数日後、西田結希はメトロポリス内地に所有するマンションの一室にいた。
マンションのオーナーは、彼女の『他人に知られてもいい』稼業の一つだ。

「……例の件はどうなった」

耳元に当てたスマートフォンへ、西田結希は問いかける。
その端末は個人名義――裏稼業用の物ではなく、ヒーロー協会から支給された物だ。

『芳しくないですね。ある日突然爆発するかもしれない車に、好んで乗り込む人間はいません。
 あのロボットを稼働させ続けるのは、協会にとって不要なリスクでしかないです』

「少なくとも三人のヒーローが上申書の提出か、それに相当する証言をしているはずだ」

『No14が次に暴走した時、罪のない人々を狙わないとは限りません。
 たった三人の証言で、その可能性を無視する事は出来ませんよ』

「百人の命を救う為なら、一人の人間を殺していい訳じゃないだろう。
 少なくともヒーロー協会の公式見解として表明出来る思想じゃない」

『アレが人間ならその通りですが、生憎、Np14はロボットです』

「……アイアンハート現象はメトロポリスの至る所で確認されている。
 それらのロボット全てに、人間への不信感を与える事は、不要なリスクだ」

『……確かに、そうかもしれませんが』

「表向きは処分保留。実際はヒーローの装備ないし支援機扱い。
 これなら世論の釣り合いも取れるだろう。この線でもう一度上申書を作成してくれ」

『分かりました。ですが……今度は一体何を企んでるんです?
 私には、そこまでしてアレを保護する必要があるとは思えませんが』

「……あのロボットはそれなりに高性能だ。支援機として手に入れば、今後の活動に役立つ」