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日本が異世界に転移するお話その1
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0112創る名無しに見る名無し
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2018/05/21(月) 06:28:53.59ID:tRZnwP6O
知り合いから教えてもらったパソコン一台でお金持ちになれるやり方
参考までに書いておきます
グーグルで検索するといいかも『ネットで稼ぐ方法 モニアレフヌノ』

HDNQ2
0251創る名無しに見る名無し
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2018/06/04(月) 10:09:56.14ID:VLJaXJRm
保守
0481創る名無しに見る名無し
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2018/06/12(火) 22:01:05.65ID:gG5qxPam
転移5年目
山梨県鳴沢村
人口六千人ほどのこの村は、日本転移後に人口が激増した。
食糧の増産と確保の為に村を出ていった住民の家族や親族が戻ってきたからである。
この傾向は日本中の田舎で見られていた。
この村でもジャガイモやキャベツ、トウモロコシの増産で比較的豊かな生活を送っていた。
だがこの豊かな地には忌まわしい歴史のある地域が存在する。
自殺の名所、青木ヶ原の樹海である。
転移後、大量の第三次産業の営業が不可能になったことにより大量の失業者が発生した。
その結果、何が起きたかというと全国の自殺の名所が例年に無い賑わいを見せる羽目になっていたのである。

「また、自殺志願者の保護かねぇ・・・」
「駐在さん達も大変だな・・・」

畑を耕し、農作業に従事していた農家の方々がパトカーで連行されていく若者を見ながら休憩している。
最早こんな光景は日常茶飯事で、取り立てて驚く話ではないが村の評判に傷が付くと眉をひそめていた。
だが樹海の向こうから呻き声が聞こえて振り返る。

「また、自殺志願者かね?」
「駐在さん達も大変だな ・・・」

完全に他人事のつもりだが樹海の外から出てきた人間の姿に顔を青ざめさせる。
顔は土気色、首が変なふうに曲がっていて腐臭を漂わせて、顔から蛆が沸いて出ている。

「こ、これは・・・ひょっとしてゾンビ?」
「ち、駐在さん助けて!!」

正確にはリビングデッドなのだが、日本人的には一律でゾンビである。
悲鳴を聞いた警官達がパトカーから拳銃を握って駆け付けてくる。
日本の各所がモンスターに襲われる事態が多発していた為に警官達も銃を抜くのも発砲するのもためらいはない。
だがそれは拳銃二丁で倒すことができる相手ならばだ。
ゾンビ程度、銃弾12発もあれば十分のはずだ。
弱点は頭部、映画ではそうだった。
そして、警官達は拳銃を構えてグールを狙うがすぐに回れ右してパトカーまで逃げ出す。

「逃げろ!!」

樹海の奥から数十体、数百体のグールが姿を現したからだ。
パトカーには先ほど拘束した自殺志願者がグールの群れを見ていた。

「ああは、なりたくないな・・・もうちょっと頑張ってみるか。」

パトカーに警官達が乗り込んでくる。

「こちら鳴沢PC02、青木ヶ原樹海から大量のゾンビが発生、応援を求む、至急応援を求む!!」


山梨県富士吉田市
富士吉田警察署
署長室では鳴沢村からの報告に対応策が練られていた。

「幸いゾンビ達は普通の人間が歩くよりは足が遅い。
地域住民を避難させつつ、遠距離から銃撃と車両による体当たりで足留めしろ。」
「現場の警官達の銃弾では足りないかもしれません。」
「河口湖交番と河口駐在所からもゾンビの発生が報告されました。
警官が応戦しながら、消防団や役場の人間が休館した富士急ハイランドに住民を避難させています。
0482創る名無しに見る名無し
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2018/06/12(火) 22:03:38.30ID:gG5qxPam
あそこなら周囲をゲートや柵で取り囲まれて封鎖できるからです。」

署長は現場の警官では対処が不可能と判断した。
県警本部の応援など待ってはいられない。
電話を富士吉田市市長に直接掛ける。

「署長の北村です。
すでに報告は聞いておられていると思いますが・・・
はい、現有の戦力では市民の安全を守るのは無理と判断しました。
自衛隊の出動の要請をお願いします。」


静岡県御殿場市
板妻駐屯地
第34普通科連隊
県知事からの防衛出動の要請を受けて、隊員達が73式トラックや高機動車に乗り込み順次出撃している。
今回はゾンビの発生と事態が判明しているので、即応性が求められたので準備が出来た分隊、小隊単位で出発させた。

「連隊長、忍野村から第一特科連隊が出たそうですが、砲の類いが使えないのでこちらの到着を至急とのことです。」

幕僚の言葉に連隊長市川一等陸佐が首を傾げる。

「砲が使えないとはどういうことだ?」
「山梨県庁や農林水産省からの要請で田畑での戦闘は避けて欲しいと。
となると市街地で迎え撃つことになるのですが、やはりここでも砲撃は行えません。
1特連の隊員は小銃だけで応戦している模様です。」

それでも第一特科連隊は転移後の再編と増強を行っており樹海と隣接する山中湖村、忍野村、富士吉田市、富士河口湖村で掃討と警戒に当たっていた。
また、現在はゾンビの発生は確認されていないが富士山を挟んで静岡県側は普通科教導連隊が派遣されるて警戒にあたることになる。

「そして現在確認されているゾンビの規模なのですが、最大で二千体はいるとの報告です。
やはり映画のように噛まれると感染するらしく、樹海に何故かいたヤクザや自殺志願者がゾンビに変化したそうです。」

青木ヶ原の樹海は転移前の2010年には250人が自殺を試み、50名近くが実際に命を落としている。
転移後の失業者の増大から自殺志願者が大量に押し掛けて問題になっていた。
だがこれまではゾンビなどは発生したことは無かった。
同じように死体が安置される警察や病院、葬儀会場、墓場、もしくは殺人や事故の現場では発生していない。
大陸でも同様であるが、戦場や虐殺現場など死体が溢れ放置されているような場所では、死体が甦って人を襲うことは稀にあるという。
また、死霊魔術や暗黒神の神官の神聖魔法で故意に発生させることは出来るという。

「横浜の残党の仕業でしょうか?」
「連中は神奈川県警のSATと機動隊が全員射殺か逮捕したんだろ?
原因を考えるのは専門の連中に任せればいい。
我々のやることは掃討と国民の安全を守ることだ。
第一特科連隊の手が回らない鳴沢村に我々は展開する。
途中で連中と遭遇したら迷わず成仏させてやれ、以上!!」

幕僚達も車両に乗り込んでいく。
市川連隊長も高機動車に乗り込むが思わずため息をつく。

「この世界で発生する現象は日本も例外じゃないか、当然だな。
しかし、二千体か・・・よくもまあ白骨化もせずに・・・もう少し命を大事にしようぜ。」

各地の隊員達はそれでも危なげなくゾンビを討伐していた。
0483創る名無しに見る名無し
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2018/06/12(火) 22:08:10.08ID:gG5qxPam
「頭を完全に撃ち抜けなんて、一発じゃ無理だよな。」
「車両で壁を作って分断して潰していこう。」

89式小銃で1体1体仕留めていく。
歩くよりは遅い相手に遠距離から攻撃出来る自衛隊は特に損害も出さずに任務をこなしていった。


富士吉田市
富士急ハイランド
市民の大半を収容した富士急ハイランドにも二百体近いゾンビが押し掛けていた。
幸い柵や壁にゲート、外周に配置した車両で中への侵入は防いでいた。
そして、50名程度の警官が柵をよじ登ろうとするゾンビを拳銃で仕留めていくが、それほど豊富でも無い弾薬は底を尽き始めていた。

「よ、よく狙え!!」

また1体仕留めるが使用した弾丸は4発。
頭部に弾丸が命中したゾンビはよじ登ろうとしていた柵から落ちていった。

「課長・・・今のが最後の弾丸です」

富士急ハイランドの警備に駆り出されて指揮をとっていた総務課長の和田は残りのゾンビの数を確認させる。

「120体か、市民は鍵の掛かる施設に避難させたがまだ足りないな。
観覧車とか、絶叫マシーンにも乗せて発進させろ。動いてる限り連中には捕まらん。」

この富士急ハイランドは、地球でも有数の絶叫マシーンを多数設置していた。
連続運転にしておけばゾンビ達が群がっても弾き飛ばされるだけだ。
元従業員の避難民の協力をへて、女子供老人を絶叫マシーンに乗せて稼働させていく。

「課長、正面ゲートが突破されそうだと・・・」

かつては数十万人の入場客を迎えるための大きく建設された正面ゲートはバスや車両で封鎖されていた。
だがゾンビ達は車両の下を潜ったり、屋根に登ってきて突破を試みていた。
警官達や青年団は警棒やバットやスコップで頭部を潰して防いでいたが押し寄せる数が増えてきて限界に達していた。
若い警官の一人が老人のゾンビに足首を噛まれて倒れこむ。

「高松!!」

同僚の警官がバットで高松巡査に噛み付いているゾンビの頭を叩き割り、高松巡査を後方に引き摺っていく。

「しっかりしろ、傷は浅い!!」
「いやだあ、ゾンビにはなりたくない・・・なあ、その前に・・・その前に・・・」

高松巡査と警察学校からの同期であり友人であった宮村巡査は目を閉じて決意する。

「すまん・・・」

バットを持っ手を握り締め振りかぶる。

「銃弾があればよかったな。あれなら一発で逝ける・・・」
「全くだ・・・せめて早く逝けるように力いっぱいやるな。」

憎んでも無い相手どころか、友人を全力でバットで殴り殺して頭を潰す。
考えてみるだけで憂鬱な気分になる。
次の瞬間、殴り倒されてるのは宮村巡査だった。

「か、課長?」

高松巡査の困惑する声が聞こえる。
0484創る名無しに見る名無し
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2018/06/12(火) 22:12:35.76ID:gG5qxPam
「馬鹿野郎、よく確認しろ。高松巡査を噛んだゾンビは総入れ歯じゃないか!!」

宮村巡査が倒した老人のゾンビの口からは、あきらかに総入れ歯だった物体がプラスチックの物体が飛び出て転がっている。

「・・・」
「・・・」

高松巡査も宮村巡査も立ち上がり、ばつが悪そうな顔をしている。

「俺、もうちょっと頑張ってみるよ。」
「そ、そうだな」

二人は再びバットと警棒を持って、正面ゲートの防衛ラインに戻っていった。
和田総務課長も警戒杖を持って走りだす。

「押し戻せ、ここが正念場だぞ!!」


第一特科連隊が樹海越しにゾンビ達の流入を防いでる間に第34普通科連隊は街中をうろつくゾンビを蹴散らしながら富士吉田市の南端にある富士急ハイランドの正面ゲート外側まで進出していた。

「隊長、あれを!!」

部下に促され小隊長の木原二等陸尉は高機動車の助手席の窓を開ける。
双眼鏡で確認できたのは正面ゲートに押し寄せる百体以上のゾンビだった。

「小銃だけじゃきついな。車を傍に着けて手榴弾をばらまく。」

高機動車がゾンビの群れに最接近し、窓から乗っていた隊員達が持っていた手榴弾を全部ばらまいて一目散に逃げ出す。
ゾンビの群れは高機動車を追おうとするが、手榴弾の爆発に巻き込まれて吹き飛ばされる。

「やったか?」

だが爆炎の数十体のゾンビが四肢を損壊させ、体に炎を纏いながらもこちらに向かってくる。
後続の73式トラックから降りてきた隊員達もこの光景に戦慄している。

「数は減らしてこちらに引き付けることは出来たか。小隊射撃用意、なるべく頭部を撃ち抜け・・・撃て!!」


鳴沢村
いまだに封鎖し切れていない鳴沢村では駐在と応援に駆け付けてきた近隣の警官15名が奮戦していた。
すでに隣町の河口湖町まで自衛隊の部隊が到着しているのは無線でわかっている。
400体近いゾンビをこの人数で捌けたのは奇跡に近い。
住民は公民館に避難させて猟銃を持った村民が僅かに抵抗できているだけだ。
銃弾も無くなり駆け付けてきてくれた警官達含めて13人が奴らの仲間入りをしている。
生き残ったのは最初にゾンビの襲来を通報した駐在の二人と今だにパトカーから出してもらえない自殺志願者の今井だけだった。
その今井も拾ったシャベルでパトカーの中から必死に戦っている。

「し、死んでたまるかあ!!」

公民館からの猟銃の援護を受けて、三人はパトカーでゾンビを跳ねとばしながら逃げ惑う。
ちょうどそこに第34普通科連隊の高機動車や73式トラックが数台到着する。
隊員達が降車しながら射撃を始めてゾンビ達の数が減っていく。


自衛隊は富士スバルラインから北富士演習場を基準に展開し、封鎖ラインを敷いて掃討にあたっていた。
だがこの封鎖ラインが敷かれる前に負傷者を多数乗せたマイクロバスが、中央自動車道河口湖インターチェンジ入り口から高速道路に乗り込む。
岩殿トンネル上り側出口で不自然に蛇行したあとにガードレールに車を擦り付けて横転した。
0485創る名無しに見る名無し
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2018/06/12(火) 22:16:03.08ID:gG5qxPam
横転したマイクロバスの中からいかつい顔をして、彫り物をしたガタイのよいゾンビ達24体が這い出てくる。
その群れは高速道路から大月市に侵入しようとしていた。
その光景はトンネル出口に設置してある道路公団のカメラで捉えられている。
通報を受けた大月市に防災サイレンが鳴り響く。


府中刑務所
富士吉田市や河口湖町、鳴滝村での惨劇の映像が、同拘置所での視聴覚室で流されていた。
観客は拘置所の囚人服を着た金髪碧眼の青年だ。

「なるほど興味深い。
一つ質問なんだが青木ヶ原の樹海とやら戦場か何かかね?
なんであんなに死体が放置されてたんだ?」
「あそこは自殺の名所と呼ばれててな。
転移後の混乱でますます数が増えて手がつけれなかった。」

背広にサングラスの無個性な中年が答える。
もう一年もの付き合いになるが青年は彼が笑ったり怒ったりするところを見たことがない。

「だからといって一地域に数千人も・・・交通機関の発達のせいか・・・で、何が聞きたい、佐々木主任調査官殿?」
「いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように、どのくらいだ。」
「要点をまとめた簡潔な質問の仕方だな。
まあ、アンデットのことは学術都市や魔術師ギルドでも詳細はわかっていない。
研究したがる人少ないのだよね。
死体の扱うの嫌だし。」

それに関しては青年も佐々木も同感であった。

「だが、長年の変人共の研究の成果はある程度蓄積されている。まずは『どこで』だな。
これは答えるまでも無い。
すでに現場で事態は起きてるからな。
次は『なぜ』は目的かな?
まあ、日本に対立する以外に無いだろう。
一種の騒乱だしね、これは。
ああ、諸君はあれをリビングデッドと考えてるのだろうが少し違う。
あれはワイトだ。
『どのように』は屍に邪悪なる魔法で悪霊を込めて作り出す屍人さ。
君等は屍人をなんでもゾンビと呼ばれる種で分類してるだろ。
実に乱暴な分類だ。
ところで・・・これ、『何を』に被らない?」

地球ではフィクションの中だけだった存在の分類なんてマニアしかやらんだろうなと佐々木は考えていた。

「つまり事態を引き起こした『だれか』がいることになる。
ああ、心当たりは無いよ?
ご存知の通り、私はもう一年近くここに拘留されてるからね。
だから『いつ』と聞かれると、事件の発生前の数日の間だろう、としか答えられない。」


山梨県
大月市
岩殿山トンネル出口の高速道路から降りた屍人の一団は、国道139号線から市街地のある大月駅方向に向かっていた。
途中の住民達は家の中で息を潜めているか、駅の方向に避難している。
避難民に誘導されるように屍人が追いて行ってるのだが、桂川を渡る高月橋に大月警察署の警官隊がパトカーで封鎖して待ち構えていた。
同時に近所の自衛隊山梨地方協力本部大月地域事務所から、三人しかいない自衛官が89式小銃を構えている。

「私は空自の人間なんだけどね。」

所長の大下三佐が溜息を吐く。
0486創る名無しに見る名無し
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2018/06/12(火) 22:20:34.96ID:gG5qxPam
燃料不足でロクに活動出来ない空自の隊員がこういった機関への出向が増えていた。
反対に陸自の隊員が機関からの原隊復帰が増えていた。
事務所の他の隊員も空自でレーダーサイトなどで働いていた者達ばかりだ。

「来たぞ!!」

警官の声に自衛官達がパトカーを盾に小銃を構える。
警官達も拳銃を構える。

「目標、数18・・・撃て!!」


府中刑務所
「次はなんだっけ?
多分君たちが一番気にしてるのは『どのくらい』か、これは終息までの時間や拡大する規模と解釈できるな?
普通、大陸ではあんな大規模なアンデット災害は起きないんだ。
戦場跡は司祭や神官達が浄化するし、放置されてた虐殺現場だって死体の悪霊数十体が存在して屍人が1体作り出される程度。
普通の闇司祭や死霊魔術師が魔力を込めても1日1体が限界じゃないかな?
私なら30体はいけるけど。
だからあの場所の悪霊の数とそれに魔力を注ぎ込んだ術者の力は異常だ。
少なくとも大陸には存在しない。」
「こつこつ毎日作り上げていたんじゃないか?」

佐々木主任調査官は自分で言っておいて、それは無いなと思っていた。
話に聞くかぎりでは、不可能では無いが毎日死体に囲まれて根気のいる作業だと思った。
第一、樹海近辺は県警や自警団がパトロールをしているのだ。
そんな死霊軍団がうろついて見つからない筈がない。

「腐敗した集団と四六時中いるわけだからな。
先に病気になりそうだ。
報告書も見せて貰ったが、噛まれた負傷者からは屍人になった者はいないのだろう?
君達のレンタルビデオからゾンビ映画を見せて貰ったが、我々の世界とは少し違う。
君達の世界では、噛まれたら死んでゾンビになる。
この世界では噛まれて死んだら屍人になる。」
「それはどう違うんだ?」
「一口噛まれた具合じゃ人間死なないよ。
と、いう意味だ。
その後、病気か殺人か事故か老衰か。
別の死因で死んでから屍人になる二次的な現象だ。
ああ、屍人に噛まれまくって死んだらさすがにその場で屍人だけどね。
これは病気の類いじゃなく呪いの類いなのさ。」

つまり加速度的に屍人が増加するわけではなく、今回の事態が終息すれば一段落ということだ。
あとは噛まれた負傷者達を拘束或いは監視すれば解決である。
長い時間が掛かるが、仕方がないだろう。

「だから早く治療してあげたまえ。
そうすれば屍人になることも無い。」
「治療出来るのかよ!!」

青年は初めて佐々木主任調査官の表情が変わったところを見て興味深そうに笑いだした。

「ああ、僕なら出来る。
だから現場に連れて行きたまえ。
たまには外の空気も吸いたいしね。」
0487創る名無しに見る名無し
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2018/06/13(水) 17:15:23.77ID:pzJCpdoQ
そこはこれから官公庁が集中する中央区にある大陸総督府の城での会議で決められることになる。
大陸総督府の城には連日のように大陸各所から貴族や街の代表者が陳情に訪れている。
開発の誘致や日本人とのトラブルの裁定、本領安堵の免許更新、再発行、モンスター退治の自衛隊の出動の要請など多岐に渡る。
総督府の執務室には多数のファンタジー小説やオカルト雑誌が本棚を埋め尽くす。
少しでも現状を理解してもらう為と頭を柔らかくしてもらう為だ。
他には江戸幕府に関する資料が本棚の一角を占めている。

「まさか、首獲りの恩賞を求められるとは思ってなかったな・・・」

大陸に存在する統一国家である王国を傀儡にする男、秋月春種総督府は机の上で頭を抱えている。
新香港の主席との会談などより気が重くなる。
何しろハイラインの代表がこの部屋にこれから生首を持って来るというのだ。
日本の古い文献を漁り、このような文化があったことを知られてしまったのだ。

「今後もこのような事態が続いたらどうしましょうか・・・部屋が生首で溢れるような事態は、ちょっと避けたいのですが・・・ああ、ここがよろしいかと。」

秘書官秋山も困り顔で書類を渡してくる。

「元帝国皇族天領アンフォニーか。
男爵領になるのかな?
ハイライン侯爵領からも比較的近くて、将来的な南北線の駅建設の候補地の一つか。
まあ、申し分ないんじゃないかな?
地下資源に関してはどうだ?」
「亜鉛、石炭、鉛の二号鉱山。銅に関しては三号鉱山の採掘が開始されています。現在は第6鉱山開発地域に指定されてました。
これは総督府直轄ですが、鉱山町に関する利権はアンフォニー領統治機関に委ねられるでしょう。」

数字の割り振りはこの九年で見つり、日本の管理下になった鉱山の順番である。
ちなみにアンフォニーが現在の調査対象としては最新のものだ。
南北線は南部地域に植民都市百済との間に引く列車の一つだ。
首一つの恩賞として、ノディオン元公爵に与える隠居地としては惜しくも無い。
ハイライン侯爵の申請によれは、将来的にこの新京に留学中の妹に分家として相続させる予定となっている。
公安からの報告では、その妹君は親日で進歩的らしい。

「進歩的という言葉に多少違和感を覚えるが承認しよう。
安堵状の手配は?」
「完成しております。」
「よろしい。
現地の総督府支所と駐屯の第六分遣隊への連絡はよろしくな。
しかし、・・・やっぱり生首は勘弁してくれないかな・・・」


大陸総督府の城門に到着した林主席と常武警少将は家馬車から降りたところで度肝を抜かれる。
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