聞き慣れない単語に、ヘルザは戸惑った。

 「マルチ……?」

 「Multi-magic-ist……即ち、『多重』、『魔法主義者』。
  Multi-magic-theor-ist(マルチマジックセオリスト)……とも言う。
  本来的に共通魔法使いは多重魔法主義者だ。
  何故なら、多くの旧い魔法の理論を取り込んでいるから」

ルーウィーの説明にメルベーは呆れる。

 「行き成り難しい事を言っても伝わらないでしょう?」

 「はは、その内、解る様になるよ。
  今は解らなくても、知識として知っているだけで良い。
  それが後になって、こう言う事だったんだと解る」

言い合う2人の間に、ルヴァートが割って入った。

 「知識の先行は好ましいとは言えないけれどね。
  納得、体感、知識は一体の物。
  その段階に応じて、少しずつ歩んで行かなくては」

その後、彼は2人の弟子を下がらせる。

 「さて、今から私は、お客様と話をしなければならない。
  君達2人は少し席を外していてくれ」

メルベーとルーウィーは素直に従い、退席した。
ルヴァートはティンバー一家を台所のテーブルに案内する。
ティンバー一家は両親の間に娘を挟む形で着席し、その対面にルヴァートは座った。