YA「響く浄化と解呪の歌にハーラルの槍が一瞬止まる。
しかし――

ハーラルの手にした槍が弧を描く。その穂先が天に向いた。
それは力をかければ折れそうな細い槍だが、見かけどおりの武器ではなさそうだ。

「ヴェルザンディ国家司書を崇めよ。図書国家バニブルに忠誠を誓え」

青い閃光が迸る。あたり一面に降り注ぐ稲妻。
ヴァルンは床に転がった。なんとか直撃は免れたが、
左手を掠めた雷撃によって左半身に痺れが走る。

と、視線を移すとアサキムと国家司書が対峙していた。
床に浮かび上がる無数の魔法陣。ヴェルザンディが先に仕掛けたのだろう。
だが、すぐにアサキムに魔法陣を破壊されてしまう。そして次の瞬間――

>「それが、おまえの地獄だ。」
巨大な山が召喚され、国家司書を押しつぶす。
潰された血液が床を染め上げる。

「きゃあ!!」驚くヴァルン。フォルテも殺すなと言っていたのに。
でも、おかしい。術者が死んでいるというのに幾つかの魔法陣が床を滑るように動いている。
――死生魔法陣。果たしてその特性とは?

「無粋なものよ。歓迎の挨拶もすまぬうちに…」
魔法陣から徐々に浮かび上がってくるヴェルザンディ。どうやら潰された者は偽者。
本物そっくりのクグツだったようだ。」