「プロジェクトX〜挑戦者たち6〜  レクサスの挑戦−ネット工作員の誕生!」

奥田会長から、もっとレクサスの販売台数を増やせと迫られていた。 思案に暮れていたとき、会長は意外な事を言った。
「ネットとマスコミで印象操作してみたらどうだろう」 レクサス室長は戸惑った。 印象操作がバレたらトヨタと中身が同じだとだとバレてしまう。

「無理です。出来ません」室長は思わず叫んだ。 「俺たちがやらずに誰がやるんだ。俺たちの手で作り上げるんだ!」
会長の熱い思いに、室長は心を打たれた。商人の血が騒いだ。 「やらせてください!」

マスコミは電通を通じてすでに口封じ&印象操作工作は完成していた。
それから、夜を徹してのネット上の印象工作活動が始まった。
しかし、ネット上での低評価、失敗の声はもみ消せなかった。 室長は、来る日も来る日もネット上の人に論破された。
F1富士SW失敗の惨状は個人ブログやまとめサイトで流出していった...

いっそ、電通に転職すれば、どんなに楽だろうと思ったこともあった。 追い詰められていた。
そこへ会長が現れた。そしてこうつぶやいた。 「発想を変えるんだ。もみ消すんじゃなくて、こっちが大勢で書き込み多数派を装うんだ。」

そうだ。2ちゃんやカービューといった匿名掲示板だ。ユーザー評価とか点数や書き込み数で工作する手があった。暗闇に光が射した気がした。
室長は試しに人材派遣会社に連絡してみた。
大量の日雇い労働者がネットカフェ難民になっている。 「これだ、これが探してた印象操作なんだ!」

ネットカフェからレクサス絶賛する書き込みをする工作員の誕生だった。
会長と室長と工作員は、チャットで喜びを伝えあった。 室長は、充足感に包まれ、涙が止まらなかった。

「会長、レクサスディーラーにシャンパン浴びに行って来てもいいですか」室長は言った。
「ああ、いいとも。だが期待はするなよ。シャンパンじゃなくCAVAだからな」 会長は自分のジョークに、肩を揺らして笑った。