「小塚早苗です..」
美人のその人ははにかみながら自己紹介する。
「結城優と申します。」
「...いきなりだけど、確か結城家って九十村では名士ですよね。確か井塚家に次ぐ第二位の」
「は、家業は兄が継いでおります。」
「家門...結城家の家門てなんですか?」
また、変な事を聞かれるな。幽霊捜査の次は家門の話か。
「はあ、百合でありますが」
「ふーん、百合。」
早苗嬢は何か考え込む。

「九十岬の話は知ってる?」
だから僕はそういった戒律やら儀式やらが嫌いなんだ。と思ったが半場投げやりで、
「一揆に纏わる伝承程度なら。」
彼女の目が輝く。
「そう、それ!!牛田五郎エ門!!、私達、あの岬に言ってみたいの、何か方法ある?」
後ろで黙っていた巡査部長も話に割り込んできた。
「あの辺りで小野寺順一の死体が遺棄されたんだ。できれば俺もこの目で見てみたい。」
もう沢山だ。伝承だの、一揆だの、首無し牛の岬だの。
「不可能です。あそこは村民が決して立ち寄らない不浄の地です。私も入った事はない。..ですが。」 とある儀式を思い出す。
「井塚村長に相談すれば、あるいは」
まあ、よそ者では許可はでないだろうけど。