日銀緩和、副作用複雑に―マイナス金利深掘りなら…、預金手数料に現実味。
2019/09/07 日本経済新聞 朝刊

 日銀が実際にマイナス金利を深掘りすれば、その影響は企業や個人の預金にも及ぶ可能性がある。一段の金利低下で利ざや収
入が落ち込む銀行が、預金口座の維持・管理手数料の徴収に動きかねないためだ。現在の預金金利はほぼ0%のため、手数料を
取られれば実質的に預金金利がマイナスになることもありえる。
 マイナス金利政策は、銀行が日銀に預ける当座預金の一部に「罰金」を科すことで、お金を融資や投資に振り向けさせ、経済の好
循環につなげるのが本来の狙い。貸出金利は下がるため企業は低い金利でお金を借りられるメリットを得てきた。
 ただ銀行にとってみれば、資金の運用にあたる貸出金利は下がり続けるのに資金調達にあたる預金の金利は0%が岩盤になって
いる。預金を貸し出しにまわすことで得られる利ざやは急速に縮小。金融庁によれば105行の地銀の4割は本業赤字に陥っている。
 マイナス金利の深掘りでさらに経営が苦しくなって預金に手数料をかけるなら、利用者は預金をするだけで負担が生じることになる。
黒田東彦総裁はマイナス金利政策の導入決定直後の2016年2月の国会で「(預金金利に)マイナスがつく可能性はないだろう」と
答弁している。
 ただ、現在の普通預金金利は0・001%。税金も含めると1万円の金利収入を得るのに12億円の預金が必要な超低金利の現状
では、手数料がかかれば実質的に預金金利はマイナス圏に沈む。
 日銀の鈴木人司審議委員も8月の講演で預金金利の実質マイナス化の可能性に言及した。企業が預金を減らすために借入金を
返したり、個人の消費マインドを冷え込ませたりしかねないと懸念を表明した。
 マイナス金利政策の導入以降、銀行界が苦境を訴えても、さほど世間の同情や関心は高まらなかった。ただ預金するのに手数料
がかかるとなれば、これまでの風向きが変わるかもしれない。