―松明と蛇はどっちもセヤカテの象徴?―
セヤカテとは、ヘルシアの古代神話に登場する女神の事だ。
冥界に住み、死や復活を司るといわれている。
「専門家のくせに、まさか知らなかったの?」
セヤカテを知らなかった訳ではないが、松明と蛇がセヤカテの象徴だとは知らなかった。
身体が熱くなってくるのが分かる。
―確か、ヘルシアの古代神話では、松明は月光、蛇は不死。そしてセヤカテは別名―
「凄いよね、死者の王女なんてあだ名」
―そう、死者の王女。そして無敵の女王ともいわれている―なんてことだ、こんな簡単な話だったのだ。
目眩がしてくる、過呼吸になっているのかもしれない。
―"あの人物"はクロイオス王でも、ましてやミリジャケデニム神でもなかった―松明で巨人に打ち勝ち、蛇を従える女神がここで出てくるのか。
「ちょっと聞いてる?人に質問しておいて。お腹でも痛くなったの」
電話口の妹は私の様子が変だと感じたようだ、事実、私は返答をする余裕すらなかった。
そういえば、ポコンペンはどこにいるのだろう?私は最近、彼と連絡が取れないでいた。
「遥かなる望郷〜3000年の時を越えて、パッカドキア来訪」(石工薙 武志)