北京体育大学の4回生チョウ・ジンレンは、5回目のチャイムでようやく玄関を開けた。
黒いマスクで顔を隠したバットマンみたいな奴が立っていた。
「は? 誰?」
マスクの男は答えた。
「仕事人、リウ・パイロン」
「あっ。聞いたことあんぞ。お前、ネットで仕事引き受けて、暴力振るってる奴だな?」
チョウが開けたドアの隙間から、小男がするりと中へ入り込んだ。緑色のスーツで頭から足の先まで固めたコスプレ男だった。
「あっ! こら!」
目を逸らしたチョウにドアの隙間から拳が飛んで来た。
チョウがあっさりと床に倒れる。
黒マスクは手を伸ばしてチェーンロックを外すと、中に入って来た。
「テメェ!」チョウが顔を押さえながら立ち上がろうとする。「犯罪だぞ! わかってんのか!?」
その横から緑スーツが靴で顔を踏みつけた。しかし攻撃が軽すぎてダメージがない。
「おい、チビ」チョウが小男を睨みつける。「知ってんのか? 俺がフットボールのエースだってこと」
「ヒィッ!?」
「お前なんかボールだ、ボール!」
そう言いながら小男を蹴り飛ばそうとしたところを黒マスクが肩を掴み、こちらを向かせると顔に突きを入れた。
一撃で失神し、再び床に倒れたチョウめがけ、小男が靴箱の上にあった鉄製の花瓶を取り、振り下ろす。
「やめろ」ヘイロンは花瓶をキャッチし、取り上げた。
「キィーッ……キィーッ……! 殺らせろリウ・パイロン!」アランは激しく興奮している。
「800円で殺してどうすんだ。割に合わねぇだろ」
「クソーッ……クソーッ……! 俺のことボールとか言いやがってェーッ! 殺してェーッ!」
「じゃあもっといい仕事取って来いよ」
そう言うとヘイロンはアランの手を引っ張り、外へ出た。