭には売れるまい。
 心美とエプロンを外した陰之が席に着くと、全員が両手を合わせて唱和する。

「「「「いただきます」」」」

 日野家の家訓その一。食卓を疎かにすることなかれ。
 雑談もテレビも許されるが、家族全員が席に着くまで食事を始めることは許されない。
0145創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/05/05(日) 23:40:44.47ID:deY5it8h
ここまで書いて、8割がたプロットもあるがどうしても進まない
いつか書こうと思いつつ塩漬けになってたものを供養
0146創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/05/06(月) 09:20:51.74ID:P9G/v4z3
>>142
二次創作……?
と思ったけど、とりまググってもそれらしいものは見当たらない
オリジナル作品かな?


文章は読みやすい、キャラ構成もなかなかにそそるものがあった
続きを書いてくれたらいいのに!
0147創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/05/06(月) 10:26:44.20ID:SX95/OM0
>>146
オリジナルだけどキャラは意図的にラノベっぽく名付けたから一見二次に見えるかも
ファンタジーな要素なんて欠片も無い、ラズベリーのように甘酸っぱい恋愛モノに…なる予定だった
反動でその後がファンタジー祭りになったけど

好評価貰うのに慣れてなくて、なんか照れるな
そう言ってくれてるのなら気合入れて少しずつでも書いてみましょうかね
0148創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/05/06(月) 13:47:21.86ID:KGE4U7Pa
血の匂いなんてしないじゃないか!
するのは糞尿の吐き気がする匂いだけ。
足元に転がる最愛は。
ねぇ、ロマンチックなデートのお誘い嬉しかった?
「あの山を登ったらすっごい夜景が綺麗なんだって!見に行きたいなぁ」
嘘じゃないよ、とっても綺麗だよ
。人気の無い山道を一人で帰ると思ったら憂鬱だよ。
脂肪でテカったナイフを舐めて見る。うん、鉄の味しかしない。
本当に美味しいのかなぁ。
太ももの肉を五センチ程度削ぎ取る。
プルプルしてて、血まみれで、いかにも怪しい肉っぽくて食欲は湧かない。
ちゃんと火を通さなきゃ。
私は牛も豚も鳥も食べる気になれないんだ。
今まで?食べてたよ。肉を食べなきゃ早死するからね。
食は人生で結構大事な位置の行為なのに疎かにしたくないよ。
肉は美味しいし。
だから人を食べてみるの。
カニバリズムのシーンがある漫画や小説を読み漁ってみたけど、どう料理すればいいのかは分からない。
料理本でもあればいいのに。
腹にゆっくりナイフを皮膚に沈める。程よい弾力で心地良い。
死体に穴開けてセックスしたがる人の気持ちが分かった気がする。
ミイラ化した死体をお湯でふやかす人、心臓をセックスするための臓器だと信じて疑わない人、死体を切り貼りして芸術作品を作り上げる人。
彼等彼女等に妙な親近感を抱いて、今すぐにでもこの死体を分け合い語り合いたい気分になった。
「どうして人を食べようと思ったの?」
身元確認済みの遺体は尋ねた。
「骨を、肉をミキサーで砕いて飲めば石鹸箱の毒に侵されずに生きていけるからね」
先人からの答えはマカロニチーズの中に
「なんでわざわざ人間なんか食べるのですかぁ?」
違法な何かで薄まった私の意識にこっそり滑り込んできた。それは私の後ろに立っていた。
小学二年生の女の子を貼り付けた"ロイ"だ。
「貴方方人間様には沢山出来る事があるというのに!」
驚きの跳躍力でピョンと跳ねて私の前に躍り出る。
「人間様には権利があります!」
空中にゴシック体の文字が浮かぶ。
「人間様のお望み通り!人間(あなた)は神であって良いのです!さぁ!"人間と動物"!人間は動物じゃないかのように振る舞えるのです!」
ロイが両手を広げクルッと回ると鶏がそこに居た。
ふわっと羽毛が舞う。
「人間様のお望み通り!人間様は自然(わたし)達を好きなだけレイプして殺して食べていいのです!」
百羽に一羽は心臓疾患で死ぬという肉のための鶏は騒いだ。
「いやだよ。私は人を食べるの。鶏を食べちゃ可哀想」
せっせと肉を切りタッパーに詰め込む。ああ、今ここで焼いて食べる事が出来たのに。
「人間様、共食いなんて止めてくださいよぉ!さぁ!ファックしたいなら人間ではなく自然へ!」
「うるさいなぁ、私は人を食べたいの」
ロイは小学二年生に戻ったり鶏になったりして私の周りを動き回る。
「人間様は私をどうしたいですか?くちばしを切り取りますかぁ?脳を殺して体だけ生かせて太らせますかぁ?」
終わった。十四個のタッパー全てに肉を詰め終えた。
「よし、埋めるか」
麓の家の森田さん、私有地(こんなところ)で肥やしを作ってくれてありがとう!
おかげで臭いでバレる事は無いよ。あなたが土砂崩れでペチャンコになる事がありませんように!
森田さんのシャベルも拝借してザクザク埋めよう。
「人間様は馬鹿ですね」
ロイはじっと私を見つめた。
「こんなに愛らしい鶏を食べるなんて、人間はなんて非道なんでしょう」
そっと頭を撫でるとロイは俯いた。そして、フワッと宙に溶けて消えた。
残ったのは私とタッパーと腐った生ゴミだけ。
0149創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/05/06(月) 13:48:46.49ID:KGE4U7Pa
ロイはじっと私を見つめた。
「こんなに愛らしい鶏を食べるなんて、人間はなんて非道なんでしょう」
そっと頭を撫でるとロイは俯いた。そして、フワッと宙に溶けて消えた。
残ったのは私とタッパーと腐った生ゴミだけ。


『犬と猫の里親分譲会』
「篠ちゃん、この子見ててもらっていい?」
私の知る限り最も笑顔が素敵なお姉さんにリードを渡された。
先には絨毯みたいな滑らかな毛皮の大型犬。ミックス犬だ。
「わかりました!」
この子が分譲会に出るのはもう七回目だ。殆どお姉さんが飼ってるようなもの。
子供、子供、大人、大人。
飼う気も無い人々が犬や猫に癒しを求めて集まる。
「お前はお姉さんのところで幸せ?」
ミックス犬はゴロンと寝っ転がって周囲に愛嬌を振りまく。
「まぁまぁ。お姉さん喪女だから甘やかしてくれるよ」
彼の口がCGのように不自然に動く。
「へぇ、既婚だと思ってた」
午後二時。人が増えた。
ミックス犬にお水をあげて戯れる子供の相手をする。
突然意識に靄がかかる。けど行動に支障は無い。何時もの事だ。
遠くの景色が赤っぽくなったり青くなったり、グルグルと入れ替わる。
「ああ、本当に君の毛皮は絨毯みたいだね」
「そりゃどうも。でも絨毯になるのはごめんだよ」
「そんな事はしないよ。でも世界に絨毯は必要だからね。君の代わりに誰かを絨毯にしてみるよ」
そうだ、人間の皮をなめしてみればいい。絨毯にはならなくとも服にはなるかもしれない。
人間はウサギの皮を着るのだからウサギには人間の皮を着せてあげよう!そうだ!いい考えだ!
「そうかな?」
高校一年生男子を貼り付けた"アン"はいつの間にかそこに居た。
「昨日は君の友達に会ったよ」
「ロイのことかい?ロイは魔法の部屋に行ったよ」
「本当に?そう、残念だ」
通るだけでパックに詰められる、魔法の部屋に行ってしまったらしい。
「君は知らない。僕は毛皮をとられる事はないんだ。羊のように刈られるだけさ」
「それって楽しいかい?」
ミックス犬は楽しそうに聞いた。
「変なこと聞かないの、楽しいに決まってるでしょ?」
アンの居た場所にはいつのまにかフワフワのウサギが立っていた。
「君は可愛いから可愛いままでいるべき」
思わず抱きしめたくなるアンの頭を撫でる。
「君はそのままでいて。人間の皮を剥ぎ取れば服なんて着れないから」
ヘラジカこちらを凝視して横切る。
「人間は醜い!気持ち悪い!」
チワワを撫で回していた少女の首が飛ぶ。子猫を抱いていた少年は胴から親猫が飛び出す。
「人間は醜いから何しても許されるの」
ミックス犬は吹き出した。
「誰が許すのさ」
どこからともなく白いパックの上で整列したロイが飛んできた。
「勿論神様(わたし)だよ」
0150創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/05/06(月) 13:52:00.97ID:KGE4U7Pa
統合失調症の女の子の話が書きたかった
妄想と現実のゴチャゴチャ感をうまく表現できない
0151創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/05/09(木) 17:30:43.38ID:4G9tTwi8
おお
0152代行
垢版 |
2013/05/16(木) 22:41:11.10ID:GgaBseo3
昔の児童用特撮本みたいにしようと思ったんだけど、そういう塗り方時間かかるし、
グズグズしてたら完全に時宜を逃してしまったので没に。
http://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/421/rks.jpg
オレ純粋な絵そのもののセンスや技術は酷いもんだから、 この手のネタで時宜外しちゃうとどーしようもないわけよ。

上のと一連として一緒に投下しようと考えてたもの。
今回の投下のためにわざわざ描いた。没ネタの描きかけのために新しく描きかけを描く俺。なにをやっているのか。
http://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/422/rkss.jpg
0153創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/06/03(月) 12:32:09.63ID:yzY4mUb5
相変わらず尻尾きめえw
0154創る名無しに見る名無し
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2013/06/24(月) 00:31:59.82ID:zs0OD+wV
アクロカンとサウルス描こうと適当にアイデアラフ描いてっから資料見たらプロポーション違い過ぎ
どうもオレ無意識に小型ティランノサウルス科のプロポーションで描いてるらしいがヤツらスタイルが良過ぎる
よいこのみんなはこんな大人になってはいけないよ
これ晒すのって実は絵描きとして致命的な気がするけどまあオレこんなダメ絵描きなんですよってことで
ちなみにそのままだと何だかわからなさ過ぎるんで頭部はある程度描いたものを縮めて貼っつけてある
http://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/490/%E3%81%82%E3%81%8B%E3%82%93%E3%81%9D.jpg
0155創る名無しに見る名無し
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2013/07/14(日) NY:AN:NY.ANID:/3FS17vk
はさみさんにバレたのでボツネタ晒し

http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4335372.jpg
最初に出てくるのは某マンガだった。
ちょっと狙い過ぎかなーと思い没に。

http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4335374.jpg
サムネバイバイ用。流石に怖いので自重。
この他に「おさげイーター」顔も候補にしてたけど
結局現行の形に
0156創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/10/06(日) 01:41:50.70ID:0e4HUKqC
人類が自ら遺伝子を選択できるようになり、早数十年。
果たしてどのような遺伝子が価値があるか。
それは頭が良いだとか、足が速いだとか、そういった単純な能力であれば単純である。
しかしながら、それらの能力において、全てを内包する結果というものは得られない。
例えば重いものを持ち上げる上半身の筋肉は、ただ走るならば錘にしかならない。
全人類のレヴェルが等しく引き上げられたのならば、一つの事象に対しても複数の答えが存在し、優劣はつけられぬ。

であれば、何をもって人類は遺伝子を選択するのか。
それは純粋に、その個人が持つ価値観に依存する。
そしてその価値観は遺伝子ではなく、成長の過程によって形成されるものだ。
無論、備えられた能力によって、これが左右される事はあるだろう。
だが忘れてはならないのは、個人の価値観に完成形がないという事である。
同じ遺伝子をもった一卵性双生児でも、その思考は異なる。
それは一つの遺伝子から、複数の異なる結果が生まれる事を生物が是としている事に他ならない。
遺伝子の交配による分化は、あくまで生存の手段の一つに過ぎないのである。

人類が複数の個による社会構造を作り上げる事でここまでの発展があったのは、
異なる価値観同士の接触、そして変化が、遺伝子同様に環境に適応する術として優れていたからである。
地球を人類が埋め尽くし、生態ピラミッドの頂点を極めた時、果たして生物としてのこれ以上の適応が必要だろうか。
そう思った瞬間、人類は生物としての価値を失う。生きる意味を。
集として肥大化した人間の社会は、もはや個による制御の手を離れつつある。
遺伝子よりも、遺伝子を選ぶ価値観が勝り、そして価値観による環境の変化が巻き起こっている。
これらは、自然災害を上回る人類への脅威となっていた。
生存のための適応によってあらたな適応を強いられているのである。

この問題に対処すべく、人類は奔走したが、その答えは考える以上に生物の根源にあるものであった。
あらゆる力を統一するために量子論が生まれたように、それは環境に対する比較不可な能力の優劣を突き詰めるものである。
己が遺伝子に刻まれた能力を、積み上げてきた価値観によって行使し、そして次なる変化に対して必要なものを予測する。
そしてその組合せによって生まれる個こそがその時点における最適の解である事を、集へ証明し、帰属させる事で自らの遺伝子を継がせる。
そこへ至るまでの過酷な試練。人類はそれを、かつて行われていた儀式から取り――「婚活」と呼んだ。



バトルものにもってこうとしたが駄目だこりゃ
01571/3
垢版 |
2013/10/24(木) 16:28:48.34ID:2+cDrTn3
「子供の頃の夢、なんだった?」

窓ガラスがまるで鋼鉄のように感じられる。
モエがマフラーの端を固く握りながら、その鋼鉄に触れていた。

「ええ?」

故意に聞き逃したふりをすべきか、素直に聞き入れるべきか、リオは
委員のプリントをまとめる手を止めなかった。傍らに座っているヒカルの
純白の耳には届いていたのだろうか。
ヒカルの返事の代わりに、本をめくるページの音が囁きを続けていた。

「ちょっとー、聞いてんですけど。それ終わったらカラオケ行くんだから」
「ご、ごめん。あと3枚で終わるから」
「犬上ィ、あんた私の問いに答えるべきとか思わないの?この女子高生様が
 聞いてんのよ?何でも静観すれば済むとか思ってんなよ」

今日のモエはいばらのようだ。触れている窓を突き刺す程の棘を出している。
攻撃のためか、自衛のためか。
いばら姫のご機嫌は直線ではなかった。憂さ晴らしに大声を出せば少しは
解消されると思っていた。放課後に残っている姫の護衛は、二人。
しかし護衛の兵士には雑務がある。姫はうやうやしくそれを待っている
はずだった。
教室の広さはいばら姫の寝相か、寝起きの機嫌をおさめるためには十分なのか。
でも棘は、鋼鉄に突き刺さったまま動かない。

「モエ、ほら飴ちゃんあげるよ。昨日コンビニで売ってた期間限定の
 アップルミルクってやつ。甘くていいよ」
「マジ変り種ー。あ、美味い」

棘を溶かすためには甘いものか。あるいは口に封をするためか。
そのまま先手の動きを見ていればよかったものを、ヒカルはカウンターを
返す。

「…芹沢は何だった?子供の頃の夢」
「聞いてんのは私だっつの。……あのね、私は典型的にお花屋さんか
 ケーキ屋さんか、お嫁さんだったのよ。でもさあ、それって夢見てた
 だけよ。なんかさー、いま思い出したらむなしくなってきて」

確かに夢を見ていただけだ。小さな頃の夢なんて、眠った時に見てしまう
夢と大差ないのだろう。
01582/3
垢版 |
2013/10/24(木) 16:30:29.59ID:2+cDrTn3
「私は…絵を描く人、になりたかったかな」

漫画家というのは言葉にしない。防御壁を崩さないためだ。たかが夢で、
まるで素肌に近いわき腹をくすぐられるわけにはいかない。

「あー、授業のノートになんか描いてるもんね」
「えっ、あ、見てたの?」
「私の大きくな瞳は何物も逃さないかんね。犬上は?」
「僕は…学校の先生」

リオが真っ白な耳を赤く染める。ガラス越しに照らしてくる夕日か、己の
羞恥心か。ヒカルがぽつりとこぼした言葉がモエの棘をそぎ落としたのか
トーンダウンした返事がきた。

「それってさぁ、今でもなろうと思えばなれるよね」
「モエだって、なろうと思えばなれるじゃない」

自分の夢は棚上げをし、遠くへ置き去りにする。遠ざければ、また羞恥心に
苛まれることもない。

「…だって、もう高校生じゃん。進学するか、就職するか、あっという間に
 責めて問われるわけじゃん。って、うちお金なさそうだから就職希望
 なんだけど」

まるで自分自身に言い聞かせているようだ。小さな子供ではない。大人に
我が身を委ねたまま安らかに死に至ることはあり得ないのだ。

「あーあ、どうしよ。私なにが似合う?ショップ店員?」
「え…と、服屋のおねえさんとか」
「化粧品売り場の店員とか」
「学生のまま、みんな時間止まればいいのに」

棘はわずかに残っていたようだ。モエの耳は一度外側を向き、そのまま
外界の声を隔てるようにそっぽを向く。
棘のある空気、棘のある言葉、棘のある我が夢。自分から広げた会話だというのに、
モエは後片付けもせず小さな子供のように手を離した。
沈黙は夢を赦してくれるというのか。
その時、いばらどもを裂くようにトロイメライが流れ始めた。
子供は帰る時間の合図だ。
01593/3
垢版 |
2013/10/24(木) 16:31:29.22ID:2+cDrTn3
「プ、プリント閉じ終わったよ!さ、カラオケ行くんでしょう、モエ。
 犬上も行く?」

饒舌になるわけは、逃げの言い訳を常に備えているからだと誰が言っていたか。
モエは握り締めていたマフラーの端から手を離すと同時に、勢いよく椅子から
立ち上がる。

「学校の先生になるんだから、歌も上手くないとねー犬上」
「いや、僕はこのまま帰る予定だから」
「はあ?」

ヒカルの傷跡のない毛並みにモエのつめが深く刺さる。静観はゆるさないと
吠えたいばら姫の効果が発揮されたのか。
返事代わりのページをめくる音はもう、聞こえてこなかった。

トロイメライが子供達の帰宅を急かす。
ここにいてはいけないのか。

三人が玄関で兵士から子供へと還る。

「モエ」
「ん」
「夢ってなんだろ」
「え、さあね」
「切り替えが早いなぁ」

ヒカルとリオがモエの切り替えし地点で置いてけぼりを食らいそうになる。

「子供のままじゃ、駄目かぁ」
「うん」
「大人のモエだってきっと素敵だよ」
「へっへ」

いばら姫がいつ夢から覚めるかは、誰も知る由はないのだ。
01601/4
垢版 |
2014/01/10(金) 17:45:06.58ID:cR3EzK+o
                        ____
                       /____\
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   ヽ  ヽ ヽ ヽヽ、  ´、| || | | | (~l| .∩|| `' | |∩|| ‖ || l二(_´ ̄)、ヽ///  |\/
    ヽ  ヽ ヽ_」 ヽ、 |~| || '' | | U || U || |.、 | |U|l、  || l二',-:ニ/ / / メ /   |
    ヽ/ヽ    _/ヽ | |__||__|~|__| `―-.^゙,ニフl.ニl、ロ b ∠、二'L_/(__/ | / /\|
    <   L- ̄/V二/´-'―`ー | |` ̄| |   | | `ー'| |   `―``―、__ノ|/  /
     ヽ∠― ̄          \\ [_]  [_] .//           \/
                       \\      //
                        \\   //ドラゴンクエストU
                         \\//  〜悪霊の神々〜
                           \/
〜〜ムーンブルクの城〜〜

今から およそ 100年前――

3人のロトの子孫たちの 手によって

大神官ハーゴンと 破壊神シドーは 倒されました。

ハーゴン率いる 魔物の軍団によって 攻められて

一度は 廃墟となった ここ ムーンブルクの城でしたが

100年が過ぎた 今では すっかり 復興を 遂げていました。

そして今、新たな物語が この地で誕生しようとしていたのです――
01612/4
垢版 |
2014/01/10(金) 17:48:50.45ID:cR3EzK+o
〜〜玉座の間〜〜

王様「父上……。 お気持ちは 分かりますが……。」

王様「すこし落ち着いて お座りになっては いかがですかな?」

隠居「そ そう 言われてものう……。」ウロウロ



**「お 王様! お産まれになりました!」

王様「そっ そうかっ!」

**「本当に かわいい 玉のような 男の子です!」

王様「おおっ! なんと 男の子とな!?」

隠居「よ ようやく 産まれたか……うっうっ……」

大臣「ささ お二人とも! はやく 王妃さまのところへ!」

王様「うむっ!」
01623/4
垢版 |
2014/01/10(金) 17:51:50.43ID:cR3EzK+o
〜〜王の寝室〜〜

王妃「あなた……。」

王様「うむ。 よくやったな!」

王様「これで わが ムーンブルク王家は 安泰だ!」

赤子「おぎゃあ おぎゃあ……。」

王様「おうおう このように 元気に泣いて……。」

王様「よいしょっ……。 ほらほら……」

隠居「わ わしにも 抱かせてくれ……」

隠居「おお よしよし……。 いい子じゃ……」

王様「わっはっは。 父上も 孫には 弱いようですな。」

隠居「誰だって やっぱり孫は かわいいものじゃよ。」
01634/4
垢版 |
2014/01/10(金) 17:54:07.97ID:cR3EzK+o
赤子「ほぎゃあ ほぎゃあ……。」

隠居「よしよし あばばばばー。」

隠居「ああ ほんに かわいい子じゃのう。」

隠居「近ごろ あちこちで 魔物が 増えておるとか。」

隠居「この子が 大きくなるまでに 平和が戻ってくるといいのう……。」

王様「はい。 全く おっしゃる 通りですな。」

王様「……あのう ところで 父上」

王様「そろそろ その子を……。」

隠居「も もうちょっとだけ……。」

王様「そんな……うくく……。」
0164創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/01/10(金) 18:00:14.18ID:cR3EzK+o
ここまで書いたけどなんかドラクエらしくなくて途中で葬った
>>160の設定で多分なんか書くとは思うけど
これみたいなプロローグ的なものが長々と続くようなのはドラクエじゃないし……
それに2レス目でいきなりドラクエ5のパクリだし

とにかく成仏しろ
0165創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/01/17(金) 21:25:31.87ID:yibaQNRO
構わん、書け
0166創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/01/23(木) 15:24:07.94ID:J5soXYYD
〜〜鷹狩場〜〜

ガサガサ……。

家来A「お〜い!茂みを出てそちらへ行くぞ!」

兎「ピョンピョン」

家来B「山の斜面を下ってゆきますぞ!」

家来C「向こうへ追い込めっ!」ササッ

兎「ピョンピョン」



傅役「若……好機でござりまするぞ」

若殿「……ようし!今じゃゆけい!」バッ!

鷹「ピエーッ!」

ヒュウウウン……
0167創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/01/23(木) 15:27:47.28ID:J5soXYYD
鷹「ピエーピエーッ」バサバサ

兎「ェ……」ピクピク

若殿「おお!ようやったぞ!」

傅役「う〜む、これは見事な兎ですな!」

傅役「ところで若、お体の調子はいかがでござりまする」

若殿「あぁ、ちと喉が渇いたのう!」

傅役「おい!若の水筒をこれへ持てい!」

中間「……ありゃりゃ?」

傅役「いかがいたした?」

中間「水筒が……見当たりません」
0168創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/01/23(木) 15:28:43.21ID:J5soXYYD
傅役「見当たらんってお主……」

傅役「さっきまで持っておったではないか」

傅役「いったい何処へ置いてきたのじゃ」

中間「はて……見当も付きません」

傅役「こ、このたわけ者めがッ!」

中間「あっしの瓢箪で良ければ代わりに……」

傅役「飲みかけではないであろうな」

中間「いえ、飲みました」

傅役「そんな不浄なものを若様に飲ませるわけにはいかぬわっ!」

中間「ひ〜〜っ!ご容赦を〜〜っ!」
0169創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/01/23(木) 15:30:39.52ID:J5soXYYD
若殿「これ爺や、もうよかろう」

若殿「そのあたりで許してやれ」

傅役「はっ?」

若殿「たかが水筒くらいのことでそう叱ることもあるまい」

傅役「いえ、お言葉ですが若……」

傅役「このような手合いはビシッと叱らねば……」

若殿「よいと申すにッ!」

傅役「はは〜〜っ……!」

中間「くくく……」

傅役「ええい!笑うな!」

傅役「元はといえばお主の不始末じゃぞっ!」
0170創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/01/23(木) 16:00:10.01ID:J5soXYYD
かかる次第でありまして、

若殿様は僅かな御供の者を引き連れて

喉の渇きを癒すために

鷹狩場の付近にある村へと

向かっていったのでございます。

その道中のこと……。

ひっそりと静まり返った地に

薄汚れた屋敷がありました。



それは、方々の木々で

あまたの蝉がやかましく鳴く

夏の日のことでありました。
0172創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/02/18(火) 21:00:19.47ID:aMv4aLjm
両津「ソチ五輪の裏で…!?の巻」



ガラリ!

大原「おはよう」

寺井「おはようございます部長!」

大原「おや……?」

大原「両津の奴はどうしたんだ?」

寺井「奥でソチ五輪を見てます」

大原「まったくあいつめ!」

大原「勤務中だというのに何を考えとるんだ!」
0173創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/02/18(火) 21:01:57.78ID:aMv4aLjm
〜〜奥の部屋〜〜

テレビ「いよいよ日本の選手団の入場です!」

両津「いよっ!待ってました〜〜っ!」

大原「両津君」ゴホン

大原「勤務時間に何をやっているのかね?」

両津「げげっ!ぶ、部長!」

大原「バッカモーー……おっ!?」

大原「いま入場してるのは日本人か!」

両津「はい!」

大原「ま、まあ少しだけなら良いだろう!」

大原「わしもちょっとだけ見せてもらおう……!」
01751/4
垢版 |
2014/05/19(月) 16:44:37.81ID:WWHByfOI
男二人が並んでいるだけで、一瞬耽美なものを感じてしまうのは、いやそもそも
僕が男である前提だけど、何だかよくわからなくなるほど、ちょっと
かっこいいと思ってしまったのは、異常なのか。それすらも忘れてしまった。

              ♪

今日はよく声をかけられる日だと思う。

「犬上先輩……あの、今日の放課後、中庭に来てください。話したいことが
 あるんです」

「犬上ィ、あんたさーチョコ食べる?え?別に余ってただけだし。変な
 勘違いしないでよね。クラスメート同士ならこんくらい普通でしょ」

「犬上っ、委員の雑用終わんなくてさ……明日ケーキ奢るから!ね!
 お願い!犬上しか頼れる人いないんだって!」

ただし、女子からだけど。

自分の顔はとくにイケメンでも渋い顔でもない、と思う。至って平均的な、
普通のような(普通ってなんだ?)、そこら辺の通行人Aのような。
違うところと言えば、周りから言われるくらいの「文学少年」くらいだ。
女子と積極的に絡んだり、かといって同級生の男子と馬鹿騒ぎするほど
でもない。
……何か、ずば抜けてやることがあったっけ。
読書くらいだな。

              ♪

浮ついた話がなくても、日課があるとすれば頻繁に図書室へ通うことが
楽しみだったりするのだ。
開けてみるまでわからないパンドラの箱がたくさん並べられているような、
もしくは樹海に落とされたような、そんな気分で本棚の前を歩く。
きっとこれは誰にもわからないだろうな。

まあだからといって、宝が見つかるかと言えばそうではなかったりするのだ。
今日の収穫はゼロ。おまけに呼び出しをくらった女の子は、なんと言えば
いいのか、僕よりもひどくおとなしそうで、つついただけで破裂してしまう
ような緊張状態で話もろくにできなかった。
路面電車の停留所で降りると、きらと光るものが視界をかすめる。

目を上げてどきっとしてしまった。
何なのだ、今日は。

「よお!ヒカルくーん」
「…あ、ああ。淺川さん」
01762/4
垢版 |
2014/05/19(月) 16:45:22.67ID:WWHByfOI
素直に驚いた。西日に当たり輝いていたのは、淺川のおかしな髪の毛だった。
女性ならともかく、男性相手に心臓を動かしてしまうとは。
僕は「普通」のはずだ。

「ヒカル君?」
「ヒカル君だよ」
「ヒカル君、です…」

思わずオウム返しをしてしまった。なかなかコントのようで、口の中で
ふきだしてしまった。
淺川さんの隣に居たのは、これまた長い黒髪が艶やかで、それと同じ毛色が
まるでビロードのようにつやつやな犬の男性だった。淺川さんよりだいぶ
背が高い。
二人並んでいると、まるで自分が檻に閉じ込められているような錯覚に陥る。

「こいつは花岡。ここら辺の地元を拠点にしてバンド組んでライヴやってんの」
「犬上ヒカルです」
「花岡さんと呼んでくれたまえ」

変なの。


「で、さ……やっぱ若い子に托そうぜ」
「ええー……いいけどさあ、俺ぜってー責任もてないって」
「だからだよ。本には旅をさせろというだろ」
「それだいぶ違うよな」

二人が何かこそこそと話しているが、犬耳の僕は「本」という単語を聞き逃しは
しなかった。何せ文学少年だ。

「ヒカルくーん……この本、タダで上げると言ったらもらってくれる?」

もらって『くれる』?

「中身は別に至って普通の本だぜ」

『普通』の本?

「ただまあ……呪われた本だって、ジンクスがあるんだけど」

変なの。

「呪われたって……あのう、殺されたりとかそういう…」
「いやいや、そんなんではないんだ。ぜんぜんね。だけど呪われてる」
「もらう前に呪われてるなんて言われて欲しがる奴はいないんだけどな」

二人ですすめているくせに、手をひっこめるような言い方をする。
きっと商売人レベルが高いに違いない。くすぐられるような話し方をして、
爪をたてないわけがない。

「…それ、もらっていいんですか?」
「お!いくかー?いっちゃうかー?どうぞ!ヒカル君にあげよう!」
「要らなくなったら遠慮なく売り払うなり寄贈するなり…煮るなり焼くなり
 していいから」

捨てていいから、と言わなかった辺り、この花岡という人も本好きなんだなと
かんじた。
でも、煮たり焼いたりって……
やはり本当に呪いが。
01773/4
垢版 |
2014/05/19(月) 16:46:13.41ID:WWHByfOI
「その本ねえ、俺が海外で仕事中に見つけて買ったんだけど……ちょっとね」
「俺も興味本位で淺川から本もらったんだけどね。なんつーかよう……
 うん、まあ、若い子ならちょうどいいくらいだと思うし」

一体なにが…とは聞かなかった。だって猫箱もパンドラの箱も、先に答えを
聞いてしまったら絶望しか残らない。

              ♪

二人を見送り、足早に自宅へと戻る。
ありとあらゆるものを終わらせ、そして至福の時間へ浸る。読書タイムだ。
もらった本のタイトルは「思慕」だ。別に痛さも、恥ずかしさも、呪われそうだ
とかもない。やはり「普通」だ。
中身も。後書きも。

でもおかしいな。

作者のプロフィールが破られていた。

              ♪


「犬上先輩……あのっ…ごめんなさい!!!」

夜更かしの頭によく響く、透き通った声だった。いや、叫び声に近いか。
昨日、呼び出しを注文した1個下の後輩だ。
朝の登校時、しかも校門前。いまだかつてこんなに注目されたことはあったか。

「私…一晩考えて……わかったんです。先輩のこと、好きだと思ってたけど
 ただの憧れで、私にとっての特別ではないんだって……
 呼び出しなんかしてごめんなさい!」

叫び声と共に走り去る少女。短いスカートを翻し、可愛らしい足音が鳴っていた。
でも、なぜ、いま。
01784/4
垢版 |
2014/05/19(月) 16:47:22.18ID:WWHByfOI
「犬上ィー。昨日のチョコさあ……感想来ると思って超待ってたんですけど」
「へ?」
「だーかーら!!家庭科の時に時間余ってたから皆と作ったやつだったの!
 私ってば料理スキル高くねーの!そんで無差別に配ってさー感想求めていた
 わけ!でもあんた、受け身なだけで感想とかめっちゃスルーじゃん。
 ほんと、サイアクなんですけど」
「ご、ごめん」

なぜ、いま。

「犬上……昨日手伝ってもらった雑用あるじゃん…私、あんたと二人っきり
 だったせいで……せいで……このっ!よく、わかんないけど、もう、
 ばか!!」

なにが。いま。なにがおこって。

怒涛の女性の表情フルパターンをくらって呆然と校門で立っていると、後ろから
げらげらと笑い声がかかってくる。

「何だよ今のーー。ひー、うける」
「犬上も一丁前に女子をフることのできる年齢になったか」
「意外だよねー」

塚本が僕の頭を鷲づかみにし、来栖が背中を叩いてくる。鎌田は僕と目を
合わせないで笑う。

僕は「普通」のはずなのに。

あ。
そういえば昨日、淺川さんと花岡さんが言っていた。「呪い」って?
若い子には何をさせろと?

「あ、そういえばよう」

待って。聞きたくない。

「バイク屋の…何だっけ、杉本ねーちゃん?おめえがパンクしたチャリ
 取りにくんの忘れてるって、ツノ生えてたぜえ」

これはどういう「呪い」なのか、確かめる余裕すら、わいてこなかった。
0183創る名無しに見る名無し
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2015/01/13(火) 14:02:01.98ID:xkEWnqPx
魔王「最近の魔王界はたるんどる」
魔王「勇者と馴れ合ったり、高い志を持っておったり」
魔王「魔王に必要なのは、絶対的な恐怖の筈だ」
魔王「人間界に媚売って、平和ボケする魔王どもを、成敗してくれるわ」

俺にはネタが思い浮かばんからこんな感じで誰か描いてくれんかな
0184創る名無しに見る名無し
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2015/08/06(木) 19:03:41.08ID:NrlvB0hC
ゲールはガードレールをベリーロールで飛び越えながら、デジタル迷彩柄のジャケット(上下セットの紳士服なのですさまじくダサいが、一周回ってファッション業界ではアリなのかもしれない。
しかし都市部では異様に目立つため、目立つための迷彩、というアグレッシブなものになってしまっていた)の懐からB-52マグナムを取り出す。
が、ジャケットの裏地に銃身がひっかかり、それ以上抜き出すことが出来なかった。スティーヴン・ハンターの小説を読んでいないがために、
コインを複数まとめてテープで止めたやつをポケットに入れておく習慣がこの世にあることをゲールはまだ知らないのだ。なので窮余の策を取った。
よく中学生や小学生がやる遊戯として、長袖の学校指定ジャージから片腕を抜き、抜いた袖をもう片方の腕の袖と合体させ、その繋いだ袖を上下させながら、
抜いた腕を腹からバインバインと何度も突き出させる(ゲールの学校ではフェイスハガーの出産に準えて、「エイリアン」、と呼ばれる行為だった)というものがある。
書いていて思ったが、こういうのを異化効果っていうんだなと思う。まったく伝えられる自信が無い。
ゲールは「エイリアン」さながらに、ジャケットに引っかかったままのマグナムを発射した。
引き金を引くと同時に、撃針?が銃弾の尻の部分――なんというんだったか?――を叩き、薬室で炸薬が爆裂してガスを充満させるんだったか?
その圧縮されたエネルギーが解放を求めて、銃弾の先端の発射させる部分――名称がわからない――が運動エネルギーに変換されてスポーンと飛んで行く。
薬莢が排莢され、ってこれ赤い赤毛だよな、硝煙がふわふわと――しゅーっとか?――立ち昇る。
今、銃口に触れたら熱いのだろうか? やけどしてしまうだろうか? ゲールの好奇心は想像をやめなかった。
確かグロック?とかいう拳銃は金属が使われず、樹脂のみで構成されているはずだった。
いや、金属を全く用いずに作製された拳銃なんて危なくて使用にたえないのでは? シグとかだったか? でも3Dプリンタで銃作った奴もいたしなー、とゲールは思った。
ゲールの放った銃弾、いや違う、B-52マグナムの放った銃弾は3.77mmのホローポイント炸裂弾で、当たった人間は死ぬ。
ホローポイント炸裂弾は命中対象を貫通せず、衝突したエネルギーが――ゲールの知識ではそれ以上うまく想像することができない。
ターミネータ2(森博嗣)でショットガンで顔面を撃たれたT-2000の傷跡みたくなるんじゃないか、とゲールはわかりやすく考えてみた。
そういえばあの傷跡は――裂けた人間の頭部なるビジュアルは、「いったい何を参考にした」のだろうか、とゲールは思う。
0185創る名無しに見る名無し
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2015/08/06(木) 19:04:31.18ID:NrlvB0hC
アメリカには恐ろしいグロ画像の元ネタが腐るくらい転がっているに違いない、とゲールは思った。そういえば自分はどの人種でいったいここはなんという国だったのかとゲールは考える。
敵の武器は小銃だった。小銃とはライフルのことだ。そしてそれはボルトアクションではなかった。ボルトアクションでなければそれはいったい何なのだろうか。
他にどんな種類が存在するというか。フルオートとかセミオートとかそういうのか。まったくわからない。
そもそも、なぜその物体に、小銃とライフルという2つの名称がついていることを自分は知っているのだろうかとゲールは思った。自分はなんという国の人間なのだろうか?
その疑問を完全に無視し、「それはいったいなんという小銃なのですか」とゲールは敵に問いかけてみた。
全てが会話から始まるわけではないが、銃撃戦のさなかに相手に言葉をかけてみるのも、時には悪くない試みかもしれない。おしゃれ、という言葉が似合うような、女性的なアプローチだ。
「これはモシン・ナガンとAK-47のいいとこどりをしたハイブリッドの俺オリジナルのライフルだ」と敵は率直に答えた。「エルゴノミクスももちろん取り入れてあるし、
左右対称となっており、左利きの人間でも右利きの人間でも扱える。もちろんユニバーサルデザインなので、片手を負傷していても安定した射撃姿勢を取れるようになっている」
「モシン・ナガンの長所とはなんですか?」
「イギリスのロックバンドだったと思うが、確か自宅の暖炉を破壊して、そこから古い木材を取り出し、
それでギターを作ったやつがいたよな」と敵は言った。「そういうことが、あったよな?」。強く、威圧するような眼差しで言った。
そんなことを言われても困る、とゲールは思った。だが彼持ち前の負けん気の強さがこう言わせた。「ああ。あったね。あったあった」
「モシン・ナガンは木でできている。風水には木火土金水という概念があり、これは三すくみのようにパワーバランスが存在している。
木火土金水のうち、木の性質を備えた銃、それがモシン・ナガンだ」
 風水という言葉を聞いた瞬間、逃げたな、という直感がゲールの脳内に浮かんだ。だが何から逃げたというのか?
ゲールはなぜかそのことについて自分が考え続ける未来を想像できず、腹から力が抜けた。仕方なく、地道に相手の話に付き合うことにした。
木火土金水とはなんだろう、どうでもいいけれど、とゲールは思った。水金地火木土天冥海のようなものか。いや海冥だったか、どうでもいいけれど。
そもそも冥王星は惑星扱いされなくなったのではなかったか。困った末にゲールは言った。「月曜日と日曜日はどこへ行ったのですか?」
期せずしてアメリカン・ジョークが飛び出した。段落をまたいでいるのでものすごくわかりづらいジョークだ。
いや、というか別にアメリカに限ったジョークではないのか? そしてこの場合はチャイニーズ・ジョークとなるのか?
0186創る名無しに見る名無し
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2015/08/06(木) 19:05:10.82ID:NrlvB0hC
幸い、敵はゲールの話をまったく聞いていなかった。「モシン・ナガンには双子の兄弟がいた。それが、シモ・ヘイヘだ」
「待ってください。ライフルに兄弟がいるのですか? それは製造番号が1つずれているとか、そういう話題を――つまり擬人法っていうやつですか?」
ゲールの脳内に、中学時代に国語の授業を受けた記憶が「エイリアン」とともに蘇る。いや授業を受けたのは小学生の頃だったかもしれない。
「AK-47のいいところは、木でできているところだ」と敵は言った。ゲールの問いは無視される運命にあった。
無視されることが何よりも子どもの心を傷つけることを、ゲールは知らなかったが故に、いま己の心中に生じているダメージを、
世界のどこかに存在している不特定多数の「かわいそうな子ども」の想像上の痛みとして変換、還元することが出来ず、従って全身でその衝撃を受け止めることとなった。
敵は構わずに続ける。「木は、世界中に生えている。世界中で、AK-47が生産されており、それはその国の気候や風土に基づいた樹木の種類によって多種多様な性格を持つ。
ヒノキで作られたAK-47はいい匂いがするし、示現流で用いられる樫の木だったか? あれには粘りがある。狙撃には粘りが必要なんだ。
人間なんてものは心臓に雑多な夾雑物がまとわりついたものなんだから、粘ってれば粘ってるほど心臓と体組織との繋がりが強くなり、より強い狙撃姿勢が保てるんだ。そうだろう?」
「マッテクダサイ」。ほうほうの体でそう言ったため非人間じみた言い方となり、その近未来感/ロボット感がかえってプログレッシブな印象を生み出したが、
当のゲールはそのことに気付かないままだった。「マッテ…クダサイ。モシン・ナガンとAK-47のいいとこどりをしたんですよね?
そして両者のいいところとは、木で作られているところだとあなたは言いました。だったらそれは2つのライフルのいいとこどりではなく、単に木という一つの、単一の特性しか有していないことになりませんか?」
 その瞬間、ゲールがさっき放った4.72mmセミホローグレインポイント弾が今、敵の右こめかみ辺りに着弾し、今劇的な運動エネルギーが解放され、今敵の脳漿を撒き散らした。
 今この瞬間、ガードレールを飛び越える最中だったゲールは、着地した。(完)
0188創る名無しに見る名無し
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2016/03/25(金) 14:46:02.22ID:/pyeCC9a
i
0190創る名無しに見る名無し
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2016/08/31(水) 04:42:20.42ID:cOHXDcjI
a
0192創る名無しに見る名無し
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2016/12/29(木) 17:44:15.98ID:WMWKueMi
ヘッドライトの先に黒い塊が俺はスピードを落とした
可愛そうに狐が轢かれたようだ
車を降り近づくともう冷たくなっていた
そっと抱えて端に寄せると手を合わせた
こんな獣でも待っている家族がいるかもしれない
もともとはこいつらの山なのに
車に戻ろうとすると何か聞こえた気がした俺は辺りを見回したが
何もいない空耳か
「助けてくれ」俺の足元にはいつの間にか子猫がいた
猫が喋った?まさかしかしこんな所にいたら車に轢かれてしまう
俺は、保護することにした
しかしどうやっても触ることが出来ない
又声がした
「お前と話す為にこんな姿で現れたが本当の姿ではないだからおどろかないでくれ」
「助けて欲しいのか?」
「そうだやっと話の出来る人間を見つけた」
「どういうことだ、説明してくれ」
0193創る名無しに見る名無し
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2016/12/29(木) 17:45:32.17ID:WMWKueMi
「私は、他の星から来た今からお前達の時間で100年前だしかし船が故障してしまった
私はパートナーと船を修理するための部品を探しに出かけたしかしパートナーは
人間に見つかり捕まってしまったその時の私にはどうすることも出来なかった修理する為の
部品もその時代のテクノロジイーでは出来ないと分かった私はテクノロジイーの進歩と協力して
くれる人間を待っていた」
「俺がそうなのか?」
「そうだ、テクノロジイーはどうなんだ?」
「それは、まだ分からない」
「分かった役にたつか分からないが協力しよう、どうすればいい」
「まずパートナーがどうなったのか知りたい」
そういう事は取り敢えずググってみるか
俺は、スマホを取り出しキーワードを入れた
100年ほど昔この辺りで不思議な生き物が捕獲されたそれはしばらく
見世物にされていたがすぐに死んでしまった。その死体はミイラのようなったので
ある寺に納められているらしい
「残念だったな」
「すぐにミイラになって残っているんだな」
「まだ、助かるかもしれないそこに連れて行ってくれ」
俺は情報をカーナビに転送した
0194創る名無しに見る名無し
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2016/12/29(木) 17:46:38.88ID:WMWKueMi
道中彼は色々説明してくれた
彼はある力で人間の意識にアクセス出来るそれで俺と会話が出来るそうだ
ただその力はあるレベルまでにならないと使えないこと最近やっとそのレベルに到達
したそこに俺が現れた寿命は人間で例えると2000年もあるそうだまた
危険に遭遇するとミイラのようになって身を守ることが出来るただ余り長い時間だと
復活できなくなる100年近く経っているので残された時間は少ないそうだ
明け方にその寺に着いた寺の入口の案内看板にはご神体として祀られていて
年に1度しか御開帳しないと書かれている
「どうする、外からわからないか?」
「だめだ、セーフモードに入っているとテレパシーで交信できない」
「どうする」
「もう1ランクレベルを上げればしかし...」
「どうすれば、レベルが上がるんだ」
「君に寄生すれば、しかし...」
「やれよ、協力する約束だ」
彼は、俺に寄生した
「どうだ、レベルは上がったか?」
「成功だ、それにもう声にださなくても会話できる」
俺は、寺の中に入って行った
住職はまだ寝ていた
「坊主のくせにいつまで寝てるんだ」
驚いて飛び起きた坊主オイオイ頭の中煩悩だらけだ
レベルアップした力は相手を服従させる力だ
命令すると呆気なく鍵を開けた
「良かったまだ間に合うしかし船を直さないと復活できない」
今度の調べ物は、スマホでは能力不足だ、高性能のパソコンがあれば
あるじゃん全く今時の坊主は良いパソコン持っていやがるしかも光回線だ
俺は少しの間彼に体を預けた
0195創る名無しに見る名無し
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2016/12/29(木) 17:49:40.94ID:WMWKueMi
もの凄いスピードで彼は、ネットを検索しデーターをスマホに転送した
高性能の3Dプリンターを使えばある程度まで修理できそうだ
パートナーも元に戻せる
さらに都合がいいことに俺の地元の近くの研究所にすべてそろっている
俺は、再び車に乗るとアクセルを踏んだ
森の中にその研究所はあった。守衛を服従させると中にいる者を集めさせた全員を服従させ
船の修理の為のパーツの制作にあたらせた
いくら最新で高性能でも複雑なパーツは時間が掛かってしまう
データーをすべて入力するだけでも時間が掛かった
少し休むよ彼は体を俺に返した寄生されるとその力は俺にも使うことができた
俺は、暇つぶしに偶々近くにいた女性研究員の意識の中を覗いてしまった
人間誰しも何かしらの悩みはある彼女はいつも片思いで寂しい思いをしているようだ
何か力になってやりたい俺は、彼女に声をかけた
「コーヒーあるかな」
「休憩室に案内します。」
「君もどう」
普段の俺なら絶対しないけど彼女の意識は嫌がってはいないようだ
「あの聞いても良いですか}
「なに」
「あれは、何の部品なんですか」
「君の3サイズ教えてくれたら答えるよ」
「いやですエッチなこと聞かないでください}
「ゴメン、実は国家機密並みで教えられないんだ」
「でも、怒った顔も可愛いね」
「揶揄ないでください」
「本当だよもっと自分に自信をもって」
「いつも、そう言って口説いているんですか?」
「まさか、猫にしか言ったことないよ」
「私は、猫じゃありません」
「いつも、猫にそんなこと言っているんですか?」
「そうだよ、可愛いね・綺麗だよ・愛してる・もう放したくないてね」
「可哀そうな人なんですね」
「そう、だから君は俺みたいになるなよ」
少しは、役に立てただろうか
「さあそろそろかな」
出来上がったパーツを持って
山に急いだもう残された時間は少ない
後を付けている車に気が付かないほど
焦っていた
0196創る名無しに見る名無し
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2016/12/29(木) 17:50:12.49ID:WMWKueMi
船につくとすぐに修理に取り掛かった
だが簡単ではない意識は2人だが体は1つなかなか
パーツが入らない固定するものを探そうとした時
後ろに彼女が立っていた
「私、手伝います」
「ありがとう」
「ごめんなさい私どうしても知りたかったの」
「いいから、時間が」
パーツを嵌めるとカプセルを開けパートナーを入れてスイッチを入れた
カプセルが液体でみたされた
「間に合った」
「良かった、でもここって」
俺は、彼女に事情を説明した
「寄生て、もとの体に戻れるの?」
「最初の狐の死体てまさか」
「君は、頭が良いねそうでもレベルアップの為には仕方なかった」
「この人も死ぬの?」
「こいつは、死を望んでいた。君に俺みたいになるなて言ってたのはこいつは好きな相手に
告白出来なくて結局誰とも結ばれなかった孤独な人生を悔やんでいただから君に忠告したのさ」
「しかし秘密を見られたからは、君も」
「オイ俺は、確かに死を望んでいただから死んでも構わないしかし彼女はみのがしてくれ」
「それは出来ない修理はまだ完全ではない地球のテクノロジイーの進歩では、あと100年かかるかも
しれない、それまでここにいるしかないんだ」
「それにもうすぐパートナーが復活する俺と同じレベルになるにはこの女に寄生する必要がある」
「俺を殺せ今ならまだ何とかこいつを抑えられるそのドライバーで俺を刺すんだ」
「出来るかな彼女の意識がお前にも分かるだろ」
「そんなまさか」




to be continued
0197創る名無しに見る名無し
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2017/01/06(金) 10:51:16.47ID:ziRd2PCk
なぜ君は、パートナーとの寄生をのぞんでいる?」 

「償いなの、100年前にパートナーを捕まえ見世物にしたのは、私の先祖なのでもそれからみんなオカシク
なって、自ら命を絶っていったわ幻聴がずっと聞こえていたそうよ残された者は祟りと思ってミイラをお寺に
寄進したのでも幾ら隠しても分かるのねあの家は祟られている結婚も就職もそのせいで影響があったそうよ
でもそれは、祟りじゃなくテレパシーで助けを求めていたのね」

「俺もパートナーもあの時のレベルでは君たちに理解できる言葉に出来なかった」
「パートナーを見た時もしやと思って後をつけてきたのだから償いをさせてその結果命をおとしても悔いはないは」
「2人とも勘違いしないでくれ一度寄生すると解除できるのはホストが死ぬ間際だけだ、だから寄生する時躊躇いがあった
簡単にホストは変えられないから本当にこいつでいいのか,しかし余裕はなかった」
「だから俺は,あと数十年はこいつから離れられない君はこいつのことどう思う?パートナーと寄生すればやはり長い間寄生は
解除できない必然的にこいつと死ぬまで一緒にいることになる」

「それが、宿命なら従うまでよ」
0198創る名無しに見る名無し
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2017/01/06(金) 10:52:40.11ID:ziRd2PCk
彼女はパートナーとの寄生を受け入れた。
「どう大丈夫?」
俺の時と違いパートナーは始めての寄生なので、共生が完了するまでに時間が掛かった。
「大丈夫じゃないかも幻覚が見える」
「どんな?」
「私の部屋で鍋パーティーしてる」
「それなら、成功だパートナーはレベルアップするとわずか数時間先だが未来が見える」
そういえば、ここ数日ろくに食事してなかった。
「そうだな、今はここにいても何も出来ない食事にするか」
俺たちは、船を出ると彼女の部屋へ行くことにした
「でも、どうして今まで、見つからずにすんだんだ?」
「お前たちは、いま俺とパートナーが寄生しているだから見えるの、さっきは慌てたのでドアを閉めなかっただから
彼女が入れたんだ普段は見えないように偽装されている」
「そうか、でも此れからは十分注意しないとな」
「そうだな」
「そういえば、君の名前聞いてなかった」
「私は、大谷 美春 貴方は、?」
「俺は、星野 新一」
「そういえば、お前名前あったっけ?」
「俺か、実は無いパートナーから見れば俺がパートナーなんだ」
「それは、この先面倒だな地球での名前をつけよう」
「そうね、カールとエリーなんてどう?」
「どこかで聞いたようなまあ呼びやすくていいか」
「俺もパートナーも異存はないよ」
「それじゃお鍋パーティーに行こうお腹がペコペコだ」

「おいしい、美春、料理上手いね」
「水炊き失敗する人いませんよ」
「そうか、今までで一番美味いよ」
「お腹がすいているせいですよ、でもうれしいです」
0199創る名無しに見る名無し
垢版 |
2017/01/06(金) 10:54:03.81ID:ziRd2PCk
「それでは、お腹も一杯になったので今後についての作戦会議を開催したいと思います。」
「カール実際のところ船の修理の見通しはどうなんだ」
「メインエンジンが起動できない壊れたパーツは地球の物質では作れない」
「その物質はどこならあるんだ他の星ではごくありふれた物なんだが」
「隕石とかには含まれていないのか?」
「可能性はあるがほとんどは燃え尽きてしまうからごく小量でいいんだが」
「それなら、まずその可能性にかけよう」
「ところで、エリーの声は聞こえないけど喋れないのか?」
「美春には、聞こえる?」
「私にも聞こえないわ」
「それには、時間が掛かる俺は、100年色々な生物に寄生を繰り返してやっと人間と
コンタクト出来るようになった。だから俺が通訳するよ」
「次は、美春何かある?」
「あの、言いにくいんだけど3Dプリンターの料金は払えないわよね」
「踏み倒したら悪いよね美春にも迷惑かけるしこれからの活動資金も必要だし」
「エリーの未来が見える力で馬券でも買うか」
「それは、ズルくないです?」
「じゃあ踏み倒す?」
「買いましょう馬券それにロトくじも」 

「それでは、今夜はこの位で寝るか」
「美春、顔赤いけど大丈夫?」
「大丈夫です、お風呂先にどうぞ」
「それじぁお先に」
「服、洗濯しときますね」
シャツのサイズは2L・パンツも2L・ウエストは80ね今度買っておかなくちゃ
0200創る名無しに見る名無し
垢版 |
2017/01/06(金) 10:55:28.96ID:ziRd2PCk
「カール、風呂は大丈夫かシャワーにしょうか?」
「大丈夫だそれに見えないだろお前の体の中にいるからさ、それよりよく洗えよ」
「俺は、昔からカラスの行水だ」
「それでも、今日はよく洗え、美春の為に」
「美春の為?あーそれで美春、顔が赤かったのか」
「俺とエリーは朝まで寝るから頑張れよ」

「お風呂ありがとう、お湯入れ替えておいたから」
「ありがとう、出しておいた着替えはサイズ大丈夫?」
「少し小さいけど着れたよ」
「でも、よく男物があったね」
「女の一人暮らしは危ないから洗濯物干す時は男物を一緒に干せて母が用意してくれたの」
「そうなのか、どこの親も心配症だね」
「お風呂冷めないうちに」

美春が風呂に入っている間に俺は、食器を洗い部屋をかたずけた
こんな状況で一緒にいるしかなくなったとしても美春を抱いていいのか、俺には
迷いがあった。でも美春は未来を見たから顔が赤くなった。カールもエリーから
伝わったから美春の為によく洗えなんて言ったのだろう。こういう時プロの独身は
途方にくれる

「ありがとう、洗い物してくれたのね」
パジャマ姿で現れた美春を見て思わず固まる俺
「スッピンだと判らなかった?」
「いや、可愛いよ」
「私は、猫じゃないですよ」
「これから、どんな困難があるかもしれないでも君と一緒なら乗り越えられる
船で君が手伝ってくれた時、俺の想いは愛に変った。君を守りたい支えてあげたい
愛している」

「私も、あなたを支えます死が二人を分かつまで私も愛しています。」

俺たちは、誓いの口づけをかわした
そして.......

窓の外では小鳥の囀りが聞こえる俺は、目を開けるのが怖かった夢ならさめないでくれ
でも腕の中に感じる温もり微かに聞こえる寝息が俺に勇気をくれた
カーテンの隙間から差し込む朝の日差しは、美春の寝顔を美しく映す 

「おい、最初から激し過ぎるんじゃないか?おかげで寝不足だよ」
「カール朝まで、寝てるんじゃなかったか」
「寝てたよ、お前が起きてから思い出すからそれを感じたのさ」
「それは、失礼したでも、お前のお陰で美春とめぐり逢えたありがとう」
「いいさ、それより今日から頼むよ」
「わかった、でも、もう少しこのままで、美春が目覚めるまで」
0201創る名無しに見る名無し
垢版 |
2017/01/06(金) 10:57:17.02ID:ziRd2PCk
俺達は、エリーの力を使って資金を確保した。3Dプリンターの使用料を払い美春は研究所を辞めた
船の周りの山林を買ってトレーラハウスを置いた。これで船の近くにいても怪しまれない

後は隕石の可能性と数年後に帰ってくる惑星探査機に希望を託した。
「どうすれば、その物質と判るんだ?」
「資源探査機が船に有るはずだ」
「有るはず?」
「通販で宇宙探検セットを買って積み込んだんだがアウトレットだったから...」
「通販で、アウトレットマジか...」
「まさか船は」
「中古だ、現状渡し保障なし」
「なんやそれ、フラッグ立ちまくりやんけ よう地球まで来れたもんや」
「なんで、関西弁やね」
「すまん、怒るとつい」
「先ず探査機の確認をしようどこ?」
「トランク」
「トランクてどこ?」
「船の後ろ側」
俺は船の後ろに回った
「その右の扉」
あけるとボックスが幾つか入っている
それをトレーラハウスに運んで調べることにした
「これか?」
「そうだが、やっぱり入っていない」
念の為他のボックスも調べたがない
「結局これらは、何なんだ?」
「地球で言うところのレクレーションセット着いた星に何も無かった時の
暇つぶし用品」
「絶望だな」
「だな」
「エリーに言えない」
「俺も、美春に言えない」
0202創る名無しに見る名無し
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2017/01/06(金) 10:59:20.50ID:ziRd2PCk
美春が、美容院に行っていて良かった。ボックスを元のトランクに戻した
「計画変更だ、今のは忘れよう」
「カール他の計画は?」
「おーい、頭の中で体育座りして落ち込んでるな」
「こっちの扉はなにが?」
「そっちは、最初から開かなかったから何も入っていないはず」
「そうか、ん開くぞ」
「うあー 一杯だ」
「え!!まさか 」
「どうした?」
「今度は、船の中に運んでくれ一つ残らずしかも慎重に」
「分かったよ」

俺は、すべてのボックスを船に運びいれた
たぶん詰め込みすぎて崩れた荷物で扉が開かなくなっていたのが
不時着時に傾いたせいで開くようになったんだろう
「ただいま」
「美春」
「なに?」
「いや、綺麗だ惚れ直した」
俺達が、熱い抱擁をしている間にカールとエリーも何かテレパシーで
話あっていたようだ
「すいません」
「後にして」
「でも、もう30分もキスしてますよ続きは、夜に」
「そう、しょうがないな」
「それで」
「二人とも暫く体を我々に預けてもらいたい」
「ごめんね、又続きは今夜」
「今夜...」
0203創る名無しに見る名無し
垢版 |
2017/01/06(金) 11:00:00.20ID:ziRd2PCk
俺と美春は体をカールとエリーに預けた
カールとエリーは船の中に運んだボックスを調べては何か話していたが
彼らの言語での会話は、俺には理解出来なかった
しかし感情は伝わってくる、喜び・怒り・悲しみそれが意味することは
判らないただ、失望は感じなかったのが救いだった
深夜になって、やっとカールとエリーは体を返してくれた
「すまない遅くなって、でも君たちに話がある」
「それは、いい話なのか?」
「いい話だ」
「実は、前の船の持ち主が、俺達と違って慎重なやつで予備のパーツを積んでいた
だから船は、すでに修理できた」
「良かったじゃないか、でも...」
「お前の心配は、わかる最後まで聞いてくれ」
「前にも話したが、俺たちの寿命は、地球の時間で2000年だ、しかし地球にたどり着くのに
500年掛かっている旅立つ時にはもう200歳だったから今は700歳ということになる
100年前にすぐ寄生していれば今頃は、帰路の途中のはずだった。しかし予定は変わってしまった
このまま、君達が死ぬまで寄生を続けた場合、帰ることは出来るが、それでは我々の生殖可能な歳を過ぎて
しまう、我々は、母星でないと生殖行為が出来ないんだ、だから君達が死ななくても済む方法を調べていた」
「有ったのか?」
「ああ」
「これも、前の船の持ち主のおかげだが、彼らは、成功したその方法が航海日誌に残っていたよ」
「そして、そのために必要な物も」
「ただ、それは副作用がある」
「それは、どんな副作用だ」
「力が残ってしまう君は人の考えが読めてしまう、美春は未来が見えてしまう」
「時にその力は君たちを苦しめるかもしれない」
「誰も信用出来なくなったり、知っているのに救えないことに苦しむかも知れない」
「それでも、いいさ俺には美春がいる美春が苦しんだら俺が支える」
「美春どんなことがあっても君えの愛は変わらない」
「私も、貴方を支えるは、嫌なことがあったら私を見て」
「すまない」
「なぜ、謝る俺も美春も望んで寄生を受け入れた」
「やってくれ」
「痛みはないが暫く意識は無くなる」
カールとエリーは寄生を解除した
「どうだ」
「大丈夫だ美春は?」
「私も大丈夫よ」
「さあ故郷へ」
「ありがとう君たちは最高のホストだったよ」

船は青い光になって空の彼方へ消えていった

「無事帰れると良いですね」
「帰れるさ」
「これからどうする?」
「途中でしたよ」
「そうだったね」
 完
0204創る名無しに見る名無し
垢版 |
2017/01/06(金) 18:22:27.12ID:ziRd2PCk
700歳ではなく800歳だった。まあ誰も読んでないからいいか
これで、ゴミ捨て終り。
0205創る名無しに見る名無し
垢版 |
2017/06/04(日) 07:20:12.76ID:jvgp967t
.
0206創る名無しに見る名無し
垢版 |
2017/06/04(日) 21:51:12.44ID:UDgXy5Z+
おーぷん2ちゃんねるのオカルト板に行って
意味不明って検索してから260番のレス見てみ。

きっと必要なことが書いてある。
0207創る名無しに見る名無し
垢版 |
2017/12/09(土) 12:25:37.59ID:RknbcelA
あるところに桃太郎がいた。
「ここはどこなんだ?」
周囲は粘液が満ち満ちていた。
やがて桃太郎の体が溶け始めた。
「そうか、ここは巨大生物の胃の中か!」
桃太郎は溶け出す前に、日本刀を振りかざした。
桃太郎はやっとのことで巨肉の地獄から抜け出した。
だが、外界に出たとたん、桃太郎は放射能を浴びて死んだ。
桃太郎の墓は金太郎が立てたという
0208創る名無しに見る名無し
垢版 |
2017/12/27(水) 12:04:51.65ID:C1Z7QFDy
家で不労所得的に稼げる方法など
参考までに、
⇒ 『武藤のムロイエウレ』 というHPで見ることができるらしいです。

グーグル検索⇒『武藤のムロイエウレ』"

PVIEMEIQCC
0209創る名無しに見る名無し
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2018/01/06(土) 00:00:07.38ID:BNGUv03x
民法・刑法にもっと詳しくて漫画描けたなら描いたプロット?案?
思い付いたので投げ棄て

献花両性:男女どちらでもイケる仲裁屋リーダー(中性的なイモリ顔)
条道達:仲裁屋の新米男性(元検事)
:仲裁屋の事務兼探偵。157,B,60,80スパッツ愛用
:最初の依頼者である元鞘再婚(第一〜二話解決後)者の娘。
解決後も時々仲裁屋に入り浸る

悪徳弁護士の蔓延る羽毛市で、物事に白黒つけすぎられてギスギスした空気になってるのを、和解・仲裁させて修復させるのが仕事の仲裁屋。

:警察署長。どんな軽微な犯罪も見逃さない。敵にも味方にもなる。
:地域安全課婦警。婚期に焦る28歳162,D,62,90

『人と人の関りには完全な正解は無い。お互い違うことを受け入れるしかない』を
信条に依頼者の周辺を更にややこしくして解決とも取れないほど混乱させる。
裁判の判決まで出終わって依頼者の想いが届かないパターンと、
依頼者の望みが何らかの形で叶って終わるパターンの比率は2:8位で。

城玄津蹴:最高裁判事。厳粛な判決を地裁以下にも求める
:弁護士。条道の元同僚。頑固一徹の判例主義
0210創る名無しに見る名無し
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2018/01/11(木) 23:54:07.18ID:FrtZqsJi
『それでは、本日の仕事内容ですが、芝生用種の発芽有無検査をして頂きます。
種袋に裏面より白色光を照射すると、発芽率の高い種袋は黒く濃い影が多数浮かびますが、
発芽率の低く繁らない種袋の場合は薄い影しか出来ません。
上部から流れてくる種を、全て繁るものと繁らないものとに分けて下さい。』

初めの内は種がサンプル同様に影を作っていたが、途中から何かおかしい。
完全に半透明の乾燥剤のようなシルエットが浮かび上がったり、
顔を分け与えるヒーローの影と総理を狙う国会議員のシルエットが交互に流れたり、
農業新聞を愛読するタレントや日焼けサロン歌手のシルエットも、
輪郭の似たり寄ったりな著名人のシルエットとともに流れてくる。
おまけに間違えると『ブブーッ!!』と不快な不正解音まで響く始末だ。

疲労困憊しウトウトとしてしまった時、夢うつつのなかで
枕元に立った隻腕の偉大な漫画家が指差す百鬼夜行へ混じって踊っていると、
『いつまで寝てんだ!バカやろー!』と強面のシンガー・ソングライターに叩き起こされた。

見渡すと当たり一面人面芝の敷き詰められたサッカーグラウンドで、
私はどうやらヘディングと同時にゴールへ頭をぶつけていたため、
ベンチへとふらつきながら歩き、座り込んで交替した。
0211創る名無しに見る名無し
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2018/02/27(火) 14:00:02.91ID:ECWqEmo7
女将の狼さん
後継者不足に悩む山奥の老舗旅館を突然やって来て継いだ女性は、
前番台の助けた狼女だった?!
森の仲間もやってくるようになった旅館を舞台に、
満月の夜はちょっとイライラしがちな女将が奮闘するホラーコメディ
0212創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/05/21(月) 06:39:50.92ID:tRZnwP6O
知り合いから教えてもらったパソコン一台でお金持ちになれるやり方
参考までに書いておきます
グーグルで検索するといいかも『ネットで稼ぐ方法 モニアレフヌノ』

DRSCW
0213創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/07/03(火) 21:10:50.31ID:f1dClnnX
DMR
0214創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/10/17(水) 16:12:31.78ID:ZU7x6aHX
中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね

TEZ
0215竹石敏規
垢版 |
2021/03/22(月) 17:57:04.20ID:fTym3xll
 【何もしない人=年がら年中授業中寝るか漫画を読んだりして遊び呆ける事しか能がなく
肝心のテストの時等は全て人に尻拭いさせても平気な人間のクズ
筆記用具すら持ってこない小学生レベルの学力の池沼の分際で
さらに不正がバレて高卒の資格を剥奪された"自称一生芸大志望"(笑)とぬかす
自分のケツもろくに拭けない所詮は口先だけの身の程知らずの出来損ないwwwwwwwwww
けんまするのは大歓迎!!www鎌倉由比ヶ浜在住『大場雄太』ほど批評家になる】

 自分がバカにされないことに意識を集中する。
 これが劣等意識がもたらす「引き下げの心理」なのです。
 部下の行動、妻の言動、何かのコラムに批評することで
「自分の方が偉いんだ!凄いんだ!」と自分で確認しなければ、気がおさまらない。
 だから、良いところより、批判することにのみ、すぐに意識が向く。

 なぜ、人を誉めること、よい所を認めることにこれほど、ある人は抵抗感を持つのか。
 誉めないまでも、一つの考え方としてとらえる事ができないのでしょう。

 演劇や舞台の批評文ばかりを見て、あの舞台はキャスティングミスさ、
台本の流れが問題さと、退屈と苛立ちにアグラをかいて、人を批判するより、
一生懸命作っている演出家や出演者の方が人生を楽しんでいるし、心からの友達も多いはず。

 何もしない人ほど批判精神ばかりを育てて、人生を孤独にする傾向があるのです。
 批判ばかりがクセになると、自分の小さな行動に対しても「くだらない」「意味がない」
と自分にも批判精神は向いてしまい、自分の前向きなエネルギーまでもが枯渇します&#9829;
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