>だが、ナナシがあと数歩の距離まで近づいたその瞬間。召喚陣は一際強い輝きを放ち――――
メ タ ボ の お っ さ ん が 現 れ た。

まず聞こえてきたのは、“もうお終いか””儀式は失敗だ”等の落胆を通り越した絶望の声。
周りを見渡してみると、人間離れしたほどの美形の青年が黒面の異形の怪物に壁に叩きつけられ、
一方では白髪と白髭をたくわえた年配の男性が何らかの儀式をしている真っ最中。
ここはどこ? 私は橘川鐘。またの名を妖精美少女戦士ティンカーベル。
能力者の隔離都市にて過激派と戦いを繰り広げていた最中、眩い光に包まれたかと思うと突然ここにいた。
そうなると、年配の男性が行っているのはいわゆる召喚の儀式、というものだろうか。
異世界に召喚された? 私が? 近頃流行りのラノベじゃあるまいし、いや、まさか、そんなことが……
青年を再起不能と見なしたのであろう怪物は、今度は年配の男性へ向かっていき、その距離はあと数歩まで迫っている。
そのことに気付き、私は我に返った。
考えるのは後、目の前で傷つけられようとしている者を放ってはおけない。
何故なら私は美少女妖精戦士『ティンカー・ベル』なのだから! 私は叫んだ。

「変・身!」