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巫女「来たれ!異界の勇者よ!」
0001創る名無しに見る名無し
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2012/03/11(日) 03:04:50.36ID:3JjnXiLB
 割と魔王・勇者ネタが多いので俺も乗ってみる
上手く書けなかったらスマン。

 目を覚ますと、そこは見覚えのない石の祭壇
の上だった、まるでアニメに出て来るような
いかにも"神官"といったような服を着た少女が
見上げていた。

巫女「よくぞ参られました、異界の勇者よ」

魔王「…………………………。」

巫女「勇者様、今やこの世界は
   大魔王ゾーマの手によって闇に包まれて
   おります……我らにはもはや戦える
   力は無く異界の勇者様だけが頼りで──。」

魔王「…待て。」

 さも当然と言わんばかりに、初対面の相手に
臆面も無く厄介ごとを押し付けようとする
若い巫女の言葉を遮り、おずおずと手を上げる。

魔王「あー……業者間違えているんだが」

0275創る名無しに見る名無し
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2012/05/30(水) 15:55:10.05ID:127oIdOE

 互角かに思えた戦いはすぐに一方的な展開となる。

勇者(男)「くそったれ!、同じ勇者なのに
     なんだって俺がここまで追い詰められる!」

 勇者(男)の言葉に、勇者(女)はロープで繋がれた、
勇者(男)の仲間達に一瞥くれてから、言葉を紡ぐ。

勇者(女)「知らなかったのか?
     私は一人で大魔王ゾーマを倒したんだ、仲間を引き連れて
     四人がかりで魔王と戦ったお前の強さが通用すると思うな」

勇者(男)「ギガデ…。」

 勇者が呪文を詠唱しかけるが。

マオ「マホトーン!!」

 完全に背にしていたマオから呪文封じの呪文を受けてしまい、
勇者のギガデインは不発となってしまう。

勇者(男)「テメェ!」

 勇者(男)の意識が逸れた瞬間、勇者(女)の剣が一閃し、
勇者(男)の王者の剣を二つに叩き折る。

 呪文を封じられ、武器を失った勇者(男)の瞳から
戦意が失われていく。

勇者(男)「ざまぁ無ぇなぁ…
     これが、世界中に勇者様と崇められた俺の末路かよ」

0276創る名無しに見る名無し
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2012/05/30(水) 15:57:04.38ID:127oIdOE

 折れた剣の柄を放り出し、その場に胡坐をかく。

勇者(男)「えぇ?無様なもんだろうよ…
     こう見えても、俺は向こうの世界じゃ
     英雄とか言われていたんだぜ?」

マオ「向こうの世界?どういうことだ?
   確か、別世界の勇者とか言っていたが」

勇者(男)「この世界は俺の知る限り、三つの世界があるんだ
     俺の居た世界、そいつの居た世界
     そして、この世界」

勇者(女)「どの世界も形や住む人々、そして
     街や城…、性別は違えど勇者が居る事
     そして、魔王バラモス、大魔王ゾーマが居る事が
     共通しているのよ」

 勇者(男)の言葉を勇者(女)が補足して行く。

カンダタ「って事は何か?
     俺や国王もあと2人ずつ居るって事か?」

マオ「カンダタ!無事だったのか?」

カンダタ「なんとかな…全身がいてぇぜ」

国王「つくづく丈夫なやつよ…
   ほれ、薬草じゃ」

 決着が付いたのを知ったのか、タニアとグプタを連れて
奥の牢から戻ってきた国王がカンダタに薬草の束を渡す。
0277創る名無しに見る名無し
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2012/05/30(水) 15:57:50.54ID:127oIdOE

勇者(男)「そうだな…盗賊カンダタ
     俺の世界の話では、
     そこの二人を攫ったのはお前とその子分達だ」

戦士(男)「シャンパーニの塔で俺達に敗れて
     見逃してやった後、バハラタに渡って
     人攫いをしていやがったわけだ」

魔法使い(女)「その後は、アレフガルドに渡って
     牢に捕まっていたわね」

勇者(女)「私も世界も似たようなものだった
     この世界のカンダタと…それに国王が
     違う運命を辿っている訳
     ──何よりも、決定的にこの世界が違っているのは」

 ────魔王が呼び出された事────。

 勇者(女)の言葉の続きを、マオは頭の中で補足する。
無理矢理連れ出したアリアハン国王、カンダタを連れまわす事になった
原因も全ては魔王が呼び出された事から話が始まった。

 勇者達の話を聞くに、勇者オルテガの旅の失敗が原因で、
父の敵となる魔王バラモス、その背後に居る大魔王ゾーマを
倒す旅に出た…。

 オルテガは志半ばで亡くなり、大魔王ゾーマを倒すも
元の故郷に帰る事が出来なくなり、アレフガルド(地下世界と言うらしい)
に骨をうずめる事になった。

 ガイア(今いるこの地上世界と言うらしい)に戻る術を探す中、
黒い闇(おそらくイシスで見たような奴)に包まれ、気が付いたら
ガイアに戻れたものの、そこは異なる世界
つまりはこの世界だったと言う。

0278創る名無しに見る名無し
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2012/05/30(水) 15:58:34.50ID:127oIdOE

カンダタ「んで、こいつらはいったいどうする訳よ」

 ロープで繋がれた勇者(男)達、(今は勇者も仲間と同じくロープに
繋がれている。

マオ「私としてはどうでも良いが…
   面倒じゃないのは…殺しておくか?」

グプタ「いえいえいえいえ…そんな!」

タニア「私達は、無事に帰れるんならそれだけで!」

 マオは被害者二人に視線を送るが、二人は目一杯に首を振って
マオの案を却下する。

国王「そうじゃな…
   ここからならダーマの神殿に預けるのが良いじゃろうな」

プックル「がふ?」

マオ「ダーマの神殿?」

 国王曰く…この東大陸はダーマ神殿の神官達によって、統治されており
冒険者達のトラブルもそのダーマ神殿が執り行っているのだと言う。
 また、冒険者達が転職などをして、新しい道を求めた場合にも
転職やその修行も行っているのだと言う。

勇者(女)「その辺りが妥当だろうな、では
     私は、この二人をポルトガまで送るとしよう
     そいつらの事は任せたぞ?」

タニア「皆さん!本当にお世話になりました」

グプタ「また、バハラタに来る機会がありましたら
    是非、ウチの店にも寄って行ってください」
0279創る名無しに見る名無し
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2012/05/30(水) 21:29:44.87ID:IU5l8tts
0280創る名無しに見る名無し
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2012/06/06(水) 23:46:29.96ID:SF2FJYAO
マンネリ感が半端無い。
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 ◆◇◆◇ ダーマ神殿への山道 ◆◇◆◇

 捕えた勇者達をダーマに引き渡すため、
ロープに繋がれたままの4人を連れて、ダーマ神殿への
険しい道を歩いてゆく、ロープに繋がれた勇者の気配を察してか
ダーマへの道すがら魔物達は一匹も出現しなかった。

 ダーマ神殿はバハラタからずっと北の山奥にあり、
山奥にロマリア城よりも立派で大きな神殿が佇んでいた、
一体どうやって、立派な神殿を山奥に建てたのだろうか。

 それはともかくとして…。

大神官「ぶわっかもーーーん!!」

勇者(男)「…………………。」

 ダーマ神殿の中央の祭壇にのった少女、歳で言えば
10代ぐらいだろうか、他の神官達とただ一人服装が
異なるエラそうな人。(実際偉いのだろう)が勇者達を一喝する。

大神官「勇者たる者が人攫いをするなんぞ、言語道断じゃ!
      この!馬鹿者めが!馬鹿者めが!馬鹿者めが!」

 ぽかぽかぽかぽか…。

 ダーマ神官長が手にした杖で勇者達の頭をポカポカ殴る、
しかし…本人は大激怒しているつもりなのだろうが、
小さな子供が怒っているようにしか見えず、イマイチ迫力がない。

0281創る名無しに見る名無し
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2012/06/07(木) 00:05:08.96ID:WQBRNsg5

大神官「ぜぃ…ぜぃ…ぜぃ…」

ダーマ神官「フォズ大神官様、落ち着いてください」

大神官「これが落ち着いていられるか!
    勇者が悪事を働くなんぞ、世も末じゃ!」

魔法使い(女)「だーから…
       アタシは反対だったのに」

戦士(男)「あ!ずっけぇ!」

 相手が若い少女だからか、態度に反省の色が見られない
勇者の仲間達。

フォズ大神官「…〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 それが…フォズ大神官の神経を逆撫でしたようで、顔を
真っ赤にして怒った表情を見せるが、怒った表情であるにも
関わらず可愛らしい・・と言うよりも、むしろ小動物のような
感じでなんか癒される。

フォズ大神官「…牢にぶち込んでおけ!」

ダーマ神官「ハッ!…ほら!立て!」

 フォズ大神官が命じると、屈強な神官達が勇者達を
引き連れて、神殿の奥(恐らく牢がある方向だろう)へと
退場して行く。

 それを見送って、フォズ大神官と呼ばれた少女は
大きく深呼吸して、落ち着きを取り戻す。
0282創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/07(木) 00:17:45.97ID:WQBRNsg5

フォズ「ご迷惑をおかけしました、
    まさか、勇者が悪事を働くなど…。」

マオ「連中はこれからどうなるんだ?」

フォズ「勇者の資格を剥奪し、Lv1から別の職業に従事させるか
    このまま牢に入れて反省を促すか…
    いずれにせよ、これから裁判で決まる事ですが」

カンダタ「別の職業?」

国王「お主、知らなかったのか?
   ここはダーマの神殿、己の職業や生き方を決める
   ための神殿じゃ」

国王「僧侶として登録し、修行を積めば回復魔術を覚える
   武道家ならば、格闘術を
   戦士ならば剣術や斧術を修行次第で習得できるわけじゃ」

カンダタ「じゃ、魔法使いとして登録すれば
     ババーンと強力な攻撃呪文を覚えるわけか!?」

フォズ「一から魔法使いとして、修行を積み、経験を重ねれば
    もちろん可能です」

 フォズの言葉にカンダタは腕を組んで暫し考え。

カンダタ「なぁ、その職業の中で
     一番凄ぇのってなんだ?」
0283創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/07(木) 00:22:28.33ID:WQBRNsg5

フォズ「攻撃魔術も、回復魔術も使え…
    さらに剣をも使える戦いのエキスパート『賢者』と
    呼ばれる伝説の職業があります」

カンダタ「じゃー、それだ!それが良い!
     それに転職する」

マオ「……………そんな簡単になれるものなのか?」

 伝説の職業と言われるぐらいだ、簡単にその『賢者』とやらに
なれるとはどうにも思えない。

フォズ「そうですね、修行の果てに悟りを開く事が
    できれば…或いは」

国王「あー…無理無理………」

 国王が苦笑しながら手を左右に振る。

マオ「他にどんな職業があるんだ?」

フォズ「そうですね、貴方達の場合は…
    戦士、武道家、魔法使い、僧侶、商人、盗賊、遊び人
    と、言った所でしょうか」

カンダタ「言うまでも無く今の俺は………」

マオ「盗賊だな、どう見ても」

0284創る名無しに見る名無し
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2012/06/07(木) 00:29:47.13ID:WQBRNsg5

カンダタ「…賢者…か。」

 どうせ転職するならば、どの局面でも役に立つと言う
オールラウンダーの『賢者』になりたい。

 しかし、その為の修行は困難を極めるのは間違いない、
何にせよ…伝説の職業と言われるぐらいだ。

カンダタ「手っ取り早く、悟りとやらを開いて
     その賢者とやらになる手段はねぇのかよ」

プックル「………………わふぅ。」

国王「…そう言っている限りは、無理じゃないかの?」

 そんな美味い話がそうそう転がっている訳でもない、
第一、そんな簡単に賢者とやらになれるなら────。

フォズ「ありますよ?…一つだけ」

マオ「………あるんだ」

フォズ「ただし、命は保障できませんけどね」

カンダタ「いいねぇ…俺好みの話になって来たじゃねぇか」

 フォズの言葉にニヤリと笑うカンダタに、
国王とマオ・・そしてプックルは溜息をつく。

国王「…知性の欠片も無さそうな、この男が『賢者』ねぇ」

マオ「『僧侶』とかに転職したとしたら、破戒僧みたいで
   格好良かったんだけどな」

国王「そもそも、何を悟るんだ?こやつが」

カンダタ「………………おめぇら…言いたい放題だな」

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今日はここまで、ペースダウン中で面目ない。
詰むぐらいなら、話を完結させたいけど
その時間も無い訳でして。
0288創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/22(金) 00:24:04.36ID:k+TPmFv3
むぅ。
仕事が激しく忙しくなってきたら、
ペースが遅くなるけどそれでも良ければ。
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 ◆◇◆◇ ダーマ神殿北部 ◆◇◆◇

 ダーマ神殿をさらに北上し続ける事、3日
古びた塔が遠くに見えて来る。

カンダタ「あれが、ガルナの塔って奴か?」

マオ「貰った地図によると、そうらしいな。」

 カンダタの問いに地図を見ながら応じるマオ、
フォズ大神官の話によると、最強の職業『賢者』になるための
心得が書かれた書物『さとりの書』がそのガルナの塔に
眠っているらしい。

国王「しかしまた、随分と人が来ているようじゃのぅ」

マオ「私達と同じくさとりの書を求めて来たか
   それとも修行に来たか───────。」

 ガルナの塔へ向かう途中、多くの冒険者達とすれ違い、
また塔には賢者を目指すであろう、冒険者達が入口に
群がっていた。

 ガルナの塔の入口ではダーマ神官の服を着た男が、
大声を上げて列整理していた。

神官「押さないで、一列に並んで下さい
   さとりの書に挑戦される方はこちらに並んでください
   挑戦料は御一人様、一万ゴールドです」

0289創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/22(金) 00:25:46.39ID:k+TPmFv3

マオ「まるでお祭り騒ぎだな。」

カンダタ「い…一万ゴールドだってぇ!?」

 ガルナの塔に群がる冒険者達を客に露店まで出ていると言う。

国王「それだけ人気がある職業って事なのかのぅ
   賢者と言うのは」

マオ「…………そう…らしいな。」

カンダタ「それにしても、すげぇ人の数だな
     200人ぐらい居るんじゃねぇか?」

 集まった人間もそれぞれだ、ドラゴンキラーにドラゴンメイルで
装備を固めた、屈強そうな女戦士から、武道家のくせにひ弱な
体つきをした男まで様々だ。

カンダタ「よう、随分上機嫌だな。」

 塔の入口から出てきた、さとりの書の探索に挑戦した帰りであろう、
商人達にカンダタは声を掛ける。

 その中の一人、女商人が足を止めマオを見て…、その横に連れられた
プックルを見て驚きの表情を見せる。

プックル「…?」

 その横でプックルの喉をなでているマオを見ると、
ひとまず害は無いと知ったのか、安堵の表情を見せる。

女商人「アンタ達も…
    さとりの書を探しに来たってクチ?」

マオ「私が…と言うより、
   コイツがだな」

 マオの視線の先、カンダタを一瞥して…女商人は何か
モノを言いたげにしたが、首を横に振って言葉を飲み込んだようだった。

0290創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/22(金) 00:26:30.40ID:k+TPmFv3

 彼女が大事そうに手にしている書物を見て、マオは目を細める。

マオ「それが、悟りの書と言う奴か?」

女商人「運がよかったわ、隠し通路に隠された宝箱の中に
   運よく入っていたのよ」

 辺りを見回してみると、この女商人のほかにも、何人か
さとりの書を手にした冒険者達が嬉しそうにガルナの塔を
後にしていた。

マオ「やはり、賢者に転職したいのか?」

女商人「もちろん!そのためにわざわざ
    ムオルの村からダーマまで来たんだから。
    ここに居る連中は、みんなそうなんじゃないかな」

 女商人の視線につられて、マオもガルナの塔に挑戦する冒険者達の列に視線を送る、
どうやら一人ずつ挑戦するのではなく、まとまったグループ単位でガルナの塔に
挑戦しているらしく、何度目かのグループがガルナの塔に入っていくようだった。

女商人「とにかく、私はダーマに戻って
    この書を読んで賢者の修行に励む積りよ
    それじゃ、貴方達も頑張ってね」

カンダタ「おう、アンタも頑張ってな」

 軽く手を振って女商人はダーマ神殿の方へと歩いていく、
それを見送りつつ。

国王「伝説の職業…と言う割には
   随分と簡単に手に入るんじゃの、さとりの書って奴は」

0291創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/22(金) 00:28:10.48ID:k+TPmFv3

マオ「それは………どうだろうな。
   カンダタ、『賢者』って呼ばれる連中を
   どこかで見た事があるか?」

カンダタ「少なくとも、俺はロマリアでは見た事無ぇな…
   もっとも、ロマリアから東のダーマに渡って来る奴は
   俺達ぐれぇじゃねぇの?」

プックル「?」

マオ「バハラタでもダーマでも
   『賢者』と呼ばれる連中は居なかったように見受けられる
   たまたまさっきの連中がさとりの書を見つけただけなのか」

マオ「それとも、さとりの書を手に入れてからの修行が
   大変なのか………」

カンダタ「いずれにせよ、何かがありそうってコトか。」

 カンダタの言葉にマオは頷く。

マオ「連中が手に入れた、さとりの書ってのを
   見てみたい。」

国王「けど、どうするんじゃ?
   1万ゴールド払って、苦労して手に入れたさとりの書を
   赤の他人が少し見せてくれと言って、見せてくれる奴は
   そうはいなかろう?」

マオ「わざわざ頼まなくとも、
   もっと簡単な手段があるじゃないか」

 マオが不敵な笑みを浮かべると、国王やカンダタは嫌な予感が
したのか、なんとも言えない苦笑を浮かべる。

0292創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/22(金) 00:28:53.75ID:k+TPmFv3

 塔から出てきた冒険者の一人、見るからに新米戦士で
塔に挑戦する為に、お金を借りて挑戦したのであろう武道家の男に
狙いをつけ、マオは呪文を唱える。

 武道家の男が大事そうに抱えているさとりの書、本当に運よく
手に入れる事が出来たのだろう、すごく幸せそうな顔をしている。

マオ「────ラリホーマ!」

 マオが唱えた強力な眠りの呪文が武道家の男を襲い、
睡魔に襲われた男は道端の倒れそうになる。

国王「おっと…」

 倒れる直前、偶然を装って近くを歩いていた国王が
倒れそうになる男を支え、カンダタと共に木陰に移動させる。

カンダタ「…へへへ…悪いな、ちょっとだけ借りるぜ
     すぐ返すからよ」

 カンダタが小声でつぶやき、塔に集まっていた
他の冒険者達に見えないよう、武道家の男が大事に抱えていた
さとりの書を抜き取る。

 妙に手際が良い辺り、熟練の盗賊の技術を感じさせる。

カンダタ「…はいよ」

マオ「プックル、辺りの警戒を頼む」

プックル「ガウ!!」

 カンダタは手にしたさとりの書をマオに素早く渡すと、
マオはプックルに見張りを任せてさとりの書を開いて視線を落とす、
国王やカンダタも横から本を覗き込む。

0293創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/22(金) 00:30:42.13ID:k+TPmFv3

カンダタ「なんだ、この文字」

国王「…なんて、かいてあるんじゃ?」

 カンダタと国王が声を上げるのも当然、人間ではなく
書物は魔物達の間で使う文字で書かれていた。

 適当に数ページ読み、マオはおもむろにさとりの書を閉じる。

マオ「………………………………さとりの書…ね。」

カンダタ「読めたのか?」

マオ「魔法の基本についてちょこちょこと書いてあるぐらい
   わざわざ、人間に読めない文字で書いてあったな」

 本を軽く叩いて埃を落とし、指先でさとりの書をくるくると
回しつつ、マオは言葉を繋げる。

マオ「しかし…こんな落書きを読んだ所で、伝説の職業、『賢者』とやらに
   必要な技術が身に付くとは到底───────。」

プックル「ワウ!!」

 プックルが一声鳴くと、武道家の男が目を覚ます所だった、
木陰に寝かされた事に気が付き、目を覚ますなり大事な本が
無くなっている事に気が付き、大慌てで辺りを見回す。

武道家の男「無いっ!?…俺のさとりの書が無い!?」

マオ「これだろ?そこに落ちて居たぞ?」

0294創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/22(金) 00:32:31.37ID:k+TPmFv3

 マオが男にさとりの書を返すと、男はひったくるように
本を受け取り、頭を下げる。

武道家の男「ありがとう、アンタ達が
     木陰に移動してくれたのか」

マオ「突然倒れてびっくりしたぞ、余程疲れていたのか?」

武道家の男「ガルナの塔でずっと戦っていたからかな
     疲れが溜まっていたのかもな、アンタらはこれから
     ガルナの塔に挑むのか?」

カンダタ「おう、そのつもりで来たんだけどな」

武道家の男「そうか、頑張れよ」

 素敵な笑顔を残して、ダーマ神殿の方へと歩いていく
武道家の男………少し、罪悪感が無い事も無い。

国王「…………どうするんじゃ?」

マオ「あんな落書きを書いて、法外な値段を巻き上げている
   そこのダーマ神官達に、少し話を聞かせて貰うだけだ
   今は人目があるからな、深夜になったら塔に忍び込もう。」

カンダタ「やれやれ…、どうしていつもこうなのかね
     俺達はよ。」

 マオの言葉にカンダタはため息交じりの言葉を吐き棄て、
国王は肩をすくめる。

//---------------------------------------------
久々に書くと、忘れるわぁ
最近、仕事が忙しくなったのと家の事情で家事もしないと
いかんので、書く暇が全然ないのですよ。

ってなわけで、今日はこの辺りで。
0295創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/22(金) 01:48:30.59ID:muH03OWv
>>294
ゆたりと待ってる!
0297創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/24(日) 17:00:55.01ID:3+nhPTkp
さて、展開考えるのが厳しくなってきました
こう言う物って、全部通しで考えないと
後が厳しくなるやね。
//---------------------------------------------

 ◆◇◆◇ ガルナの塔(夜) ◆◇◆◇

 日が暮れるとガルナの塔に集まっていた冒険者達は
一斉に居なくなる、諦めてダーマに戻った者、近場のキャンプ地で
テントを張るもの、さとりの書を手にして帰った者。

 冒険者達が居なくなった夜の塔ではダーマの神官達が
働いていた。

 ふと、箱を引き摺って歩いていたダーマ神官兵の一人が
物音に気が付き、ランプを物音の方向に向ける。

ダーマ神官「なんだ!?」

マオ「動くな。」

ダーマ神官「っ!!」

 突然背後から冷たい刃先が首筋に触れる。

ダーマ神官「なんの真似だ!」

マオ「偽物のさとりの書を配って、金を巻き上げる
   随分と儲けているみたいだな」

ダーマ神官「に…偽物!?
      いったい何の話だ」

0298創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/24(日) 17:01:41.06ID:3+nhPTkp
 マオがダーマ神官の引き摺っていた箱を蹴っ飛ばすと
中から大量の書物が床にぶちまけられる。

 床に転がった本の中の一冊を国王が手に取り、
ダーマ神官の前にタイトルがわかるように見せる。

 床に転げた本のタイトルは全て『さとりの書』と記載されていた。

マオ「この大量の『さとりの書』は一体何なんだ?」

ダーマ神官「偽物とは失礼な、それは
      フォズ大神官様が直々に書かれたさとりの書だ」

ダーマ神官「賢者になる資格を持つ冒険者を選定するため、
      冒険者達の試練をここで行っているんだ
      気が済んだらとっとと外に出て──……」

マオ「…………………そうかい」

 小さく言葉を吐くと、マオはダーマ神官の方に手を置き、
次の瞬間、ダーマ神官は床に激しく叩きつけられた。

カンダタ「おめぇ、いきなり何を──……」

 さすがにカンダタが抗議しようとした所で、

突如、神官の体が眩い光に包まれる。
 光が収まると、そこには先ほどまで居たダーマ神官ではなく
一体の魔物がその場に倒れていた。

 オニギリのような三角形に小さい手足を付け、小さな手には
自らの身長を超過する長さの杖が握られていた。

 体の全体は緑のシワシワであり、弛んだ皺の間からは不気味な
黄色い瞳が覗いていた。
0299創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/24(日) 17:02:29.33ID:3+nhPTkp

国王「『げんじゅつし』…じゃと!?
   何故魔物が神官に変装して」

げんじゅつし「おのれ…貴様等
    ふざけた真似を」

 げんじゅつしは素早く呪文を唱えると、手にした杖をふりかざし
止める間も無く呪文を放つ。

げんじゅつし「メダパニっ!」

 杖の先から赤い光が放たれるが、マオとオルテガは
飛び退くようにして避ける、二人が避けた後ろには
国王とプックルが立っており、避ける間もなく赤い光に包まれてしまう。

カンダタ「国王っ!」

マオ「プックル!」

 メダパニの呪文を受けた二人の瞳は、正気の光を失っており
プックルは威嚇の唸り声をあげ、国王はマオに向かってホーリーランスを
構える。

げんじゅつし「…ふひひひひひ…殺しあえ!」

カンダタ「ちっ!汚ねぇ真似をしやがる
     うわっと!」

 プックルの突き出した黄金の爪の一撃を、右腕に大ばさみで
辛うじて受け止めるが、カンダタ反撃の手をためらう。

マオ「なんとか正気に戻すしかないだろう、
   でなければ、気絶させるしか無いだろ!
   …………くっ!」

 いつもより鋭い国王のホーリーランスの連撃を、剣で裁きながら
マオはカンダタに言葉を返す。
 いつもの必殺スタイルの剣術で戦えば、マオの方が実力は遥かに上ではあるが、
手加減しながらだと、国王の攻撃を受け流すのに苦労する。

国王「クケケケケケケケケケ!!!」

カンダタ「こりゃぁ…ひでぇ…」

 混乱…というより、人格的に壊れたような
笑いをしながら、連撃を繰り出す国王に、カンダタは苦笑しつつも
なんとかよける。

//---------------------------------------------
 って所で、これから夜勤仕事に出るので
ここらで引きます。
日曜に仕事…マンドクセ。
0300創る名無しに見る名無し
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2012/06/25(月) 03:14:19.92ID:XLJRXJ4a
しえん
ファイトです
0301創る名無しに見る名無し
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2012/06/28(木) 03:48:52.96ID:mNjHp+PU

国王「クケーケケケ!!!」

 完全に正気を失った国王だが、その動きは
正気の時に劣らぬほど、素早く正確なものだった。

 戦い方は頭ではなく体が覚えているのだろうか?
何れにせよ傍迷惑な事には変わりないが。

 国王の槍の刃先がカンダタの頬をかすめ、
鋭い切り口から血が流れる。

カンダタ「おっさん、いい加減にしろよっ!」

げんじゅつし「くふふふふ…せいぜい励むが良い!」

 混乱した国王とプックルを残して、げんじゅつしが逃げようとするが、
マオに足をからめ捕られ、その場に転げる。

マオ「逃がすと思っているのか?」

 そのままげんじゅつしの頭を足で蹴り付け、気絶させる
意外にあっさりとげんじゅつしは気絶した。
 それよりも厄介なのは。

プックル「グルルルルルル…………。」

 げんじゅつしに混乱させられたプックル、以前はキラーマシンを使って
互角に戦う事が出来たが、キラーマシンが無い今回は
生身で相手をしなくてはならない。
0302創る名無しに見る名無し
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2012/06/28(木) 03:49:31.06ID:mNjHp+PU

 さらに、混乱したプックルと国王が互いに対峙してしまっては、
プックルが国王をかみ殺してしまうので、国王とプックルの
間に割って入らないといけないと言うオマケ付きだ。

 ギンッ!

 プックルの黄金の爪と、マオの誘惑の剣が正面からぶつかり、
激しくぶつかった金属が火花を散らす。

マオ「カンダタ!そっちは任せた!
   プックルの方に近づけるな!」

カンダタ「任せたって言われてもよ!」

マオ「じゃぁ、プックルの方をやるか!?」

カンダタ「すんません、おっさんの方をやります」

マオ「私一人じゃ、プックルの相手はキツイ
   持ちこたえられるウチに国王をなんとかして
   正気に戻してくれ」

カンダタ「わかった、死ぬんじゃねぇぞ!マオ」

 カンダタが国王を引き付けるようにして走り出し、
塔の奥の階段を駆け昇って行き、国王もそれに続く。
マオとプックルが室内に取り残される。

 プックルの爪が一閃し、塔の石壁をぶち破る、
どうやら、国王以上に手加減は難しいらしい。

マオ「バギマ!」

 唱えた風の呪文が荒れ狂いプックルの足を止める、
そのまま剣の峰でプックルの鼻先を叩こうとするが、プックルは
素早いステップでマオの攻撃をあっさりと躱す。
0304創る名無しに見る名無し
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2012/07/07(土) 03:05:10.18ID:GJn6vH0O

最近アクセス出来なかったから詰みにするつもりだったけど
スレが復活した上に紫煙してくれたので続行。
//----------------------------------------------------

マオ「くっ!」

プックル「ガゥ!!」

 すかさずプックルの反撃が来るが、プックルの爪を
再びギリギリで躱すマオ。
 イシスで貰った星降る腕輪が無かったら、今ので
やられていたかもしれない。

げんじゅつし「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」

 動きの素早いマオは後回しにして、プックルは
気絶していたげんじゅつしを前足で掴むと、
喉にかぶりついて生きたまま捕食する。

 辺りにげんじゅつしの血液などが飛び散り、
魔物のなんとも濃い血臭いが充満する。

 マオもカンダタも国王も、一歩間違えれば
げんじゅつしと同じく、生きたまま捕食される事になるだろう。

 とにかく、どうにかしてプックルを正気に戻さないと、
大変な事になる。

マオ「プックル!」

 メダパニの効果を切るには、叩いて正気に戻すか
水でもぶっかけるかぐらいしか手が思いつかない。
 げんじゅつし一匹では腹が満足しなかったのだろうか、
プックルは再びマオに向かって飛び掛かってくる。

 人の力では真面に受け止める事は出来ない、
飛び掛かって来るプックルの力を利用するように
剣を突きの要領で構えるが、プックルは剣を避けるように
マオの背後に回り込もうとする。
0305創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/07(土) 03:05:49.20ID:GJn6vH0O

 しかし、右手に持った剣の攻撃はフェイク
本命はすれ違いざまに唱えた呪文を左手から放つ。

マオ「ラリホーマ!」

 途端にプックルの巨体の動きが鈍くなり、
プックルは部屋の角で丸くなる。
 一か八かだったが、なんとか呪文が効いてくれた。

マオ「ふぅ…正気に戻すのも命がけだ」

 味方になれば心強いが、敵にすれば手強い事
この上ない、プックルに限らず、カンダタや国王でも
同じ事ではあるが。

マオ「…ったく、好き勝手暴れてくれたものだ
   起きろ!」

プックル「ぷぎゃ!!」

 プックルの鼻面を叩くと、驚いて飛び起きる、
驚いたように辺りを見回す。
 どうやら、正気に戻ったらしい。

 戦闘の果てにぶち破られた石壁、倒された石柱
辺りを見回すとまるで廃墟のような有様だ。

プックル「………くーん」

マオ「気にするな、プックル
   たまたま、お前がメダパニを食らっただけだ」

 正気に戻ったプックルはそれらが自分のせいだと
申し訳なさそうな顔をするが、プックルのせいではなく
ただ単に運悪くメダパニが効いてしまっただけ。
 特にそれを責めるつもりは無い。

マオ「…………これは?」

 プックルの攻撃により崩れた石壁の向こうは部屋になっている
らしく、その部屋から青白い光が漏れ出ている。

0309創る名無しに見る名無し
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2012/07/08(日) 09:43:15.37ID:j1t7srEt
>>306-308
支援サンクス、嬉しい事を言ってくれるじゃないですかぃ。
更新速度が遅くてすまん
//---------------------------------------------

◆◇◆◇ ガルナの塔(最上階) ◆◇◆◇

 マオがプックルを正気に戻したその頃、カンダタは
メダパニで混乱した国王に四苦八苦していた。

国王「クケーケケケ!!」

カンダタ「おっさん!いい加減にしないと
     まじでブッ殺しちまうぞ?」

 とはいえ、人の首をも落とすぐらいのおおさばさみで
国王の首を落としたらシャレにならない訳で。

 隙あらばハサミを装着していない側の、左で
顔にジャブでも打ち込んで目を覚まさせてやりたいところだか、
相手が槍なんてモノを振り回しているから、その隙が無い。

 防戦一方のまま塔の上層まで逃げ回って来ていた。

 ガルナの塔は元々、ダーマで転職した者達の
修行の場として作られたらしく、二つの塔を繋ぐために
ロープが張られている。

 よりにもよってそのロープの上で絶賛戦闘中だった。

国王「ケェェェェェ!!!」

カンダタ「正気を失っている割にゃ、
     ロープの上をしっかり渡れるって、どゆことよ!?」

 国王はそのロープの上で器用に槍を振り回し、カンダタの右腕のハサミが
その槍の連撃を受け止める。

 今まで数々の戦いを潜り抜けてきただけあって、二人とも
バランス感覚は大したものだった。

カンダタ「いい加減にしやがれっ!」

 カンダタはロープの上で大きくジャンプし、国王とカンダタが乗った
ロープを大きくしならせる。

 たまらず国王がバランスを崩した隙に、カンダタはロープを左手で掴み
右腕の大ばさみで足元のロープを切断する。

国王「ケエエエエェ…………」

 足場を失った国王は塔の下へと落ちて行き、カンダタも落下していった
国王を追って飛び降りる。

0310創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/08(日) 09:44:42.26ID:j1t7srEt
 ロープの上からは見えなかったが、ロープの下は丁度
屋根の上になっているようであり、思ったより高さがなかったようである。

 元盗賊のカンダタは屋根の上に難無く着地し、不意を突かれた
国王は見事に背中から屋根に激突したようだ。

 国王は大の字になって失神しており、打ちつけたであろう頭の
辺りから血が流れていた。

カンダタ「お…おい…まさか
     死んじゃいねぇだろうな?」

国王「いっ…ててて…ここは何処じゃ?」

 慌ててカンダタが国王に駆け寄るが、国王は何事も無かったかのように。
起き上がる、頭を思いっきり打ちつけた事で、メダパニの呪文が
解けたようである。

国王「うぉっ!?…なんぢゃこりゃぁ」

 起き上がるなり、後頭部の出血に気が付き慌てて騒ぎ出す国王、
どうやら大丈夫なようだ。

カンダタ「ったく、殺さなかっただけ
     有り難く思えっつーの」

国王「……お主か!
   人が気絶している間に後頭部をぶん殴るとは、
   なにかワシに恨みでもあるのか!?」

カンダタ「おおよ、言ってやりてぇ文句は
     山ほどあるっつーの」

カンダタ「けど、そんな事よりもプックルと戦っている
     マオの方が心配だ…
     さっさと助けにいってやらねぇと」

 カンダタは屋根の上から飛び降りれそうな所を
探すが、屋根から地面に飛び降りれそうな所は見当たらない。

 仕方が無いので今立っている屋根の一部をを壊して、
部屋の中に忍び込むしかないようだ。

 国王が鞄から薬草を取り出して自ら治療している間、
カンダタは大ばさみを振るって屋根板の一部を破壊する。

国王「壊す事無いじゃろ」

カンダタ「しかたねーだろ、
     急がねぇと、今度はメダパニ食らったプー公に
     マオが食い殺されちまうぜ」

0311創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/08(日) 09:45:31.17ID:j1t7srEt
 そこまで言って、国王は自分もメダパニを食らって
大暴れしていた事に気が付いたようだ。

国王「…………迷惑をかけたか………すまなかったの」

カンダタ「貸しとくぜ
     うし、行くぜ」

 人が一人分くぐれるぐらいの穴が屋根板に空き、
カンダタは建物に侵入して行く。


 屋根から忍び込むと、そこは小部屋になって居たようだ、
小部屋の真ん中に古い宝箱が置かれている。

カンダタ「おっと、宝箱だぜ…へへへへ」

国王「………お主、急ぐんじゃなかったんかい」

カンダタ「宝箱開けて行く時間ぐらいあるって
     ………お?」

 宝箱を開けると、その中に赤い布が敷き詰められており
一冊の本が大事に納められている。
 一見すると昼に冒険者達が手にしていた「さとりの書(偽)」の
ようにも見える。

 しかし…なんというか、神々しさがあると言うかオーラがある。

カンダタ「なんだ…こいつは…」

 カンダタが恐る恐るその本を開き、中を見ると見た事も無い
文字であるにもかかわらず、頭に直接入って来るような気がする。
 書いて有る事は理解できる、それを言葉にしろと言われると
難しい話だが。

国王「気になるならば、持っていけば良いじゃろ!
   先を急ぐんじゃろうが」

カンダタ「お…おぉ…」

 国王に言われて、カンダタは自らの鞄の中に手に入れた本を
仕舞い込む、部屋の出口を探すが…見当たらない。

 どうやら完全な密室なようであり、今度は室内の床を壊して
下の階に戻らなければならないようだ。

国王「ほれ!床を壊すぞ!
   手伝わんかい!」

カンダタ「………下がってろや」

 国王を後ろに下げて、カンダタは床のひび割れた所(古い塔のようで
ボロボロなのだ)に右手を当てて、呪文をとなる。

カンダタ「………イオ!!」

 放った呪文が爆発し、老朽化した床にあっさりと大穴を開ける。
爆発を巻き起こす呪文イオ、今まではそんな呪文は全然知らなかった
0312創る名無しに見る名無し
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2012/07/08(日) 11:06:32.50ID:j1t7srEt

 今まで知っていた呪文はカザーブに来た魔法使いに酒を奢って
教わったベギラマと数種類の呪文。

 それも見よう見まねで発動しているような、怪しいヘナチョコ
呪文だった訳だが、今発動した呪文は基本がしっかりした
ちゃんとした呪文だった。

カンダタ「この本…まさか…」

国王「ぼーっとしているでないわ!」

 カンダタが手にした本、それはガルナの塔に隠された
本物のさとりの書だった。

 床を破壊して降りた下のフロアは外に繋がっているようで、
元々げんじゅつしにメダパニを食らった所まで無事に
戻ってこれたようだ。

カンダタ「………こりゃぁ…ひでぇ」

 戻って来るなり、あまりの惨状に驚く国王とカンダタ、
部屋の真ん中には食いち散らかされたげんじゅつしの遺体、
そして、崩された石柱やら、壊れた壁やら…。

国王「マオにせよ、プックルにせよ
   ちゃんと生きているんじゃろうな」

カンダタ「………あいつらが簡単に
     やられるとは思わねぇけどな」

 カンダタは青白い光が漏れ出ている崩れた壁の
先の部屋を見て、先に進んで行く。

カンダタ「…どうやら、ここから下に行ったらしいな」

国王「何故分かるんじゃ?」

カンダタ「そこの階段の横、
     小さく目印が付けられているだろ?」

 部屋の中には地下へつ続く階段があり、カンダタは
国王を連れて階段を下りて行く。
0313創る名無しに見る名無し
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2012/07/08(日) 11:07:16.34ID:j1t7srEt


 ◆◇◆◇ ガルナの塔(地下階段) ◆◇◆◇

 国王とカンダタがマオとプックルを追ってくる
その数分前、マオとプックルは青白い光が漏れ出ている
地下室への階段を下りていた。

プックル「ガウ!」

マオ「分かっている」

 階段の奥からする臭いにプックルは気が付いたのだろう、
慎重に進むべきだと注意するプックルにマオは応え、
剣を手にしたままゆっくりと進む。

 ────キャァァァァァァ──!!

 階段の奥から、女の悲鳴が聞こえた気がした
階段の行き止まりはT字路になっており、光が漏れ出ている
方に向かって気配と音を殺しつつ進む。

 半分開いた扉から、部屋の中を覗き込むと…。

 体長にして10メートルぐらいの恐竜のような頭を持ち、
緑のローブと赤いマントを来た魔物と貧相な顔をした
人間の男───そして、服を脱がされて鎖で壁に吊るされた
勇者の仲間の一人、魔法使い(女)が居た。

 青白い光は数々の実験用の魔法器具が放つ光のようで、
部屋の中で強い光を放っていた。

巨大な魔物「……こいつはあの勇者一味の仲間だ
      こいつの魔力は一味の中でも最強だ、
      少しは期待できるとおもうが、やれ」

貧相な男「わかりました、バラモス殿」

魔法使い(女)「やめてぇぇえええええぇ!!お願い!
       何でもするから!!」

マオ(──あいつが…魔王バラモス──。)

 だとすると、プックルと二人だけで下手に飛び込むのは危険だ、
人間の男を倒すぐらいなら訳は無いが、魔王バラモスの方は
そうはいかないだろう。

0314創る名無しに見る名無し
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2012/07/08(日) 11:08:24.54ID:j1t7srEt

 バラモスが指示すると、男は赤い宝石のようなものを手にし、
壁に吊るされた魔法使い(女)へと近づく。

 男が近寄ると、魔法使い(女)は恐怖の表情を顔に貼り付け
身をよじって精一杯の抵抗を見せる。

貧相な男「ええぃ!こいつ、暴れるな!」

バラモス「ええぃ…何をしている、バルザック
     よこせ、ワシがやる」

 魔法使い(女)の必死な抵抗に近づけない男に業を煮やしたのか、
バラモスはバルザックと呼ばれた男から赤い宝石を奪い取り、
魔法使い(女)の前に立つ。

マオ(あの…宝石は見覚えがある、どこでだ…
   それにバルザック、どこかで聞いた事がある)

 左手で魔法使い(女)の顔を掴んで口を空け、右手に持った
赤い宝石のようなモノを口の奥に押し込める。

 魔法使い(女)は飲まされた宝石を吐きだそうと抵抗するが
水で無理やり流し込まれてしまう。

魔法使い(女)「イイイイィィィヤァァァァァ!!」

 魔法使い(女)が絶望に憑りつかれた顔で絶叫し、暴れる…
しかし鎖に縛られた状態ではどうする事も出来ずに
ただ、鎖を鳴らす事しか出来なかった。

 やがて、失神したのだろうか糸が切れた人形のように…
ふと…大人しくなる。

 大人しくなると同時に、バルザックは壁の鎖を外し、
魔法使い(女)の体を床に下す。

 ────ドクン…ドクン…ドクン。

 魔法使い(女)の体から心音が聞こえたような気がした、
やがで、その音は大きくなり続け…、その音に合わせるかのように
魔法使い(女)の体が痙攣する。

0315創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/08(日) 11:11:43.33ID:j1t7srEt
 そんな痙攣が何度か続き、やがて魔法使い(女)の体に異変が起きる、
華奢な魔法使い(女)の体から血管が浮き上がり、全身の筋肉が
異様に盛り上がる…。

 体が徐々に膨れ上がり、口は裂けて牙のようなモノが見える。
頭からは角が伸び、背中の皮膚を裂いて大きな4枚の翼が広がる。

 体がバラモスと同じぐらいの大きさまで巨大化した所で
かつて人間だった頃の体の皮膚が耐えられなくなったのだろう、
透明な体液と同時に、皮膚がボロボロに裂けて皮膚の下から、
まるで脱皮するかのように鱗の覆われた新しい皮膚がむき出しになる。

 現れたのは鱗の体だけではなく、長い尻尾もついでに姿を現す。

 強いて言うならば、竜と人を組み合わせたような生物に
『進化』した。

魔法使い(女)「ギャァアアアアア!!!」

 魔法使い(女)…いや、竜人は
すでに人のものではなくなった声で咆哮をあげる。

 声は衝撃波となって部屋の中で吹き荒れ、部屋にあった
数々の実験器具が砕け散る。

 魔法使い(女)が魔物になった時、マオは赤い宝石の正体を
思いついていた。

マオ(………進化の…秘宝………。)

 かつて…数代前の魔王エスタークが手にし、地獄の帝王と
呼ばれる力を手に入れるに至った禁断の秘術、神と戦い
秘術や宮殿ごと土の下の封印され。

 残された一族は権力を大きく失う事になった。

マオ(それを知る者を、異世界から呼び寄せた…
   と言う事だろうか。)

//---------------------------------------------
ってな訳で、ちみっとだけ核心に近づいた所で
ここらで今日は引いておきます。

ダーマの話が終わるまで書きたかったけど
色々用事が有る訳でして。

0317創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/08(日) 18:26:33.90ID:y68m1AOq
つC
0321創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/10(火) 02:15:51.30ID:ifjik/7i

>>316-320  サンクス、ここからちゃんと話を狙い通りに
回せるかプレッシャーがかかる所です。
と、言うより、いきなり初投稿から話が広がり過ぎ、
たったこれだけの投稿に、3時間ぐらいかかるといふ。
//---------------------------------------------

魔法使い(女)「シギャァアアアアア!!!」

 魔物になった、魔法使い(女)は一声吠えると
手近に居たバルザックに襲いかかろうとするが、
バラモスによってあっさりと捕まえられてしまう。

バラモス「…………期待させておいてこの程度か」

バルザック「……やはり…進化の秘法を完全なものとする為には
     闇の力が足りない、魔力で補えるとも思ったが
     無駄だったようだ」

バラモス「………それで、闇の力とやらを補うには?」

 バラモスの問いにバルザックは机の上に置いてあった一冊の
分厚い古びたノートを手に取りページをめくる。

 ややあって、目的のページが見つかったようで、バラモスに
見せながら言葉を告げる。

バルザック「私の居た世界には、黄金の腕輪と呼ばれる
     古代のアーティファクトがあった、これにより
     闇の力を増幅させ、進化の秘法を完全なものに出来る」

バラモス「ただの、金で出来た腕輪では無いのだろう?」

バルザック「物の価値を知らぬ愚か者どもにとっては、
     ただの金の腕輪だが、その実は金では無い。」

バルザック「魔界でのみ手に入る、希少金属で出来た腕輪
     とか、古文書には記載されていたな
     いずれにせよ…この世界には無い物だろう」

 バルザックはノートを閉じ、机の上に置いてバラモスに拘束されたままの
魔法使い(女)をまじまじと見つめる。

魔法使い(女)「グルルルルル!」

バルザック「ふむ…やはり、人としての知能すら失ったか」

 バルザックは小さく呟くと、棚の中から瓶を取り出し、瓶の中の液体を
布にしみこませ、魔法使い(女)に嗅がせ、

 ややあって、魔法使い(女)の動きが鈍くなる。

 どうやら、眠らせる何かの薬品を嗅がせたらしい。
0322創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/10(火) 02:16:42.10ID:ifjik/7i

 バラモスとバルザックの注意が逸れた所で、マオはプックルに
戻るように手で合図し。

マオ「レムオル!」

 キィン!!

 小声で呪文を唱えマオは自らの姿をかき消し、気配と音を殺しつつ、
部屋の中に忍び込み机の上に置いてある、さきほどバルザックが手にしていた
ノートを取る。

 〜錬金術記録〜 エドガン。

 使い込まれた分厚いノートには掠れた文字でそんなタイトルが
書かれていた。

 体に何も触れないように、足元にも注意し…音を立てないように
慎重に部屋をそのまま抜け出し、プックルを連れて通路を戻る。

 バルザックとバラモスが居た部屋から離れた所で、盗んだノートを開いて
中を見てみると。

マオ「……大当たりか…。」

 ノートには進化の秘法について、ありとあらゆる知識が
記載されていた、このノートと魔法の知識がある程度以上ある
者ならば、進化の秘法を作り出す事が可能だろう。

 かつてのエスタークが地獄の帝王として、魔界の覇権を握った
究極の技術が今、この手の中にある。

 そして…もう一つ。

 実はバラモスやバルザックが話していた黄金の腕輪の
代りになる物も、マオには心当たりがあった。

 魔界の希少金属───エビル・メタル───。

 金に似た物でありながら、金より強靭であり強い魔力を秘めている物、
そう、いくらプックルの力で魔物に叩き付けても傷一つつかない
この黄金の爪こそが、エビル・メタルそのものなのだろう。

 進化の秘法を完全な状態で使えさえすれば、この脆弱な
人間の体からおさらばできるだろう…、それでいて元の世界に戻れたら
魔界の全てを掌握し…人間を駆逐し、世界を魔族の手に取り戻す事も
たやすいだろう。

マオ(………本当に?……)

 かつての自分ならば、それに疑問を持たなかっただろう、
喜んで進化の秘法を使い、究極の力を手にしていたかもしれない、
しかし、人間はそれすらも超える力を持って居るのではないだろうか?

 ともあれ、身の振り方をどうするにせよ、このノートとプックルの黄金の爪は
切り札になるのは間違いない。
0323創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/10(火) 02:17:22.36ID:ifjik/7i

 ドン!

カンダタ「…うぉわっ!?」

国王「……な…なんじゃ!?…」

 考え事をしながら通路を戻る途中、T字路にまで戻った所で
突如何者かに突き当たる。

マオ「カンダタ、それに国王!」

カンダタ「よう!無事だったか?
     一体ここは何なんでぇ?」

マオ「説明は後でする、とにかく今はここから────」

 とにかくバラモスに気が付かれる前に離れようするが。

???「……なんだ?…そこに誰かいるのか?」

 入口と、バラモス達の居る部屋では無い方の残り一方向から
声が聞こえる。
 マオ達は顔を見合わせると、声がした方へと通路の奥に進む。

 通路の奥は多数の牢があり、冒険者の恰好をした者達が
何十人と詰め込まれていた。

 マオ達の姿を見るなり、牢に捕えられていた人々が起き上がり、
口々に騒ぎ出す、

武道家(男)「…助けだ!助けが来た!」

商人(女)「出して!バラモスが戻ってくる前に!」

魔法使い(男)「ここから出してくれ!
       鍵はそこの壁にある!」

戦士(女)「馬鹿か!騒ぐなって
     気づかれちまうだろ!?」

 思い思い、口々に叫ぶ冒険者達、
昼にガルナの塔の前で見かけた者もその中に居た。

カンダタ「こいつぁ…一体」

マオ「人体実験の候補者…か。
   どうやら…さとりの書をエサに腕の立つ冒険者達を
   集めていたらしいな」

国王「……じ…人体実験
   それにバラモスじゃと!?」
0324創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/10(火) 02:35:53.82ID:ifjik/7i

 マオは壁に掛かっている鍵の束を取り外し、
どれがどの鍵なのかよく判らなかったので、牢の中に
放り込んだ。

マオ「これで、開けられるだろ?
   後は自分達で何とかしてくれ」

 冒険者達は我先にと、鍵の束を奪い合う。

プックル「…がう!」

カンダタ「どうした?プー公?」

 プックルが吠える方向を見ると、奥の牢屋に一人で入れられている
男が言う、奥の牢に捕えられていたのは見覚えのある男であり、
この男なら、特別扱いで牢に入れられているのも納得出来た。

勇者(男)「……よぅ、妙な所で会うな。」

マオ「………勇者(男)…」

勇者(男)「ザマァねぇだろ?
     人攫いの挙句に魔王にとっ捕まったんだぜ?」

 自嘲気味に勇者が笑う。

勇者(男)「それで、オメェは何しに来たんだ?
     俺を笑にでも来たのか?」

マオ「そういう積りでもない…が、
   お前に言っておく事がある。」

 マオはバラモスとバルザックが、魔法使い(女)に進化の秘法を使い、
化け物にした事、そしてそれを目の前で見ながらも何も出来なかった
事を告げた。

 マオが勇者(男)に話す間、勇者(男)は目を閉じて
黙って聞いていた。

勇者(男)「そうか…アイツは…逝っちまったか
     アリアハンからゾーマを倒すまで、ずっと
     付き合ってくれたんだが…、ここで逝っちまうとはな」

勇者(男)「戦士(男)も、遊び人(男)も連れて行かれちまった…
     多分、あいつらもやられたんだな
     今まで星の数程の化け物を斬り殺してきたが
     最後は化け物になって死ぬなんて、笑い話にも
     ならねーや」
//---------------------------------------------
なんか、中途半端な終わり方な気がしますけど
今日はとりあえずこの辺りまでで。
・・・もぉ3時。
0326創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/13(金) 20:00:46.94ID:EiXiTOl6
ドラクエ3やりたくなってきた
0327創る名無しに見る名無し
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2012/07/13(金) 20:37:25.10ID:T6Nd+MBH
勇者さまはハローワークの求人票を眺めていた。

だが、そこには派遣とバイト、しかも給与は最低クラス。正社員の募集などカケラも存在しない。
勇者さまは低学歴な脳味噌で月給を換算してみたところ、月給は約9万円ほどであった。
今まで魔王と戦ってきた勇者さまだが、ファンタジックな夢から目覚めてみれば、月給10万円にも届かない非正規労働者でしかないのだ。

まあ、「魔王」なんてもの持ち出してみたけど、この現実社会における資本主義と新自由主義の方がよっぽど魔王にふさわしいわけだ。
その魔王という名の資本主義が新自由主義の嵐の中で大暴れし、ギリシャとスペインとイタリアがやばいことになり、
過酷な円高で輸出企業は青色吐息となって生産拠点を東南アジアなど海外に移し、日本国内は産業及び雇用の空洞化が進み、
企業は固定費負担を減らすために雇用規制を次々と緩和させ、「痛みを伴う自己責任」の名の下で中産階級は没落し、
格差はさらに邁進し、若年層の多くは非正規雇用の労働者としての生活を余儀なくされ、それゆえ国内市場の縮退が進み、内需は落ち込み、
そして>>1のような頭の弱い底辺低学歴が、このスレに描かれているような中二病丸出しのファンタジーな夢の中に現実逃避をして自分を誤魔化して過ごしているのだ。

確かに慰みは必要だろう。自分は実は「勇者さま」なんだと思ってでもいなきゃ、>>1みたいな卑小で卑屈なプライドの持ち主はやってらんねーもんな。
だが、冒険の旅に出ようとも路銀は必要だし、そのためには仕事をしなきゃならない。
モンスターを斃しても金もアイテムも落としてくれないし、そもそもモンスターなんて居やしないんだから。
そんなこんなで勇者さまはハローワークを尋ねた次第である。

工場内軽作業、早番シフト8時〜17時、時給670円。遅番シフト18時〜翌6時、時給750円。
まあ時給は安いかもしれないけど、軽い作業なら楽かもしれないな、と、勇者さまは思った。
交通費を支給してもらえる、という条件に勇者さまは魅力を感じたのだ。
空飛ぶドラゴンや早駆けの名馬を飼ってるわけでもない以上(つか、そんなもん飼ってても維持費なんかねえよ)、
この世界の住人たちと同じく電車と地下鉄とバスを乗り継いで移動するしかない。金がなきゃ徒歩だ。

こうして勇者さまは、工場内軽作業の仕事を選んだ。これでしばらくは凌げるだろう。
0329創る名無しに見る名無し
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2012/07/13(金) 21:12:05.36ID:orFbTqlf
まじか
更新があるたびにwktkしながら見てたんだがな…
おもしろくなって来たとこだったし
残念だよ。・°°・(>_<)・°°・。
0331創る名無しに見る名無し
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2012/07/14(土) 01:54:23.46ID:1Nog3oI1
「ダメだダメだダメだ!これじゃあ、ダメだ!」
突然、勇者さまこと>>1は絶叫し、最近薄くなりつつある髪の毛をバリバリとかきむしった。

「これじゃあ、この作品をノーベル文学賞に送ったところで、誰も俺の高尚かつ気高い思想を理解してもらえない!」
勇者さまこと>>1の目は不気味なほどに見開かれ、血走っていた。それはもう完全に狂人の目そのものだ。
底辺低学歴キモオタの三拍子を揃え、辛い現実から目を逸らし続け、
ついには己が作り上げた中学生レベルのファンタジー世界に現実逃避した、そんな男の目だ。
そして、ここまで紡ぎあげたオタ臭満載のファンタジーに、突然邪魔が入り・・・
・・・そしてどういうわけか、全く冴えない青春を送っていた青春時代の日々の思い出がぶり返してきた。
女の子にモテず、それどころか気持ち悪がられ、ソツなくできる同級生からは小馬鹿にされ、そしてそして・・・

「うわあああっ!」
堪えきれず、ついに勇者さまは叫んだ。それは魂の叫びだった。
言葉にならない唸り声をひとしきり上げた勇者さまこと>>1は、弾かれたように立ち上がる。
そして机上の原稿用紙をグシャグシャに丸めると、それを叩きつけるようにゴミ箱に投げ入れた。
「くそっ!くだらん邪魔が入りおって!また最初から書き直しだ!」
そう叫ぶと、勇者さまは再びパソコンに向かった。

勇者さまこと>>1のような中二病のファンタジー青年は、とても繊細でデリケートな感性の持ち主なのだ。
例えば「就職」とか「失業保険打ち切り」「生活保護受給申請却下」とか「ハローワーク」とか、
「そろそろ就職決まってくれないとウチも大変なんだぞ!母さんだって心配してるんだ」とか、
「アニメとか漫画とかゲームとかばっかやってないで、何か資格でも取ったら?」とか、
「おまえ、一体将来どうするんだ?10年後とか自分がどうなってるか考えたことあるのか?」とか、
まあ、その辺の微妙なワードを持ち出すと、勇者さまこと>>1はとても傷ついてしまうのだ。
それはまるで敵の悪い魔法使いの放った強力な呪文を受けてしまったように、勇者さまこと>>1のMPを激しく消耗させるのだ。
まあいい。それでも四ヶ月に渡って中二病を発症し続けてこんな中学生ファンタジーを書き続けてきた勇者さまこと>>1なのだ。
そんな彼のような存在こそ、まさに正真正銘のファンタジーなのではないか?

そして数分後、勇者さまこと>>1は、おもむろにパンツを下ろし、貧弱なちんぽを引っ張り出した。
「・・・とりあえず溢れ出る才気を発散させないと、ボクの情熱が内部で核融合爆発を起こしちゃうからな…」
訳のわからないことを呟きながら、勇者さまこと>>1は本棚の隠し引き出しから座右の書を取り出した。

その幼女ロリ専門写真誌(もうご禁制品を開くと、お気に入りの小学五年生の少女・絵梨ちゃんのページを開く。
まだ未成熟なその肉体の瑞々しさに、内藤は溜まらぬ欲情を覚える。
そう、彼女こそ勇者さまこと>>1が書き連ねてきた中二病サーガのヒロインのモデルなのである。
0332創る名無しに見る名無し
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2012/07/14(土) 01:55:47.06ID:1Nog3oI1
「むう、た、堪らないナリ!」
亀頭の被った包皮を丁寧にむきながら、勇者さまこと>>1は自分のちんちんをしごき始めた。
勇者さまこと>>1の頭の中では、写真の中の絵梨ちゃんは既にひん剥かれて裸になっていた。
そしてまだ僅かな隆起しか見せない絵梨ちゃんの両乳房を荒々しく掴み、
そのピンク色の小さな乳首を舌でペロペロと舐める…もちろん勇者さまこと>>1の妄想の中でだが。
恥じらいと不安な表情を見せる絵梨ちゃんを見下ろしながら、勇者さまこと>>1は嗜虐的な微笑みを浮かべる。

「絵梨ちゃんは、俺が開発してやるんだ!」
勇者さまこと>>1の、ちんぽを握り締める手に力がこもる。
「この小娘を性奴隷にして、まだ見ぬ快楽の坩堝の中で甘美なリビドーの溺れるのだっ!」
勇者さまこと>>1の右手はさらに激しく上下する。カビ臭い四畳半の中で、勇者さまこと>>1の生臭い吐息が満ちてゆく。
快楽に顔を歪めながら、勇者さまこと>>1は笑った。その口元からのぞく乱杭歯は黄ばんで虫歯だらけだ。
くすんだ素肌、緩みきった肉体、不潔さ漂うその容貌・・・そんな一人の醜男が今、オナニーに浸っているのだ。
それが、偉大なる中二病ファンタジー作家さまこと勇者さまこと>>1の現在の姿だった。

・・・数分後、勇者さまこと>>1は、華々しく果てた。赤黒くひん曲がった貧弱なちんぽの先端から、生臭い精液が飛び散る。
精液はちゃぶ台の上に広げた幼女の写真誌に飛び散り、恥ずかしそうな笑顔を見せる少女の写真に降り注いだ。

「ああっ!」勇者さまこと>>1は慌てた。
彼にとって女神であり天使である絵梨ちゃんの御真影に、己の汚らわしい精液が粘着してしまったのだ。
勇者さまこと>>1は大急ぎでティッシュを引き出し、大切な絵梨ちゃんの写真にへばりつく己の精液を拭う。
ゴシゴシとこするが、粘ってへばりつく精液は、既に絵梨ちゃんの写真に染みこんでしまっており、中々落ちない。

一瞬、勇者さまこと>>1の脳裏に「もしかして俺、絵梨ちゃんに生で顔射しちゃったのかも!」という戯言が浮かぶ。
そのイメージに酔いしれ、萎びかけた自分のペニス(短小包茎)が少し反応したのがわかった。
そして数秒後、我に返る。
「・・・そんなことより、早くザーメンを拭わないと、絵梨ちゃんの写真がヨレヨレになっちゃうよ!」
と、少し唾液で濡らしたティッシュでこすってみるが、印刷が少し剥げただけであった。

仕方なく勇者さまこと>>1は雑誌を持ち上げた。そのまま絵梨ちゃんの写真を、舌でぺロリと舐め上げた。
自分の口の中に、自分の精液の生臭い臭いが充満し、勇者さまこと>>1は思わずむせ返る。
そしてその瞬間、勇者さまは、ここ数日の中で最高とも言うべきアイデアを思いついたのだった。

「もう、この際だから絵梨ちゃんを食べてしまおう」
そう思った勇者さまは、雑誌の絵梨ちゃんの写真のページをびりびりと破りとった。
そしてその自分の精液の降りかかったページを丸め、口の中に放り込んだのだ。
よく咀嚼する…すると自分の精液の味に混じって、憧れの小学五年生・絵梨ちゃんの甘い味がしたような気がした。
そのページを丸呑みしたころ、勇者さまこと>>1は呆けたような笑顔でケタケタと笑いだした。
勇者さまこと>>1の苦渋の日々は、まだ終わらない・・・。
0333創る名無しに見る名無し
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2012/07/14(土) 11:55:46.25ID:x/34pe1o
//---------------------------------------------
◆破棄:やろうとしていた事。
//---------------------------------------------
 大神官フォズ(本物)を解放?【キャラクター要検討:後の国王が抜ける穴を補完キャラ】

 フォズを仲間にし、カンダタは正式に賢者扱いとなる。

フォズと勇者を連れてバラモスとバルザックの部屋へ、バラモスと戦う。
勇者とマオ一向の力に押されて、バラモスは逃げ出す。【巫女が連れて逃げるでも可?】
 バルザックもバラモスに連れられて逃亡(エドガンの錬金術書がマオに盗まれてしまい、
進化の秘法を新たに作り出せなくなってしまう。)

 ※:黄金の爪はバラモスに回収されてしまい【プックル腕切断?】持ち帰られる。

 化け物となった冒険者(魔法使い(女))との戦い、バラモスが手に入れた黄金の爪を
バルザックが、魔法使い(女)に使い、進化の秘法が完全版となる。
【手に負えなくなって、バラモス逃亡でも良いか?】

 ガルナの塔とダーマ神殿は崩壊?

 魔法使い(女)は無限に進化しつつ、マオや勇者やダーマの冒険者達と激闘、
最終的に仲間である勇者がアストロンを使い、勇者と共にガルナの塔の北の
湖の底に沈む。

 ポルトガから船、

1.西へ向かい、街開発の話
  国王(商人)と別れる(イエローオーブ)。

2.食糧の見積もり間違えて食糧難、
  海賊に襲われ、逆に略奪。
  >>レッドオーブの話になる

3.ブルー、パープル、グリーン、シルバー
  【必要に応じてカット:1000への調整】

4.ラーミア【戦闘にも加入?】バラモス城へ
  【アレフガルドは必要に応じてカット:1000への調整】

  バラモスと対峙、巫女との決着【アレフガルドカットなら
  ここでゾーマ出す】、魔王を異世界から呼んだ理由(進化の秘法を手に入れる為)
  進化の秘法を使って、今の世界からの脱出。【ゲーム世界から脱出する為】

  ※:勇者が魔王を倒す永久ループの輪、ゾーマや勇者(女)はたまたまバグって
  その世界の構造を知るに至った、人と魔王が争う出来レースの世界で
  それを抜け出す為に、N/A【名称未設定】を倒す?【行き方が要検討、
  ギアガの大穴が繋がっているとか?侵攻中に考える事】

5.N/A【名称未設定】を倒し、大団円?
  人と魔物が共存する世界へ〜終了?〜。
//---------------------------------------------
 確かに中二病臭いわな、
中二病ではない作品はあまり無いとも思うが。
支援くれた皆様に感謝を。
                   ─ 終了 ─
033419
垢版 |
2012/07/15(日) 00:34:43.51ID:g+MIxUJw
>>1
お疲れ様でした。
>>19で小煩い事言ってた暇人です。
あの後、あなたが地道に投下を続けるのをずっとROMっていました。

自分で決めたルール
>4.他者の乱入(無いと思うけど)があった時点で、
  そこでひとまずのEND。(プロットが狂うため)
  打ち切り要請があった場合もそこまでとする。

これに則り終了、潔いけれど、読み手としてはちょっと残念。
>>19で例にあげたことが現実になるとは・・・


まず、このスレを投げなかったあなたの意志の強さと、書き続けるプロット構成に驚きました。
こう言ってはなんですが、この手のスレはたいてい数レスで終了か書き手が途中で飽きて逃亡、がパターンで、
レスに書いた通りうんざりしていたので、ずっと投下を続ける人は稀です。


これは自己弁護ですが

もしあなたが投下している間、板の中の他のスレを見ているなら
あなたの後にも単発の台詞系スレがいくつも立っては捨てられ、誰も書かないスレだけが残る状況を見たかと思います。
と同時に、一人で1000レスあるいは512kbを埋めることの労力も、感じたのではないでしょうか。

もしもそれを感じてもらえたなら、19で指摘したことをほんの少しでも理解いただけたのではないかと勝手に思っています。
(↑とても利己的ですね。申し訳ありません)


このSSにちゃんと読者がついていることは、あなた自身がよく解っていると思います。
しっかりした信念を持って地道に投下を続ける人を、創発板住人は必ず見ています。
はじめの方には少なかったレスが、だんだん増えてきたことと思います。
もちろん、レスしてないROMも大勢いたことでしょう(自分もその一人です)。

033519
垢版 |
2012/07/15(日) 00:39:02.45ID:g+MIxUJw
内容について。


よくある勇者魔王モノという印象でしたが、正確にはドラクエVをベースにした(ほかナンバリングキャラや
オリキャラも登場するため)二次創作、に分類されると思います。
独自シナリオで描写もしっかりなされ、良いと思ったと同時に、非常にもったいない! とも思いました。

個人的には、これだけ書けるのならいっそのこと
ドラクエ世界観を用いたオリジナル作品(ダイの大冒険やアベル伝説みたいな)で読みたかったな、という思いです。

人名や地名を既存作品から持ってきているのに、既存作品とのリンクが薄いのはどうか? と
思ってしまい(これは人それぞれ感じ方が違いますが)、
それならばオリジナル設定で、「>>1の考えるドラクエっぽい世界」を見たかった、というのが率直なところです。
言葉は悪いですが、これでは都合のいい所だけ借りて済ませた感が否めなく・・・
しかし2chの台詞系SSでは、十分ありです。何も悪いところはありません。


無礼かつ上から目線な意見、大変失礼しました。どうかご容赦を。


無粋な連中のせいで中断してしまうのは残念ですが、もし良ければまたこの板のどこかのスレで作品を投下して下さい。
0336創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/15(日) 23:58:26.98ID:Y91ZtUCm
To:皆様
感想・ご支援等ありがとうございました。

 実は終了に前に、結構悩んだ次第でして、
最後に残ったのはこの三つでした。

 1.このまま続行。
 2.ダーマ編終了まで続行。
 3.即時に終了。

 物語の結末を書かずに終わるのは、この板の流儀に反するのではないか?
ここで終了するのは読んで頂いた皆様方に対して失礼ではないか?
しかし、自分で決めたルールを自ら破るのはルールの意味が無いのでないか?
それとも安価を取って続行・中止を決めるべきか?

 私としましても、全工程の3割程度であるため内容に消化不良感があり、
>>328の書き込みをした後にも、続行か、中止かを散々悩みもしましたが、
>>24のルールがこの板を使わせて頂く大前提であると思い、
まことに勝手ながら、3の終了を選択させて頂きました。

 感想、ご支援いただいた皆様には大変申し訳なく思います。

 私の拙い文章で埋め尽くされた本スレを毎日チェックしてくれた方、
心が折れ中断しかけた時にも、読んでいるので続行して欲しいと言って下さった方、
途切れ途切れの更新であるにも関わらず、待っていて下さった方。
この板のルールをご教示頂いた方など、本当にありがとうございました。
//-------------------------------------------------------------------------
ご指摘についての回答。

>>これでは都合のいい所だけ借りて済ませた感が否めなく・・・

 ご指摘の通りでございます。
実際、SSを書く際の練習として情景を読みやすくかつイメージしやすくするため
「主人公や仲間が喋らず、かつ、読み手がイメージしやすい世界観を舞台とする」
必要があり、物語の舞台としてスクウェアエニックス社の
ドラゴンクエストV〜そして伝説へ〜を選択させて頂きました。

 これにより「首都ロマリアの北部にある、山間に囲まれたのどかな田舎村カザーブ」
ではなく「北にあるカザーブ村」だけで説明が簡素に出来る利点がありますが、
欠点として良い所取りした感じが強まってしまったのかと思います。
 良い所取りした二次創作品は絶対にオリジナルを越える事は出来ないため(ドラクエVを
越えるなんて恐れ多いのですが)独自性を多少強めたつもりですが、やはり世界観と
乖離させる訳にもいかず、中途半端感が出てしまいました。
(結果、表現すべき所を全てドラクエVの設定に逃がし。【良い所取り】と
 映ってしまったのかもしれません【…安価で勇者を】での代筆はそうでも無かったのですが)

 ともあれ、ご指摘頂いた点以外にも自らが痛感した欠点や弱点が多々浮彫となり、
とても勉強になりました。

 3割程度で中断宣言を行った立場としては、再度創作発表板を使わせて頂くのは
烏滸がましく思いますが、機会がございましたらまた是非創作発表板を使わせて頂きたいと
思います。
0340創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/18(水) 04:14:25.29ID:AAdnxuuv
勇者を書いてるくせに、この程度で逃亡するわけか
作者が一番勇者じゃないって点が最大の欠点だな
そんなんだから魔王に勝てないんだよ
0341創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/20(金) 02:07:52.44ID:jZsyaGAX
面白くて一気読みしたけど途中で終わりか、残念。
ところで>>32で名前が出たオルテガの相棒であるサイラスは登場しなかったけどいったい何処へ……
0342創る名無しに見る名無し
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2012/07/20(金) 03:28:02.96ID:KYvZo4u9
>>341
ハロワに行ってるよ
最近まで食品加工工場の遅番やってたんだけど工場が閉鎖になったんだと
0343創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/24(火) 20:04:33.52ID:WbFzBiuf
ニート「俺パソコンに詳しいんだ」

女「へー、ハッキングとかプログラミングとかできるんだ」

ニート「いや、それは出来ないよ」

女「え?CADとか、データベース管理とかできるんだ」

ニート「いや、それは出来ないよ」

女「はぁ?HTML5とか、CSSとかは?」

ニート「え?いや・・・・」

女「エクセルのVBとか、独自関数で表やグラフ作成とかは?」

ニート「ああ、俺パソコン詳しくないわ・・・・」

女「情報はそれに付随する多種多様な技術や知識があり、
  それを運営する経験やノウハウがあって、
  さらにそれに関係する周辺情報を得て、
  初めて知っていると言った方がいいわ、」
0344創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/28(土) 18:48:48.34ID:8OyvlGeO
さて、そろそろ灰汁が抜けてきた頃か
それとも、夏が終わるまで待つべきか。
0346創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/29(日) 13:26:41.87ID:kqOHD6fk
まだだったか、半年ぐらい熟成だな。
0348創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/30(月) 20:40:44.34ID:hwoKJLFH
  
 ◆◇◆◇◆ 都内某所の区民公園 ◆◇◆◇◆
  
国王「……今日は生活保護費受給日だのう。
    では、ちょいと区役所に赴こうかの」
  
カンダタ「ちょい待ち!国王さんよ。
      実は先日、区民広報の掲示板に掲示しとったんだが、
      今月から生活保護費申請には、住民登録の審査が行われるらしいぞ」
  
国王「……何?どういうことだ?」
  
カンダタ「いや、だからさ。
      俺たちみたいに区民公園の住人だと、
      登録上の住所地に現住していないわけじゃん」
  
国王「確かワシの住民票は、
    NPO法人が運営する生活保護者用の簡易アパートに住んでいることになっておるはずだぞ。
    そのためにワシは月に三万五千円もNPO法人に支払っておるんだからのう」
  
カンダタ「それがまずいんだよ、国王さんよ。     
      生活保護を受給するために書類上の住所地作っただけで、実際にはそんなアパート無いんだからさ。
      第一、あのNPO法人って、民団出資の平和市民団体がスポンサードしているじゃん。
      協賛団体の中にパチンコ屋の持ち株会社まであるんだし。ぼったくられてんだよ」
  
国王「……そんなこと言ったってなあ。住民登録しなきゃ生活保護費は支給されないからなあ」
  
カンダタ「いや、だからさ。今度そのことが問題になっててて、
      これからは生活保護支給には登録上の住所に確かに本人が所在していることを調査することになったんだよ」
  
国王「んなバカな!一体誰がそんなこと決めたのだ!」
  
カンダタ「まあ、そりゃ政府じゃねえのか?
      ほれ、このあいだ、お笑い芸人の身内が生活保護を不正受給してたって話題になってただろ?」
  
国王「何の話だ?知らんぞそんなの!」
  
カンダタ「スポーツ新聞にバンバンに出てたじゃないか。国王さまはちゃんと読んでないんか?
      ったく、エロ記事と競馬欄くらいしか読んでないから、国王さまも落ちぶれるんだよ」
  
国王「そんなことはどうでもよいわ。それよりも不正受給って何だ!
    まったく不正に生活保護費を受給するなど、許しがたいことだ」
  
カンダタ「(許しがたいって、お前は言える義理かよ、と内心思いつつ)
      つまりだ、その芸人は年収五千万くらいあって結構贅沢してんのにも関わらず、
      その母親は生活保護受給してて、扶養義務を放置してたって話だよ。
      そのせいで世間は大騒ぎしてたんだよ。……本当に知らなかったん?」
  
0349創る名無しに見る名無し
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2012/07/30(月) 20:42:35.53ID:hwoKJLFH
国王「(しばし沈思し)
    で、そのことと、ワシの生活保護の審査とがどう繋がってくるんだ?」
  
カンダタ「……本当に何も知らないのか?ちゃんと区民広報掲示板くらい見とけよ。
      あそこは情報の宝庫だぞ。救貧バザーの日程とか、公園の日雇い清掃の募集とか、
      曜日ごとのゴミ回収の内容とか……おっとそういえば、明日はアルミ缶の回収だったな」
  
国王「(カンダタの話を遮るように叫ぶ)
    だから、その掲示板には何が書いてあったんだよ!」
  
カンダタ「落ち着けよ。
      だからさ、これからは地元の保護司と区の担当者が、生活保護費受給世帯の生活調査をやるんだと。
      何か定期的に家に訪問して、経済状況や生活実態をリポートにするんだとか。
      そんで、その調査で生活保護受給の必要性あり、と認められて、
      そこで初めてその証明書とやらがもらえるとか」
  
国王「何でそんなことするのだ!迷惑だ!
    第一、ワシはNPO法人所有の簡易アパートに名義上登録して貰ってるだけで、一度も住んだことないんだぞ!」
  
カンダタ「つか、そのアパート自体元々無いし
      あれは生活保護受給者から吸い上げるためだけの、名義上の住所だけだからな」
  
国王「ああっ!どうすればよいのだ!
    このままではワシは生活保護費を受給できなくなってしまうではないか!」
  
カンダタ「どうせなら、どっかに押し入っちまわないか?
      金せしめられればそれでオッケーだし、駄目なら駄目で法務省の特別な施設にしばらく住めるからさ」
  
国王「……何を言うのだカンダタ!ワシはおぬしのような盗人とは違うのだぞ!」
  
カンダタ「っつっても、国王さまも今やただのホームレスじゃん。
      っていうかさ、本当にあんた、王様だったんか?
      こんな区民公園の片隅で国王さま気取ったところで、
      世間のみんなは国王さまをかわいそうな人を見るような目で見るだけだって」
  
0350創る名無しに見る名無し
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2012/07/30(月) 20:43:36.27ID:hwoKJLFH
国王「貴様、ワシを侮辱するつもりか!  
    ワシは魔王によって王座を追われ、王国を失い、  
    そしてここに流れ着いただけなのだぞ!  
    いつかはあの魔王を打ち倒し、  
    この都民公園のわんぱく山に豪華絢爛な王宮を築いて千年王国を打ち立てるのだ!」  
    
カンダタ「んなことしたら、不法占拠で区に訴えられるわ(笑)  
      それにその「魔王」ったって、国王さまの町工場の抵当権を行使した信金の支店長のことだろ。  
      大丈夫だよ国王さま。あの信金、あの後農協系の金融機関に買収されて、  
      今は大手都市銀に吸収合併されちゃったから。  
      おそらくあのときの支店長はリストラ喰らってるって」  
    
国王「(興奮し、怒りを抑えかねた様子で)  
    三日だぞ三日!たった三日待ってくれれば手形保障できたっていうのに!  
    そもそもあいつが運転資金を出し惜しんだのが原因じゃないか!  
    それに三世代落ちの自動研削機だとメーカー指定の品質精度を維持するのなんかそもそも無理だっつーの!  
    二年以上も新規融資を頼んだってのに、あのハゲ散らかした支店長めが、あっさりと審査拒否りやがって!  
    全部あいつのせいだ!あいつのせいで王妃には離縁され、プリンセスは風俗上に身を落とし……」  
    
カンダタ「(国王さまの肩を抑えながら)  
      まあまあ国王さま、落ち着いて落ち着いて。  
      それよりも今はそれどころじゃないだろ。  
      どうするんだ今月分の生活保護費は。  
      区の厚生担当の捺印押した調査証明書を出さないと、生活保護費出ないんだぜ?」  
    
国王「(カンダタの言葉に落ち着きを取り戻し)  
    ……ど、どうすればよいのだ?」  
    
カンダタ「さあな、俺の場合はとりあえず宗教団体の職員ってことにしてるけどな。  
      『真理の家』って新興宗教団体だけど、一応都の宗教法人認定あるんだぜ」  
    
国王「……それ、ワシにも可能かな?」  
    
カンダタ「可能かどうかわからんが、結構キツいぜ。  
      一応、在家信者ってことになると、月額で大体五万くらいのお布施が必要になるしな。  
      ただ、教団施設は職員住居を兼ねてるってことにしてあるから、そこの住所地で登録できるんだけどね  
      例の左翼系NPO法人と違って、一応生活実態らしきものあるし」  
    
0351創る名無しに見る名無し
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2012/07/30(月) 20:44:37.03ID:hwoKJLFH
                                                      
国王「……たのむ、カンダタ。  
    ワシもその、何だ……『真理の家』だっけか?の信者にしてくれないかの?」  
    
カンダタ「(腕を組んで)  
      う〜ん、どうしようかな。  
      (チラリ、と国王さまの方を一瞥する)  
      支部長、最近忙しいって言ってたしなあ」  
   
国王「(カンダタにすがりつくように)  
    お願いだカンダタ!早く住民登録できないと、今月分の生活保護費が!」  
    
カンダタ「(思い悩んだ風を装い)  
      じゃあ、国王さま、とりあえず支部長に相談するから、  
      面談料として別途五万円渡してくれないか?」  
    
国王「ご、五万円だと!そんな金、今ないわ!」  
    
カンダタ「じゃあ、この話は無かったということで……」  
    
国王「ちょっと待った!  
    ……今、本当に手持ちが無いんだ。  
    後で返済するから、その分を立て替えてくれないか?」  
    
カンダタ「国王さま、構わないけど、俺の場合、金利はトゴだぜ?」  
    
国王「背にハラは変えられないって言うじゃないか。  
    大丈夫、生活保護費もらったら、いの一番に返済するから」  
    
カンダタ「……本当かい?国王さま」  
    
国王「ああ、本当だとも。  
    だから頼む。  
    早くその、何だっけか?『真理の家』ってところに連れてってくれ!」  
    
カンダタ「(意を決したような顔を作り)  
      よし分かった。  
      じゃあこれから行こうや!」  
    
国王とカンダタ、連れ立って怪しげなビルに入ってゆく(暗転)  
0352創る名無しに見る名無し
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2012/07/30(月) 20:45:59.58ID:hwoKJLFH
    
 ◆◇◆◇◆ 勇者さまのご自宅 ◆◇◆◇◆   
    
食卓で家族と一緒に夕食を食べている勇者さま。  
食卓には父親と母親、そして勇者さま自身の三人がいる。  
母親は手早く食事を終えると、空いた食器を盆にのせ、台所に運ぶ。  
    
母親「(台所で洗い物をしながら、勇者さまに話しかける)  
    あんたも来年就職なんだから、  
    いつまでも漫画だとかアニメだとかやめなさい」  
    
父親「そうだぞ、母さんの言うとおりだ。  
    お前もそろそろ進路を決める時期に来ているんだからな」  
    
母親「ほら、同級生だった健ちゃんいたでしょ?  
    あの子なんか、あんたと違ってちゃんと現役で早稲田大学に入って、  
    去年にもう伊勢丹ホールディングスに決まったのよね」  
    
父親「(ビールをすすりながら)  
    まったく、小学校の時は一緒に遊んでたというのに、どうしてこうも差がついてしまったんだろうな」  
    
母親「……そうよねえ、この子もやればできる子なのにねえ」  
    
勇者さまは食事をしながら、母親と父親の話を聞いている。  
それは受難だった。両親の放つ一言一言が勇者さまの心にぶすぶす突き刺さる。  
    
父親「おい、聞いているのか勇者さま。お前も今年はちゃんとしなきゃ駄目なんだぞ!」  
    
母親「父さん、そんなにきつい言い方しちゃかわいそうよ。  
    勇者さまは勇者さまらしく、自分のやりたいことをやれればそれで……」  
    
父親「(母親の言葉を遮るように)だからお前は甘いんだよ。  
    やりたいことをやってメシが喰えるほど世の中は甘くないんだ。  
    みんな色々と我慢をして、苦労しながら仕事をしているんだ。  
    だいたいお前が甘やかすから、勇者さまもこんな風に……」  
    
母親「(今度は父親の言葉を遮り)  
    それはないでしょう!  
    あなたはいつもいつも仕事が忙しい忙しい、って言って、  
    育児や子育ては全部私まかせで、何もしなかったじゃないの。  
    この子の塾や習い事とかそういうの、ちゃんとあなたは見てくれたの?」  
    
0353創る名無しに見る名無し
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2012/07/30(月) 20:47:31.80ID:hwoKJLFH
    
父親「何を言っているんだ!  
    今こうしてメシが食べれるのも、俺が外で一生懸命働いて給料を稼いでいるからじゃないか!  
    第一見てみろ、この子はロクに勉強もせずに第一志望を落とし、国立も駄目で六大学にも引っかからず、  
    大学に入ったはいいが、アニメの本みたいのにうつつを抜かしたり、夜遅くまでゲームやってたり、  
    パソコン弄って遊んでいたり、  
    (勇者さまの方を振り返り)  
    お前もお前だ!来年はもう社会人なんだぞ!  
    いい加減にファンタジーだっけか?そんな子供じみた下らないことばかりやってないで、  
    そろそろ自立する自覚を持て自覚を!」  
    
母親「(父の方に向かって)  
    あなた、ちょっと言いすぎよ!  
    この子だって色々考えてるはずよ。  
    自分の将来のこととか、どういう仕事をしたいとか!  
    (勇者さまの方を振り返って)  
    ねえ?勇者さま。これからちゃんと就活するものね?」  
    
父親「今からだって遅いくらいだ。  
    第一、まともに正社員になるのだって難しいご時勢なんだぞ?  
    なぜ今までちゃんと勉強してこなかったんだ?  
    お前の同級生たちだって、とっくにリクルート活動とかしているだろうが?あ?」  
    
ここで勇者さまはふと、先日、大学で行われていた就職ガイダンスのことを思いだした。  
現在の新卒就職状況は大変厳しい状態になっているということや、  
新卒で正社員になれなければ、おそらく非正規雇用まっしぐらだということや、  
できれば大学時代にTOEFLや簿記一級、基礎的なプログラミングの資格などを取っておくべきだったとか、  
そんな話をされたのを思い出し、胸が痛んだ。  
    
もちろん勇者さまにはそんなものは何ひとつとしてない。  
あるのはファンタジーを数ヶ月間書き続ける執念と、ラノベやエロゲについてのマニアックな知識だ。  
その辺の分野ならLv.50くらいはあるはずだ。  
もちろん一人前の社会人としてのレベルは、せいぜいLv.2か3くらい。  
正直自立して生活できる能力など、殆ど無い。  
    
そもそも勇者さまはFラン大学文系卒のヲタでしかなく、実社会で役に立つ知識も技能もない。   
そんな卑小な自分から逃げるために、ますますファンタジーという仮構の妄想に世界にはまってゆく。  
そんな実に寂しい青春の日々を過ごしてきたのだった。   
    
0354創る名無しに見る名無し
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2012/07/30(月) 20:49:41.62ID:hwoKJLFH
    
父親「……おい、聞いているのか?」  
    
この時だった。  
勇者さまの中で、何かが弾けた。  
    
勇者さま「(うつむきながら小声で)……うっせーんだよ」  
    
父親「あ?何だって?」  
    
勇者さま「(今度は顔を上げ、睨みつけながら絶叫)……うっせーんだよ!てめえら!!」   
    
突然、怒りだした勇者さまに父親と母親は驚く。  
驚愕の目で勇者さまを見つめる両親の目を感じ取りながら、勇者さまはなおも叫ぶ。  
    
勇者さま「何だよ!進路とか就職とかさ!何だって言うんだよ!  
      そんなのもうどうでもいいじゃんかよ!  
      てめえらで勝手に俺みたいの産んでおいて、好き放題言ってんじゃねえよ!  
      ふざけんなよ!」  
    
わが子の内弁慶ぶりに狼狽し、右往左往する両親たち。  
そんな勇者さまに、母親は何とか一言言い返す。  
    
母親「(少し目に涙を浮かべ)  
    そんなこと言ったって、私たちはあなたのことを心配して……」  
    
「心配」という言葉が、勇者さまの心に突き刺さる。  
その痛みが、更に勇者さまの甘えを暴走させる。  
    
勇者さま「心配なんてしなくていいよ!  
      どうせ俺のことなんでどうでもいいんだろが!」  
  
そう叫んだ勇者さまは、そのまま席を立つと足音をドカドカと踏み鳴らしながら階段を上がり、  
自分の部屋に逃げ込むと、思い切り叩きつけるようにドアを閉めた。  
    
0355創る名無しに見る名無し
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2012/07/30(月) 20:50:48.54ID:hwoKJLFH
    
部屋の中には、勇者さまの現実逃避の世界が広がっていた。   
    
本棚にはラノベ……電撃、富士見ファンタジア、スニーカー文庫などなど。   
それらの表紙には、パンツ見えそうなミニスカの美少女キャラが、実にカラフルに描かれていた。  
実は最近、ハヤカワや創元文庫まで読むようになり、SFや幻想文学、それに伝奇モノにもちょっと興味津々。  
    
そしてバリバリ童貞の勇者さまのオナニーのおかずは、もちろんエロゲ。  
パソコンには海外サイトからダウンロードしたAVが増設HDDにみっちりと詰まっている。   
    
ファンタジーという名の現実逃避世界で、勇者さまはキモヲタニートの王道をひた走っていた。   
ここは天国なのだ。「現実」さえ押し寄せなければ。   
勇者さまにとって、卑小で情けない自分自身と向き合わざるを得ない「現実」世界。  
それは悪夢であり、恐怖の世界だった。この、虚構に満ちたファンタジー天国を打ち崩す、恐怖そのもの。  
    
先ほどの出来事を思い出した。  
両親の言葉はうざかったが、それでもいよいよ自立しなきゃならないことはわかっていた。  
だけど、この心地よい現実逃避空間のぬるま湯から抜け出すことができなかった。  
すると、勇者さまの中で、もう一人の自分が語りかけてきた。  
    
もう一人の自分「……おい、勇者さまよ。  
           お前さ、今のままでいいの?  
           こんな下らんRPG崩れのファンタジーもどきに何時までも浸ってていいんかよ?」  
    
勇者さま「……(返す言葉が見つからない)」  
    
もう一人の自分「勇者さまよ。お前自分の本棚見てみろよ。ほら」  
    
0356創る名無しに見る名無し
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2012/07/30(月) 20:51:41.66ID:hwoKJLFH
    
もう一人の自分が指差す本棚には、先ほど説明したとおり、ラノベと漫画とアニメのフィギュアが並んでいる。  
それはそれはとても極彩色でカラフルな彩りだった。現実ではありえないような、そんな色彩で彩られていた。  
そこには数多くの美少女たちが描かれていた。髪の毛の色が赤だったり青だったり、黄色だったり薄紫だったり。  
そんな美少女たちが実に短い制服のスカートをはためかせ、  
現実じゃまず見れない不思議なポーズで歪んだセックスアピールをしていた。  
    
数百円で現実逃避をさせてくれる、空想世界の恋人たちだ。  
現実の女たちと違い、決して勇者さまを「キモい」とか言って無視したりはしない美少女たち。  
小学校時代からずっと、冴えない、目立たない、うだつのあがらない、ブサイクな子供だった勇者さま。  
そんな勇者さまに安らぎを与えてくれた少女たち。  
    
もう一人の自分「なあ、あんな下らない慰みモノばっかじゃなくてさ、  
           なんでお前は就活用の企業研究本とか無いんだ?  
           お前さ、まともなとこに就職できねえと、こういう現実逃避もできなくなるんだぜ」  
    
勇者さまは目を逸らせた。  
「進路決定」「就職」という言葉が、勇者さまの甘き夢の世界を打ち崩してゆく。  
    
もう一人の自分「会社訪問とかさ、そういうのはじめなきゃならない時期だろ?  
           お前いいの?そうやってファンタジーみたいのに興じて現実から逃げ回ってさ」  
    
勇者さま「(うつむきながら)……うるさい、消えろ」  
    
もう一人の自分「は?お前、また逃げるのかよ」  
    
勇者さま「うるせえんだよっ!消えうせろ!」  
    
近所中に響き渡るんじゃないかという大声で、勇者さま叫んだ。  
それと同時に、もう一人の自分はまるで霞のごとく掻き消える。  
    
それから一時間後。  
    
勇者さまはベッドの上で、ラノベを読んでいた。  
現実から目を背け、甘き夢の世界でファンタジーを紡いでいる。  
    
そこでは実に都合のよい魔王と巫女と勇者さまが、  
実に都合よく予定調和なイベントをひたすら繰り広げ、そして無益に終わってゆくのだ。  
そこでは何も変わらず、何の実りもない。  
    
今日もまた、ただ無駄に時間だけが過ぎていく(暗転)  
    
0360創る名無しに見る名無し
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2012/08/01(水) 23:19:52.46ID:RyuMeg9X
(*´∀`)
0361創る名無しに見る名無し
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2012/08/03(金) 20:27:50.85ID:IdJsCReA
面接官1「マオ…さんですね?  
      年齢は31歳。  
      ええと、最終学歴はアニメ専門学校卒……じゃなくて中退。職歴無し」  
  
面接官2「(少し困った顔で)あの、マオさん。  
      今まで仕事に就かなかったのは、どうしてなのでしょうか?」  
  
マオ「……私は巫女によってこの世界に召喚された魔王なんです!  
    魔王は下衆な人間どもが行うような卑賤な仕事は行いません!」  
  
面接官1「(マオの履歴書に目を落としながら)そうですか、そうですか。  
      では、どのような理由で当社の中途採用試験をお受けになられたのでしょうか?」  
  
面接官2「(面接官1に続けて)当社はですね、原則として採用は大学新卒、  
      中途採用者の場合は大学既卒の実務経験者のみ、とさせていただいているんですが、  
      マオさんには、実務経験はおありなのでしょうか?」  
  
マオ「実務経験などあるわけがない。私は魔王なのだ。  
   魔王を雇っておくと色々便利だぞ。  
   なにせ私には多くの力があるのだから」  
  
面接官2「力がおありなのですか…。  
      それは一体どのような力なのでしょうか?」  
  
面接官1「(相変らず履歴書に目を落としながら)  
      当社は今のところ新規販路開拓のための営業販売促進営業担当者、  
      それとそのエリアマネージャーを……こちらは特に5年以上の経験者に限定しておりますが、  
      そういった人材を必要としています」  
  
マオ「魔王の力といったら魔力に決まっているだろう!  
   私は今までドラゴンクエストの上位置換のような素晴らしいファンタジーで主役を張っていたのだぞ!  
   このスレの>>1からずっと読んで見ればよかろう!  
   この私のファンタジックかつヒロイックな活躍ぶりに、諸兄らは胸を踊らすに違いあるまい!」  
  
面接官2「……つまりマオさんは、ファンタジー小説の作家だということですか?」  
      (顔に明らかに呆れたような表情を浮かべながら)  
      では、ままでどのような作品を書かれてきたのでしょうか?  
      今まで出版なされたものがあれば、それについてお聞かせ願いたいのですが」  
  
マオ「ファンタジー作家などではない!私は魔王だ!  
   魔王として冒険の旅を続けている、異界の勇者さまなのだ!」  
  
0362創る名無しに見る名無し
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2012/08/03(金) 20:28:34.37ID:IdJsCReA
面接官1「(相変らずマオに一瞥もくれぬまま)  
      では、そのご立派な魔王さまが、何ゆえ当社の中途採用試験を受けることにしたのですか?  
      何か壮大な目的を持って旅をなさっているのなら、  
      我々のような下衆な人間たちが働く卑賤な仕事などやっているヒマなどないのではないですか?」  
  
面接官2「それとわが社はですね、出版社ではございませんが。  
      マオさんのその能力を活かせるようなポストは、ちょっと思い当たりません。  
      今お書きのそのファンタジー小説の原稿を出版社にでも持ち込まれてはいかがですか?」  
  
マオ「だから違うといっているではないか!  
   私はここで正社員として働きたいのだ!  
   期間契約社員でもなく、派遣社員でもなく、個人請負契約でもなく、  
   福利厚生があってちゃんとした雇用保障のある正規雇用の正社員になりたいのだ!」  
  
面接官2「だからですねマオさん。我が社といたしましては、  
      マオさんのこの学歴、職歴、資格では採用はできかねます。   
      普通自動車免許でもおありなら、路線配送ドライバーの期間契約はあるのですが、  
      契約期間は二年十ヶ月、優先的な雇用延長有。  
      マオさんには8トンの中型トラックを運転できる免許は……無いみたいですね」  
  
面接官1「それと鎌田と桜台、それに山科に配送センターがありまして、  
      そちらでは仕分け作業員を随時募集してます。  
      日雇いで、たしか給与は取っ払いですから、結構人気が高いんですよ」  
  
マオ「俺に奴隷の仕事をしろと言うのか?俺は魔王だぞ」  
  
面接官2「(ちょっとムッとし)ドライバーや軽作業の作業員を奴隷呼ばわりするのは、  
      ちょっと失礼ではありませんか?」  
  
面接官1「魔王なら魔力があると思うのですが、  
      その魔力で何かなさってみてはいかがです?  
      最もわが社では、そのような魔力よりもですね、地域営業のノウハウの方がありがたいのですが」  
  
面接官2「(少し意地悪い笑顔をつくり)  
      マオさん、何か魔力はございますか?  
      あれば是非見てみたいのですが」  
  
面接官1「これから新規市場を開拓するのにふさわしい魔力ならば、  
      こちらとしても是非そのお力をお借りしたいですね。  
      とりあえず現在は鎌田地区から桜台地区の中規模事業主の方々の顧客拡大を狙っております。  
      できればあの地域の商工会議所や組合関係者の方へ向けて、  
      本社のサービス内容のプロパガンドをこなせれば文句なないのですが、  
      マオさんの魔力でそういうことは可能なのでしょうか……」  
  
0363創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/03(金) 20:29:45.82ID:IdJsCReA
……十分後、マオはビルから出てきた。  
魔王である自分をその場で不採用と通告する無礼に、マオの両肩は震えていた。  
  
マオはふと考えた。  
確か自分は巫女によってご都合主義の劣化ファンタジー世界に召喚されたはず。  
だが、いつのまにか、さらにファンタジーな世界に飛ばされている。  
  
ここではあのご都合主義の劣化ドラクエファンタジー世界で使えたはずの魔力が全く使えなくなっていた。  
呪文を唱えたら、属性魔法やら回復魔法やら、そういった便利な魔法がたくさん使えたのだ。  
なのになぜかこの世界では、マオはただの失業者に成り果てていた。  
31歳という、もはや若いとはとてもいえない年齢の、職歴学歴甲斐性無しの、  
脳味噌がファンタジーな一人の冴えない男に。  
  
果たして今まで自分がいた世界は、幻だったのではないだろうか?  
  
この世界には国王も巫女もどこにもいない。  
教会より神授された王権ではなく、ここにあるのは立憲民主制に基づく統治体制だった。  
魔法の代わりにあるのは、電気を基にした様々なテクノロジー。  
そしてこの世界を支配しているのは、魔王でも神でもなく、法秩序と資本主義。  
そんな世界でマオは、最底辺の弱者として生まれ変わったのだった。  
  
……いや、と、マオは思った。  
よく考えてみれば、自分は>>1そのものじゃないかと。  
>>1である自分はキモヲタで女にモテず、学生時代からゲームやラノベのファンタジーに逃げ込んでいたじゃないか。  
二次元キャラの美少女を想像しながら、貧弱なちんぽをしごいて情欲を処理していたじゃないか。  
  
現実社会では、とるに足らない存在だったマオこと>>1は、  
そんな卑小で冴えない自分から目を背けるために、自らを魔王と称し、  
>>1から書き連ねたような青臭いファンタジー世界に現実逃避し続けてきたではないか。  
そうやって自分をごまかし、やり過ごし、でも現実の自分は全く成長することなく、  
ドラクエのレベルアップとオナニーにふける時間だけが増してゆき、  
強大な力を持つ魔王どころか、相変らず女にモテない、つまらない無職のキモヲタ男のままではないか。  
  
マオは涙した。  
  
自分の将来を思うと、不安と恐怖で涙があふれ出てきた。  
この先、どんなに生きても、あの妄想の中で己が描き続けてきたファンタジーな世界など、決して来ない。  
そのことを思うと泣かずにはいられなかった。  
そして現実逃避し続けられたあの日々は、本当に幸せだったんだな、とマオは悟った。  
  
今日も日が暮れてゆく。  
  
0364創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/04(土) 19:44:52.14ID:JmXgn+OS
現実社会で一番生活力ないのは巫女だろうな
デリヘルくらいしか思い当たらん

0365創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/05(日) 20:00:51.70ID:G9h7jair
「来たれ!異界の勇者よ!」
巫女さまは客の射精寸前のチンチンを手コキしながら叫んだ。
0366創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/07(火) 20:29:53.90ID:12YgK8Wc
    
 ◆◇◆◇◆ 勇者さまのご自宅 パート2 ◆◇◆◇◆   
    
「……>>1、お前ももう、仕事を選り好みできる段階じゃないんだぞ」   
父親は小声で、>>1にそうつぶやいた。   
  
「……」   
>>1は、絶句した。   
  
結局、あの後も就職活動もままならなかった>>1。  
とりあえず一年留年して、就職は来年に先送りしてしまおう、と思った矢先、   
そのことを知った父親に怒られ(うちはもう金がないんだぞ!)、   
それを言われて逆ギレし(何だよ!俺のことが大事じゃないのかよ!)、   
心配そうにオロオロする母親(もう大人なんだから、そろそろしっかりしなさい)に向かってついに内弁慶を大爆発。   
  
「何だよ!だったらなんで、俺のことなんて生んだんだよ!」   
家中に響き渡るような大声で>>1は叫んだ。   
それはもう、魂の叫びだった。とても大学(Fラン)四年生になる男のものとは思えない、幼稚さに満ち溢れた叫び。  
  
ふと見ると、目の前で母親が目から涙を浮かべている。  
それを見た瞬間、>>1は一瞬、心が痛んだ。  
それは何か触れてはいけない傷に、思わず触れてしまったような、そんな痛みだった。   
  
だがそれを振り切るように、>>1は叫んだ。   
「誰もあんたらに”生んでくれ”って頼んでねーよ。なのにあんたらが勝手に俺を生んだんじゃねーか!責任とれよ!」   
もちろん言ってる自分も、これが馬鹿げた暴論だってことは重々承知だ。  
だが、叫ばずにはいられなかった。そうやって無茶を叫ぶことで、>>1は現実に向き合うことを必死に拒絶しているのだ。  
そうしなきゃ、ちっぽけな自分のプライドが潰れてしまいそうなのだ。  
  
すると、父親が怒鳴った。  
「…か、かあさんに、何てことを言うんだっ!」   
最近、老いが目立ち始めた父。髪に白いものが混じり始め、頬には確実に皺が刻まれている。  
気苦労とストレスをぐっと耐え忍ぶことで、父は若さと精気を確実に奪われている。   
その気苦労の要因の一つが、間違いなく>>1の就職や将来のことであるはずだ。   
それは、>>1も気付いていた。だがそれでも>>1は自分のその甘えを受け入れることができなかった。  
  
目の前の父は>>1をグッ睨んでいる。だがその瞳は、怒りの色ではなく、悲哀が浮かんでいた。   
何とか、この息子をちゃんと社会に送り出してやりたい、というそういう思い。   
  
マンガやアニメやエロゲ、ライトノベルに興じ、エロゲの萌えキャラとの虚構の恋にはまる馬鹿息子。   
ヒマさえあれば魔王だの勇者だの巫女だのが出てくるファンタジーに逃げ込み、  
そこでありえない夢を見続け青春を無駄に浪費し続ける駄目息子。   
そんなどうしようもないFランの息子でも、父にとっては血を分けた可愛い息子に違いないのだ。   
0367創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/07(火) 20:31:15.06ID:12YgK8Wc
ここ最近急激に老けが目立ってきた父。恐らく父の中の何かも、もはや限界に近いのだろう。   
それは、>>1も薄々察しがついている。だが、……だが。   
  
>>1には、その現実と向かい合う勇気はなかった。   
中学二年生くらいの童貞少年が思い描くようなパクリまみれの劣化ファンタジー世界に逃げ込み、  
そこで美少女たちと一緒に冒険して魔王と戦ったり、  
ファンタジックな妄想世界の中で萌えキャラと称する二次元娼婦たちとご都合主義のドラマに興じたり、  
とにかくその手の現実逃避のためのありとあらゆるジャンクを詰め込んだ甘き夢の世界にうつつを抜かし、  
そこで己を徹底的にスポイルし続けてきたのだ。  
もはや、目の前の小さな現実を受け入れるだけの強さを、>>1は持ち合わせてはいなかった。   
  
  
……気付くと>>1は、母親を足蹴にしていた。   
年老いた母親の体は、とても小さく弱々しい。   
かつて自分を抱きしめてくれた母親の、そのやわらかい肉は、既に老いさらばえて萎んでいた。  
その感触は、母の肉体を打ち据える己の拳にも伝わってきた。そしてそのたびに>>1の心は痛んだ。  
だが、>>1は、母親に暴力を留めることができなかった。  
何かを叫び、泣き喚きながら、振り上げた拳を母親に向かって振り下ろす。   
  
それは母が自分に抵抗できないことを、ちゃんと悟った上での行動だった。  
それをわかった上で母を打ち据えることが、途方も無い甘えであることを、>>1もさすがに悟っていた。  
だが、もう、どうすることもできなかった。  
妄想世界に逃げ込むことで徹底的にスポイルされた自分に、それを受け入れる強さは残ってなかった。   
もはや>>1は、泣き喚き甘えることでしか、己を支えられなくなっていた。  
  
父が自分を押さえ込んでいる。   
その父の、かつてより腕力を失ってしまった父の腕の中で、>>1は喚き散らしていた。   
「やめてくれ!もうやめてくれ!」そう父は叫ぶ。  
だが、父のその声は>>のすぐそばで叫んでいるにも関わらず、どこか遠くから響いてくるように聞こえた。  
目の前で母は床に突っ伏していた。母の背中が震えているのが見えた。  
その母の背中の小ささに、>>1は慄然とした…。   
  
しばらくしてようやく、>>1は正気を取り戻した。   
そして、今、自分がやってしまったことへの恐怖が、一気に>>1の精神に襲い掛かる。   
母は泣いていた。くぐもったようなか細い泣き声が、>>1の耳に届いた。   
  
「……わああーっ!」   
一際大きな声で、>>1は叫んだ。   
それと同時に、自分を羽交い絞めにしようとしていた父を振りほどき、食卓から駆け出した……。  
0368創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/07(火) 20:32:55.93ID:12YgK8Wc
……ところで>>1さん、貴方は一体どちらへ向かわれるのですか?   
  
目指すは、そう、決まってる……………中二病劣化ファンタジーワールド!   
  
全てが都合よく作られた妄想世界の中に、再び>>1は逃げ込むのだ。   
「来たれ異界の勇者さまよ!」そんな巫女さまの誘いに乗じて。  
辛き現実から目を逸らし、甘き夢だけが虚しく漂う、あの虚構の世界。   
そこには、卑小な>>1を決して傷つけない都合のよい虚構が待っている。   
そこには、卑小な>>1を脅かさない都合のよい冒険が待っている。  
そこには、卑小な>>1を決して「キモい」と言って敬遠しない、二次元の美少女たちが……待ってくれているのだ。   
  
  
……そして二時間後、>>1は、再び妄想ファンタジーの甘き夢を見ていた。   
呆けたようなツラで、勇者や巫女や魔王だとかとの冒険の世界を漂っていた。  
こうしている間にも現実社会の時間は確実に、確実に流れ去ってゆく。   
だが、その確実に刻まれる時の流れは、>>1の思い描く妄想の世界には届かなかった。   
  
今日もまた、夜が更けてゆく……。  
0372創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/11(土) 15:21:48.17ID:2t3vnSxh
マオとオルテガは須磨海岸に行った。
目的はナンパだ。
真夏のビーチエンジェルたちとのねっとり甘いアバンチュール。
その期待に股間を熱くさせていた。
0373創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/13(月) 03:20:57.60ID:jt6QlEvU
そこでマオとオルテガは人生初のナンパを敢行しようと意気込んでいた。
なにせ二人はこの日のためにホットドックプレス「ナンパからセックスに持ち込む方法」を入念に読んできたのだ。
ようやく到着。マオとオルテガと僕たちは海に出た。マオはすでに勃起している。
砂浜に一歩踏み出してみると、熱くなった砂が足の裏に焼きついた。
二人は「熱い! 熱い!」と言いながら爪先立ちで移動する。
海パンがテントのようになったキモオタ二人が爪先立ちで歩く姿は文字通り変質者である。
どうやら二人は目覚めてしまったようだ。


0374創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/15(水) 18:25:16.99ID:pvTByLUC
いや、目覚めてはいないだろ
ただメタっぽい設定とかってもう氾濫しすぎてて今更って感じ
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