夜も更けて飲み会が落ち着いた頃。
僕達は広間に残って旅のルートを確認する事にした。
東の聖都シャンバラまでの道程は長い。

「湾港都市ナントカから海路で行くのかぁ……。
 ナントカはオルビアの中でも貿易が盛んなんだって。
 僕、海って見たことないなぁ。見渡す限り水が広がってるんだよね?」

地図を睨みつけながらじっと経路を見つめる。
そしてふとオルビア王国の国土の最西端の森の辺りを眺めた。
地図上には何も描かれていないが、そこには僕の故郷がある。

魔法使いだけの秘密の里、カルデア。
故郷には一般的に穢れた魔法使い扱いされかねない人も多くいる。
彼らは魔法の発展ために時として禁呪や古代魔法を研究する事もあるのだ。

無用な争いを避けるため場所を口外するのは厳禁となっている。
もっとも話したところで里の魔法使い以外出入りできない。

「そういえばキャトラの故郷ってどこなの?僕は西の方なんだ。
 田舎過ぎてよく地図だと端折られててさぁ……ははは」

故郷の慣例でカルデアとは関係ない場所を適当に指差して笑った。
小さい嘘を吐くまでの事ではないが、僕はふと思ってしまったのだ。
この国のことを、世界のことをよく知らない。そして旅の仲間の事も。

これからどんな旅になるのか分からない。
長い旅路の仲間なんだ。皆の事を少しずつ知っていきたい。

「ところで192さん、シャンバラってどんなとこなの?
 聖都ってくらいだしきっと壮麗な街なんだろうなぁ……」

僕は呑気な口調で椅子にもたれかかった。


【幕間タイム。このまま明日ってことにして旅を再開してもおkだよ】