「おねがい、もっかいもっかい!あんな点数見たことねーもん!」
「そ、そうかなぁ……?多分、すぐ誰かに抜かれちゃうと思うよ?」
纏わりつく子供に曖昧な笑みを返しつつ、雪乃は歩みを進めていた。
本当は射的屋の近くでヤエを待たなければいけないのだが、半ば子供たちから逃げる様に歩いている内にどんどんそこから遠ざかってしまっている。

(あーもう、何やってんの私!さっさと戻らないと……)
頭ではそう思っているのだが、何故か強く押しきれない自分がいる。
もう辺りには出店どころか人通りも無い、会場外れの野っ原に差し掛かりつつあった。
言いし得ぬ嫌な予感に胸をざわつかせつつも、雪乃は流れのままに相槌を打つ。
「おねーさん射的の天才だな!」
「う、うん。ありがとう」
「お菓子ごちそうさまー!」
「はいはい、どういたしまして」
「ねー、なんで海でもねーのに水着なの?」
「これは水着じゃないよ!」
「じゃあ下着?」
「そ、そんなわけないじゃない!」

何か、問答の雲行きが怪しくなってきた気がする。
「そりゃ暑いけどさー、お外で下着になっちゃだめだぜ?俺も母ちゃんに怒られたもん」
「聞けよ!だから、これは下着でも水着でもなくて、こういう服なの!」
「おれ知ってるぜ!こーゆー人はろしゅつきょーって言うんだぜ!」
「ろしゅっ……!!」
反射的に辺りに目を配らせるが、幸い周囲に人の影はなかった。
ほっと息をつくと、憤然たる面持ち(あまり怖くないが)で間違いを正しにかかる。
「露出狂じゃないよ!こういう服だって言ってるじゃない!それに、そういう事を女の子に言っちゃ駄目でしょ!すっごく恥ずかしいんだからね!」
「えー、お姉さんの格好の方が恥ずかしいと思うけどなー」
「だからそういう事を言うなあ!大体ね……ひゃあっ!」