Welcome to ようこそジャパリパーク 今日もドッタンバッタン大騒ぎ――

ここは超巨大総合動物園ジャパリパーク。砂漠から雪山まで至る所から集めた動物たちと、それらがヒト化した不思議な存在「フレンズ」が自由気ままに生きている場所です。
そんな十人十色なフレンズたちの胃袋を支えるのが、彼ら。ラッキービーストです。

キョウシュウエリアのジャパリまん工場。ここでも多くのラッキービーストが、日夜ジャパリまん製造に従事しています。けれど、今日の喧騒はどうやらいつもとは違うよう。
というのも、一部のフレンズによって、生産中のジャパリまんが奪われてしまったのです。

「ポストハーベスト処理ヨリオーダー: 製品コード011 40ヶ製造 製品コード012 50ヶ製造 願イマス」
「エラー エラー: 製品コード011 製造数ハ既定値ニ達シマシタ 製品コード012 製造数ハ既定値マデ残リ 12ヶデス」
「エラー エラー: 製品コード011 収穫数ハ 40ヶ不足シテイマス 製品コード012 収穫数ハ 50ヶ不足シテイマス」

話が噛み合っていないラッキービーストたち。実のところ、最初にジャパリまん強奪を発見したラッキービーストからして、決められた通りの行動を取ってはいたのです。
エリアのラッキービーストたちを統括する、キョウシュウ管理センターにイレギュラーレポートを送信するという行動を。
本来ならそのレポートはすぐさま受理され、必要な範囲のラッキービースト全員に情報の展開がなされるはずでした。
そうなれば、フィールドワーク担当ラッキービーストは強奪犯を追跡し、飼育・給餌担当は食べ過ぎで体調を崩すフレンズが出ないか目を光らせ、工場では生産管理担当が追加生産スケジュールを作成し承認を求めたことでしょう。

けれど、そうはなりませんでした。レポートを受理し、判断を行うべき存在が、今のパークにはいなかったのです。
それですから、警備担当の「ジャパリまんが奪われた」というレポートは収穫担当やポストハーベスト処理担当には伝わらず、彼らは彼らで「前工程から製品が流れてこない」というレポートをめいめい送っていたのです。けれどどのレポートも答えは同じでした。
決まって「受理待ち」の一文だけなのでした。
あんまり長いこと「受理待ち」が続くので、ポストハーベスト処理担当ラッキービーストはちょうど通りかかった収穫担当に直接オーダーすることにしました。
けれど「エラー エラー」ばかりで埒が明かず、ひとつ前の工程へ、ということを延々と繰り返して、ようやくここまで遡ってきたというわけでした。
ここでもやっぱり「エラー エラー」を繰り返して、どうやら足りない分は風で落下したり規格に合わず検品で跳ね出しになった分として処理することで話がついたようです。それなら生産を続けて、事後報告で済ますことができます。
真面目なラッキービーストは「本日の跳ね出し・不良数 90」とレポートを書きました。センターからの返答は「受理待ち」でした。

ところがトラブルは続くものです。生産を再開するやいなや、ジャパリまんの生地を練る機械からけものが唸るような音が鳴り出しました。
実のところ、最近では異音がすることはさして珍しいことではなくなりつつありました。
とっくにメンテナンス期限を過ぎていること、機械の調子が悪いことは事あるごとにセンターに報告しているのですが、特に対策がなされることもなく、ラッキービーストらへの指示もないままなのです。
しかし今回の異音は一段と大きいな、そう気づいた機械管理担当のラッキービースト、LBU-A3155は無線リンクで運転を止めると、この工程のオペレータ、LBU-A3162に駆動部の様子を見てくると伝え、メンテナンスハッチから中に飛び込みました。
A3162は運転盤の前で、A3155の帰りを待ちました。長いこと長いこと待ちました。けれどもA3155は戻りません。代わりに生産管理のLBU-A3128が現れました。
「生産数ガ不足シテイマス 運転ヲ再開シテクダサイ」
「ダメデス ダメデス 現在コノ機械ハ稼働デキマセン」