>>451
回答
盲腸癌というのは実質的には大腸がんと考えて良いでしょう。肝転移があると言うことはstage IVと言うことですが、最初に切除できる肝転移だけ
なら完治する可能性も出てきます。

これは大腸がんの特徴とも言えます。胃がんや膵がん、胆道がん、乳がん、肺がんなどではまず肝切除術はしません。多くの微小転移がんのうち最も
大きいものがCTに映っているだけと考えられ、目に見えない微小転移がんが相当な確率で再発してきます。
つまり手術の体力的な負担に見合うほどの効果(この場合完治あるいは延命に寄与するという意味)が得られないと判断されるからです。
初回肝切除後の化学療法はFOLFOXで妥当と思いますが、終了3ヶ月後に肝転移が発覚したと言うことは同じFOLFOXだと再切除後の再発予防には無効
と判断されたのかもしれません。

再発予防の抗がん剤を終了して6ヶ月以上たった後に再発した場合は、もとの抗がん剤が有効かもしれないと言うことで再投与はあり得ます(といっ
てもこれは再々発予防という意味ではなく、再切除ができない場合の再発がんと共存をはかる意味での治療の場合ですが)。

今回の場合すでにstage IVなのでFOLFIRI療法をしても良いのかもしれませんが、このレジメンは再発予防という意味では有効とはされていません
から、選択しないのでしょう。
腫瘍内科医先生は上記のように厳密に考えておられるでしょうが、当然違う立場の医師もいるでしょう。
ここで問題となるのは本当に効果があると証明された治療をすべきという立場と少しでも何かできることをしたいという立場のぶつかりですが、も
う少しその意味を再考してみます。

まず前者の立場は、治療法は星の数ほどあっても本当に患者のためになと結果の出ている治療法を優先すべきと言う意味であり、逆に言うと有効
性が示されていない治療法は患者に害を与えることを危惧しているわけで
す。
となると無治療経過観察というのは何もしないと言うより、立派な治療方針と言えます。

後者の立場の少しでも何かできることを、という気持ちは良く理解できますが、例として挙げられているUFT+クレスチンは有効性が証明されていな
いだけでなく、有害である可能性が高いと考えます。
UFTは5FUの経口剤でstage III大腸がんの術後という限られた集団で再発率を5%ぐらい下げることが知られていますが(といってもユーゼルとの併
用ですが)、今回のようなstage IV大腸がんのFOLFOX治療後再々切除という特殊な場合にはその意味をとても適用できないでしょう。

UFT自体副作用はそれなりにあり、漫然と投与すると骨髄機能がすり減っていきます。再発が確定した場合にFOLFIRI療法を導入しようにも、骨髄
機能低下によって不可能となる自体もありえます。またクレスチンも効果があると認識されていないし、「経済的毒性」は無視できないでしょう。

あと低用量のアスピリン内服ですが、これは大腸ポリープ発生率を下げる効果があるのはわかっているものの、大腸がん再発予防効果は出ていませ
ん。また高齢者では、胃潰瘍⇒吐血の危険性がある程度出てきます。

まとめると何かできることをしたいと言うときには、そのデメリットも詳細に検討しているのかが、大きなポイントと言えるでしょう。

度重なる手術と抗がん剤治療で患者さんは長期的に栄養状態、体力筋力低下、神経障害などの副作用の後遺症が出てきているはずです。
これは生活の質、日常生活の活動性に深く影響します。
となると、経過観察で無治療の期間は体力、症状回復のための大事な時期でもあります。
抗がん剤で確実に再々発予防ができないのであれば、もし再治療が必要になったときのための体力増強、気力の充実がとても大事になってきます。

治療しないのであれば、具体的にはおいしいものを食べ、色々な所に旅行し、新しい事に挑戦するといった、人生を楽しむことも大事なのではない
でしょうか。

なんといってもがんのことをずっと考えるために治療をがんばるのではな
く、がんのことを忘れて人生を長く楽しむことが本来の治療の目的ですか
ら。
なんとか再々発の予防法がないか悶々と考えるより、これをチャンスとし
て、今まで治療をがんばってきた見返りとして楽しむ時期だと割り切った
方が患者さん本人にとっては幸せではないかと思います。