さらば「ミスターオート」飯塚将光さん引退
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tochigi/news/20130712-OYT8T01442.htm

 オートバイ競走・オートレースで活躍した佐野市出身の飯塚将光さん(63)が、42年間のプロ人生に終止符を打った。
日本選手権で史上最多となる6回優勝するなど輝かしい記録を打ち立て、「ミスターオート」の異名で親しまれた。
「ファンの声援のおかげで、夢のような成績を残せた。オートレースは私の人生そのもの」と別れを告げた。(込山駿)

■片隅には救急車

今月7日、千葉県の船橋オートレース場で開かれた引退セレモニー。
飯塚さんは愛機にまたがって登場し、競走路をゆっくり2周した。
「エンジンの調子、きょうは最高だった」。感慨深げな表情でファンに手を振った。

マイクを握ると、「おかげさまで無事に選手生活を終えます。
今後も、オートレースの応援をよろしくお願いします」とあいさつし、客席から
「ありがとう」の歓声を浴びると、涙を浮かべた。

6月上旬に病が見つかり、この日も、実は歩くのも苦しい体調だった。
レース場の片隅には救急車が待機していた。それでも、ファンの前で背筋を伸ばして
振る舞った。病のことには触れなかった。

■賞金王最多9回

1971年、船橋オートを主戦場としてデビュー。先行車を外側から抜き去る「まくり走法」は
華麗な技術に裏打ちされ、昭和のファンを熱狂させた。日本選手権などSG大会で
9回優勝したのをはじめ、大会優勝は通算142回、レースの1着は1382回にのぼる。
賞金王も最多の9回で、82〜87年は6年連続の快挙を成し遂げた。獲得賞金は13億3743万円。

今年も9大会41レースを走り、優勝こそなかったが1着を5回取るなど健在だった。
しかし、体調の急変で、船橋オートでの5月27日が最後のレースとなった。
「もっと走りたい気持ちもある。でも仕方ない……」

■佐野「楽しい思い出」

千葉県の自転車店に生まれ育った。しかし、父親のふる里である佐野市をずっと出身地としてきた。
引退セレモニーの後は、しばし回想に浸った。「子供の頃、何度も佐野へ遊びに行った。
オヤジのバイクの後ろに乗って、野山を疾走した。尻が痛くなったけど、楽しい思い出」。
威厳に満ちたミスターオートが、少し遠くを見つめた。

◆オートレース

60年以上の歴史がある日本独自のレース。船橋など全国6か所で開催されている。
1大会に通常12レースがあり、大会ごとに優勝を決める。大会は4等級に分けられ、
最高がSG(スーパーグレード)。SGで最も栄誉あるタイトルが日本選手権とされる。
1レースに8台が出走し、1周500メートルの楕円(だえん)形コースを左回りで6周する。
競走車は排気量600ccで、ブレーキなしの2段変速、ハンドルの左右の高さも違う特殊な仕立て。

(2013年7月13日 読売新聞)