週刊ダイヤモンド』6月24日号の第1特集は「不動産投資の甘い罠」です。
今、増税された相続税の節税策や将来の年金不安をあおった不動産投資が活況を呈しています
。業者が提示する収支シミュレーションでは、節税ができる上、多額のもうけが出る計画ですが、
果たして本当にその通りにうまくいくのでしょうか。そこで、本誌は複数の業者の資料を入手し、独自に分析を試みました。


 都心から電車を乗り継ぐこと1時間余り。ようやく到着したのは、関東近郊にある風光明媚な地方都市だ。
JRの駅に降り立ってからさらに、車を走らせること20分。目に飛び込んできたのは、
外観は洋風のデザインながらも幾分質素な小ぶりの2階建てアパートの“群れ”。
 車を降りてアパートの前まで歩いていくと、柵にぶら下がっているのは「いい部屋ネット 入居者募集」と書かれた看板だ。
 通りすがりの地元住民に話を聞いてみると、「これ、すごいですよね。全て大東建託の賃貸アパートです。全部で200戸近くあるんじゃないですか」。
 1棟8戸とすれば、実に25棟ものアパートがこの一角にひしめいている計算だ。ドローンで空撮でもしない限り、全容はとてもカメラに収められそうにない。
 これぞまさに、地元住民から、“大東建託村”と呼ばれている場所に他ならない。

 この“村”の近くで20年前、相続税対策のために3億6000万円の借金をして、
大東の1棟4戸のアパートを9棟も建てたという津川貴一さん(仮名、70歳)は今、
「大東の営業マンが日参し、家賃を下げたいと何度も言われて困っている」と顔を曇らせる。
月々の家賃収入は170万円で、ローン返済額は120万円。
残った50万円から固定資産税や健康保険料を納めると、手元に残る金額はごくわずかだ。

 だが大東の営業マンは、「1戸につき、たったの3000円ですよ」と家賃の引き下げを要求。
応じれば最終的な収支は完全に赤字だ。
周囲には、大東の言うままに家賃を下げて赤字となり、アパートを手放したオーナーも複数いる。
 津川さんのアパートの空室率は常時10%程度で、?「大東は自社管理物件の入居率を平均で約97%とアピールしているが、?
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とても信じられない」。