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リレー小説「中国大恐慌」

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0001創る名無しに見る名無し
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2018/11/21(水) 05:01:20.00ID:Ll07jrjG
2018年11月21日、中国東部を超巨大規模の停電が襲った。
北京周辺から上海周辺にかけて、地上から電気が消え、人々はパニックに陥った。
これはそんな架空の中国が舞台の物語である。

主人公の名前は李青豪(リー・チンハオ)。
29歳の青年である。通称は「ハオさん」。 
愛称は「ハオ」。
0698創る名無しに見る名無し
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2019/01/04(金) 22:52:18.13ID:BBF3zQw1
何とかララはスマホを持つことに成功した。
習近平に電話をする。知らない番号なので出ない。
メールをすると、1日経ってようやく返信があった。
『ララちゃん、汚ならしいボディーに引っ越したそうだね。バイバイ』
0699創る名無しに見る名無し
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2019/01/04(金) 22:59:09.69ID:BBF3zQw1
「くっ……! エロ義父め。お前にとって愛娘ララとはフェロモンのことか!?」
頭に来たララはメールに返信をした。
『ララはお引っ越しのスキルを覚えました。ピンちゃんが望むなら、ファン・ビンビンにだって、林志玲にだって乗り移れるよ』
すると即時返信が来た。
『石原さとみがいい』
なるほど習近平ちゃんの頭の中では流暢な中国語を喋る石原さとみの唇に何かをされているに違いない。
ララは承諾し、新しいアパートの部屋をゲットした。
0700創る名無しに見る名無し
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2019/01/04(金) 23:04:56.08ID:BBF3zQw1
ワンルームの部屋に簡単な荷物だけを持って入った。
TVもない静かな部屋にいると、ハオは変な気持ちになって来た。
体は一つだが、確かにララと一つ部屋に二人きり。
自分の中でララが動く音すら聞こえるような気がした。
「何て言うか」ハオはララに言った。「ラブホに来たみたいだね」
0701創る名無しに見る名無し
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2019/01/04(金) 23:11:00.42ID:BBF3zQw1
ズーランはチャイムの音で起こされた。
すっぴんの顔を手で覆って出ると、黒いスーツをラフに着た17歳ぐらいの女の子が立っていた。
「ここにアホ面でそこそこガタイのいいハオがいるだろう?」
「出てったわよ。引っ越し先は知らないわ」
0702創る名無しに見る名無し
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2019/01/04(金) 23:14:52.59ID:BBF3zQw1
「クソッ。足取りを見失ってしまった」
黒いスーツ姿の女の子は聞き込みをしながら町を歩いているうちにお腹が空いてきた。
「辛いものが食べたいな」
そう思いながら歩いていると、目の前に四川料理の店を見つけた。
赤い看板に白い文字で『シャオ四川料理店』と書いてある。
「汚い店だが、ここにするか……」
0703創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 00:05:19.76ID:XC/5Tbij
「いらっしゃ……」
新聞を読んでいたシャオは顔を上げ、客の顔を見た。
「なんだガキ。ここはてめぇが来るような店じゃねェ。帰んな」
肌の黒い女の子の客は「ほう?」と言った。「そういう店か?」
「あ。いや、いかがわしい店じゃねェよ。金持ってんのか? 持ってんなら食わしてやる」
客は財布を取り出すと、1000元札を20枚、広げて見せた。
「ははは」シャオは嬉しそうな顔を隠しながら言った。「そんなにいらねェよ。いらねェんだけどな。さ、何にする?」
「黒麻婆豆腐とご飯で」
「あいよっ」
客はカウンターに座り、シャオが調理する様子をじーっと見ながら聞いた。
「人を探しているんだが、ランニングシャツにトランクス姿のアホ面の男を見なかったか?」
「知らんな。この寒いのにそんな格好で歩いてりゃ覚えてねェ訳がねェ」
「そうか」
「さァ黒麻婆豆腐に白飯だ。食え」
「真っ黒だな」
「黒麻婆豆腐だからな」
客はレンゲを持つと、麻婆豆腐を口に入れた途端、店主の顔めがけて噴いた。
「あっ、あちちち! 何しやがる!!」
しかし客は無視して白飯を口に運んでいた。その白飯も店主に向かって投げつける。
「このクソガキがァ!! おいっ! ジンチン! しっかり出口塞いどけ!」
「お前の料理で精神的な傷を受けた。慰謝料払え」
「んだこのクソガキアァ!!」
しかしシャオは体が金縛りにあったように動かなかった。元格闘家としての本能が告げていた、これ以上動いたら自分の命がない。
「さっきからお前の料理を見ていたんだが、なぜニンニクを真っ黒に焦がすんだ? ア?」
「くっ……黒麻婆だからに決まってんじやねェか!」
「香ばしく焦がすのと真っ黒焦げにするのとでは意味が全然違うだろうが……。あと、豆板醤をスープを張ってから入れるのにはどういう意味が?」
「何か悪ィのかよ!?」
「いいか。まず火を点ける前に油にニンニクを入れ、香りを油につける。豆板醤はスープを張る前に炒めて辛味を出すんだ。そしてそれが臭みに変わる直前にスープを張る」
客は厨房に飛び入りすると、釜のご飯をすべてゴミ箱に捨てた。
「なっ、何しやがる!?」
「飯もひでーもんだ。米を研ぐ時、一回目の研ぎをどうせゆっくりじっくり水を捨てているのだろう? 米にヌカが染み込んでしまっている」
「あ、あぁ確かにゆっくりじっくりしてるが。いけないのか?」
「一回目は特に素早く水を捨てるんだ。ヌカが染み込まないようにな。出来ればザルで洗うのがいい」
「ほう」
「ただし洗いすぎるな。やや白濁が残るぐらいが米の甘さを引き出す」
「へぇ」
「お前の炊いた飯はまるでウジ虫だ」
「すんまへん」
「蒸らしをしっかりやれ。ご飯粒を立てるんだ」
「はい」
「よし。では飯を炊いているうちに旨い黒麻婆豆腐を作るぞ」
「お願いします」

一時間後、客の作った黒麻婆豆腐と白ご飯をシャオとジンチンは並んで頂いた。
「これは旨い!」
「旨いだろう」
「老師と呼ばせてください!」
「よしよし」
「これは勉強代です。どうか受け取ってください!」
そう言いながらシャオは2000元を差し出したが、客は受け取らなかった。
「今度来た時、旨いの食わせてくれよ。それが一番嬉しい。じゃあな」
シャオとジンチンは涙を流しながら客の帰りを見送った。
0704創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 00:33:56.21ID:XC/5Tbij
その夜のハオの対戦相手は鬼鬼(グェイグェイ)という通り名の不気味な男だった。
長い黒髪で顔を隠し、白い汚ならしい着物を纏い、独自の形意拳『幽霊拳』を使う。
正直ハオが負ける相手ではなかった。

賭けファイト開始の一時間前、シャオはハオを呼び、言ったのだった。
「今日はお前、負けろな」
「了解です、兄貴!」ハオは快く従った。
今日のシャオはやたら機嫌がよく、ニコニコしていた。
「今日の黒麻婆豆腐は自信作なんだ。遠慮せず食べてみてくれ、リー」
「遠慮しまっす!」

ゴングが鳴った。
鬼鬼がまず大袈裟なアクションを決める。TVから這い出すような動作でハオに向かって間合いを詰めた。
ハオはわざとらしくビビり、金縛りに遭う。
そこを鬼鬼がハオの足から胸まで一気に這い上がり、恐ろしい顔を黒髪の間から覗かせ、ヒッヒッヒと笑うとハオは失神した。
レフェリーが鬼鬼の手を掴み、高く掲げる。
「うーん。うまく芝居できたなぁ」
達成感に浸りながら敗者ハオは観客席をにんとなく見渡した。
「んっ?」
なんだか覚えのある黒い『気』が客席の一点から立ち昇っている。
よく見ると、その袂に黒いスーツをラフに着たワイルドな髪型の女の子がいて、ハオをまっすぐ睨んで牙を見せて笑っていた。
0705創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 00:40:07.22ID:XC/5Tbij
「メ、メイファンさぁん!」
会場の壁際で、ハオは泣きながら土下座をした。
「私はお前にあんなふざけたファイトをさせるために特訓をしたんだっけな?」メイファンはハオの頭を踏みつけながら言った。
「すいません! すいません!」
0706創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 00:49:55.00ID:XC/5Tbij
そこへ間が悪くジェイが金を持ってやって来た。
「ハオはん、がっぽりや! ハオはん人気で鬼鬼に賭けた金が24倍や! これで今夜はパァーッと飲みまひょ……あら? こちらの美少女はどなた?」
0707創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 09:25:31.09ID:aj4AXtG0
メイファンは受付窓口へやって行った。窓口の内側にシャオがいた。
「おい」
「老師! よくぞいらっしゃいま……」
「あのマスクマンと闘りたい」
「すんまへん。1日2回以上の格闘はルール違……」
「この国でルールだマナーだ言う珍しいヤツか、お前は」
「ああっ! 確かに!」
「ところで変装したい。何か変装グッズはあるか」
「うーむ……」シャオは回りを見渡した。「これを」
0708創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 09:36:44.33ID:aj4AXtG0
メインイベントの後にもう一試合が加えられた。爆発頭がマイクで叫ぶ。
「連戦連勝を続けていたニュー・ヒーロー、今日の負けが気に入らないと再びの登場だぁ〜! マスクマン、ブルー・リー〜〜!」
ハオが嫌そうに金網の中に再登場する。
「対戦者はなんと女の子だぞ! だが美少女かどうかはさっぱりわからねぇ! でもすけべだ! 包帯ぐるぐる戦士、ミーラちゃん〜〜!!」
全裸に白い包帯を頭から足先まで巻き付けただけのメイファンが現れ、大喜びする観客達をくだらなさそうに眺めた。
「ララ、さっきから黙っているが」メイファンがハオを睨む。「何か喋れよ」
「……」
「フン、まぁ、いい」メイファンの身体を黒い『気』が大きく包むのをハオは見た。「お仕置きタイムだ」
0709創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 10:20:03.74ID:aj4AXtG0
『ハオさん』ハオの中でララが話しかけた。
『二人で死のう』ハオは心中を提案した。
『何言ってるんですか。これはチャンスですよ』
『チャンス?』
『メイは私達を舐めきっています。私達が合体でどれだけ強くなっているか、知りもしないで』
『あっ、なるほど』
『おまけに衆人環視の中でメイは本気を出すことが出来ない。あまりに強すぎると疑われます、(あれが裏のNo.1殺し屋、黒色悪夢なんじゃないか? って)』
『うーん』
『何よりメイファンなんて実はそんなに強くないです。ハオさん、本気でメイと闘ったことある?』
『ないけど……』
『だから知らないでしょ? あの子、ただ棒を速く突けるだけの棒術オタクよ。棒を持たないメイファンなんてハオさんの敵じゃないわ。姉の私が言うんだから間違いない』
『そうか……自信が湧いて来たぞ!』

ゴングが鳴った。
『行くよ、お兄ちゃん!』ララが操縦桿を握った。
『操縦任せた、ララ!』
ハオはそう言うとメイファンに向かって踵落としを出しながら下段蹴りを繰り出しながら正拳突きを食らわせようとする。
「メチャクチャだな」
そう呟くとメイファンは踵落としを手で受け止め、下段蹴りを蹴り返して退け、正拳突きをキャッチした。
「飛んでけ」
そう言うとハオを天井へ向かって投げ飛ばす。10m近く頭上の天井にハオは背中から叩きつけられ、ぐえっと言った。
落ちて来たハオを抱き止めるとメイファンは、今度は左側の金網に投げつける。金網がベキベキと音を立てて変形した。
『気』をロープのようにハオに結びつけていたメイファンはそれを手繰って引き寄せると、ミイラ・ラリアットを決めた。
「ね、姉ちゃん相手に容赦ねぇ……」それがハオの最期の言葉だった。
「まったく合体の意味がないな」メイファンは呆れてため息を吐いた。「もう少しまともかと思ったが……」
ララは何も言わず、勝ち誇りもせずに自分を見下す妹の姿を見ていた。
「大体、私の黒い『気』はあらゆるものを武器に出来、ララの白い『気』はあらゆる傷を治すというのに……」
『あっ』ララは心の中で声を上げた。
「お前の青い『気』には一体何が出来るんだ?」
『そうか』ララはこの時、確かに何かを掴んだのだった。
0710創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 11:01:52.36ID:aj4AXtG0
「老師! 料理だけでなく格闘までとは恐れ入ります!」
シャオがずずいとメイファンの前に出て来てファイト・マネーを差し出した。
「いらん。このボケ連れて帰るぞ」
「ええっ!? それは……」
「文句あるのか?」
「いえっ! いえいえどうぞどうぞ! そんなもの差し上げます! ただ……」
「何だ?」
「服を着てお帰りになったほうが……」
「あぁ、そっか。面倒くさ」
仕方なくメイファンは黒いスーツを包帯の上に着た。

メイファンは『気』のロープでハオを犬のように繋いで外へ出た。冬の冷たい空気が包んだ。
「こっから『施設』まで約15kmか。徒歩で3時間ぐらいかな」
メイファンはスマホを取り出し、車を呼んだ。
何も言わずに夜道を歩いて行く。
「しかし、(それ)だけは凄いな」メイファンが振り返る。「まったくの無傷だ。試合中から」
メイファンはララが中にいた頃、戦闘中に受けた傷を治すことは出来た。ただしそのためには『白い手』を出す必要があり、
『白い手』を出している間は手を戦闘に使うことが出来ない。ゆえにメイファンが自分を治療出来るのは実質戦闘終了後のみということになった。
しかしララと合体したハオは戦闘中に中からの『気』で自分を治すことが可能であり、これだけはメイファンを凌ぐ強力な能力であると言えた。
「ただ、それだけじゃなぁ」メイファンがため息を吐く。「やられっぱなしだ」
ハオは何も答えず、泣いている。
「まぁ、いくら虐めても傷つかないんだから、虐め甲斐は以前の数10倍になったかなぁ」
「おい、糞メイファン」いきなりハオの口がそんな言葉を発し、ハオは驚いた。
「あ?」メイファンが振り向く。「糞はお前……」
振り向いてメイファンは固まった。
駐車場の水銀灯の下、ロボットのように巨大化したハオが、真っ青な『気』を大きく発して立ちはだかっていた。
「は? でかっ……」
「ぬおぉ」とハオは叫ぶとメイファンの黒い『気』のロープをいとも容易く手刀で切断した。
「おいおい……」
目を白黒させるメイファンにハオは襲いかかった。音速で間合いを詰めると膝蹴りをぶち込む。
『気』の鎧で防ぎながらもメイファンは15m吹っ飛んだ。
「逃げるわよっ! ハオさん!」
ララがそう言うとハオはガシャガシャとメカメカしい音を立て走り去った。
「なんだ……あれは……」
メイファンはそれを見送るしか出来なかった。
0711創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 11:30:45.06ID:aj4AXtG0
アパートに逃げ帰った二人はドアを閉め、5分ほどハァハァ息を切らすと、話しはじめた。
「お兄ちゃん、あたし、掴んだよ!」
「……みたいだな」
「今までは私がお兄ちゃんを操縦しようとしてた。私の『気』の力と怨念でお兄ちゃんの身体を動かそうとしてた。でも、それじゃダメだったんだ!」
「実際ダメだったよね」
「私はお兄ちゃんの青い『気』を増幅させ、傷ついた時には治療する、それだけでよかったんだ。格闘素人の私が操縦なんかしようとしちゃダメだったんだ」
「つまり僕は自由ってことだね」
ハオはいつの間にかノートパソコンを開き、リアルラブドールの製品情報を閲覧しはじめていた。
「なぁ、ララ。お金結構貯まったからコレ、買おうよ。格闘の時以外はララはこのエロボディーに入って……」
「ううん。お兄ちゃんは自由じゃないよ」ララは厳しい口調で言った。「私はお兄ちゃんを操縦しないけど、支配する必要がある」
「へぇ〜。わっ、このドール可愛い!」
「お兄ちゃんは格闘スキルだけを残して消え失せるの。言わば私の命令に忠実に従う意志のないロボットのようになるのよ」
「でも巨大化はやりすぎじゃね?」
「うん。それは私も思ってた。あの設定はリセットしましょう」
0712創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 11:32:36.08ID:aj4AXtG0
「言わばこれはリー・チンハオ改造計画よ」ララは言った。「覚悟してね、お兄ちゃん」
0713創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 12:54:15.93ID:aj4AXtG0
リウ・パイロンは相変わらずシューフェンの遺影の前で座っていた。その横ではメイファンがずっと膝を抱いて踞っていた。
「リー・チンハオを連れ戻せなかったのか」
リウがそう聞いても膝に顔を埋めて黙っている。
「やはりララと合体し、強大になっていたのか?」
メイファンはようやく少し顔を上げると、目に涙が潤んでいた。
「バランスがうまく取れねーんだ、ララが中にいてくれないと」
リウは黙って聞いた。
「虐めて遊ぶ豚野郎がいねーとつまんねぇし……」
「寂しいのか?」リウが聞く。
「アイツらがどんどん変わって行きそうで嫌なだけだよ」
そう言うとメイファンはまた膝に顔を埋めた。
昨夜から13時間、もうずっとこうしている。
今のメイファンではスパーリングの相手にすらならんな、そう思いながらリウ・パイロンはようやく腰を上げた。
0714創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 13:59:54.64ID:aj4AXtG0
ララが眠るとハオは起き出し、ノートパソコンを開いた。
リアルラブドールのページを開くと、メンメンちゃんという名前のドールを注文した。
身長155cmでおっぱいはEカップ。顔も含めて実物のララの印象に近いドールだ。
約4万元(約60万円)の金額を確認し、支払いを完了する。
「凄いよなぁ。たった5日でこんなの買えちゃった」
注文を確定するとウキウキとした気分で布団に戻る。
ハオはララの言うことを信じていなかった。心優しいララのことだから、どうせ口だけだとたかをくくっていた。
「明日もきっと楽しい1日が僕を待っているさ〜」
0715創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 14:38:34.10ID:RJm5TPvq
その夜、ハオの枕元にシューフェンが立った。
「ハオ」
「シューフェンの幽霊だ。シューフェンなら幽霊でも怖くないよ」
「私のことは、忘れちゃったの?」
「違うよ、シューフェン」ハオはイケメン顔で言った。「シューフェンは残された俺の人生を灰色にしてしまうのが望みなのかい?」
「いいえ」
「そうだろ? 俺はシューフェンが悲しまないように、シューフェンを笑わせようと、強く楽しく生きているだけさ」
「さすがハオね」
「そうだろう? 俺ほどプラス思考な人間は世の中探してもなかなかいないぜ?」
シューフェンの霊は何か言いたそうにしていたが、やがて呆れたようにすうっと消えてしまった。
0716創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 15:26:51.22ID:dbI/AjMt
シューフェン……やはり僕のことをわかってくれるのは君だけだ。
ハオは永遠の愛を誓った。
0717創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 18:20:05.67ID:SNnq5j4j
するとどこからともなく
「私が本当に愛を誓ったのはロンなの。お前のような無職で弱虫のエロ親父なんかじゃない。」
とシューフェンの幻聴聞こえてきた
0718創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 18:58:14.47ID:1wBuL6I7
「なんだとぅ!?」そう叫びながら起きると、朝だ。ハオは違和感を覚えた。
「あれぇ?」
なせだろう、自分の体が自分じゃないようだ。
試しにパンツの中を見ると、自慢の如意棒が朝立ちしていないどころか子供のおちんちんのように小さくなっている。
「ハァァァ!?」
ベッドから身を起こそうとすると上手く体を動かせず、ベッドから転落してしまった。
「おい、ララ!? なんかおかしい。俺が自由に動けているでもなし、お前が操縦しているでもなし……」
「うるせぇ! 糞兄! 黙れ!」とララの声がやたら遠くから聞こえて来た。
「く、糞兄?」
「そうだてめぇは糞兄だ! 人間じゃねぇ! ウンコだ!」
「う、ウンコが好きな妹だな」
「言っただろ? お前は消えてなくなるんだ。これからは私がリー・チンハオだ!」
「いやいやリー・チンハオは俺のことですから!」
「いいから黙ってろ! 黙って支配されろ糞兄!」
「糞兄って呼ぶのやめて!」
「『兄』つけてもらえるだけ有り難く思え!」
「『兄』がなかったらただの糞!?」
「リー・チンハオは崇高な精神を持った誇り高き戦士に生まれ変わるのだ! 糞は死ね!」
「ララ……」
「死ね!」
「お前……なんか……無理してない?」
「死ねぇぇぇぇぇぇ!!」
0719創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 19:45:47.74ID:RfbE9vHz
ハオの言う通り、ララは無理をしていた。
ハオを罵倒する言葉はすべて自分に跳ね返って来た。
自分とハオさんはやっぱり似てる……ララはそう思うのだった。
それでいてハオに対する感情は同族嫌悪などではなく、むしろ嫌悪と尊敬の激しく入り交じった複雑な感情であった。
エロに対する子供じみた好奇心も、気弱なところも、他人の言いなりになりやすく、何も出来ない意気地無しなところも、すべて似ているとしか思えなかった。
ただ、何をされてもひたすら耐え、その後に相手を笑って許してしまえるハオの優しさは、ララにはないものだった。
その優しさをララは愛していた。
いや、それを優しさと呼んでいいのかすらララにはわからなかった。
すべてを包み込んで許すその大らかさ、そして身をもって見せたシューフェンへの一途な愛、その二つだけでララがハオを愛する理由は十分に足りた。
『ハオさんの優しさは、ただの優しさじゃない。これを何て呼んだらいいのだろう……』
0720創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 20:00:02.69ID:ws5qEhsQ
ララは「優柔不断」という言葉を知らなかったのだ。
0721創る名無しに見る名無し
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2019/01/05(土) 23:50:43.14ID:bVz1RAiD
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          ヽi    |  \ ヽ   )
           ヽ_ノ    `ー―'
0722創る名無しに見る名無し
垢版 |
2019/01/06(日) 08:16:02.93ID:lwgh5cJT
朝7時、ララは自分の足でいつもの公園へ行った。
到着した時にはもう太極拳の套路は始まってしまっていた。
鳩の羽音と人々の衣擦れの音が温かい音を立てる。
ララはそそくさと集団に混じり、適当に前の人の真似をして動きはじめた。
チラリとご飯のところを見ると湯気を立てている。
『エヘヘ、今日は何かな』
しかしすぐにリーダーの女性がやって来て、ララに言った。
「アナタ最近いつも来てる人よね? どうしたの? 陳派の基本型から××の簡単な流れよ? 忘れちゃったの?」
「えっ」
ララは自分の中のハオを見た。ちょうど心臓の少し下のあたりで茨に絡め、食虫植物にかかったように養分をチューチュー吸われている。
「しょうがないわね」リーダーの女性は言った。「散会後、あなただけ残って講習よ。今日は施しはないと思っておいてね」
彼女が背を向けるなりララは逃げ帰った。
0723創る名無しに見る名無し
垢版 |
2019/01/06(日) 08:23:11.86ID:lwgh5cJT
仕方なくセブンイレブン似のコンビニで弁当を買うことにした。
弁当とお茶を買い、外へ出る。
公園のベンチに座って食べはじめる。
冷たいご飯がパサパサでちっとも美味しくない。
温めますか? って、そう言えばあの店員さん、聞いてくれなかった。
って言うか言わなくても温めてくれるのが当たり前じゃないの?
お茶もわざわざ冷蔵庫で冷たくなんてしなくていいのに、どうせ温めるんだから。
ララは少し泣きたくなった。
メイファンのせいだ、ララは思った。
メイファンが私に何もやらせず、過保護にしたせいで、私は何も出来ない大人になってしまった。
冬の寒風の吹く中、ララは弁当も冷たいお茶も半分以上残して公園のゴミ箱に捨てた。
0724創る名無しに見る名無し
垢版 |
2019/01/06(日) 09:09:46.31ID:2Kyr8SJi
それでもララはこうして直接寒さや飯のマズさを感じることにも喜びを感じていた。
0725創る名無しに見る名無し
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2019/01/06(日) 12:02:26.93ID:jiBSei26
ララはシャオの四川料理店へ出掛けた。
店の横の路地に入るとジンチンが巨体をゆすりながら、うまい棒を連続食いしていた。
その目にはうまい棒以外のものは何も入っておらず、ララがすぐ近くまで寄っても気づいていないようだった。
あれからシャオはジンチンとの勝負をやらせてくれなかった。
同じカードはなるべく続けないようにしているようだったが、それ以上にララとジンチンが仲良くなってしまったせいもあった。
「ジンちゃん」ララは話しかけた。
「あら、ララちゃん」ジンチンはようやくララに気がついた。
「うまい棒一本くれる?」
「いいわよ。1000本あるから一本ぐらい」
ジンチンは外では唯一ララの存在を知る人間であった。彼女も未熟ながら『気』を使える人間であり、それゆえハオの中に白い女の子がいることに最初から気がついていたのだ。

ララは手に持ったうまい棒に『気』を込めてみる。自分の青い『気』に一体何が出来るのか、まだ判明していなかった。
『気』を込めたうまい棒はふにゃりと柔らかくなると、ララの手をすり抜けて液体のようにこぼれ落ちてしまった。
「これは普通に……ララの白い『気』で出来ることだわ……」

隣を見るとジンチンは、うまい棒が一本もったいないことになったことにも気づかず、鼻息を荒くしてコンポタ味をバリボリいわせている。
本能だけで生きているジンチンのことが羨ましく思えた。
何の悩みもないんだろうな。
自分と同い年の女の子のくせに。
しかしジンチンのことを女だと知るのもまたララ一人だけであった。
秘密を守り合う二人の間には固い友情が確かに結ばれていた。

「ねぇ、ジンちゃん」
「なァに?」
「私と本気で闘ってみてくれないかな」
「やァよ。だるいし。ララちゃん傷つけたくないもの」
「よっちゃんイカ1年分あげるから」
「いいわよ」ジンチンは身を乗り出し、やる気を見せた。「どこでする?」
「あそこのお寺の裏に人通りのない広場があるの」
0726創る名無しに見る名無し
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2019/01/06(日) 12:53:45.79ID:3mpb7NLp
主な登場人物まとめ

・ハオ(リー・チンハオ)……主人公。習近平とメイファンにより謎の施設に軟禁され、謎の過酷な特訓を受けていたが、
ララに体を乗っ取られ、施設を脱走。現在は自分の体内でララに監禁され、その格闘スキルを吸い取られ中。太極拳の使い手。

・シン・シューフェン……ヒロイン。膵臓ガンにより逝去。ハオの恋人だったが、リウに取られた。
元々ハオにはもったいないほどの美人であり、リウの紹介で女優デビューする。

・リウ・パイロン……中国の格闘技『散打』のチャンピオンであり国民的英雄。シューフェンの夫であり、彼女の死に深く沈み、現在廃人中。
メイファンの元弟子だが、ボロボロに負かした上当時8歳のメイファンをレイプした上、彼女の元を去る。

・ラン・メイファン……17歳の美少女。国家主席習近平のボディーガードであり凄腕の殺し屋。
『気』を操り様々なことに使える武術家、というより超能力者。『黒色悪夢』の通り名で恐れられている。

・ラン・ラーラァ(ララ)……21歳の天然フェロモン娘。メイファンの姉。ただし身体を持たず、妹の中に住んでいた。
『気』だけの存在であり、メイファンの身体を抜け出しハオの中へ引っ越した。性格は妹と正反対で女らしく、お喋り好きだったが、発狂しはじめている。

・シャオ・ホンフー……42歳だが50歳代にしか見えないほど老けている、元散打王。新人の頃のリウに試合中、片目を潰され、散打界を去る。
現在は四川料理の店をやりながら殺し屋、地下ファイトの主催者等をしている。料理がヘタ。

・ヤォバイ・ジンチン……スキンヘッドのデブ。体を2倍に膨らませてあらゆる攻撃を吸収してしまう。
食べることにおいては意欲的だが、それ以外のことにはまったくやる気がない。誰もが男だと思っているが、実は21歳の女性。

・習近平……言わずと知れた中国国家主席。孤児だったメイファンを引き取り、殺し屋として育てる。ララのファン。

・ドナルド・トランプ……言わずと知れた(略)

・ジャン・ウー……メイファンの仲間の殺し屋。通り名は『酒鬼』。昔のカンフー映画に出てくるような見た目をしている。
メイファンに首をはねられ死去しとかと思いきや生きていた。
0727創る名無しに見る名無し
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2019/01/06(日) 20:57:20.06ID:L63HVqxB
「行くよっ! ジンちゃん!」
ララは構えた。もう大分ハオを吸収し、構えが様になっていた。
「いつでもどっぞ〜」
ジンチンはうまい棒をひたすら齧りながら言った。
ララは自分を殺す。自分はひたすら『気』の発生源となり、ハオの身体が動くに任せた。
ハオの身体が動いた。素早い動きで間合いを詰め、連??を繰り出す。ジンチンの腹があっという間に10箇所へこむ。
「速いわねぇ、ララちゃん」
ジンチンは感心しながらうまい棒を食べ続けた。
ハオの身体は蹴りを繰り出す。めり込む。めり込んだ足を軸に、上へと駆け上がる。しかしまるでコールタールの海の上を歩くようにその動きは緩慢だ。
「のろいわよォ、ララちゃん」
そう言いながらジンチンはゆっくりと前へ倒れた。
「ぷぎゅ」
ララは肉の下敷きになり、勝敗は決した。
0728創る名無しに見る名無し
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2019/01/06(日) 21:24:11.78ID:L63HVqxB
「ジンちゃん……」
「なァに?」
「本気出さなかったでしょ……」
「まァね」
二人は寺の裏の広場のコンクリートに並んで腰掛け、うまい棒を食べた。
「本気出すまでもないってこと?」ララは涙でしょっぱいうまい棒を齧る。
「そうねェ」
「何が足りないの? あたし」
「足りないと言えば、覚悟ねェ」
「覚悟?」
「えェ。闘いにすべてを捧げる覚悟」
「すべてを……捧げる?」
「ララちゃんには煩悩がありすぎるのよォ」
「煩悩? エッチなことってこと?」
「それに限らないわねェ。食べることにしても煩悩よォ」
「え。ジンちゃんは?」
「なァに〜?」
「ジンちゃんには煩悩がなくて、覚悟があるの?」
「オデの煩悩は食べることだけェ〜。でもって、食べれば食べるほど強くなるのがオデだからァ〜」
「強くなるために食べてるの?」
「わっがんねェ〜。エヘヘ」
「うーん?」
「ララちゃんさァ、オデのこと、悩みが何もなさそうで羨ましいって思ってない?」
「え! そそそそんなことないよ?」
「ないのよォ〜、本当に」
「え?」
「世俗的な悩みなんてなーんにもないの」
「まじでか」
「そーゆーのも煩悩だからねェ。オデは闘って、勝って、お金貰って、お菓子が食べれればそれで何ァんも要らね」
「ある意味ストイックなんだ?」
「わっがんねェ〜。エヘヘ」
とりあえずジンチンとの会話は今のララにとっては何の役にも立たなかった。
どうしたらジンちゃんに勝てるのだろう? ララの頭の中はそのことばかりだった。
ララはふと思い出した。昔メイファンと一緒に読んだ日本の漫画「北斗の拳」にそう言えば「ハート様」というジンちゃんみたいなのが出て来た。
北斗のケンシロウはあれをどうやって倒したんだっけ? 調べてみよう。

ふと自分の中のハオを見ると、幼児ぐらいの大きさになり、体に刺された管からもう相当の養分を座れていた。
0729創る名無しに見る名無し
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2019/01/07(月) 09:27:04.72ID:p8lU3N0M
その夜、マスクマン「ブルー・リー」は地下ファイト会場に来なかった。
シャオは怒るでもなく、ただため息を吐いた。
「まァ、そらなァ……。あそこまで完璧に負けたら嫌にもならァな……。あぁ、ミーラちゃん、また来ねェかな……」
ため息を吐きながら客席を眺めていたシャオは、ふと懐かしい姿を見つけ、愕然とする。
サングラスをかけ、無精髭なんか生やして、やたら洒落たナリをしているが、アイツは……間違いねェ。
シャオは舎弟に窓口を任すと早足でその男の元へ向かった。
「オイオイ、散打王様がこんな所に何のご用で?」
振り向いた男はシャオの顔を認めると、言った。
「あんたは?」
「あらら。この目の傷に覚えがない?」
「……悪いが知らん。あんたはここの主催者か?」
シャオの口元が歪む。お前の前に散打王と呼ばれていた男のことなんか覚えてもねェのかい。
「いかにも俺が主催者だが。ならば何の用だよ?」
「人を探している」
「ふん。誰をだよ?」
「リー・チンハオという男だ」
「知らねェな」
「先日、ここでラン・メイファンという少女と試合をしたと聞いたが?」
「少女? ミーラちゃん……老師のことかい?」
「老師……たぶんそいつだ。肌の黒い、愛くるしい顔をした……」
「そっ、その人にまたお会いしたい! どちらにいらっしゃる?」
「質問をしているのはこっちだ。まず答えてくれないか。その少女と闘ってボロ負けした男だ」
シャオは面倒臭そうに答えた。
「リー・チンコって言ったか? リー・ラーラァって名だと聞いたが……」
「そいつだ! どこにいる?」
「ふぅん……。教えてほしいのかい?」
「もったいつけないでくれ」
シャオはニヤリと笑うと、言った。
「教えてほしいなら、ここで一試合して行ってくんねェかな。リウ・パイロンさん」
「なるほど」
「お高いアンタだからこんな所で闘いたくないとは思うが」
「試合か」
「まぁ、無理にとは言わねェよ。リーの居所が知りたいなら他にも」
「面白そうだな」
「えぇっ!?」
「相手はどの戦士だ?」
俺が……やる……と言いたい気持ちを押さえ、シャオは言った。
「実質ここで最強の戦士……ジンチンって奴だ」
「強いのか」
「正直……俺の5倍は強いな」
「お前がどれくらい強いのか知らんぞ」
シャオのこめかみの血管がブチ切れた。
「アンタが勝っても当たり前なんだからファイトマネーはビタ一文払わん。その代わりアンタがもし負けたらファイトマネー30万元(約500万円)貰うぞ! いいか?」
「いいだろう。久しぶりの運動のつもりだ。金は要らん」
「キシャアアァ!」シャオは思わず威嚇した。「よし決まりだァア!!」
0730創る名無しに見る名無し
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2019/01/07(月) 11:17:18.90ID:p8lU3N0M
この会場で唯一行われないカードがあった。シャオ・ホンフーとヤォバイ・ジンチンの対戦である。
実現しない理由はもちろん100%ジンチンがわざと負けるからであり、勝敗の決まっている試合など賭けの対象にならなかった。
そして実際の強さにおいても元散打王であるシャオのほうが絶対に強いと誰もが思っていた、ただ一人、当のシャオ・ホンフーを除いては。
0731創る名無しに見る名無し
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2019/01/07(月) 11:34:00.84ID:p8lU3N0M
控え室で遠い目をしながらよっちゃんイカを食べているジンチンのところへシャオがやって来た。
「よう、ジンチン」
シャオの声でようやくジンチンは気づき、振り向いた。
「よう、兄貴〜」
「今日のお前の対戦相手、変更があった」
「ふ〜ん」
「お前のことだ、誰が相手でも動じねェんだろうけど……」
「そだね〜」
「リウ・パイロンだぞ。まぁ、お前にはどうでもいいか……」
シャオはゴゴゴゴと炎が燃え上がるような音を聞いた。振り返るとジンチンが燃えている。
「ジ……ジンチン!?」
「わはは。ようやく本気でやれる……」
0732創る名無しに見る名無し
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2019/01/07(月) 11:54:54.15ID:p8lU3N0M
リウは目の前で次々と行われる試合を観戦しながら、どんどん表情が険しくなっていた。
シャオが戻って来、隣に座って話しかける。
「どうだい? ふざけた試合ばっかりだろ?」
「不愉快になるぐらいにな」リウは腕組みをし、足を組んだ。「3流の芝居小屋か? ここは」
「八百長ばっかりでもないんだぜ?」
「それにしても人に見せるような闘いじゃない」リウは退屈そうに足を揺すった。「こいつらには何の情熱も感じない」
シャオは鼻で笑った。「それならなんでこんだけの観客が喜んで見に来てんだ?」
「確かにそうだな」リウは素直に頷いた。「俺にはわからん世界ということか」
「そうだ。ここは勝ったことしかないアンタにはわからん世界なのさ」
リウは黙った。
「俺の作った黒麻婆豆腐、持って来てやるよ。食べるかい? 旨いぜ」
リウはそれには答えず、聞いた。
「俺の相手というのもあんなのか?」
シャオは何やら楽しそうに意味ありげな笑い声を上げると、答えた。
「ついさっきまでは、あんなのだったよ。だが、アンタが相手と聞いて、今、劇的に変身中だ。ま、お楽しみに」
0733創る名無しに見る名無し
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2019/01/07(月) 12:36:54.35ID:p8lU3N0M
その頃、ハオの身体はアパートへ帰っていた。
スーパーの買い物袋をテーブルに置くと、ララは言った。
「ふふっ。水餃子セット買って来たよ」
ハオの身体にいそいそとエプロンを着ける。
「今、美味しいの作って食べさせてあげるからね、お兄ちゃん」
袋から食材を取り出し、コンロに火を点けようとして気がついた。この部屋にはキッチンがなかった。
ララは声も出さずに立ち尽くした。
部屋の冷たさが今更のように襲って来た。
ベッドの枕元にはハオの大好きな男性週刊誌が読む者もなく放置されている。
身体の中のハオを見ると、胎児の大きさになり、刺された管から養分をチューチュー吸われている。
窓の外に聞こえる若い集団の楽しげな声が、ひとりぼっちの自分を強く浮き上がらせた。
買って来た缶ビールを開ける。水餃子を生で一口齧る。あまりの生臭さに全部捨てた。
「明日こそ……」
ララは缶ビールを一口飲むと、あまりの苦さに顔を歪め、洗面所に全部捨てた。
「明日こそ、ジンちゃんに勝って、何かを掴んでみせるから……」
そのまま布団に潜り込んだ。
「安心して消滅してね、お兄ちゃん」
0734創る名無しに見る名無し
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2019/01/07(月) 13:55:40.26ID:p8lU3N0M
「さァ、お前ら! 震えてわめけ〜!」
爆発頭がマイクで叫ぶ。
「すすすすっげェのが飛び入り参加だぞォ! 俺もマジでビビっちまったァ!
「まずはお馴染み永遠のNo.2ファイター、永遠のデブ、永遠の食いしん坊の登場だ! ヤォバイ・ジ〜ンチ〜ン!!」
ジンチンが金網の中に現れる。その様子はいつもとまったく変わらず、よっちゃんイカの大袋を抱えての登場だ。
「そォ〜してェ〜! 信じられるか? こんな所に天下の散打王様が降臨だ!」
会場がどよめく。
「リウ・パイローーン!!」
それはまるでアマチュアロックバンドのフェスティバルに台湾のカリスマバンド五月天(メイデイ)が飛び入り参加したかのような大騒ぎだった。
悲鳴のような大歓声を受けながら、リウは着ていたスーツを脱ぎ、黒いスウェット・パンツ姿で金網に入った。
スウェット・パンツで腹の肉が少し盛り上がったリウを眺めてシャオが嗤う。
「正月太りか? ジンチンに勝機ありだな」
リウは相手を眺める。ジンチンは顔色も変えずによっちゃんイカをぱくぱく食べていた。
「なるほど……」リウはジンチンに言った。「これは手強いな」

ゴングが鳴った。
リウはどうしたらいいかわからなかった。
相手には仕掛けて来る気がまったくない。自分から仕掛けるにしても隙がなさすぎた。
超低空アッパーを仕掛けようにも腹が邪魔すぎる。腹をクリア出来たとしても、風船のような体の上にちょこんと乗っている頭まで距離がありすぎる。
足を狙うにもあまりに短く、また遠すぎる。おそらく上から超重量級の風船に圧し潰されるだけの結果に終わるだろう。
ならば、と足を使ってみる。背中に回り込もうとする。しかしデブのくせに何という素早さだ。チョコチョコと短い足を動かし、決して背後を取らせようとしない。
ならば、このすべてを吸収するぶよぶよの肉の海に攻め込むしかない。肉を掻き分ければ必ず骨がある。しかし、多くの者がそこへ到達する夢も虚しく、海に呑み込まれて来たのだろう。
ならば、どうする。相手が痺れを切らして攻撃して来るのを待つか? そして自滅を誘い……
リウははっと気づいた。
ジンチンはただよっちゃんイカを連続食いしながら相手が罠にかかるのを待っているだけのただのデブではない。
だらーんとだらしなくぶよぶよしているだけに見える全身の隅々に、黄色い『気』が繊細なまでに張り巡らされているのが見えた。
こちらが少しでも油断をすればその『気』を波立たせ、凄まじい速さで襲いかかって来るだろう。
今、この状態はジンチンの本気ではない。
本気で闘う前に、この状況を相手がどうするか、試しているのだ。
この散打王リウ・パイロンを試しているのだ。
「お前」リウはニヤケ顔で呟いた。「こんな所にゃもったいねぇよ」
0735創る名無しに見る名無し
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2019/01/07(月) 14:29:53.49ID:p8lU3N0M
「ならば乗ってやろう」
リウはそう言うなり仕掛けた。
軽やかにステップを踏むとサイドキックを一発、ジンチンの腹に叩き込む。
ジンチンの肉がたゆんたゆんと揺れる。
リウは軸足を変え、後ろ回し蹴りを再び腹へ叩き込んだ。
ジンチンの肉はさらに揺れ、大波のように寄せては返し、その揺れでジンチンはまともに立っていられなくなった。
三度サイドキックを入れようとしたところでリウの足が止まる。
ジンチンの体から黄色い『気』が炎のように立ち昇った。
0736創る名無しに見る名無し
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2019/01/07(月) 16:43:52.17ID:+Kpi/J9d
「ハハハ。さすがは散打王だねェ」
そう言うとジンチンは抱えていたよっちゃんイカを放り出し、黄色い炎をさらに燃え上がらせた。
「久々に見せるよ! 第3形態だ!」
「むうっ!?」
近寄る隙もなく、リウの眼前でジンチンはみるみる変身して行く。
「キエエエェェッ!!」
凄まじい土埃がどこからともなく巻き上がる。
それが収まった時、リウは信じられないほど恐ろしいものを目の前にしていた。
「さすが中国は広い」
リウの頬を汗が伝う。
「こんなバケモノがいるとはな」
ぶよぶよだったジンチンの身体(カラダ)は1/10に引き締まっていた。肉に埋まっていた手足も長さを取り戻し、身長2m20cmの長身の上に鬼婆の長い顔が乗っている。
果たしてあの膨大な量の脂肪はどこへ消えたのか? 探すまでもなかった。
その胸には1m以上の長さの巨乳が2つ、まるで腕のようにぶら下がっていた。
「これぞ我が真の姿」
ジンチンは鋭い牙を見せてそう言うと、真っ赤な口から黄色い『気』を吐き出した。
「我が攻撃、果たして防ぎきれるかな!?」
「うおっ!?」
2本の腕と2本の脚、そして2本の乳房がリウに襲いかかる!
「手が4本あるバケモノと闘わされているかのようだ!」
リウはジリジリと後退を余儀なくされた。
0737創る名無しに見る名無し
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2019/01/07(月) 21:32:32.92ID:9N9Ik7Hj
次の朝7時、ララはまたあの公園に出かけて行った。
太極拳の套路はちょうど始まるところだった。リーダーの女性は今日もおり、ララの姿を見つけると首を伸ばして注視して来た。
ララは自分はまるで電池のようにエネルギーを発することのみに徹し、ハオの身体が動くに任せた。
ハオの身体は自然に動き、太極拳の套路を正しく美しく辿った。
リーダーの女性は安心したように注視をやめ、公園に揃った衣擦れの音が清々しく響いた。
身体の中のハオを見ると、もはやメダカぐらいの大きさになり、消えかかっている。

今朝の施しは水餃子と豆のおこわだった。
ララは笑顔で食べはじめたが、なんだか今朝のご飯は味気なかった。
もしこの調子でハオが完全にララに吸収されたら、自分は一体ララのままなのだろうか? それとも外見はハオなのだからハオになるのだろうか?
もし自分がララのままであるのならば、その時ハオはどこに行ったことになるのだろうか?
ララは美味しいはずのご飯を食べきれず、半分以上残して捨ててしまった。
0738創る名無しに見る名無し
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2019/01/07(月) 21:56:37.61ID:9N9Ik7Hj
ララがアパートへの帰り道を歩いていると、向こうからジェイがやって来た。
「やぁハオはん、おはようさん」
「おはよう、ジェイ君。ご飯食べた?」
「え。まだでっけど……何ならご一緒しまひょか?」
「え……w」
「はい?w」
「まだ中国に慣れないの? 『ご飯食べた?』は日本で言えば『いい天気ですね』程度の挨拶よ」
「あぁ! そかそか、そやった! ははは。もう3年も住んどるのに、なかなか慣れへん。1月1日が正月違うのも未だに変な感じやわぁ」
「今年の春節(正月)は2月5日ね」
「ははは〜。なんか色々やらかしてもてるわ、俺。中国では結婚しても女性の姓が変わらんのも知らんかったし……」
「リー・シューフェンが結婚してリウ・シューフェンになったとか、笑っちゃったわ」
「お恥ずかしい」
「大丈夫よ。中国人のチンハオって人なんか、中国人のくせに『俺、シューフェンに結婚されちゃった!』とかボケたこと言ってたから」
「それは恥ずかしなぁw」
「ところでどうしたの? こんな所で会うなんて珍しいわね」
「あっ! そうそう。ハオはん、昨夜なんで来はらへんかったんや?」
「えーと……」
「大変な事があったんでっせ! あのリウ・パイロンが試合に出て来よったんや」
その名前を聞いてララはぞっとした。こんな所まで自分を追いかけて来たに違いない。昨夜、本当に行かなくてよかった。
「へぇ……」
「『へぇ』やあらへん! ジンチンはんと試合して……」
「ジンちゃんと!?」
「はいな」
「それで……どっちが勝ったの?」
「そらまぁ、凄い試合でしたっせ。ジンチンはんの無敵の肉の装甲をリウ・パイロンがまず破って……」
「破った!? あれを……どうやって?」
「はいな。横からキックをすぱーんすぱーんとやったら、ジンチンはんの肉が大波立てて揺れはじめて」
「北斗のケンシロウとは違う攻め方だわ……」
「んでもって自分の肉の揺れで倒れそうになったジンチンはんが変身して」
「へっ、変身?」
「はいな。鬼ババみたいなポケモン……ちゃう! バケモンに変身して、オッパイ振り回して攻撃しはじめて」
「おっ、オッパイを?」
0739創る名無しに見る名無し
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2019/01/07(月) 22:11:56.25ID:9N9Ik7Hj
「なるほど、手技勝負がご希望か?」
リウ・パイロンはそう言うと受けて立ったのだった。
四本の腕の攻撃を二本の腕で捌くと、ロングフックをジンチンの両肩に食らわせた。
「うぉっ?」
腕を封じられたジンチンは重い乳房を振り回したが、もはやリウの敵ではなかった。
胸の谷間、その隙間を狙って超低空アッパーが炸裂した。ジンチンの死角から飛んで来た拳は顎を正確に捉えた。
浮き上がろうとするその両乳房をリウはすかさず手に持つと、マットに叩きつけた。
「おぎゃあ!!」
産声のような断末魔を上げ、ジンチンが立ち上がらないのを見届けると、レフェリーは勝敗を告げ、終了のゴングが鳴った。
ゴングが鳴るとリウはジンチンをお姫様抱っこで抱き起こし、囁いた。
「お前、本当にこんな所にいるにはもったいない女だぜ。散打は女性にも門を開いている。是非とも来い」
0740創る名無しに見る名無し
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2019/01/07(月) 22:20:40.59ID:9N9Ik7Hj
「ジンちゃんが……負けた?」
「はいな。あんなジンチンはんは初めて見た……っちゅーかあの人、女やったんですなぁ!」
「あたしが……倒すはずだったのに……」
「ハオはん? 俺、日本人やし、ようわからんのやけど、中国語に女言葉ないの知っててもなんか女っぽい喋り方になってまっせ?」
「ジェイ君……」
「はいな〜?」
「リウ・パイロンは昔、あたしをレイプしたのよ」
「ヒエーッ!?」ジェイはララの逞しい男のボディーを見ながら叫んだ。
「アイツにあたしの居場所を知らせないで、お願い!」
「え? え? リウ・パイロンはハオはんに会いに来たんでっか?」
「そうよ。あたしの体を奪いに来たのよ」
「キャーッ!?」
0741創る名無しに見る名無し
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2019/01/07(月) 22:37:16.93ID:9N9Ik7Hj
ララはジンチンに会いにシャオ四川料理店の横の路地へ行った。しかしそこに彼女の姿はなかった。
店に入るとシャオが一人いて、項垂れていた。
「よう、マスクマン。ジンチンなら寺の裏の広場にいると思うぜ。
しかしアイツでもリウに勝てねェとはな……。っつーか、ジンチンが女だったなんて……」
「女だったら何が変わると言うの?」
ララはシャオの言い方になんとなく腹が立ってそう言った。
するとシャオは少し寂しそうに笑うと、言った。
「行ってみな。見てみりゃわかるぜ」

寺の裏の広場に行くと、背の高い女性が一人座っているだけで、ジンチンの姿はなかった。
しかし女性は顔を上げるとララの名を呼んだ。
「ララちゃん」
「ジっ、ジンちゃんなの!?」
あまりの変わりようににわかには信じ難かった。サラサラの黒髪ロングストレートのウィッグを被り、化粧までしている。
今まではどんな時でも上半身裸だったのが、白地に赤い模様の入ったワンピースを着ている。
「あたし……恋しちゃったみたい」
ジンチンの言葉にララは後退りし、やがて駆け出した。
「リウ・パイロンには敵わないというの?」
ララは走りながら叫び続けた。
「リウ・パイロンにはどうしても敵わないというの!?」
0742創る名無しに見る名無し
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2019/01/07(月) 22:57:54.19ID:9N9Ik7Hj
映画館の前を駆け抜けようとして、ララはふと足を止めた。
入口の前には大きなポスターが貼ってあった。
『上海ゴースト・ストーリー 1月26日より公開』
シューフェンお姉さんの主演映画だわ……。ララが入口に近づいて行くと、モニターに映画の予告編が流されていた。
主演女優の死のニュースが手伝って、映画は公開前から全中華で大きな話題となっていた。
映画の場面が細かいカットで映し出され、ふいに画面にシューフェンの顔がアップで登場した。
自分が癌であり、余命幾ばくもないことを告白し、自分の死でこの映画の公開が中止にならないことを願うメッセージの動画だった。
シューフェンの声が聞こえているのだろうか、身体の中でカエルの卵ほどになっているハオがぴくりと動いた。
シューフェンが喋るたびに大きくなって来る。
「お兄ちゃん……」ララはそのハオをお腹の赤ちゃんのように愛しく感じた。「シューフェンお姉さんの……私の、お兄ちゃん」
0743創る名無しに見る名無し
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2019/01/07(月) 23:01:10.17ID:9N9Ik7Hj
「……もう、やめよっか?」
ララは呟いた。
「リウ・パイロンを殺すより……私はやっぱりお兄ちゃんを生かしたいや」
涙がぽろりと零れたと思ったら雨だった。
突然、ティティ、タータと鉄階段を叩いて降り出した雨にララは駆け出し、二人のアパートの部屋へと帰った。
0744創る名無しに見る名無し
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2019/01/08(火) 11:05:29.78ID:lrqezZjF
暖房をつけた部屋でララは卵を温めるようにハオの復活を待った。
養分を吸っていたチューブからは逆に養分をハオに注いでいた。
「私達、負けたのよ」
ララはそう考えながらも目を閉じ微笑んでいた。
「闘いもしないうちから、負けたのよ」
ハオがだんだんと大きさを取り戻して行くのが身体の中に感じられて嬉しかった。
「やっぱり私、覚悟なんて持てない。そのためにお兄ちゃんを消してしまうなんて出来なかった」
ノートパソコンの画面には音量を消したTV番組が、中国の明るい未来を謳っていた。
「早く大きくなってね、私のお兄ちゃん」
ララはもうリウ・パイロンを殺すことは考えていなかった。メイファンの元に帰るつもりもなかった。
この部屋でずっとハオと二人で平和に暮らして行きたい、そう願うようになっていた。
しかしララの心には不安があった。こんなことをした自分をハオは果たして許してくれるだろうか? 嫌われて、追い出されてしまうんじゃないだろうか?
それでもいい、ララは思っていた。そうなっても仕方がないから、とにかくハオを助けたい。
そして叶うならば自分の身体を得て、ハオと兄妹のように、出来るならば恋人同士のように生きて行きたい、と願うのだった。
「やっぱり分不相応なことはあるの」
ララは自分の、ハオの身体を抱き締めた。
「私達はメイファンやリウ・パイロンのようにはなれないし、勝てない。平凡に生きて行くのがお似合いなの」
0745創る名無しに見る名無し
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2019/01/08(火) 11:13:36.58ID:lrqezZjF
「私はリウ・パイロンに美しい過去を穢された」
ララは目を瞑り、思った。
「でも私はそれを憎んで生きるよりも、ハオさんを愛して生きる未来を選びたい」
そして強く願った。
「ハオさんとの子供が欲しい。その子は私の痛みなんて何も知る必要もなく、ただすくすくと、明るい未来へ向かって生きるの」
0746創る名無しに見る名無し
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2019/01/08(火) 12:07:15.74ID:lrqezZjF
次の日の朝、ララとハオは同時に目が覚めた。
ララが目を開けると、口が「ふにゃ?」とハオの声で喋った。
「お兄ちゃん!」ララは喜びの声を上げた。
ふあぁと長いハオの欠伸が終わるのを待ってから、ララは言った。
「ごめんなさい、お兄ちゃん。ララがバカでした。お兄ちゃんを消滅させるなんて……バカなことをしようとしてごめんなさい」
ララが口の発言権を譲っても、暫くハオは何も言わなかった。
小さく縮こまりながらララが返事を待っていると、ようやくハオは喋りはじめた。
「……そうか、俺、ララに完全支配されようとしてて……」
「……」ララはただ頭を下げた。
「……なんで起こしたんだよぅ?」
「え?」
「俺……すんごい気持ちよかったのに!」
「は?」
「消えるのって気持ちいいなぁ、このまま永遠に眠るのサイコーって思ってたのに……! なんで起こすんだよぉ〜」
ララは笑いながら泣き出してしまった。
やっぱりこういう人なんだ、お兄ちゃんは。私のとんでもない過ちを、アホのフリをしてまで寛大に許してくれる。
この優しさに甘えちゃいけないんだ、私ももっと優しく、そして大人にならなければ。強くそう思った。
「お兄ちゃぁ〜〜〜ん!」
ララは激しくハオに抱きつきたかったが、無理だったので布団に抱きつき、ひとしきり頬を擦り寄せて泣いた。
0747創る名無しに見る名無し
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2019/01/08(火) 12:21:49.84ID:lrqezZjF
いつもの公園の太極拳へ二人で行った。
身体は一つだけど、ララの中では二人で手を繋いで出かけた気分だった。
美しく緩やかなハオの動作を感じながら、ララはいつか自分も太極拳を覚えたいと思っていた。
今は信じられないほど何も知らず、何も出来ない自分だけど、ハオと助け合いながら、少しずつでいいから成長して行こう、
いつかは素敵な大人になって、自分を愛し、みんなを愛せるようになろう、そう思うようになっていた。
常緑樹の風に揺れる公園で、ララは青い空に希望で満ち溢れる未来を見た。

施しは羊のスープとちぎりパンだった。
二人は一口ずつ、味覚も満腹中枢も分け合って食べた。
「美味しいねぇ、お兄ちゃん」
「うん、こりゃ〜うまいな」
ララは昨日の食欲不振が嘘のように元気にレンゲを口へ運んだ。
ハオにはララの顔はもちろん見えないが、その幸せそうな笑顔が見えるような気がした。

一人で会話をしながらあまりにも幸せそうにパンをスープにつけて食べる30歳の男を、周囲は気味悪そうに見ていたが、
二人は静かで優しい時間に包まれて、いつまでもこうしていたいと心を繋ぎ合っていた。
0748創る名無しに見る名無し
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2019/01/08(火) 18:31:04.23ID:7wisDshK
アパートへの帰り道、ララは前々から気になっていた店に寄ろうと言い出した。
「いいよ、俺、服なんか興味ねーし」
ハオがそう言ってもララは頑なになって命令した。
「ダメダメ。お兄ちゃんはもっとお洒落になりなさい」
「お洒落な俺なんて俺じゃねーよぅ」
そう言いながら店に入って来る変な客を店員がニコニコと迎えた。
試着室に無理矢理入らせたハオのボロボロのジャンパー、グレーのトレーナーにグレーのジャージを脱がせると、ララは着せ替え遊びを始めた。
モノトーン基調のイケメン風ファッションをさせてみる。高級スイーツの上にジャガイモが乗っているようになった。
カジュアルな可愛い少年風を狙ってみる。ただの子供になってしまった。
「うーん。お兄ちゃん何が似合うんだろ……」
試しに白いTシャツとジーパンを穿かせてみるとやたらと似合った。
「えー! 格好いい! これいい!」
ハオはヘトヘトになっていたので適当に頷いた。
「でも寒いよねぇ。上に何かあと二枚は着ないと」
適当にトレーナーと革ジャンを着せてみると別人になった。
「わー! まるで映画俳優みたい! 昔のトニー・レオンみたいだよ! これにしよう!」
「ララサン、悪イケド」
「何、その喋り方?」
「オ金ガ無イノデス」
「え? だって地下ファイトで4万元(約60万円)ぐらい貯まってたじゃん」
「大キナ買イ物ヲシタモノデネ」
「はぁぁぁ!? 何買ったの!?」
「今日アタリ届クハズデス」
「しっ、信じられない!」
ララは出した服をすべてハオに片付けさせると、そのまま怒って店を出ようとした。
だが店の出口に可愛いハンチング帽を見つけ、思わず手に取り、鏡の前で被ってみるとよく似合った。
ディズニーのチップ&デールのチップの帽子だ。30元(約500円)だった。
「これだけでも買って帰ろうよ」
「ソノグライナラ買エマスネ」
汚くダサい格好に綺麗な可愛い帽子をひとつ乗せ、二人はアパートへ帰った。
0749創る名無しに見る名無し
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2019/01/08(火) 21:30:29.92ID:mOgVa5//
  ,,;f::::::::::::::::::::::ヽ
  i::::::::/'" ̄ ̄ヾi
  |:::::::| ノ ::.::: ヽ|
   |r-==(>);(<)
  ( ヽ  /( ,_、)ヽ}
   ヽ..  ィェエヲ;  ぐはあ―――――!! 
     \___ !
   γ´     \
   / ...::::r ヽ::::..  ヽ
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ヽ::....  `ー 、`ヽ、:::  ヽ i
  `ー ,,_....  `ー<:::::::   i____     ____ -== __      ニ三 ./  `ヽ     ニ三 ./  `ヽ
      ̄ヽ、  `\  災二―   ̄ ̄ ̄   三ヾ 、     `ヽ ―ニ    ノ      !  ―ニ    ノ      !
        7ヘヾヾ>  |::::::....             三 ≡__    .ノ   ―~~~⌒ヽ     ノ     ―~~~⌒ヽ     ノ
          |::::::: ̄   |≡=―-- ____ =三=― '''"         ̄    ̄           ̄    ̄
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0750創る名無しに見る名無し
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2019/01/08(火) 23:28:53.26ID:7wisDshK
シャオ・ホンフーが店でチャーハンの練習をしていると、珍しい客がやって来た。
「おやおや、散打王様がこんな汚い店にまで何の用だい?」
リウ・パイロンは店に入って来ると、「先日はどうも」と挨拶をしてから1枚の写真を胸から取り出した。
「俺の探している男だが、どうやらマスクで顔を隠していたらしい。素顔なら知っているかと思い……」
リウはハオの写真を見せた。いつものハオの、何も考えていないような顔が写っている。
「おや?」シャオは怨恨のある相手に対してだけは物覚えがよかった。「コイツは……」
「知っているのか?」
「俺の料理を食い逃げしやがった奴だ! いや、でも、まさか、コイツが? マスクマン?」
「そうだ。本名はリー・チンハオという」
「ハオ……豪(hao)……なるほどあの額の一文字はそれか! あの野郎、騙してやがったな!」
「どこにいる? 一緒に取っ捕まえに行こう」
「あぁ……」シャオは少し嬉しそうにした。「ズーランという女なら知っているはずだ」
「よかった。手掛かりが出来た」
シャオはほっとしているリウを見ながら少し考えて、言った。
「ところでアンタ、本当に俺のこと覚えてないのかい?」
「知らん」
「シャオ・ホンフーという名前に聞き覚えは?」
「シャオ・ホンフーならよく知っている。尊敬すべき大先輩であり、誇り高き散打の戦士だ」
「そうかい」シャオは憎らしげに睨む。「アンタが選手生命を終わらせたんだよな?」
「シャオ・ホンフーならあれしきのことで未来を見失ったりはせん」
「何だと?」
「少なくともケチな賭けファイトやらボッタクリ料理屋などといった落ちぶれたことはしない男だ」
「てめぇ……!」
「俺の知っているシャオ・ホンフーはそんな男だ」リウはシャオを睨みつけた。「だからアンタのことは知らん」
シャオは体をわなわなと震わせながら、言葉が出て来なかった。
「今度、独立して散打のジムを作るんだが」リウはふいに切り出した。「協力して貰えないだろうか」
「俺にか?」
「新世代の散打の戦士を育てたい。経験豊かなアンタなら打ってつけだと思う」
「へっ」シャオは鼻を赤くしてそっぽを向いた。「黒麻婆豆腐作るが、食うか?」
「頂こう」
「いつか」シャオは調理をしながら言った。「俺と拳を交えてみてくれないか」
「あぁ」リウは水を飲み干すと、少し笑った。「『いつか』なんて言わず、いつでもいいぜ」
0751創る名無しに見る名無し
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2019/01/08(火) 23:46:09.13ID:7wisDshK
ズーランは玄関のドアを開けると知っているイカツイ顔が2つ並んでいるので思わず悲鳴を上げて人を呼ぶところだった。
「シャオ! アンタ! 縄張りを侵すんじゃないよ!」
「ズーラン、ぼっ、僕は。この人が君に会いたいというから連れて来ただけなんだ!」
グレーのスーツ姿に花束を持ったシャオはカチコチになりながらそう言った。
ズーランはもう1つのイカツイ顔を見る。TVでよく見知っているが、会うのは初めてだ。
「リウ・ハイロンさんだっけ?」
ズーランの間違いをシャオが慌てて正した。
「そっ、それは実在の元散打王さんだよズーラン!」
「リウ・パイロンです」と自己紹介してリウは申し訳なさそうに頭を下げた。
「何の用だい?」
部屋に上げる気もなさそうに聞くズーランにリウは写真を取り出し、見せた。
「コイツがどこにいるかご存知ありませんか」
「あら、ハオ。見事にアホ面を捉えた1枚ね」
「ご存知なのですか?」
「ずっ、ズーラン、散打王様がお客なのに部屋に上げないのは失礼だよ?」シャオは上がりたそうにしている。
「うーん」ズーランは暫く考え、「知らないわ」と言うなりドアを閉めた。
0752創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 00:19:06.06ID:l0cW4ZyH
ハオとララがアパートに帰ると、宅配便のトラックがちょうどその前に停まったところだった。
「あっ」ハオがとても嬉しそうに声を上げる。「来た来た。届いたぞぅ」
ドライバーのお兄さんから直接荷物を受け取り、サインをするとウキウキしながら部屋に持って入った。

「何なのこれ」
部屋の大部分を占めて床に置かれたでっかい長方形の段ボール箱を見ながら、ララが不安そうな声で呟いた。
「これはね」ハオはウインクをしながら言う。「君へのプレゼントさ」
プラスチックのバンドをハサミで切り、ガムテープを破ると蓋が開いた。
中身があらわになる。
「ヒッ!?」
思わずララは小さく悲鳴を上げた。中には全裸の女性の死体が……
「ノンノン。死体じゃないんだ、これは」ハオが人差し指を揺らして言った。
「ななな何なのよ、これ……」
「リアルラブドールのメンメンちゃんさ」
ハオはメンメンちゃんをお姫様抱っこして箱の中からお迎えした。
身長155cmのボディーにEカップの豊満なおっぱいが柔らかく揺れている。
「凄い……」ララは興味深そうにメンメンちゃんを眺めた。「人形なの? これ、本物みたい」
「凄いだろう?」
「すごーい……」
「僕も初めて手にしたが、夢のような可愛さだ」
ララははっとして聞いた。
「もしかして……4万元したデカイ買い物って……」
「この娘さ」
「バカ!?」ララは激しくなじった。「バカなの!? 真性のバカ!? あんたバカ!?」
「バカじゃない!」ハオは顔の表情を引き締めた。「ララ、これはイヤらしい人形なんかじゃない。君の新しいボディーなんだよ」
「ハァ!?」
「見てごらん。よく見てごらん。君にそっくりな人形を選んだつもりだ。よく見てごらん」
ララはメンメンちゃんをまじまじと見た。確かに顔はメイファンを白くしたようだと言えなくもなかった。しかしおっぱいは大きすぎる。
「もしかして……あたし、これに入るの?」
「そうだよ。君は自分の身体が欲しかったはずだ。そうだろう?」
「……人間の身体が、ね」
「大丈夫。日本のエロマンガなんかでよくあるだろ? 魂が入った人形は変身して人間になるんだよ」
「そうなの?」
「そうだよ! さ、早く早く! 中に入ってみて」
0753創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 00:43:07.06ID:l0cW4ZyH
「うーん」
ララは激しく悩んだ。
確かに身体は欲しい。4歳で産まれてから、たぶんずっと欲しかったものだ。決して叶わないと思っていた夢だ。
でもこれは違う、なんか違う。身体と言うよりは、なんかの専用のオモチャだ。
「大丈夫なのかなぁ」
「大丈夫! 苦しかったらすぐに俺の中に戻って来ればいいんだから」
「うーん」
「きっと気に入るよ」
「まぁ、入ってみるけど」
「そう来なくっちゃ!」
「でもどこから入るのこれ?」
「口がね、開くようになってるんだ」
ハオはメンメンちゃんの可愛い口をぱっくりと開いて見せた。
「でもこれ、身体の中まで貫通してないよ?」
「そっ、そうか。バキュームを強くするためだな!? じゃあ、他に……穴は……」
「あー……」
ララとハオは同時に見つけてしまった。あからさまにベタな部分に打ってつけの穴が開いていた。
ハオはメンメンちゃんに大股開きをさせると、確認した。
「うん、大丈夫だ。ここからなら中まで入れる。骨まで見えるよ」
「そだね。じゃあ、入ってみる」
ハオは大きく口を開けると、メンメンちゃんのあそこにぴったりと吸い付いた。喉の奥から何か綿飴のようなものが出て来る。
それはずるずるとハオの口から出ると、すぽんと人形の穴に飛び込んだ。
ハオはニコニコ顔でメンメンちゃんの下半身から口を離すと、待った。
人形がぴくりと動き、顔を左右に振ってから起き上がり、可愛い口からララの声が出て来るのを待った。
しかし、人形はぴくりとも動かない。
「……ララ?」
人形はぴくりとも動かない。
「ラーラちゃんっ?」
人形はぴくりとも動かない。
何かヤバそうな空気を感じ取り、ハオは急いで人形の性器部分にまた口をつけた。
「おい! ララ! 戻れ!」
しかしララは戻って来ない。
「ララ! ララ! 戻って来い!!」
ララは気配すらなくなってしまった。
「あああアアーーー!!! ララ!?」
0754創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 00:55:42.30ID:l0cW4ZyH
「メイファン……」ハオは思わずその名前を口にした。「メイファン……! 助けて!!」
そして震えの止まらない手でララのスマホを取り、電話帳を開いた。
登録されている番号は一つだけ、習近平だけだった。構わずかける。
『やぁ、ララちゃんっ』すぐに習は電話に出た。
「メイファンに代わってくれ!」
『あれ? ララちゃんじゃないな……。ハオ君かね? ララちゃんは』
「いいから早くメイファンに代わってくれ! 頼む!」
『いいのかね? そんな言い方をして。私は』
「たかが国家主席の分際で邪魔しないでくれ! いいからメイファンに代われ!」
『……切るよ』
「わわわわわかった! ごめんなさい! ララがピンチなんです! メイファンに代わってください!」
『それならそうと早く言ってくれればいいのに』
そう言うと習は電話の向こうで『メイファン』と呼んだ。すぐにメイファンが電話に出て来た。
『よう、ハオ兄か? どうしたことだ、私に電話など』
「ララララララがいなくなったんだ! どうしたらいいのかわからない! 早く来てくれ!」
『何だと? どこだ?』
「○○街の××番地のアパートだ。早く! 頼む!」
0755創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 01:19:32.15ID:l0cW4ZyH
『施設』からそんなに近いわけもないのに関わらず、メイファンは10分もかからずにやって来た。
「何だ、これは……」メイファンは床に寝そべっている妙な人形を見ながら険しい顔をした。「もしや、ララをこれに入れようとしたのか?」
「入れたんだ!」ハオは答えた。「確かに入ったんだ! 入ってから、消えてしまった!」
メイファンは人形の中を見た。部屋の中の隅々まで気を張り巡らせた。そして、言った。
「ララが……どこにもいない」
「人形の中は?」
「いない」
「もっとよく探してくれよぅ!」
メイファンは恐ろしい目でハオを見、唇を噛むと、言った。
「貴様……こんな呼吸も血液もないものに入ってララが生きていられると思ったのか?」
「いいから探してくれ!」
「ララは……いない。恐らくこれに入れられた瞬間、即死した」
「そく……っ!」
メイファンはテーブルの上に置かれていたディズニーの帽子を力を込めて掴むと、『気』を込める。帽子のツバが鋭い刃物に変わる。
ハオの右手の指先が4本、揃って飛んだ。
「貴様などに大切な姉貴のことを任せたのが間違いだった」
メイファンはそう言いながら帽子のギロチンを振るった。ハオの左耳が根本から飛んだ。
ハオは悲鳴を上げて泣きながら、されるがままになっていた。
「返せ! 私の最愛の姉を!」
ハオの鼻が飛んだ。豚の鼻のようになった顔でハオはただ泣くしか出来なかった。
「返せ!」メイファンも大粒の涙を流し、噛みしめた唇からは血を流していた。
0756創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 06:25:39.88ID:i8WOeisQ
この時メイファンは初めて確信した。

リー・チンハオの本質は邪悪であると
0757創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 08:01:01.99ID:zT0RUHU0
ハオはララに新しいボディをプレゼントしたのは
自分に都合が良いオナホと家政婦が欲しかったからで、ララに自由を与えたいわけではなかった。

ハオには愛というものを理解していなかった。
0758創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 08:19:41.30ID:8YS9dqxw
「お前の言う通りだ」
ハオは>>757の言うことを認めた。
「動くオナホなんて最高じゃないか! って思ったんだ。しかも金さえあれば、顔もボディーも飽きたら交換し放題の恋人なんだぜ!?」
それから泣き崩れた。
「だって男なら誰だってそういうの夢見るじゃないかぁぁ! それにそれは別として、ララのことは本当に可愛かったんだ。本当の妹以上に! 愛し始めてたんだ!」
0759創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 15:34:05.05ID:cjjhNVI7
しかしメイファンはハオの首をはねることはしなかった。
本当はギタギタに切り刻んで肉マンゴーのようにしてやりたかったが、それでララが帰って来るわけではない。
何よりメイファンはまだ諦めていなかった。
どこに手がかりがあるかもわからない、現場はなるべく壊さずに留めておきたい。ただそれだけの理由でハオを殺さなかった。
もちろんハオを殺すよりも苦しい目に遭わせてやりたいという気持ちもあった。しかしそれはララの生存を諦めてからの話だ。
メイファンは部屋の真ん中に座り、抱いた膝に顔を埋めて考えた。
『気』だけの存在であるララが死んだらどうなるのだろうか。死体のようなものは何も残らず、ただ消えるだけなのだろうか。
あるいは綿飴が溶けた跡のようにその場にこびりつくのだろうか。人形をかっさばいてみればそんな跡がついているかもしれない。
しかしメイファンはそれを見るのが怖すぎて、人形を裂くことが出来なかった。

ブヒブヒと豚が洟を啜るような音が聞こえる。鼻のないハオが泣いている声だ。
泣く以外に何も出来ないのか、この男は。そう考えてすぐに自分も同じだということに気づく。

膝に顔を埋めてメイファンはララのことを思った。
自分が幸せかどうかなんて考えたことがないが、幸せなのだとすれば、それはすべてララによるもののように思えた。
ララに名前を付けてあげ、誕生日をプレゼントし、ララの悩みを聞いてあげ、ララの出来ないことや苦しいことは全部してあげ、自分の身体まで分け与えた。
こう考えると妹が姉にしてあげてばっかりのように思えるが、してあげることが妹にとっては何よりの喜びであり、幸せだった。
ララからしてもらったことも少なくはない。戦いで傷つけば癒してくれ、戦闘服が綻びれば縫ってくれた。しかしそれ以外は?
裁縫や編み物の得意な姉は、妹のために何度かマフラーや帽子や手袋を編んでくれようとしたことがあった。
しかしチマチマとした作業を見ているのが苦痛だった妹は、編みかけのそれを毎度ぶち壊した。
ララは何もしてくれなかったのではない、妹が何もさせなかったのだ、と今更気づく。
誕生日を祝ってくれようとするのを毎回「興味ねーから」と断った。15歳で大学に受かったのを誰も誉めてもくれなかった時、
姉は1人だけ誉めまくった上にコーラとフライドチキンだけの細やかなパーティーで祝ってくれたが、
あれも本当は豪華なパーティーを開きたかったに違いない。妹が気恥ずかしくて断るだろうことを知っていたのだ。
何をしてくれるまでもなく、ただ一緒にいてくれるだけでよかった。
自分が『気』の使い手としてここまで強くなれたのはララのお蔭だ。
何より、暗い道を歩いて来た自分を明るく照らしてくれたのはいつでもララたった。
ララがいたから、自分は……
「むぇいばむ!」
ふいにハオが叫んだ。
0760創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 15:57:50.96ID:cjjhNVI7
(むぇいばむ)? あぁ、鼻がないから(メイファン)と言えないのか……。
どうでもいい、話しかけるな。そう思っているとハオはもう一度叫んだ。
「むぇいばむっ!」
殺気を込めて片目で睨んでやった。しかしハオが示しているものを見てメイファンの殺気が緩む。
「こでっ!」
(これっ!)と言いながらハオは自分の指を示していた。さっき斬り落としたはずの指先が、再生しつつあった。
指先だけではない、耳も、鼻も、肉が盛り上がって再生を始めている。
メイファンは立ち上がり、ハオの中をもう一度よく見た。青いので気づかなかったが、確かにララの『気』を感じる。
しかしすぐに目を伏せ、首を横に振った。
「お前の中にいるうちに少し同化していた部分があっただけだ。いわばララの『匂い』みたいなものだ」
しかしそれはハオの身体を治癒するに伴い少しずつ小さくなっている。
メイファンはハオの耳と鼻を拾うと、洗いもせずに元の場所にあてがった。みるみるくっつき、傷も塞がって行く。
するとララの『気』の消費が止まった。
「匂いだけでもララのものだ。これ以上小さくしないでくれ。怪我をするな。怪我をしたら殺す!」
そう言いながらもメイファンは、なおもハオを斬り刻んでやりたくてたまらなくなった。
床に寝そべっているふざけた人形にその気持ちをぶつける。手刀を一振りすると、人形の首から腰の下までが鋭く裂けた。
獣が唸るような声を上げてさらに手刀を振るう。人形はあっという間にズタズタになり、その身体の内側の骨まで切断された。
内側をさらけ出した人形をメイファンは隅々まで確認する。どこにもララの遺した跡のようなものはなかった。
0761創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 16:18:55.74ID:cjjhNVI7
人形を貫通して床までズタズタに斬り裂かれた部屋で、二人は距離を置いていつの間にか泣き疲れて眠っていた。

立てた膝に頭を乗せて眠るハオの前に、シューフェンとララが並んで立った。

「ハオ」シューフェンが言った。「早速乗り換えてくれるのは別にいい……。でも、」
ハオの体がびくんと痙攣した。それを見てシューフェンは続きの言葉を飲み込む。
「ハオ」シューフェンはハオの頭を撫でた。その語調は優しくなった。「苦しむのよ」
ハオはシューフェンを涙目で見、助けを求めた。
「苦しむのよ。苦しんで、苦しんで、そして償いなさい」
「償うって……? どうやって……?」
「それはあなたが考えるの」
「お兄ちゃん」ララが喋った。
ハオはララを見る。メイファンの身体にいた頃のララだ。少し巻いた髪が風もないのに揺れ、白い肌はさらに白く見えた。
「ララ! ごめん……!」
「お兄ちゃん」
「ごめん! ごめんよぅ! ララ! 本当にごめんよぅ!」
「早く私を見つけて」
「え!?」
「助けて。早くしないと、私……」
0762創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 16:41:32.78ID:cjjhNVI7
ハオは飛び起きた。
同時にメイファンのスマートフォンが鳴った。
メイファンは緩慢な動作で応答ボタンを押す。
「もしもし?」
『メイファン』習近平の声がした。静かな部屋でハオにもよく聞こえた。
「習近平か。どうした」
『何だか知らないけどね。リウ・パイロンが町で暴れているらしい』
「何だそりゃ……」
『お前、ちょっと行って片付けて来てくれないか。住民がうるさいんだ』
「……今どこにいるんだ?」
『さっき××街の小吃店を軒並み破壊したところらしい』
メイファンは電話を切ると、再び膝に顔を埋めた。
自分は習近平に必要とされている。しかしそんなことは元々どうでもよかった。
ハオを惨殺してから自分も死のうかと夢の中で考えていたところだ。いくら国家主席のボディーガードと言えども、自分で自分を殺す自由ぐらいあるはずだ。
しかしそこになぜかリウ・パイロンの顔がアップで割り込んで来たのだった。
泣きながらリウにすがりついた。しかし夢の中のリウは知らん顔をして背中を向け、去って行った。
「メイファン」ハオが話しかけた。「ララは生きてるぞ」
メイファンは藁を掴む心持ちでハオに目を向けた。「根拠は?」
「夢を見たんだ」
「夢?」
「夢の中で、ララが『早く助けてくれ』って……!」
メイファンは勢いよく立ち上がるとハオの右腕を斬り落とした。
「ウワァァァー!?」
斬り口から大量の血が吹き出し、壁や床やベッドを染めた。
「怪我をするなと言っただろうが!!」
そう叫ぶとメイファンは小声でもったいないもったいないと言いながら斬ったばかりの腕をくっつける。
そして上着をはおると出て行った。
「なんか意味がわからんが行って来る。貴様、逃げるなよ?」
0763創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 16:46:09.53ID:cjjhNVI7
「逃げるもんか」
ハオはそう呟きながらズタズタにされた人形を抱いた。
「逃げるもんかよ!」
抱きながら、激しく体を揺すった。
「ララ! ララ!? ここにいるんだろう!? 出て来い! 早く出て来てくれ!!」
部屋中が血まみれになり、床が裂けてささくれ立つ中、ハオは必死で呼びかけ続けた。
0764創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 17:13:01.22ID:cjjhNVI7
「あら? あれ、リウ・パイロンじゃね?」
小吃店『永遠大王小吃』を営む王さんは、店の中から通りを見て、従業員の陳君に言った。
「本当だー! リウ様だ! って、何してんの、あれ?」
黒いスーツにサングラスをかけたリウ・パイロンは向かいの果物を並べた屋台に超低空アッパーを決めていた。
浮き上がったリンゴや梨にとどめを刺すでもなし、ただそこら中の屋台を破壊して回っている。
「やばいよ……これやばいよ! 警察……っ!」
陳君が言い終わるのも待たずにリウは小吃店に突進して来ると、ぐつぐつスープの煮え立つ170リットルの寸胴鍋を拳で宙に浮かした。
0765創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 17:31:05.21ID:cjjhNVI7
「おっ? また来てくれたのかい」
店の前で掃除をしていたシャオ・ホンフーは嬉しそうに笑った。
しかしやって来たリウ・パイロンの目つきが何やらおかしい。ひきつけを起こしたように上ばかり見ている。
「おい……?」
心配そうにしながらも近寄ろうとしないシャオにリウは「フギャアァァァ!」と猫のように叫びながら襲いかかった。
あまりの速さにシャオは避けることも出来なかったが、リウの拳はシャオの肩をかすめて店の扉に突き刺さり、破壊した。
「なっ! 何しやがんでェ!」
シャオは竹箒を投げ捨てると散打の構えを取った。
「『いつでもいい』とか言ってたけど、こりゃァねェんじゃねェか? あまりにも乱暴すぎ……っ!」
リウの両拳がハンマーのように振り下ろされ、なんとか避けたシャオの後ろにあったテーブルを粉々にした。
「ちょっと待ってくれ! 店が……!」
リウはまるでもがき苦しむような滅茶苦茶な動きで店の壁をみるみる破壊し、中へと攻めこんだ。
「ぼったくりはもうやめたんだ! 清く正しく生きるから! どうか……!」
リウは厨房内の鍋をボコボコにへこませ、中華鍋を持って振り回し、すべてのものを破壊し尽くすと、狂ったように叫びながらようやく去って行った。
「あぁ……」シャオは泣き崩れた。「あぁぁ……」
0766創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 17:35:58.02ID:cjjhNVI7
警官隊はもちろん出動していた。
発砲許可も出ていた。
しかしリウ・パイロンの狂った動きに銃弾は空を切った。
国民的英雄に銃を向けることが出来ないファンの警官も多く、彼らはまったくの無力だった。
盾を持った警官隊をリウは超低空アッパーでまとめて浮かすと何もせず走り去った。
0767創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 17:43:14.54ID:cjjhNVI7
メイファンは情報を得ながらリウを追っていたが、駆けつけた時にはもうどこかへと去っていた。
しかしそのたびに、後に残された匂いに段々と表情を明るくした。
そんないたちごっこを繰り返すたびに陽は傾き、遂には夜になった。
『施設』も警察もリウの姿を見失い、情報が入って来なくなった。
メイファンが屋台でラーメンを食べているとスマートフォンが鳴った。
画面を見ると、着信相手の名前はリウ・パイロンだった。
0768創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 17:56:10.79ID:hbfHe/1S
ハオは飛び起きた。
同時にメイファンのスマートフォンが鳴った。
メイファンは緩慢な動作で応答ボタンを押す。
「もしもし?」
『メイファン』習近平の声がした。静かな部屋でハオにもよく聞こえた。
「習近平か。どうした」
『何だか知らないけどね。リウ・パイロンが町で暴れているらしい』
「何だそりゃ……」
『お前、ちょっと行って片付けて来てくれないか。住民がうるさいんだ』
「……今どこにいるんだ?」
『さっき××街の小吃店を軒並み破壊したところらしい』
メイファンは電話を切ると、再び膝に顔を埋めた。
自分は習近平に必要とされている。しかしそんなことは元々どうでもよかった。
ハオを惨殺してから自分も死のうかと夢の中で考えていたところだ。いくら国家主席のボディーガードと言えども、自分で自分を殺す自由ぐらいあるはずだ。
しかしそこになぜかリウ・パイロンの顔がアップで割り込んで来たのだった。
泣きながらリウにすがりついた。しかし夢の中のリウは知らん顔をして背中を向け、去って行った。
「メイファン」ハオが話しかけた。「ララは生きてるぞ」
メイファンは藁を掴む心持ちでハオに目を向けた。「根拠は?」
「夢を見たんだ」
「夢?」
「夢の中で、ララが『早く助けてくれ』って……!」
メイファンは勢いよく立ち上がるとハオの右腕を斬り落とした。
「ウワァァァー!?」
斬り口から大量の血が吹き出し、壁や床やベッドを染めた。
「怪我をするなと言っただろうが!!」
そう叫ぶとメイファンは小声でもったいないもったいないと言いながら斬ったばかりの腕をくっつける。
そして上着をはおると出て行った。
「なんか意味がわからんが行って来る。貴様、逃げるなよ?」
0769創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 18:09:21.26ID:cjjhNVI7
満月の浮かぶ公園に駆けつけると、リウ・パイロンはメイファンを見つけてゆっくりとベンチから立ち上がった。
黒いスーツがボロボロに汚れている。
「リウ!」
「しっ」
リウは静かにするよう求めた。メイファンもよくわかっていて、ゆっくり頷いた。
「やっぱり……ここだったか」
そう言いながらメイファンが見つめる先、リウ・パイロンの身体の中で、ララが卵のように丸くなって眠っていた。
「眠っている間はいいんだが……」リウが囁き声で言う。「起きると手がつけられない」
「しかしなぜお前の中に?」
「話は後だ。どうやら俺の身体は相性が悪いらしい。早くお前の中に戻そう」
「相性だって?」メイファンは可笑しそうに吹き出した。
「しっ! 起きるとまた拒絶反応が出る」
「わかった」
「それで……どうやるんだ?」
「ん?」
「どうやってお前に戻せばいい?」
「あー……」
「?」
「その……あれだ。口と、口で……」
「ああ」リウは理解した。
そして優しい動きでメイファンの腰に右手を回し、左手で頭を支えた。
「こうだな?」
「あ……っ」思わずメイファンの口から声が漏れた。
リウの口が近づいて来る。メイファンは頬を紅くし、目を閉じた。
口を大きく開けなければいけないのに、逆にすぼめ、桃色の唇をチューの形にした。
『気』の鎧を解いて甘酸っぱいフェロモンを放出させた。
身を守るように丸く固まっていたララが、リウの中で「フワアァァゥ」と威嚇する声を上げると突然、暴れ出した。
「あっ! もう……」
何か言いかけたメイファンの真下からリウの超低空アッパーが発射された。
『気』を纏わないただの女の子になっていたメイファンにそれをかわすことは不可能だった。
メイファンは満月の夜空を30m飛び、常緑樹の中を突き抜けると、冬の冷たい池の中に突っ込んだ。
0771創る名無しに見る名無し
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2019/01/09(水) 21:46:24.42ID:pCyQ/FK/
「そんなヤワではないわ!」
メイファンは強がったが、その身はしっかり入院中だ。
顎骨折、手指骨折、街路樹の中を通った時の擦り傷多数、池に落ちた時の心臓マヒはとっさに『気』を張ったことで免れた。
0772創る名無しに見る名無し
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2019/01/10(木) 05:51:11.74ID:WdFOIkRV
リウ・パイロンを蝕む、拒絶反応の正体はララが彼の操縦桿を操作しているために起きている現象だった。

正確にはララの一部…彼女が捨てようとした負の感情の部分が"反乱"を起こしたのだ。
リウを暴走させているのは彼の社会的地位を失墜させるためだが、ハオとメイファンをいたぶり殺すためでもあった。しかし、リウの精神に阻まれ完全に操作できてはいない。
いずれにせよこのままではララは負の感情に支配され、狂気と暴力の権化になってしまう。

一方、ハオはというと…
0773創る名無しに見る名無し
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2019/01/10(木) 06:40:50.24ID:f1C1aqNJ
「ぐー・・・ぐごがっ・・・グゴー・・・」
ズタズタになった人量を抱きながら眠っていた。
メイファンが病院で苦しんでいるのにもかかわらずにだ。

ハオは夢を見ている空虚だった幼少期の夢だ。
0774創る名無しに見る名無し
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2019/01/10(木) 07:01:47.01ID:71emq8n4
ハオは貧しい農村の生まれだった。
幼い頃の彼の世界はとても狭く、友達といえば豚の小六、アヒルのワーワー、そしてママだけだった。
0775創る名無しに見る名無し
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2019/01/10(木) 07:49:01.16ID:Vs3iChv/
だがハオの家はどちらかといえば裕福で
村のはずれにある大きな家に住んでいた。
ハオの父親は役人の一族で基本的に家にはおらず、住人からの評判は悪かった。

そのためハオが外を出歩くと白い目で見られた。
0777創る名無しに見る名無し
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2019/01/10(木) 12:23:29.34ID:ILbKrhJl
兄弟である。特に妹だ。
時の1人っ子政策により、中国では兄弟のいる人間のほうが少なかった。
しかしハオは童話「ヘンゼルとグレーテル」に出て来る兄妹に憧れ、いつか絶対に可愛い妹が欲しいと強く思っていた。
0778創る名無しに見る名無し
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2019/01/10(木) 17:59:40.89ID:ILbKrhJl
ちょうどそんなことを思っていたハオ9歳の頃、遠く甘粛省の小さな町で、ララは胎児として生を受けた。
しかし、遠くのハオの「妹が欲しい」という邪悪な願望を受信したのか、胎児は成長するどころかどんどん小さくなり、
遂には『気』だけの存在となり、その身体は消滅してしまった。
0779創る名無しに見る名無し
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2019/01/10(木) 18:29:52.95ID:ILbKrhJl
リウ・パイロンはなんとかハオの居所を突き止め、アパートを訪れていたのだった。
玄関へ向かって歩いていると、壁をすり抜けて白い煙のようなものが出て来た。
リアルラブドールの首の後ろにメンテナンス用の穴が開いており、そこから抜け出し、壁をすり抜け、ちょうどやって来たリウの前に現れたそれは、ララの『気』だけの姿だった。
息が出来ずに苦しんでパニックを起こしているララに気づくと、リウは自分の身体に入るよう促した。
しかしララがあくまでパニックになっているので、リウは自分からララを吸い込んだ。
「……で、ララはリウに入るとすぐに発狂し、街へ向かって走り出したそうだ」
メイファンの説明を聞き終わると、ハオはへなへなと病室の床に座り込んだ。
「よ、よかったぁぁぁ」泣き出した。「生きててよかったぁぁぉ」
「よくはない」包帯だらけのメイファンはベッドに釘付けになったまま言った。
「うん」ハオは頷く。「リウを止めないと、町が滅茶苦茶になってしまうな」
「町なんかどうでもいい」
「どうでも……って?」
「リウが正気なら私も一緒に破壊の限りを尽くしたいところだ」
「ゴジラ2体上陸か!」
「あのままだとララは完全に気が狂う」
「そうなの!?」
「この世で一番殺したいリウの体内にいるのだ。下手すればリウの中からリウを殺してしまうぞ。そうなればもちろんララも同時に、死ぬ」
「ど、どうすれば?」
「お前を呼んだのはそのためだ」
「お、俺? どうすればいいの……」
「お前の中に私が入る」
ハオは露骨に嫌そうな顔をした。
「私の身体はこの通りだ。まともに動けん。だからお前の身体を使って私がリウを止める。止めた後、ちゅ、チューして……ララを吸い出す」
「でもお前が出たらお前の身体、死ぬんじゃねーの?」
「病院で生命維持装置を用意してくれる。おっ、ちょうど来たぞ」
看護婦と医者が並んで大袈裟なほどの生命維持装置を押して入って来た。
「さぁ、ハオよ。早速、私をお前に挿入させろ」
0780創る名無しに見る名無し
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2019/01/10(木) 18:57:42.00ID:ILbKrhJl
「し……失礼します」
ハオは心から嫌そうに、仰向けになって大きく開けているメイファンの口に口を重ねた。
「痛い!」メイファンは思い切り牙を立てて噛みついた。「顎を骨折しているのだぞ! もっと優しくしろ!」
「……ごめんなひゃい」ハオは口の両端から流血しながら、泣いて謝った。
「もう一度だ」メイファンがまた虫歯治療の患者のように大口を開ける。
ハオはびくびくしながらそこへ自分の口を重ね、すっぽりと隙間なく繋げた。
メイファンはきばった。
『気』の流れの中に己の存在を潜らせ、ハオの中に送り込もうと頑張った。
しかしどうしても喉から外へ出ることが出来ない。
二人はたまらず口を離した。荒い呼吸を整える。
「うーん。ここまで出てるんだが……」メイファンは息が落ち着くと、言った。「体位を変えてみよう」
メイファンが横を向く。ベッドから顔をずらすメイファンの顔をハオががしっと掴み、犬のお座りのポーズで口を塞いだ。
しかしダメそうなので、メイファンがハオに命令した。
「貴様も協力しろ。吸い出せ」
ハオは頑張った。ちゅーちゅーと一生懸命吸った。ヂュゥ〜〜〜ヂュゥ〜〜〜に音が変わるまで吸った。
「痛いわ!!」メイファンが歯を食いしばった。
「ギャアア!!!」ハオの唇がスッパリ切れた」
「なんで出られないんだ! クソ!」
メイファンは起き上がるとハオをベッドに叩きつけ、口を押し付けた。
「イダイイダイ!!」ハオが悲鳴を上げる。
「アガアアアア!!!」メイファンがきばる。
「あはあはあはあは」ハオが泣きながら笑い出す。
「オゲーッ!! オゲーッ!!」メイファンがハオの口の中にゲロを吐こうとする。
看護婦と医者の見守る中、遂にメイファンはハオの中に入ることが出来なかった。
0781創る名無しに見る名無し
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2019/01/10(木) 19:21:36.64ID:ILbKrhJl
ハオの中に残るララの『気』でメイファンを治療することも試してみた。
しかしどうやらハオ自身の傷しか治すことは出来ないようだ。

「仕方がないな……」メイファンはベッドに寝直すと、ため息を吐いた。「ハオ、お前がやるんだ」
「俺が? 何をやんの?」
「ララが眠っている間、リウは正気になる。その時を狙って吸い出すんだ」
「え。リウとチューすんの?」
「お願いします」メイファンはぺこりとした。
「吸い方わかんねぇよぅ。男の唇吸ったことねぇし……」
「ララも、お前なら素直に自分から戻ってくれるかもしれん。お願いします」メイファンはまたぺこりとした。
ハオは何も言わず、病室に静寂が流れた。
メイファンはフーと息をつく。
ハオが言った。
「俺がリウを倒すよ」
「またアホなことを言い出したな……」メイファンは目を瞑って呆れた。「お前にリウが倒せるわけが……っ!?」
メイファンは目を開けて少しびっくりした。
アホ面でないハオを初めて見た気がした。目が決意に燃え、いつもだらしなく開いている口はキリリと締まっている。
「俺が倒す」
まるでイケメンのような声でそう繰り返した。その決意を証明するように身体から蒼い炎が立ち昇る。
『気』はララを失ってダークブルーに変わっていた。あれっ? なんか強そうじゃね? とメイファンは錯覚する。
「お前、俺のこと『天才だ』ってよく言ってくれたじゃないか」
ハオはそう言うと立ち上がり、宣言したのだった。
「お前の見立てを信じる! 証明してやる! 俺は、何より、ララを助けたい! その想いのままに、死ぬ気で頑張ってララを取り戻す!」
0782創る名無しに見る名無し
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2019/01/10(木) 19:28:46.66ID:ILbKrhJl
そう宣言するなり病室から駆け出して行った。
婦長さんが「走るなボケーっ!」と叫ぶ声が廊下に響いた。
メイファンはあんぐりと開けていた口をようやく閉めると、呟いた。
「ハオ……確かにお前はリウ・パイロンを凌ぐ天才だ」
牛乳を一口ストローで飲むと、ガックリと頭を垂れた。
「しかし、努力の量が違いすぎる。……運よく殺されずに済んだら同じ病室になれることを願う」
そしてまた牛乳を手にし、ズズーと飲みきる音を立てると、言った。
「あとララを取り戻しても二度とお前に会わせる気、ねーから」
0783創る名無しに見る名無し
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2019/01/10(木) 20:04:03.85ID:f1C1aqNJ
「ウガァーッ!」
大男、リウ・パイロンがひっくり返った車のそばで雄叫びを上げる。
周りには粉々に砕けたブロックや木の破片が散らばり、人々が逃げ惑う。

リウは拳を振るい人や物、その血走った目に映るすべてを壊しながらある場所へ向かっていた。

リウは口端を釣り上げ、半開きとなった口でニタァと笑う。
だがそれはリウの意思ではない。操縦桿を握るララのものだった。


「まっててねメイ、お兄ちゃん今殺しに行くから」
0784創る名無しに見る名無し
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2019/01/10(木) 20:54:03.51ID:WdFOIkRV
拳。
その直後、ハオの腹に拳が沈み、口からは赤や黄色が飛び出し、リウの顔を汚した。

息ができない。意識が霞む。ハオには何が起きたか理解できなかった。

リウはにっこりと笑顔で倒れたハオに近づいてしゃがみこむ。
「ハーイ、お兄ちゃん久しぶりぃ。ララがいなくて寂しかったぁ?」
ララはリウの口を借り、吐息混じりの声で話した。ハオは直感でララだとわかったが、もう自分の知っているララはいなかった。
ララは狂気に支配されていた。
0785創る名無しに見る名無し
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2019/01/11(金) 00:31:50.58ID:QGjRQ181
「こ……、こんなにされても俺は……ララ」ハオは苦しみながらも口にした。「お前を愛している!」
「キュンッ!」リウの胸が鳴った。
「愛している!」
「キュン! キュンッ!」
「うおぉぉぉ愛しているーーッ!!」
「キュンキュンキュンッ! キュンッ!」リウの心臓が鳴りまくった。
「うわぁぁもう何が何だかわからないーーッ!!」ララは叫びながら逃げ出してしまった。
0786創る名無しに見る名無し
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2019/01/11(金) 00:41:52.02ID:QGjRQ181
メイファンから電話がかかってきた
「ハオ、お前にお供の者をつけてやる。サルとブタとカッパだ」
0788創る名無しに見る名無し
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2019/01/11(金) 07:32:28.46ID:3kv+gR3A
ララ「なんて強い身体! 最高!
 私、リウ・パイロンのように強くなれないなんて思ってたけど、リウ・パイロンそのものになれちゃった!
 リー・チンハオを殺し、ラン・メイファンを殺し、習近平も殺し、私がこの国の覇者になるのよ!
 あそうだ、最後にはリウ・パイロンも殺し、私がこの国の女王になるのよーー! キャハハ!」
0789創る名無しに見る名無し
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2019/01/11(金) 08:21:57.32ID:93bt95cs
リウ號機を駆るララが戻ってきた。
リウ號機は何も身に付けておらず
その股間は反り立っていた。
「フフッ、私のことを愛してくれて嬉しい。私もお兄ちゃんのこと愛してる」
ララはハオの告白に興奮し呼吸が荒くなっていた。
「ヒヒヒッ、お兄ちゃん…私の愛を受け止めてね。」
リウ號機はハオのズボンをパンツごと脱がすと
ずり降ろし取り払うと、足を広げ正常位の姿勢をとる。

「ファッ!?、それは流石にやめろっ」
ララの行動の目的が分かったときハオは青ざめた。

「お兄ちゃんいくね。」
ララはリウ號機のアレをハオの菊座にあてがうとハオの話も聞かず一気に突き入れた。
ハオの肛門はリウ號機の丸太ん棒の大きさに耐えられず、ブチブチと音を立てながら裂けた。

ハオはそのあまりの激痛に声を上げることができない。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん」

リウ號機は腰を激しく打ち振るうと接合部から血が滲み、激痛がハオの体を這い回る。
その拷問は3分間続いた。
0791創る名無しに見る名無し
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2019/01/11(金) 09:42:48.99ID:RpDlTEga
メイファンはそう言うとがっくりと肩を落とし生きる気力を失った。
その失望は計り知れないほどのものだった。
0792創る名無しに見る名無し
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2019/01/11(金) 11:56:59.94ID:hffNvLdu
ハオはヒリヒリ痛む肛門を押さえながら、だんだん自分の『気』の能力がわかって来た。
リウ號機にあれだけのことをされたのに、自分の傷を癒す能力は尽きるどころかまだまだ元気である。
つまり、これは実はララの能力ではないのではないか?
ララとの合体で目覚めた、自分自身の蒼い『気』の能力なのに違いない。
「凄ぇ。まるでウルヴァリンしゃないか」
しかし超回復能力だけではちとショボい。
他にも何かあるはずだ。
ウルヴァリンをアダマンチウムの爪があるように。
試しに拳を顔の前に出し、アダマンチウムの爪でも出ないかと力を込めてみた。すると……
ハオ「こっ、これはっ?!」
0793創る名無しに見る名無し
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2019/01/11(金) 15:27:26.09ID:93bt95cs
「ウゲッ!?」
ハオの体が激しく揺さぶられだし、体の中心に激痛と衝撃が走る。
リウ號機が動き出し、再び地獄のピストンを再開したのだ。
「はっ、はっ、ふっ、ハオお兄ちゃん…ッ私、ハオお兄ちゃんと繋がってる。ハオお兄ちゃんと1つになっ、てるっ」
ララは今まで感じたことのない快感が込み上げてきてさらに腰を振るスピードを早めた。

「お兄ちゃんっ、何か来るっ、来ちゃうっ!」
ララがリウ號機の低い声で叫ぶと、ハオの直腸に白濁液を注ぎ込んだ。
「はあ〜、気持ちよかった…」
ララは余韻に浸りながら失神しているハオを抱きしめ、キスをした。
0794創る名無しに見る名無し
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2019/01/11(金) 16:33:03.25ID:n89FXVZu
「かかったなっ!」
失神したフリをしていたハオはかっと目を開けるとキスしたままリウ號機の頬をしっかりと掴んだ。
「このまま吸い出してやるっ!」
0797創る名無しに見る名無し
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2019/01/11(金) 23:01:38.18ID:laGHU2JW
「ウゲゲゲゲゲゲゲ!」リウ・パイロンは心に深いショックを受けた!
「んふぅ〜はぁあっ」ハオは何かに目覚めた!
「オッサン同士のBLサイコー!死ね!!」ララはさらに発狂が進んだ!
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