ラントロックは慌てて彼を止めた。

 「待ってくれ、レノックさん。
  彼女は……」

レノックは小さく頷き、ラントロックに言う。

 「ああ、分かっているよ。
  彼女は人間じゃないね?
  以前に言っていた、昆虫人の子かな?」

 「あ、ああ」

全部お見通しと言う感じのレノックに、ラントロックは戸惑った。
ラントロックは禁断の地では家に篭もり勝ちだったので、レノックの事は余り知らないのだ。
小賢人と呼ばれるレノックは、旧い魔法使いの中でも、指折りの知恵者である。
暫しレノックの雰囲気に圧されていたラントロックだったが、彼は本来の目的を思い出した。

 「そうだ、レノックさん、教えて欲しい事がある。
  人間に成る方法を知らないか?」

そうラントロックに聞かれたレノックは、一瞬怪訝な顔をするも、直ぐに事情を理解する。

 「成る程、彼女を人間にしたいと言う訳か……」

その通りだと、ラントロックは何度も頷く。
レノックは一度周囲を見回して、ラントロックとスフィカに言った。

 「ここは少し目立つな。
  人目に付かない所に行こう」

一同は街から離れて、人気の少ない遊泳禁止の浜辺に移動する。