眼下を見下ろす。
視線の先で、地中から宙空へと打ち上げられるロックバイン。
既に半壊した岩の鎧。
アダマス合金製の改造人間にすら通じるNo14の火力なら、容易く破壊、制圧可能。

そして――発射されたブレードが、ロックバインの鎧を貫通。
血飛沫が散り、更にそこへ放たれる追撃の電撃。
空気という絶縁体を貫きなおも威力を発揮する電圧。
異能者と言えど、生身の人間。耐えられるはずがない。
むしろ――オーバーキルだ。今の一撃は致命傷にすらなりかねない。

>「・・・サッサト死ンデイタダケナイデショウカ?私モ気ガ長イ方デハナイノデ」

だがNo14は更に、ロックバインへと追撃を加える。
倒れ伏した彼の頭部を何度も踏みつける、金属の踵。
ザ・フューズは地上へと続く階段の途中で足を止めた。

>「アナタタチハ一体ドコノドノタデショウカ?見テノ通リ私ハ忙シイノデ邪魔シナイデ頂ケマスカ?」

右手を眼下のNo14へとかざす。
地上を見下ろす眼差しは、あくまでも冷静。

>「貴方達コイツノ仲間デスネ?ナラ排除シナケレバイケマセンネ」

No14の注意は眼前の二人に向けられている。
エクトプラズム・プレートで拘束し、焼き尽くす――無力化する事は容易い。
そして――

>「・・・私ハ・・・一体ナニヲ・・・?」

No14は、一線を超える事なく正気を取り戻した。
ザ・フューズは右手はそのままに――小さく、嘆息を零した。

それから暫くして、協会の護送部隊と警察が現場に到着。
制圧された二名のヴィランが回収されていった。
ザ・フューズはその過程に目もくれない。
ただマスクに付属された通信機に右手の指を添えて――

>「終わった、な。とりあえずはだけど……そうだ。
  折角だしファイアスターターが運んでた荷物をご開帳してみるか。
  ヤクとかハジキなら大したことないけどどうせもっとヤバイブツなんだろ?」

>「いいのぉ?開けた瞬間ドカンとかなったらあの世で恨むよリジェネレイター」

「『現場の判断』で行うにしては、横着が過ぎるんじゃないか?リジェネレイター」

歩み寄ってきたリジェネレイターの言葉に返す苦言。
本業詐欺師の思考――押収品の検分は研究班の管轄。
その悪戯は言い逃れが困難。高いリスクを伴う。
しかし――言葉とは裏腹に、右手を通信機から離す。
そうしてテーブル代わりのプレートを形成。
左手のケースを上に置く。

「だが……まぁいいだろう。『お前』には借りがある」

その貸しについて、神籬明治には思い当たる節がないだろう。
そしてそれは正常な反応だ。