十三とリルは仲がよかった。
正確には十三がリルのことを大好きで、リルはそれを拒まなかった。
崖上から広い海を眺めながら十三が言った。
「リルのこと、お嫁さんにしたいなぁ」
リルは複雑な光をたたえた緑色の瞳で十三を見ると、銀と金の美しい髪を揺らしてまた海のほうを向いた。
十三にはわかっていた。リルに「オヨメサン」なんて概念はわからないし、興味もない。
食えるか、食えないか。好きか、嫌いか。その相手の子を望むか、望まないか。リルにあるのはそれだけだ。
それでも十三はリルの子供離れした端正な横顔に感動を覚え、その髪を撫でても怒らないことに満足を覚えていた。