>「うわぁ……リジェネレイター、これマジでやばいやつじゃない?
 テスカ子供だからわかんないけど、科学の教科書で似たようなの見たことあるよ。
 これアレでしょ?マイナスドライバーでカタカタやって手が滑って死ぬやつでしょ」

「……あり得ん。核は、ヴィランの間でもご法度だ。
 このメトロポリスを吹き飛ばして、得られる物が何もない。
 ヒーロー、ヴィラン、両方に敵と見なされるだけだ」

一部の例外を除いて、非合法組織が求めるものは支配や繁栄だ。破滅ではない。
そう分かっていても、やや強張ったザ・フューズの声。

>「駄目だ。手も足も出なかった。少なくともそいつを構成している物質は地球には存在しない。
  何のために作られたのか、どう使うのか……。それはヴィラン二人にに聞くしかねぇな。
  生憎二人ともあんな状態だから今すぐには無理だろうけど……」

何にしても、リジェネレイターの相棒ではこの物質の解析は出来ないらしい。
つまり、これ以上この場に留まる理由はもう何もない。

>「今日は助かった。ザ・フューズ、テスカ☆トリポカ……それにNo14。
  また何処かで会おう。その時は今晩の借りを返させてもらう」

「私はお前に何かを貸した覚えはない」

無愛想な返答。

「……が、どうしてもそれを返したいなら、宛先は私じゃなくていい」

一瞬逸れる視線。その先にあるのは――No14。

>「おつかれさま。テスカも帰るね、明日早いんだ。
  14ちゃん。……ありがとう。誰がなんて言おうと、この気持ちは確かなものだよ」

「上申書を書いてやれ。助けられたと思っているならな」

そう言い残すと、ザ・フューズは協会の護送部隊へと振り返る。
ヴィラン二名は既に護送されていったが、ヒーローの戦闘に負傷は付き物。
負傷者の回収、応急手当――それも護送部隊の任務の内だ。
この場合の負傷者とは――つまり、ザ・フューズの事だ。

四肢と肋骨を蹴り砕かれ、肺は破裂し、彼女は本来なら死んでいてもおかしくない重傷人だ。
ただエクトプラズムによって破損した部品を補完しているというだけで。
だがそれも、いつまでも維持は出来ない。
超能力の行使、維持には体力を消耗する。
早急に、医療チームの処置を受ける必要があった。

>「アト、ザ・フューズ!今日ハ色々迷惑ヲカケテシマッテ本当ニゴメンナサイ!次カラハ・・・チャントシマス・・・ノデ」

「そうだな。お前の判断はご立派だったが、もっとやりようがあったはずだ」

>「ミナサン!マタアイマショウ!」

「……次は、もう少し上手くやってくれ」

護送部隊員の一人がザ・フューズを急かす。
彼女はNo14に背を向けて、それきり振り返らなかった。