旧来型組織の改革が進んでいくなか、なかなか変わらないと揶揄される「教育現場」。
しかし、常識に捉われず改革を進めている千代田区立麹町中学校の手法は、
あらゆる組織の改革にも通じると話題を集めています。
本連載は、千代田区立麹町中学校長・工藤勇一氏の著書『学校の「当たり前」
をやめた。』(時事通信社)から一部を抜粋し、麹町中学校の「学校改革」に
ついて紹介していきます。今回は、学校の仕組みやルールについて考えていきます。

「ルールや仕組み」は時代に合わせて見直す必要がある

公立学校という組織は、10年もすれば、ほぼすべての教職員が異動で入れ替わります。
そのため、誰が何のために作ったか分からない仕組みやルールが、至る所にあります。

例えば私が麹町中学校に赴任した当初、自転車を駐輪できるスペースがあるにも
かかわらず、「保護者は自転車で学校に来てはならない」という規定がありました。
誰が何のために作ったルールなのか、まったく意味不明です。長く麹町中にいる
教員に聞いても分かりませんでした。私は保護者からの要望を受けて規定をすぐに
変更し、自転車で学校へ来ても構わないようにしました。

こんなこともありました。冬にセーターを着てきてもよいにもかかわらず、
「授業中、セーターを一番上に着てはいけない」というルールがあり、
生徒たちはそのルールを守るために、セーターを着るときは、
その上に学生服を着ていました。まったく意味がない規定です。
また、生徒がプール授業の後に、髪を乾かすために
「タオルを頭や肩に巻いてはいけない」というルールもありました。
生徒たちは服をびちゃびちゃにしながら授業を受けていました。私は、
「今日から変えましょう」と先生たちに言って、そのルールをすぐにやめさせました。

本来なら、こうした不要なルールや仕組みは時代とともに、常に見直していく必要が
あります。しかし、学校という組織はとかく硬直的で、前例踏襲に陥りがちな
側面を持っています。結果として、意味不明なルールが、
何年も残り続けたりしがちなのです。