ノースキャロライナの青い空の下、子供達が揃える真剣な声が響いていた。

「お茶、入ったよ〜! おやつにしよう」
ララが烏龍茶とクッキーを大量に持って入って来た。
子供達が歓声を上げて群がる。

「ありがとう。今日も愛してるよ」
振り向いた髭ゴジラみたいな顔のハオは、中国語でそう言うとお茶を受け取りながらキスをした。
「ウォ・イェ・アイニー(私も愛してる)」
ララは首を伸ばし、20歳代の頃と変わらない美味しいキスを返す。

二人並んでお茶を飲みながら、仲良くクッキーを取り合い喧嘩する生徒の子供達を眺める。
「おーいサンディー、年下の子をいじめちゃダメだろ」ハオがカタコトの英語で優しく言う。
「ボビー、こら! 1人で何個取ってんの!」ララが流暢な英語で優しく叱る。
窓から暖かい陽射しが入って来る。もうすぐ4月がやって来る。
「あっ、メイ! マイクにキックだめでしょ!」
23歳のマイクに8歳のメイがムカついて蹴りを入れたのだった。
「俺らの娘だけあってメイは強いなぁ」ハオが言う。
「のびのびと育てた甲斐あって強い子になったけど、ちょっとのびのびさせ過ぎたかなぁ」ララが不安がる。
母に似て美人のメイだが肌の色だけは色白の母に似ず、真っ黒な子だった。
3歳の時から『気』の力が使え、そのため上は43歳までいるこの道場の生徒の中で、8歳にして一番強かった。
叱られたメイはばつの悪そうな顔をして駆けて来ると、ララの膝に手をついて言った。
「パパ、ママ、メイのこと嫌いにならないで!」
「なるわけないだろ」ハオが笑う。
「世界一愛してるわよ、メイ」ララがハグしてほっぺにキスをした。