「私、苺鈴ちゃんがうらやましい。魔法なんてなくても、しっかりしてて、カッコよくって。」
独白するように、聞いてほしいように、さくらは呟く。
「なんで魔法なんて使えたんだろう、こんな力が無ければ、こんなことにならなかったのに。」
と、くるっ、と振り向き、さくらを見る苺鈴。凛とした目で。
「贅沢よ、それ。」
「え・・・?」

 苺鈴は語る。魔法の一族である李家に生まれ、魔力を持たない苺鈴がどれだけ肩身の狭い
想いをしてきたか。
小狼の婚約者として彼と並び立つ資格のない自分を、どれほど嘆いたか。
「だから体を鍛えたのよ。魔力なんて無くても負けないくらい強くなろう、って。」

 しかしクロウ・カード集めの時、彼女は自分の努力が徒労であったことを思い知る。
さくらと小狼のカード争奪戦に割って入ることはできず、ソングのカードの時は知世にすら
後れを取った。シュートのカードの時に至っては自分の不注意で小狼を傷つけてしまった。
「でもでも、ツインのカードの時はうまくいったじゃない。」
さくらのフォローに、苺鈴は冷めた返事を返す。
「あれは同じ武術を学んでただけよ、正直ウェイの門下生なら誰でもできるわ。」
「そんな、こと・・・」
「さくらは『私にしかできないことがある』って言った。小狼は『お前がいて迷惑なことは無い』
って言った。」
そこで言葉を区切り、一度目を伏せてから、顔を上げて言う。

「それは、『持ってる人』の言う事よ!」
さくらはその表情に、胸を矢で貫かれたような、ずきり、とした痛みを覚えた。