彼女は私の防護服の裾を引っ張って、外へ出ようとせがんでくる。頭の上では彼女の意思を表すように、右へ左へ髪が揺れる。
「ヘルメットは?」
「え、あ!」
頭をさすり、驚いたような表情を浮かべる。
「置いてきた!」
言うと、彼女は振り向き、通路を右へと曲がって行った。足音が遠くへ行く。不意に音が止む。
「私、どうしたっけ!」
「…さっきトイレに行った時に忘れたんじゃない?」
「あ!」