【禁断】小狼×知世をひっそり語るスレ【村八分】

1CC名無したん2018/04/08(日) 23:03:53.53ID:gsYrtu+L0
小狼×さくらの公式カップルに萌える人が大多数の中、あえて小狼×知世のカップリングについて語りましょう。

一度このカップリングを語ろうものなら、しゃおさくのお姉さま方に絶対零度の視線を浴びることは必至。
変人っぷりを自覚して今まで内に秘めていたけれどツイッターなどでは語る余地もない…などとお嘆きのあなた!
溜まり溜まった小狼×知世への想い、妄想をお待ちしております。

130CC名無したん2018/05/03(木) 04:53:36.39ID:RhjYqj/O0
毎度素晴らしいですわ!!

131CC名無したん2018/05/03(木) 05:42:04.86ID:Bdyg2lHv0
>>127
GJ!

132CC名無したん2018/05/03(木) 09:32:32.43ID:IrTCg2Vc0
さくら「もう!小狼くんなんて だいっきらい!」シクシク……ポタッ シクシク

133CC名無したん2018/05/06(日) 05:44:37.13ID:elWoTZD80
>>126
とても良かったです

134CC名無したん2018/05/09(水) 00:52:58.34ID:KloL9oK20
一杯の紅茶を楽しむ時間は忙しい日々の中で貴重なひと時だ。熱々に淹れられた紅茶を飲み干すと、大道寺園美はカタン、とカップを置いた。

『まぁ、明日はさくらちゃんが遊びにくるの?』
『はい、お母様』
『それじゃ予定を調整しなくっちゃ。んもー、知世。もっと早く言ってくれればよかったのに。』
『申し訳ありません。急遽香港からお友達がいらして、それで、遊びに来てくださるようお願いしたものですから』
『それじゃしかたないわね』

方々に連絡をしてようやく明日の都合をつけた。大道寺コーポレーションを背負う者としてできるだけスケジュールは予定通りに消化したい。けれど、彼女が遊びに来るとなればなれば話は別だ。
さくらちゃん。大切な従姉妹の娘。
大好きだった従姉妹を彷彿させる「木之本桜」は、園美にとって大切な宝物の一つだ。彼女のことを想うと自然と心が弾んで来る。
なんとか予定もやりくりできたし、そうだ、ちょっと台所へ行って明日のおもてなしについてメイドたちと相談して来よう。
園美はウキウキ気分で台所へ向かった。

135CC名無したん2018/05/09(水) 00:53:19.94ID:KloL9oK20
台所では一人のメイドが作業をしていた。
「ね、知世は明日のことについて何か言ってた?」
「はい。お客様にお出しするお茶菓子のことなど、ご指示いただいております」
メイドは礼儀正しく答えた。
抜かりなく準備しているところが知世らしい。園美は知世の用意周到さに舌を巻く。私がいなくてもあの子はちゃんと大人になっていく。それが嬉しいような寂しいような…。
複雑な気持ちで、知世が用意したというリストを手に取った。
シアターで飲むドリンク。ああ、なるほど、みんなで何か映像をみるつもりなのね。
それから、お茶菓子。知世の好きなチーズケーキに、さくらちゃんへの桜ロールケーキ、フルーツタルトは私のかしら?それから……
「ねぇ」
離れた場所から園美の様子を伺っていたメイドに声をかけた。
「この、チョコレートケーキね。私、チョコレートは嫌いじゃないけど、ケーキとしては地味な気がするのよ。もっと派手で綺麗なケーキを用意してもらえるかしら。そうだ、なんなら私が用意しましょうか?素敵なアフタヌーンティー!みんなでいただいたらきっと楽しいわ」
一人楽しげにアフタヌーンティーの計画を立て始めた園美に、メイドは冷静に返答する。
「奥様、それは出来かねます」
「どうして?」
「さくら様がお越しになるときは、必ずチョコレート系のお菓子を準備するように知世様から固く言付かっておりますので」
「知世から……?」
「はい。ただ、実際にそれをお出しすることはほとんどないのですが……」

136CC名無したん2018/05/09(水) 00:54:05.64ID:KloL9oK20
珍しいこともあるものだと思った。知世はさくらへの衣装などたとえ一度しか着ないものであっても必要だと思ったものには潤沢に資金を費やす。
一方で、誰も食べない嗜好品を購入するような、そういう無駄になるようなことにいたずらに出費するような子ではないのだ。
考え込んでいる園美に先ほどのメイドが思い出したように言う。
「そういえば、先日一度チョコレートケーキをお出し致しましたわ」
「それはいつ? 誰に出したか覚えてる!?」
「いえ、私はご用意しただけで、実際に給仕したわけではないので」
園美の勢いにあわあわしているところに、別のメイドが入って来た。
「あ、ねぇ、あなた、この間さくら様がお越しになった時、お茶をお出ししたわよね?どなたにチョコレートケーキをお出ししたか覚えてる?」
「ええ、知世様と同じ年頃の、男の子でしたわ」
「名前、わかるかしら」
「たしか……。あ、李君、とかお呼びになっていたような……」
李……?
園美は記憶の糸を手繰り寄せる。そういえば以前うちへ泊まりに来た子達が李といっていたっけ。
男の子と女の子で、そう、なでしこ祭の頃。でも、それが初めてではなくて、二人とも2回目だったわ。
女の子は知世と女の子同士の話をしに来て、男の子に初めて会ったのはもっと前。ええと、たしか、知世の声が出なくなった時ーー。
お茶を淹れる手伝をするさくらをじっと見ていた李少年の瞳を思い出す。
あら?でも、あの子、その時にはもう……。
はぁぁぁ、とため息をついて、苦笑いのままふるふると頭を振る。

「もう、報われない子ね……」

137CC名無したん2018/05/09(水) 00:54:28.67ID:KloL9oK20
思わず漏れた園美の言葉に二人のメイドは顔を見合わせる。
「ね、悪いんだけれど、明日のこのお茶の予定は全部キャンセルして頂戴」
「けれど、奥様…」
「大丈夫よ。私がアフタヌーンティーを作るって言い張ったっていえば、きっと知世も笑って許してくれから。ね? さ、そうと決まったら、色々準備しなくっちゃ!よーし、やるわよー!」

昔の自分と知世の姿が重なる。
自分の気持ちを持て余したまま、一人ただ待っていて、そのうちその人は誰かのものになってしまった。
報われない気持ちを誰よりも知っている私は、チョコレート菓子を用意してただ待っているあの子の気持ちがよくわかる。
親としての私はどれだけあの子を支えてやれているかはわからないけど、こんなときくらい、役に立ちたいじゃない。
知世、さくらちゃんが来るときは絶対、絶対、教えてね。お母さん、お手製のアフタヌーンティー用意するから。

美味しいアフタヌーンティーを作ろう。
チョコレートの君が来なくても、知世が寂しくないように。

138CC名無したん2018/05/09(水) 01:01:16.35ID:KloL9oK20
いつも寝る前に書いているのでちょいちょい推敲が甘くてすみません
第7話で小狼に給仕されたケーキがちゃんとチョコレートケーキだったところから思いついたssでした

139CC名無したん2018/05/09(水) 02:50:01.33ID:2TDBXAPr0
チョコレートケーキ!毎度題材が素晴らしい!
カップリングのキャラ本人が不在なのにここまで萌えさせられるものなのだと感嘆の極み
園→藤風味も素晴らしい

140CC名無したん2018/05/09(水) 14:06:21.51ID:RGtdGGKa0
チョコレートケーキでここまで膨らませることができるとは神
好きな男の子が他の女の子を見ていても、大好物のケーキを用意して待ってる健気さよ
ファンタジーの中のファンタジーなのは分かっているけれども萌える!

141CC名無したん2018/05/09(水) 19:11:55.79ID:6iM5SnZ90
素晴らしいですわ

142CC名無したん2018/05/10(木) 18:55:41.77ID:ZjE0nKA50
GJすぎ

143CC名無したん2018/05/10(木) 19:26:38.28ID:sgqcORzf0
小狼「大道寺…これっていけないことなのかヌギっ

144CC名無したん2018/05/15(火) 00:30:25.37ID:n4tTKvRE0
知世ちゃんが、小狼に体許すとは思えないなあ
たまたま2人きりの時に、からかい半分で体触らせたりとかはあるかもけど、
キス・エッチとか、愛情表現的なことしてくるのは拒否する気が

145CC名無したん2018/05/15(火) 05:51:49.11ID:ooHt7ZJw0
小狼「大道寺…\\」
知世「\\\\\李くん お洋服を着てください!」

146CC名無したん2018/05/15(火) 16:50:53.84ID:dsQzmLTo0
小狼もその辺の欲求は少なそうだからなあ
付き合っ!じゃない女の子に手を出すとは思えん
その上で色々思い悩む小狼の頭を、ふいに自分の胸の中に抱き寄せる母性本能全開の知世とか見てみたいハァハァ

147CC名無したん2018/05/15(火) 17:34:30.91ID:134a9p9e0
>>146
イイネ

148CC名無したん2018/05/16(水) 20:20:17.48ID:23SqBij+0
>>137
乙です
これは良いものだ

>>146
みてえ

149CC名無したん2018/05/17(木) 00:17:39.70ID:AjrSMevP0
さくらが正体不明の何かを追いかけていく。
それを追いかけて小狼も走り出した。

この庭は迷路になっているのか。少し厄介だな。
広大な敷地の一角は、大きな迷路になっていた。小狼の気持ちとは裏腹に、迷路はさくらの向かった方向になかなか行かせてはくれない。
どうすれば最短でさくらの元へ行けるのか。意識が走ることから逸れたとき、小狼は後ろから追いかけて来る足音にはたと気がついた。知世の足音だ。スマホを構えたまま、後ろから追いかけて来る。
知世はスキーもできるしスケートも得意だ。だから、ものすごく運動が苦手というわけではないだろう。ただ、走るという訓練が足りていないだけで。
そんな彼女が必死になってついて来る。小狼は息が上がって苦しそうな知世の方を振り返った。その間にも魔法を使って移動するさくらとの距離はどんどん開いていく。
でも、だから、どうしろっていうんだ。
走れと言われればもっと早く走ることはできる。けれど、あんなに必死で走ってくる大道寺を置いて一人だけ先に行くなんてこと、できるか?
ああ、くそっ。
小狼の走るペースは上がらない。
これが苺鈴なら、日頃の鍛錬を信じて置いてゆける。
けれど、彼女は?
焦る小狼は逡巡した。そして、決めた。さくらのことは見失うかもしれない。けれど、ペースは上げない。
このまま大道寺がついてこれるかどうかの線で追いかける。
こんな決断をさせた知世のことを、人は足手まといと呼ぶかもしれない。しかし、小狼は不思議と嫌な気持ちはしなかった。

150CC名無したん2018/05/17(木) 00:18:21.79ID:AjrSMevP0
ヘロヘロになった知世がお茶を飲んで一息つくと、早速新しいカードのお披露目となった。
「フライト!」
無事捕獲されたカードを使ってさくらが空へ舞い上がる。ケルベロスもそのあとを追い、一人と一匹、そして知世のドローンも加えて三者は楽しそうに空を飛び回っている。
地上には知世と小狼二人だけになった。
楽しげに空を飛び回るさくらを見上げたまま、知世が小狼に話しかけた。
「李君、先ほどはありがとうございました」
「なんのことだ?」
「私に気がついて、走るペースを加減してくださったでしょう?」
「!」
小狼は驚きを隠せなかった。知世の方は一度振り返ったきりで、知世に気づいたあとも大幅にペースを変更していない。
なのに、あんなギリギリの状態で、俺が加減して走っていたことに気がついたというのか。
「どうして……」
「わかりますわ。運動の得意な李君が私と変わらないペースでさくらちゃんに追いつくなんてこと、ありえないですもの」
小狼の心を見透かしたかのような言葉が返って来る。知世は続ける。
「でも、これからは遠慮なさらないでください。私がこのドローンを導入したのは、さくらちゃんをありとあらゆる角度から撮り逃しなく撮影するためではありますが……」
さくらのあとをついて回る小型撮影機が、太陽の光を受けてキラリと光るのが見えた。
「同時に、李君やさくらちゃんに、全力で走って行っていただきたいからですわ。私は、何かに一生懸命になっているお二人が大好きなんです。今日は間に合いませんでしたが、必ず、次は不具合を修正して完璧な装置にしてみせます。
だから…。だから、李君は自分の思う通りに、駆けて行ってくださいな」

151CC名無したん2018/05/17(木) 00:19:19.71ID:AjrSMevP0
小狼は、知世を置いて行かないと決めたとき、嫌な気持ちがしなかった理由がわかった気がした。
知世は魔法を使う自分たちと付き合っていて、自分にできないことがあっても嫌な顔一つしない。
むしろ、応援したり励ましたり、果ては新しい機材を開発して、魔法が使えないなりに自分たちと共にあろうと試行錯誤している。
今日はたまたまその努力が間に合わなかっただけで、こうして日々人知れず努力している彼女をどうして責める事ができるだろう。
「…俺にも、魔法が使えたらいいのにな」
「え?」
驚いた知世は小狼の方を振り返った。
「大道寺を空へ連れていってやる魔法が」
小狼は心底そう思った。
自由に飛べたら何をするんだろう。大道寺のことだ。きっと、さくらの撮影に一生懸命になって、また、息を切らすんだろうな。
幸せそうに空を飛び回る知世の姿が思い浮かぶ。
「いつか必ず連れていく。大道寺を空へ。あんな風に自由に」
まっすぐな瞳で空を見つめて、小狼は約束した。
大きく見開いた知世の目から、思いがけずはらはらっといくつぶかの涙がこぼれ落ちる。
「おい、どうした! 目にゴミでもはいったのか!」
「いえ、これは……」
言葉を継ごうとしても、涙が後から後から溢れてくる。
本当は、一緒に飛びたいと思っていた。さくらちゃんと一緒に行けたらどんなにいいだろう。でも、私には魔法は使えないから。
ずっとそうやって自分を納得させようとして、ドローンやケロちゃんカメラの開発に血道を上げてきた。
だから、嬉しい。そんな風に言ってもらえるだけで、嬉しい−−−。
「きっと、空へ、連れて行ってくださいね」
大丈夫、というようにとびきりの笑顔で笑ってみせた知世の心は、もうすでに何かから自由になって、思い切り高く羽ばたいていた。

152CC名無したん2018/05/17(木) 00:19:36.51ID:AjrSMevP0
「知世ちゃん!」
「さくらちゃん」
空から降りてきたさくらが知世の様子を見て駆け寄ってきた。
「知世ちゃん、どうしたの?どこか痛いところとかあるの?!」
「いえ、違いますわ」
「でも、泣いてるよ?」
「これは、試作機の飛行がうまくいったからですわ。色々苦労した機能が、きちんと動作したものですから」
涙を拭いて、代わる代わる質問を繰り出すさくらとケルベロスに答える。小狼は少し離れたところからそんな二人と一匹を暖かく見守っている。

小狼との会話を誰にも聞かれたくなくて、とっさに三脚カメラの録画を止めたのは内緒の話。

153CC名無したん2018/05/17(木) 00:22:33.89ID:AjrSMevP0
ご希望の感じのものじゃなくて、ごめんね

154CC名無したん2018/05/17(木) 04:06:39.25ID:DYdyo7KO0
最高ですわ

155李小狼2018/05/17(木) 04:16:15.49ID:HxZQ2F4C0
おれもあの時の大道寺と話したことは誰にも知られたくない

さくらにはすまないが…

156CC名無したん2018/05/17(木) 06:35:16.90ID:+lrWTMiW0
なんて穢れのない二人なんだ
刹那的な美しさ
永遠じゃなくていいから一緒に空を飛んでほしい

157CC名無したん2018/05/18(金) 05:59:09.86ID:NC7J+rP/0
相変わらず素晴らしい

158木之本桜2018/05/19(土) 07:10:50.52ID:jrx1VIRV0
知世ちゃんとは取り合いたくないよ〜(´・ω・`)

159CC名無したん2018/05/19(土) 20:45:12.29ID:RDsEKW5x0
>>152
乙です!

160CC名無したん2018/05/19(土) 22:28:37.41ID:bl96trF40
素敵すぎますわ

161CC名無したん2018/05/21(月) 05:50:24.36ID:H2+XiMsI0
朗読会のとき、知世ちゃんの隣に小狼がいてニヤニヤした
さらに小狼から知世ちゃんに話し掛けていたのが新鮮だった
なかなかに珍しい気がする

162CC名無したん2018/05/21(月) 06:29:02.63ID:XOfbYp9Q0
>>161
俺も2828したよw

163CC名無したん2018/05/22(火) 00:50:39.90ID:olIpuDq/0
日直だった小狼は、職員室に日誌を提出して教室に戻る途中足元がふらつくのに気がついた。
『あれ』を使うのにはずいぶん慣れたが、場合によっては翌日に少し響くことがある。
そういう時はなるべく安静にしてやり過ごすようにしているが、今日はたまたまうまくいかなかった。
まず、昨夜少し遅かったこともあり、少し睡眠が足りていなかった。加えて体育の授業があったため、うだるような暑さの中校庭を走り回る羽目になった。さらに、日直の仕事まで重なって、こんな他の生徒が帰宅してしまったような時間まで学校に残ることになってしまった。
さすがに体力の限界を感じた小狼は、早く帰ろう、と速度を速めて教室を目指した。

ロマネスク様式の校舎は少し複雑な形をしている。瀟洒な校内はみる者の目を楽しませてくれるが、入り組んだ校舎内を歩く余裕は今の小狼にはなかった。なるべく人気の少ない場所を歩こう、そう思った小狼は、最寄りの階段を上り始めた。

息が上がる。頭がクラクラして壁に手をつきながらでないと体が支えきれない。
一歩、一歩と歩を進め、もう少しだ、そう思った時、目の前が真っ暗になって小狼は崩れ落ちた。
遠のく意識の中、誰かが自分の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。

164CC名無したん2018/05/22(火) 00:50:59.28ID:olIpuDq/0
なにか、温かいものに包まれている。不思議だ。俺は階段に倒れこんだはずなのに−−−−。

気がついた小狼が身じろぐと、聞き慣れた声が語りかけて来た。
「お加減いかがですか、李君」
「だい……どう…じ?」
その高く柔らかな声は、まぎれもない大道寺知世のものだ。
「なんで、ここに…」
「忘れ物を取りに行こうと思いましたら、李君が真っ青な顔で階段を上がっていらっしゃるのが見えまして。それで」
駆けつけてくれたというのか。すまない、ありがとう−−− 
一人ではないという事実に小狼はまず安堵した。
そして次に、自分の置かれている状況を認識した。
頭に血が上りそうになる。小狼は知世の腕の中にいたのだ。

おそらく、倒れこむところを抱きとめてくれたのだろう。ずるずると滑り落ちそうになる小狼の躰を、しゃがみこんだ知世の細腕が必死で支えている。
「す、すまない……!」
まだ小柄な方とはいえ、それなりに筋肉もある小狼の体重を支えるのは知世にとって容易ではないはずだ。力を振り絞って知世から離れようとするが、体にうまく力が入らない。
必死でもがく小狼の背中を、何も言わずに知世がとん、とんと叩いた。
それはまるで、大丈夫、と言っているようだった。
とん、とん−−−。とん、とん−−−。
それは優しく、緩やかに続けられた。
母親が子供にするような優しさで−−−。

165CC名無したん2018/05/22(火) 00:51:24.14ID:olIpuDq/0
鼓動のような一定のリズムに、小狼の体の強張りが解けていく。
先ほどまで感じていためまいも幾分和らいだような気がした。
小狼の冷たく冷えた体に、体温が戻って来た。
大きく深呼吸をして、今度こそ小狼は自分の体を起こすことができた。
「もう、大丈夫だ。本当にありがとう」
小狼を見つめる知世の紫色の瞳には、心配の色が浮かんでいる。
これ以上心配をかけまい、と小狼は立ち上がろうとする。が、体が大きくふらついた。
「李君!」
知世がそれを慌てて支える。
「まだ無理ですわ。そんな状態では」
ずるり、と膝をついた小狼は、日頃の彼からは想像もできないほど緩慢な動作で壁に寄りかかった。
「心配をかけてすまない。まだ、歩けるほど体調が回復していないみたいだ。俺は少し休んでからいく。遅くなるといけないから、大道寺は先に帰った方がいい」
知世を安心させようと、無理に笑顔を作って見せたが、ズキンと痛む頭に思わず眉間にシワがよる。
「李君、横になられた方がいいのでは」
知世が何気ない動作でハンカチを膝の上に広げる。
「よろしければ」
「…………!いや、それは……!」
知世は力なく抵抗する小狼を引き寄せ、頭をそっと膝の上に乗せた。そしてさっきのように小狼の体を優しくトン、トン、と優しく叩き始めた。
優しいリズムと知世の暖かな体温に、小狼は例えようのない心地よさを感じた。リラックスした体と脳に、甘い眠気が襲ってくる。
ああ、眠い。眠くてたまらない−−−
「……すまない、10分だけ、膝を貸してくれないか」
いつになく素直な申し出に、知世は笑顔で答えた。
「……はい」

とん、とん−−−。とん、とん−−−。

なんて、あたたかいんだ−−−

今だけは、全部忘れて眠ろう。
小狼は小さな子供みたいに眠りに落ちた。
知世はそんな彼を、黙って見守っている。

166李小狼2018/05/22(火) 01:50:22.27ID:w4MO4lXp0
そして、おれは眠った。

(大道寺の膝の上は心地よく暖かな体温がリラックスさせてくれるようで ずっとこうしていたいと思う 自分がいた)

(さくら…すまない…この状況を見たさくらはおれのことを心配してくれるのだろう…)

(だけど、誰にも知られたくない このまま大道寺の温もりを感じながら眠っていたい)

167CC名無したん2018/05/22(火) 07:16:13.15ID:dzoyliaq0

2828すぎる

168CC名無したん2018/05/22(火) 07:42:31.59ID:viKq7O7q0
聖母知世キタ━!
誰も見ていない校舎の片隅で、これまた絵になる二人よ
小狼は知世には自分の弱さをさらけ出せる、そんな関係な気がする

169CC名無したん2018/05/22(火) 21:19:31.34ID:ATPyVz/u0
>>166
GJ!

170CC名無したん2018/05/23(水) 07:51:17.62ID:0hLBenmp0
素晴らしい

171CC名無したん2018/05/26(土) 00:38:19.40ID:ZNkvNww70
小狼がすっかり寝入ってしまったのを確認して、知世はとんとんと叩き続けていた手を止めた。
規則正しい寝息をたてる小狼の表情は、日頃の凛と張り詰めたものから一転して、無防備な幼子のようだ。
初夏というには暑すぎる気温が日暮れの校舎に温もりを与え、落ち切らない太陽の光が、ゆらゆらと二人を包んでいる。
知世は小狼と出会った頃によく歌っていた歌の歌詞を思い出した。

『母が愛し子を腕に抱いて
 陽だまりの中で子守唄を歌う』

知世はくすりと笑った。
(本当に、あの歌のようですわ)
数ヶ月とはいえ自分より先に生まれた少年のことを「幼子」に例えるのはいかがなものかとは思ったが、小狼の寝顔は穏やかで、安心しきっている様は近頃の大人びた様子からは格段と幼かった。

『夢路に遊ぶ幼児の頬に
 妖精がつくる幸せのえくぼ』

172CC名無したん2018/05/26(土) 00:38:37.62ID:ZNkvNww70
知世は小さくハミングしてみた。
子供にするように小狼の頭をそっと頭を撫でてみる。陽に透けた小狼の髪はほとんど金色といってもいいくらい輝いている。
美しい色と絹のように滑らかな質感に、知世はその髪に顔を埋めてみたい衝動に駆られた。…が、代わりに、一筋の髪をそっと指先に絡めた。

脳裏に小狼が時折見せる厳しい表情が浮かび上がった。
それから、彼を送っていった際に見た真っ暗なマンションも。
きっと李君は今回の事件について何か知っていることがあるのだろう。
そして、それを一人抱えたままあの誰もいないマンションで耐えているに違いない。
偉さんや苺鈴ちゃんたちと過ごした賑やかな思い出が詰まったあの部屋で。

『淋しいときには ぬくもりを探し
 遥かにたどるよ 懐かしい記憶を』

それはどれだけ辛いことだろう。でも、彼だからこそできること。
だから、だから私はーーー。

『夢から覚めても笑みを残してく
 そんなやさしさの種子が心にある』

『張り詰めた心 ほどいてあげたら
 やさしさの種子をひとつ撒いておこう』

173CC名無したん2018/05/26(土) 00:38:58.71ID:ZNkvNww70
送っていく、という小狼の申し出を丁重に断って、知世は一人自宅へと帰ってきた。
(李君も、もうおうちへ戻られたでしょうか。お一人ですから、お夕飯の準備をなさっていらっしゃるかもしれませんわね)
知世は一人キビキビと家事をこなす小狼の姿を思い浮かべた。ごく短い仮眠だったにも関わらず、帰り際の小狼の顔色はずいぶん良くなっていた。
お膝を貸して差し上げた甲斐がありましたわ、と知世はひとりごちた。
ふと思いついて、カバンの中かから大切にしまったハンカチを取り出した。
洗濯しなければ。

(でも、その前に、一度だけ)

一度だけ、ですからーーー。
知世はゆっくりとハンカチに頬を寄せた。
まだ、小狼の体温が残されているような気がする。
小狼の息づかいと美しい髪の色が蘇ってきて、知世は心が震えた。
愛しい人を膝に頂いた喜び。つかの間の安らぎを与えた誇らしさ。
たとえ短い間とはいえ、小狼が自分の庇護のもとにあったという事実が知世を歓喜させた。
言いようのない幸福感があとからあとから溢れ出してきて、知世はそれを噛み締めるようにじっと、ただじっとハンカチに頬を寄せていた。

174CC名無したん2018/05/26(土) 00:39:13.11ID:ZNkvNww70
「コンコン」
突然のノックの音に知世はハッとした。
「はい」
「知世様、夕食の準備ができております」
「……すぐ参りますわ」
お待ちしております、という声と離れていく足音に知世はホッと胸をなでおろすと同時に、自分がハンカチから頬を離してしまったことに気がついた。
一度だけと、決めたのですもの……。
正直、名残惜しかった。しかし、約束は約束だ。意を決してハンカチを机に置いて部屋出ようとした時、何かがキラリとハンカチの上で光るのが見えた。
それは、薄い茶色をした一本の短い髪の毛だった。
知世は一瞬迷ったのちそっとそれをつまみ上げた。
そして裁縫箱から美しい緑の絹布を探し出すと、その髪を優しく包みあげ、そしてーーー、ひとつ、口付けを落とした。

知世は照れ臭そうに笑うと、絹に包まれた髪を小箱にしまい、小声で歌を口ずさみながらダイニングへと駆けていった。


『やがて芽を出し 蕾はほころぶ
 美しい場所を心に持つなら

 いつかは誰もが澄んだ青空を
 思い切り高く自由に羽ばたける

 自由に羽ばたける その胸に花を咲かせて…』

175CC名無したん2018/05/26(土) 08:50:10.00ID:XWzq6ieq0
>>174
最高ですわ〜

176CC名無したん2018/05/26(土) 09:08:14.76ID:8IP9rOan0
小狼と知世ならではの安心し合える関係を描いた創作小説をずっと読みたいと思っていた
その完成形に出会えた気がする
素晴らしいです、本当にありがとう

177CC名無したん2018/05/28(月) 15:51:17.98ID:dC3BVIOU0
素晴らしい

178CC名無したん2018/06/01(金) 08:16:52.09ID:G9VJXR2S0
GJです

179CC名無したん2018/06/05(火) 08:47:26.13ID:Mf564FkR0
知世ちゃんが小狼も撮りたがってたり園美さんが小狼にも興味もってるのは萌える

180CC名無したん2018/06/14(木) 14:13:09.70ID:wNEFKr+e0
朗読会前にピアノなら大道寺のほうがと言ってたけど、知世ちゃんがピアノを弾いているor弾けるという設定って明らかにされてたっけ?

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