アライアンスからシャンバラまでは馬でひとっ飛びの距離だ。
広大な竹林に囲まれたシャンバラには現地の人々が慎ましく暮らしていた。
ところどころに遺構をみることができ、かつてこの土地を支配していたという超古代帝国の名残が見て取れる。
シャンバラに入るなり、シリル達は軽鎧に身を包んだ神殿騎士達に囲まれた。

「な……なにかな。僕は何もしてないよ。本当だよ」

神殿騎士は恭しく頭を垂れると192に声を掛ける。

「192、ご苦労だった。貴方様達がかの神託の勇者。突然のご無礼をお許しください。
 私は001……神殿の外では"鏡の騎士"ロートレックと呼ばれている者です。
 僭越ながら、勇者様達のお名前は?」

一番に名乗りを上げたのは端正な顔立ちをした青年だった。
しかし引き締まった顔立ちは相当の錬磨を積んだ戦士であることを思わせる。
恐らくは192にも劣らない強者なのだろう。

「シリル。シリル・フラマリオンだよ。よろしく。
 えっと、001とロートレック、どっちで呼べばいいのかな?」

「001は神殿の習わしで与えられた名。
 本名はロートレックですが、勇者様のご随意に」

「じゃあロートレック。積もる話もあるから、どこかで話をしよう」

「では神殿へ向かいましょう。聖女様も貴方様達に会いたがっています」

一同は小高い丘の上にある神殿へと向かう。
馬と神殿騎士を引き連れ歩くさまはちょっとした見物のように思えた。
クリスタルのみで建築された静謐な神殿は、鬱蒼と伸びる竹がどうにもミスマッチだ。
道に敷かれた玉砂利を踏みながらシャンバラで最も重要な施設である神殿へと足を踏み入れた。