ゴブリン退治も終わり、ケーユチ村に戻った僕達は宿屋で歓待を受ける事になった。
魔物が活発化して被害が増え始めて以来、村はゴブリンに幾度も苦しめられてきたらしい。
作物を荒らされ、村人の数名も犠牲になったという。時には旅の商人も襲ったとか。

という訳で、宿屋はちょっとしたドンチャン騒ぎに包まれたのだった。
皆エールを片手に飲めや歌えやで僕も少し愉快な気分だ!

「……というわけで、僕は魔法を封じられてなお、
 樹海でちぎってはなげ、ちぎってはなげの活躍を……」

皆、冒険の話を聞きたいらしく僕は真実をありのまま伝えた。
世界とは困難と危険に満ちており――しかし、知恵と勇気で乗り越えられる事を。
女神の話は流石にしないけど、それらしい冒険ならもう二度もしてるじゃないか。

「亡くなったアデクも浮かばれるだろうよ。
 お前さんら、ありがとうな!おかげでこの村に平和が戻った!」

村人の一人が杯を掲げ、僕も楽しい時間をありがとうと杯を掲げた。
宴もたけなわの一方で心が急速に冷え込んでいくのを感じる。
彼らは知らないんだ。この平凡な世界に危機が迫っている事に。
闇の軍勢を率いる魔王が復活しつつある事を、皆は知らない。

魔王が復活すればこのオルビア王国にも闇の軍勢が攻めて来るだろう。
僕はこれまでの冒険で、故郷よりも広い世界を知った。
この国には今まで冒険してきた場所も、僕の故郷もある。
幻想殺しの樹海、ハジマーリの街、ルイージの墓場。そしてケーユチ村。

樹海やハジマーリの街、ケーユチ村が滅びるのはとても恐ろしいことに感じた。
つけ加えれば(占いを信じるならだが)この冒険には僕自身の命も懸かっている。
今までは"女神の神託を受けた"という事について深く考えてこなかった。
でも、これからの旅には強い決意や覚悟が必要な気がした。

「まぁ今はいいや。木苺のパイおいしいね!」