刑事事件でも通説となっている高松高裁昭和54年6月11日判決

司法書士が行う法律的判断作用は、嘱託人の嘱託の趣旨内容を正確に法律的に表
現し司法(訴訟) の運営に支障を来たさないという限度で、換言すれ
ば法律常識的な知識に基く整序的な事項に限って行われるべきもので、
それ以上専門的な鑑定に属すべき事務に及んだり、代理その他の方法
で他人間の法律関係に立ち入る如きは司法書士の業務範囲を越えたも
のといわなければならない。
司法書士が、他人の嘱託を受けた場合に、「訴を提起すべきか、併
せて証拠の申出をすべきか、仮差押、仮処分等の保全の措置に出るべ
きか、執行異議で対処すべきか」などまで判断するとともに、資料の
収集、帳簿の検討、関係者の面接調査、訴訟維持の指導」もなすこと
が、司法書士の業務ないしこれに付随する業務であるかどうかは、そ
の行為の実質を把握して決すべきである。
例えば訴状を作成する段階でも証拠の存在内容を念頭に置く必要があるし、前示の一般的な法律
常識の範囲内で助言指導することは何ら差支えない。これを一率に基
準を立てて区分けすることは困難であって、結局はその行為が嘱託
に基く事務処理全体から見て個別的な書類作成行為に収束されるもの
であるか、これを越えて事件の包括的処理に向けられた事件内容につ
いての鑑定に属するか如き法律判断を加え、他人間の法律関係に立ち
入るものであるかによって決せられると解すべきである。