一花の場合

「ほら、起きろって」
風太郎は布団を揺する。
布団の主は中で身悶えしながらも、外に出てくる気配はない。
「おい」
さらに揺するのを強くする。
「ん〜」
小さな声が中から聞こえるがそれでも出てくる気配はない。
「一花!」
朝の大事な時間が潰される事に耐えかねた風太郎は掛け布団を掴むと一気に剥ぎ取る。
ゴロゴロと音を立てて布団の主が肌色を晒して溢れてくる。
「はぁ...」
昔から変わらず全裸になる癖は抜けていない、それどころか一人暮らしになってからは悪化している気配もあった。
「まだ早いよぉ...」
目を擦りながら一花はゆっくりと起き上がる。
その途中、自分が全裸な事に気付き一花は恥ずかしそに胸元を隠す。
「あはは...」
照れながらも目の前の風太郎に気付くと一花はイタズラな笑みを浮かべる。
「朝からしたかったの?」
「起きろ」
風太郎は一花の頭を軽く叩くと、手近に有ったバスタオルを投げつける。
「早く着替えてこいよ、出掛けるんだろ?」
こんな光景慣れ切ってる、そんな風太郎の仕草に一花は不貞腐れた表情を浮かべる。
しかし直後にある事に気付くと一花は表情をニヤケさせた。
「したかった、って所は否定しないんだね」