今日は友枝小学校の同窓会だ。
懐かしい顔ぶれが一堂に会するということで、さくらはワクワクしながら会場へやって来た。
いつもより少しだけおしゃれに気を遣って、でも心は小学生の頃に戻って。みんな元気かな、どんな風になっているだろう。
きっと、とても素敵になっているんだろうね。そんな話をしながら、知世と二人連れ立ってふと見上げた空には、大きな満月がかかっていた。

「千春ちゃん、奈緒子ちゃん、利佳ちゃん!」
人混みの中に、昔の面影を残した友人たちの姿があった。さくらの声に旧友の弾けんばかりの笑顔が向けられる。
「さくらちゃん!元気にしてた?」
「うん、この通り元気だよ。みんなも元気にしてた?」
「元気元気。二人は相変わらず仲良しだね〜」
「ふふ、ありがとう」
「利佳ちゃんはまた一段とお綺麗になりましたわね」
「そ、そんなことないよ。知世ちゃんもお元気そうね」
「はい。おかげさまで」
「同窓会っていうのはね〜!」
「山崎くん!」
変わったようで何も変わらない、そんな友の様子になんともいえない嬉しさが込み上げて、一同の顔に笑顔の花が咲いた。

少し大人になるということは、子供の頃とは比べものにならない程忙しい日々を過ごすということでもあった。
煩雑な毎日に追われて、カードキャプターとして奮闘していたことは遠い記憶の彼方に霞んでいく。
魔法を駆使する機会がなくても、それを惜しいとも悲しいとも思わなかった。ケロちゃんはそばにいてくれるし、ユエさんも雪兎さんとして元気にしている。
カードさんたちとはいつでもお話できるし、魔法が使えなくても友枝町にまた事件が起こるよりはずっといい。
ただ、少しだけ、ほんの少しだけ、これでいいのかと自問することがあった。
カードキャプターとして責務を全うしようと格闘した「さくら」。不思議な出来事からこの街や友達を守ろうとした「さくら」。
自分が秘めている力を信じてひた走った「さくら」は、今の自分よりも「さくら」らしかったのではないか。
社会の常識や大人の分別を身につけて、世の中にうまくなじんできたけれど、それが本当に自分が望んだ生き方だったのかがわからない。
クロウさんは魔力のことなど気にせず自分らしく生きればいいといってくれたけれど、果たして今の生き方がそうなのだろうか。