0022普通の子ども ◆hqLsjDR84w
2013/01/24(木) 22:08:15.53ID:wqitE5aZ「…………」
「…………」
「…………よォ、しばらくぶりだな」
「…………あっ、バレた」
なにがあったのかは定かではないが、なにかしらがあったのが明白だった。
にもかかわらず、美神さんは素知らぬ顔で切り出す。
「悪いとは思うけど、間違ってたとは思ってないわよ。
あの状況で残ってても話がこじれるだけだったし、面倒ごとに巻き込まれるのも好きじゃないもの」
「み、美神さぁん! なにしでしたんですかあ!?」
「なにしたっていうか、なにもしなかったというか」
おどおどするおキヌさんをよそに、美神さんはしれっとしている。
少しばかり間を空けて、ジャンさんは静かに答えた。
「別に責める気もねーよ。
あんときは頭に来て怒鳴ったけど、終わったいまとなっちゃアレで正解だ」
反論を待っていたのだろうか。
意外そうに、美神さんの眉が揺れ動く。
「なによ、それ。
私にとって正解だったけど、アンタにとっちゃ違うでしょ? 怒ればいいじゃない」
「…………はッ。ンなこたねーよ。
お前が残ってたところで、あそこに転がる死体がもう一つ増えてただけだ。
あのあといろいろあって丸く収まったんだけどな、その直後に気味の悪い動く人形が現れて――」
ジャンさんは、自嘲気味に口角を吊り上げる。
「俺以外、全員殺されたんだからな」
静寂が辺りを包む。
誰一人として口を開かない。
『気味の悪い動く人形』――心当たりがある、ありすぎる。
「その人形って言うのは……」
尋ねようとして口籠もる。
特徴を聞いたところで、どうなるというのか。
それが誰なのかを知ったとして、なにになるというのか。
「安心しろよ。破片になるまでブッ壊してやった」
ぽん――と、頭を軽く叩かれる。
その手はひどく傷ついていた。
「なんだよ、美神。らしくねえじゃねえか」
「……なんでもないわよ」
「もし戻ってきたところで意味なかったって言ってんだから、気にしてんじゃねえよ」
「……別に。気になんかしてないわよ」
「そうかい」
言葉に反して、美神さんは下唇を噛み締めていた。
その理由を問うことなどできるはずもない。
「んで朧、このガキと霊はなんなんだ?
こんだけやられたあとなんでな、役に立たねえヤツとつるむ気はねーぜ」
「見た目で判断するのはよくないですよ。その少年は伸びる余地があります」