忙しい生活では色んなものを忘れている
自分がそれを忘れていたことすら気づいていない
忘れるというのはそういう事だ
忘れたくないものを忘れていたとしたら、それは残念なことだ

例えば、そこに花の香りがあること
花には香りがある事はもちろん知っているが、忘れている時は多いものだ
時々ふっと思い出す

今朝、まだ薄暗い中、庭の植物を見て回っていた
風のない朝だった
不意に柔らかな香りに気づく
この香り
辺り一帯、ふんわりと漂っている
周りを見る
菜の花であった
先日、畑から摘んで帰り、私が庭先に活けておいたものだ
匂いに先に気づいたのだった

強い風は香りをあっという間に霧散させてしまうが、風のない日にはその辺りに留まっているのである
まだ暗い朝、菜の花は、自分の生を咲き誇り、香り、今を生きていた

素晴らしくしみじみと幸せな朝であった