幸いにも、その糞尿ブレスの煙が糞竜の視界を覆った。
ガッシュを抱えたまま、ハッケヨイは未踏の通路へ一目散に走り出していた。
追跡の地響きが伝わってくるが、それ程の速さではない。どうやら肛門に裂傷を負ったようだ。
懸念した行き止まりはなく、横道や分岐がすぐに現れた。胸を撫で下ろしながらも、ハッケヨイは全力で駆け続けた。
どれ程を走ったのだろうか。
小さな玄室に身を潜めた時には、糞竜の足音はすでに消えていた。
ハッケヨイはようやく緊張を解き、そしてまだ抱きかかえたままだったガッシュを下ろそうとした。
しかしガッシュは固くしがみ付いて、離れようとしない。
「ガッシュどん、もう奴はいないでごわすよ」
ハッケヨイは出来る限り優しく囁いた。ガッシュが顔を上げ、ハッケヨイの顔を見る。
「わははは、相変わらず不細工だな」
そう言うとガッシュは、ハッケヨイの腕の中で脱糞した。

ハッケヨイはガッシュを壁に叩きつけた。

「もう無理でごわす!ずっと前から…言えなかったでごわす。ガッシュどんは仲間…でも、もう駄目で…ごわすよ…」
ハッケヨイは精神に変調を来たしていた。
そしてハッケヨイは、壁に叩きつけたガッシュを抱え上げ、静かに力を入れると骨を粉砕した。
蒼く照らされた玄室に、ガッシュの断末魔が響いた。