「がんが治る」などと効能をうたい、ゴム素材メーカー山本化学工業(大阪市)が開発した
素材「バイオラバー」の商品を販売したとして同社の関連会社の講師ら3人が薬事法違反容疑で
逮捕された事件で、商品を紹介するパンフレットに「医療学会が承認」などの表現があり、
名前が登場した日本癌(がん)学会が「承認を与えていない」として山本化学工業に掲載中止を
警告していたことなどが、朝日新聞社の取材で分かった。

パンフレットは、社員1人が逮捕された健康用品販売会社の壮快薬品(東京都)が開いた
バイオラバー商品の説明会で8月に配られた。山本化学工業が作ったもので、同社のほか、
講師2人が逮捕された同社関連会社ハーキュリーズグループの名前が刷り込まれている。
「体にやさしく健康維持」などと書かれていたが、具体的な効能などは書かれていなかった。

しかし、「米国、日本の医療学会におきまして承認、正式発表をさせて戴(いただ)きました」と
書かれていたほか、「ASCO(米国がん治療学会) 2005年5月13日 2007年2月23日」
「日本癌学会 2007年10月4日」「日本癌治療学会 2007年10月24日」
「日本臨床眼科学会 2006年10月5日、7日 2007年10月12日」
「日本ロービジョン学会2007年9月22日」と、5学会名と日付が列挙されていた。

これに対し、日本癌学会は今年、数度にわたって山本化学工業に対し、「当学会が特定の商品の
効能を認定することや承認を与えることはない」として宣伝、広告の中止を求める警告をしたという。

一方、ほかの4学会も、朝日新聞の取材に「承認」の事実を否定。日本ロービジョン学会は
「これを見た人が学会が承認したと思ってしまうおそれがあり、不適切な記載」、日本癌治療学会も
「医療器具などに薬事効果があると承認することはない」と説明。日本臨床眼科学会は「何をもって
正式発表と言っているのか分からない」、米国がん治療学会は「正式発表とは口頭での発表をいい、
記載された日付でその事実は確認できない」としている。