私は今、ギョエエ洞窟遺跡にいる。
―ここがミリジャケデニム教の始まりだ―この重厚で見事な祭壇は、その信仰心の厚さを伺わせる。
―クロイオス王国の民は、何を思ってここで身命を賭したのか―故国を追われ、洞窟に隠れてまで捨てなかった信仰を思うと、郷愁に似た想いが沸き起こってきた。
―落雷によって大敗を喫したクロイオス王軍、決して弱かった訳じゃない。ただ、運が悪かった―通路に沿って歩いていくと、クロイオス王がいかに僣王であったかを嫌でも感じてしまう。
この遺跡も、結局はタキシード教団の都合に合わせられているのだ。
白き光の詩は、タキシード教団でさえも存在を認めている。意味のない詩だと考えているのか、それとも、あの詩さえ利用しようと考えているのか。
ゴーヤーの聖なる集会を思い起こす。七色の配置に意味があるのだろうか?何度見ても違和感を抱く事ができない。
洞窟の中はひんやりとしていて、頭が冴え渡る。あの時とは全く違う、静粛で厳かなこの空間は、人を清廉にさせる力があると感じる。
―ステッキは、もう忘れよう。大事なのは白き光だ―一度はステッキを白き光だと考えた、しかし、それも違う。
―もし白き光がステッキなら、この彫刻はおかしい―浮き彫り彫刻の前に来た。照明によって陰影がつけられ、見る者に荘厳さを与える。
―ゴーヤーと同じ松明と蛇。これらが何を意味しているのか、この人物が誰なのか―
ミリジャケデニム神の謎を解く鍵はここにあるのだ。
「遥かなる望郷〜3000年の時を越えて、パッカドキア来訪」(石工薙 武志)