両者、しばしの沈黙。
その沈黙を破ったのは仮面の騎士だった。

「……なるほど。面白いな、君は。
 今の君にとってサウスマナの魔物は脅威どころではなく危険でしかない。
 だが確かに……私に勝つまで挑めばその限りではない。可能性は十分にある」

「ほ、本当ですか!?」

「手伝うのは構わない。だが以前に時間がないと語ったのも本当のことだ。世界にも……私自身にも。
 そして私には正体を明かせない事情があった。ゆえに、このような形で干渉してしまった」

仮面の騎士は頭を下げた。

「君達に干渉した理由は……運命の導きを見たとでも言っておこう。
 私は長い時間かけて世界中を巡ったが、遂に今の魔王城を見つけられなかった」

少し間を置いて話が続く。

「大幹部とはその長い時間の過程で運良く戦えたにすぎない。
 だが、君達はどうだ。私より遥かに短時間で大幹部に遭遇している。
 一度目は偶然かと疑ったが、今回で確信した……君達には"何か"があると」

レベル不足のまま大幹部に挑んで死なれるくらいなら、イースに留まった方が良いと。
そう考えて仮面の騎士は急な手合わせを始めたのだという。

しかし――正体を隠したままでは君の仲間が納得しないだろう、とレインの後方へ視線を送る。
未だ不信な目で仮面の騎士を見るクロムとマグリットを見て、確かに、とレインも呟いた。
仮面の騎士と何をするにしても、この問題が解決しない限り話は前に進まないだろう。
このまま攻略法を伝えて去ったとて、わだかまりが残るだけだ。

「"召喚の勇者"。君が魔王を倒すため何でもするというなら。
 私も魔王城へ至るため、覚悟を決める」

仮面の騎士は自らの仮面に触れた。
そして、ベールに覆われていた顔がついに露になる。