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【シェア】みんなで世界を創るスレ8【クロス】
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0001創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/11/13(日) 20:05:57.63ID:Tcu0XgNi
このスレは皆でシェアードワールドを創るスレです

※シェアードワールドとは※
世界観を共通させ、それ以外のキャラ達を様々な作者がクロスさせる形で物語を進める事です。
要するに自らが考えたキャラが他作者のSSに出たり、また気に入ったキャラを自らのSSにも出せる、
という訳です。

現在すでに複数のシェアードワールドが展開されています。それぞれの世界で楽しんでみたり、新しい
世界設定を提案してみてはどうでしょう。
分からないことはどんどん質問レスしよう、優しいお兄さんやお姉さんが答えてくれるかもしれないよ。
さぁ、貴方も一緒にシェアードワールドを楽しみませんか?

前スレ
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1287900390/
避難所(規制等の際はこちらへ):みんなで世界を創るスレin避難所その2
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1276257878/
まとめwiki
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/286.html#id_a459e271

現在このスレでは 4つぐらいの展開されてるよ。この世界、俺が盛り上げてやろうじゃん!て人は
気軽に参加してみたらいいんじゃない?

・閉鎖都市
あらゆる社会から隔絶され、独自の発展を遂げていく「閉鎖都市」。
そこで暮らす様々な人々と文化を作り出そう!
・異形世界
日本を襲った大地震。同時に突如として現れ、人々を襲う「異形」。
異形たちが持つ特殊な元素「魔素」を巡る対立を描こう!
・地獄世界
強大な権力を持った小さな少年、閻魔殿下を中心に繰り広げられる笑いあり、涙ありの物語。
なんでもありの「地獄」で楽しもう!
・温泉界
蒸気沸き立つ謎の世界「温泉界」に住む一人の少女「湯乃香」。
彼女が退屈しのぎに始めたのは、なんと異世界からの住人召喚!?
他スレからの参戦も歓迎だ!あんな人とこんな人が風呂でまったりしちゃう!?
・???界
閉鎖都市・異形世界・地獄世界を監視している境灯の世界。
基本的に何をしても良いので灯ちゃんのせいにして好き勝手しよう。
特に展開はない!
0218白狐と青年 ◆mGG62PYCNk
垢版 |
2012/04/14(土) 11:02:18.39ID:gjZWr3hp


            ●


 僧侶が和泉へと進んで行くのを見送って、二人はもう片方の道へ進んで行った。
 看板に書かれているのは信太の森だ。
「キッコさんも森の皆さんも、普段匠さんがあまり顔を見せないからきっと首を長くして待ってますよ」
「あそこは俺にはものすごくアウェーだから行きづらいんだよ」
 うんざりしたように言いつつ、匠は信太の森の封印守をしてる異形が
第二次掃討作戦の時には討伐対象とされていたなどと知ったらあの僧侶は驚くだろうかと考える。
 ……あれからいろんなことが動いたもんだ。
 通光を討伐する事によって終わりを迎えた昨年の異形の大侵攻。
あの事件の後、クズハは明日名から失ってしまった自身の記憶を聞いていた。
その上で彼女は未だに匠が名付けたクズハの名を名乗っている。戦いの後、気を失う前に言っていたように、元の名を名乗る気はないようだ。
 過去を話として聞く事はできても、失ってしまった記憶を実感として取り戻す事はできないようだから、
それも良いだろうと匠は思うし、それ以上にクズハがクズハとして生きてくれるという事に思っていたよりも遥かに嬉しさを感じている自分がいた。
 自分の中の知らない部分を発見した気がして思わず顔が緩む。その顔を見たクズハが首を傾げる。
「どうされたんですか?」
「いや……あの事件からいろんなことがあったなと思ってな」
 数か月の期間を用いて大阪圏全体に広がって、あの日に爆発、収束した事件は、
大阪圏を乗っ取ろうとする人間と、それに協力した異形が組んで起こしたものとして処理された。
 少なくとも世間的には人と異形、両者の手によって起こされた事件となっている。
 実際の所は人の側が起こした事件であり、
そこに異形も一枚噛んでいたとするのはあまりにも人にとって都合のいい結論の出し方だが、
今回の事件の真実を知った場合、謂われなく排斥活動に晒された異形の側が報復を起こし、
ただでさえ疲弊しいている現在の大阪圏をこれ以上荒らすのは得策ではないと平賀達は判断した。
 その代わりというように、事件以後、大阪圏での異形の待遇は、平賀の研究区意外の大阪圏中央付近でも大幅に改善されているらしい。
 異形も事件には関わっていたが、それ以上に人間の手引きが大きく作用していたために今回のような事件が起こったにもかかわらず、
人間側が異形に対して一方的に迫害を行った事への反省と警告を込めて大阪圏の議員に異形を何名か迎えて今後このような事が無いように相互理解を図って行くとのことだ。
 ……通光の死体が人間の姿に戻らなかったから鬼の異形と通光が手を組んでいたと言ってしまっても通じるからなぁ。
 必要な証拠もきっともう平賀が捏造してしまっているだろうからこの真実は事実になって今後語り継がれていくだろう。
 ……じいさん、上手く立ち回ったなぁ。結局、異形擁護派が議会でも最大勢力になったんだっけか。
 あの事件の後各地に散らばって通光の研究を支援していた研究所を匠や彰彦、明日名は潰して回っている。今も、その活動を行った帰りだ。
 気を付けないと平賀のいいように利用されてしまうかもしれない。
養父とはいえ、匠にも何に代えても守りたい者がいる。必要最低限の警戒はしておこうと思う。
0219白狐と青年 ◆mGG62PYCNk
垢版 |
2012/04/14(土) 11:03:34.08ID:gjZWr3hp
「――さん? 匠さん?」
 名を呼ぶ声で、考えに沈み込んでいた匠は意識を現実に引き戻した。
「ん? どうしたクズハ」
「今夜、何か食べたいものありますか? 
あの、数日ぶりに器具が整っている調理場を使えるので、できるものならなんでも作りますよ?」
 変わった事といえば身近にもあった。
 クズハは以前にもましてこちらの世話をしようとする傾向がでてきたようだ。
 接し方に迷って遠ざけてきた部分があったこれまでの反動だろうと思うが、
匠としてもクズハを好いている自分を意識してからは常に傍に彼女の気配がある事が好ましい。
 彰彦や翔などはその様を指してバカップルなどとのたまっていたが、そこまでひどくはないと匠本人は思っている。
「そうだな……」
 クズハが作るものならなんでもいいんだが、と内心で口にしながらある程度具体的な内容を挙げて行く。
「放っておいても祭りの前祝いとか言って肉が狐たちの間で焼かれるだろうから、
それに付け合わせる感じに夏野菜で何かさっぱりしたものを食べたいな。あとは味噌汁とか主食を――」
 匠は一度言葉を区切ってクズハに顔を向けた。
「主食には稲荷を食べたい」
「―――はい!」
 輝くような笑みを浮かべたクズハに匠も笑みを返す。
 近くに見える森の中では人間達の祭りに合わせるように異形達の祭りの準備の気配がある。
今年は信太の森と和泉の共同開催だったはずだ。
 また賑やかな祭りとなる事だろう。
 匠は親しみ深くなってきた森の中へと足を踏み入れた。



end
0220白狐と青年 あとがき的なアレ  ◆mGG62PYCNk
垢版 |
2012/04/14(土) 11:06:01.04ID:gjZWr3hp

 最後、安流さんを使用させていただきました。
 繁盛記との兼ね合いもありそうですので問題があるのならば彼の部分を修正しますので言ってください。

 ともあれ
 これで終了!

 途中でかなり期間が空いたり他諸々、未熟な感じがするものですが無事に完結できましてよかったです。
 いやほんとに

 この話を書いている間にwikiのいじり方や自分なりの書き方の方式が組めたので得るものは多かった
 その点充実してたと思います
 描いて頂いた絵なども全部保存してたりして宝物です!
 またどっかで何か書きたいなと考えつつ、これにて一度筆を置かせていただこうと思います

 みんなで世界を創るスレ、異形世界。「白狐と青年」にお付き合いいただき、ありがとうございました!
0221創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/18(水) 00:34:10.33ID:+AirFgtP
お疲れ様です。

二人の仲が結ばれて、世界も丸く収まって、
やっぱり大団円が一番です。

白狐と青年はこのスレの中心みたいな感じだったから、終わるのが寂しかったり。

またどこかで、できればここで、次の作品をお待ちしてます。
0222 ◆mGG62PYCNk
垢版 |
2012/04/18(水) 23:51:27.82ID:AkBqTGnz
>>221
大団円を迎えさせてあげられてほっとしてます
終わるのを惜しんでいただけるだけで書いたかいがありました
またどこかでお会いしたらよろしくお付き合いください

このスレと世界と板の発展を願って乾杯!
0223創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/30(月) 01:51:41.36ID:W9TB6Mx6
連載終了超乙
そして新作期待上げ?
0224創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/05/19(土) 11:03:04.38ID:vUo/Pm8F
これは乙

また次回作も素晴らしいものになればいいですね♪
0228 ◆mGG62PYCNk
垢版 |
2012/06/17(日) 14:52:33.17ID:Sw4lnBDJ
ありがとうございます
なんだかんだで大団円でハッピーエンドな王道はいいものです
どうせ人間の女性には匠はもてないので二人にはもうずっとバカップルでいてもらいますw
0229 ◆Warlock/sw
垢版 |
2012/06/21(木) 23:29:57.89ID:V7t/ejrS
スレのみなさまはじめまして
異形世界で作品を書きたくてやってきました。
魔素などの世界観の解釈があってるかわかりませんが、勉強しつつ
書いていきたいと思います。では投下します。
0230小角診療所の診察日誌 ◆Warlock/sw
垢版 |
2012/06/21(木) 23:31:02.81ID:V7t/ejrS
『第一話 小角診療所はアットホームで楽しい職場です』


 あー……初っ端からこんなことを見ず知らずの人間に打ち明けるのは、やっぱりさすがに気が引けるのだけど。それでも
もう、白状せざるを得ない。いやむしろ誰かに聞いてもらいたい。言ってくっきりすっきりしてしまいたい。僕は今そんな
心もちだから、どうか運と星の巡り合わせが悪かったと思って聞いてほしい。軽く聞き流してくれてもいいから聞いてほ
しい……いや、ごめんやっぱり少し真剣に聞いてほしい。

 何を隠そう、僕は今猛烈にイライラしている。何べん挑んでも縫い針の穴に糸が通らないばかりか、果敢に挑み過ぎた挙
句糸の先端がほつれてボサッてなっちゃってますます難易度を上げてしまった、そんな状況に匹敵するレベルでイライラし
ている。だって僕、不器用ですから。
 
 何をそんなにイライラしているんだ少年、と冷めた反応が返ってくるのは至極当然だと僕自身思うのだけど、ここはしば
し猶予をもらって、状況の説明をさせてもらいたいと思う。そうすればきっと、僕のこのさざ波のごとくそこはかとなく寄
せては返す苛立ちについて理解してもらえるはず。

 と、いけないいけない。まずは僕のことを知ってもらわなきゃいけないじゃないか。名前も知らない馬の骨に共感してく
れるお人よしがどこの世界にいるってんだ。じゃあまあ、正式な自己紹介はそのうちするとして、今回は略式で。
 僕の名前は厳島雲雀(いつくしまひばり)。多くの人は雲雀くんって呼ぶよ。あそうそう、ため息が聞こえそうだけど、
れっきとした男だ。最近18になったばかりで、まあまだまだケツの青いガキってわけだよ。

 以上が簡単な僕のプロフィール。と言っても実はこれ以上言うべき情報もなかったりするんだけど。まあそれはひとまず
置いといて、ここからが本題だ。実は今僕は仕事中だったりするんだ。それはとてもとても神経を使う、大変で大切な仕事
なわけだ。集中力命な作業なわけだ。失敗したら偉大なうちの大先生が大好きなお酒と、面倒面倒言いながらみんなで育て
た無農薬野菜がまるまるパアになってしまう、シビアでタイトな責任ある作業なわけだ。さあ、そういう作業がいよいよ佳
境にさしかかろうとしていた、まさにそんな時にだよ。

「あっ……せ、先生……気持ち、いいですっ……」

 などという甘ったるい女性の声が隣の部屋から聞こえてきてしまったんだから。
 ああ、もちろん最初はね、空耳かとも思ったんだ。隣の部屋っていうのは第一施術室と言って、何にもいかがわしいとこ
ろなんてない部屋なのだし。まあ……ベッドはあるんだけど。ともあれ、僕も一応年頃の男だし、無意識の願望的な何かで
そういうピンク色の耳鳴りがすることぐらいあるのかなー、ということで片付けようとしたのさ。ところがですよ。

「あんっ……せ、せんせっ……強い、ですぅ……」

 自分の耳鳴りと断じて集中しようとした僕に、さらにこんな追い打ちが飛んできたもんだ。
 でも僕もね、我ながら強情な男なんだ。今診察を受け持っているのは僕の旧知の友人であり、僕の弟弟子にあたる男
なんだけど、まさか彼が医師と患者という力関係を盾に……その、ほら、あれ……アレなことをするような奴では絶対に
ないのだから、まさか隣の部屋からこんないかにも真っ最中ですみたいな声が聞こえてくるはずがない、だからこれは幻聴
だと、あくまでそういうことにして、これも片付けたわけだ。なのにですよ。
0231小角診療所の診察日誌 ◆Warlock/sw
垢版 |
2012/06/21(木) 23:32:05.59ID:V7t/ejrS
「あっ、ああっ! だめっ……だめっ……! せんせぇっそれ以上はもうっ……」

 自分の幻聴ということで処理して再び集中しかけた僕に、さらなるダメ押しが下されてしまった瞬間なのでした。
 確かに、僕は実に健全に育った18歳の男子だ。そういうことへの興味は人並みにはあると言わなければ嘘になる。
だがしかし、あくまで人並みであって猿並みではないんだ。こんなドピンク色の耳鳴りやら幻聴やらを合計3回聞くような
人間は、それこそ人並みではなく猿並みに発情しているような奴じゃなかろうか。正直僕はそこまで貪欲に発情している
と自信を持って言い切れるほどには、女性への興味はないと思っている。ここに至りようやく僕は、『鬱屈した性欲がもたらし
た大人の階段昇るドピンク耳鳴り説』の呪縛から解放されることになったわけだ。

 でもそうなるとだ。むしろとんでもないことだ。事態は最悪の方向へと進んでしまうんじゃないだろうか。さっきも触れた
けど、隣の部屋では、旧友であり弟弟子でもあるあの彼が診察をしてるはず。その彼がまさか患者さんを……いや、だが待て。
ひとつ忘れていたことがあった。とても大切なことを。

「あ……せんせぇ……優しくなった……んふ」

 とこのタイミングでまたまた切ない声。そうだった。何を隠そうあの男は超さわやか系イケメンでプレイボーイなのだった!
医師と患者という関係を利用、なんてとんでもない。適当に甘い言葉でもばらまきつつ、嫌味なほどに爽やかな笑顔をふりまけ
ば、大抵の女性はコロリと落とせるあいつのことだ。なんだ和姦じゃないか。めでたしめでたし。

 ……ってそうはいくか! 危うく納得しかけるとこだったわ! 無理矢理か和姦かってそんな問題じゃねえ! 今は仕事中
だ! 僕もあいつも仕事中だ! 同じ金貰ってんだ! なんで僕がこんな暑っ苦しい部屋で汗だくになりながら風邪薬作ってる
隣であいつはお愉しんでやがるのだ!?

「ん、せんせぇ……なんだかジンジンしてきちゃった……」

 ちょっと聞いた今の!? 乙女をジンジンさせおってぇあの野郎ぉ! 腹立つ! イライラするぅ! 僕の集中力を削いだ
上に仕事場でお愉しみおってぇ! 許さん。もう許さん。乗り込んでやる。現場を押さえてやる。

 ……という流れがあって、冒頭のイライラしている僕が出来上がったわけですが。さて、お話を聞いて貰えたことで、僕
自身は幾分冷静になることができた、と。
 いや、さすがに乗り込むのはまずいな。女性に恥をかかせてしまうだけだしな。ここはやはりいっそ、見ない聞かない関し
ないを貫くべきか……
 いやでもなぁ、やっぱりああいうことはよくないし……だって仕事場だろここ……少ないとはいえ給料だって出てるし……

「ふぅ。先生、ありがとうございました。今日もすごく気持ちよかったです」
 今日「も」、だと……? 僕が気付いてなかっただけで、しょっちゅうしていた、と言うのか? しかも感謝されとるし。
ダメだ……やっぱりこれはダメだよ……春人、お前はいつの間にそんなに汚れてしまったんだ……これじゃお前はもう、ただ
の、落ち医者じゃないか……
0232小角診療所の診察日誌 ◆Warlock/sw
垢版 |
2012/06/21(木) 23:32:47.57ID:V7t/ejrS
 あんまりに残酷な事実を突きつけられて、僕は打ちひしがれるばかり。これで今までずっと同じ給料を貰い続けてきたのだ
と思うと、ますますやるせない。なんという裏切り。なんという背信行為。
 それでももう、僕にはどうすることもできない。もうどうする気にもなれない。いろんな意味で終わったことだ。「さっきは
おたのしみでしたね」とか嫌味ぐらいは言えるかもしれないけど、そんなことしたってきっと虚しいばかり。

 ……はあ。とりあえず、すっかり放置になってる調薬を再開するか。ようやく静かになったのだから、きっと集中できるよ。
 そうして数分ぶりに僕が集中を取り戻した、矢先。
 キィィッ、と建てつけが悪い上に蝶番にすっかり年季の入ったドアが開く音がした。この音がするドアは診療所通路側の
ドア、ではなくて。

「よう雲雀、患者さんがお帰りだから。いつもの湿布出しといてあげてくれ」

 さっきまで白昼の情事が繰り広げられていたその部屋、第一施術室につながるドア。事後だというのに恥ずかしげもなく顔
を出した落ち医者風情は、これまた悪びれもせず僕に指示をよこした。まったく白々しい。湿布だと? いったいどこに貼ら
せるつもりだこのバカめ。湿布が必要になるほどどこに何をしたというんだこの色情魔め。という心の声を、できるだけソフト
に聞き返すことにした。鎌掛けってやつだ。

「湿布? なんで湿布がいるんだ?」
「なんでって……そりゃ貼るからだろう」

 うん、まあ当然だよな。湿布を飲み薬として出すやつはたぶんいるまい。こんなものは小手調べだ。次が本題だからな。
「へえ。参考までに聞きたいんだけど、どこに貼るんだ?」
「どこって……腰だけど」
「こ、腰、だと……」
 確定。こいつはクロ確定。信じたかった……姉川春人(あねがわはると)、僕はお前を信じたかった……。でも、ダメ
だったよ。腰って、腰ってお前……

「腰の打撲で2週間前から通院してる女の子がいるだろ。あの子だよ」
「……え? 腰の打撲?」
 おや? なんだか雲行きが怪しくない?

「そうだよ。ほんとなら花蓮(かれん)にやってもらうべきだったけど、生憎あいついなかったからさ。途中で担当は変わ
らないほうがいいってんで、俺が治療してた患者さん」
「あ……ああ、そういや、いたっけそんな子……」
 ……いた気がする。あ、じゃあ湿布を腰に貼るのは、ほんとにただの治療ってわけか。

「雲雀お前な、自分が受け持ってないからって患者さんのこと忘れんなよな」
「うぐっ。ご、ごめん」
 ……怒られちゃった。落ち医者に怒られちゃったよ。うう、なんか気まずい。とりあえず、さっさと湿布を用意しよう。
 湿布湿布……おおこれこれ。さて薬袋薬袋……はい押し込め押し込め。よし、用意完了っと。
0233小角診療所の診察日誌 ◆Warlock/sw
垢版 |
2012/06/21(木) 23:33:34.88ID:V7t/ejrS
「はい春人、湿布だよ」
「おう、サンキュー」
 怒ったそばから、今度はにっこりと爽やかな笑顔。この笑顔で幼女から老婆まで、数多の女性を虜にしていると噂の必殺
スマイル。まあ確かにまぶしいね。まばゆいね。でも僕はだまされないよ。聞くべきこと聞いちゃうよ。

「あのさ春人。湿布をどう使うかは納得したよ。でもさ、さっきのあの声は何?」
「あの声?」

 シラを切るつもりか。この期に及んで見苦しくもシラを切るつもりか。そういうことなら僕にも考えがあるぞ。いやでも
思い出させてやるからな。シラを切ったことを必ず後悔させてやるからな。

「あっ……せ、先生……気持ち、いいですっ……」
「うわっ気持ち悪っ! 雲雀なんだお前いきなり!」
 厳島雲雀渾身の名演技! 効果は抜群ッ! 畳みかけるぞ!

「あんっ……せ、せんせっ……強い、ですぅ……」
「キモいキモい! わかったから! お前の言いたいことはわかったから!」
 見たか! これぞ歴史に残る名演技! 効いている! だがまだやれる!

「せんせぇっ……そんな太いお注射……こわいですぅ」
「捏造すんなや! アホかっ……あ」
 とどめの一撃決まった! もはやこいつには戦う気力も反論する気力も残ってはいま……ん? なんだ? なんで春人
は、僕とは全然違う方を向いて固まってるんだ……? 春人の視線の先には……?

 そこには顔を真っ赤にして俯いている女の子の姿が!
 なんだ? どういう状況なんだ? かなり控えめに想像して、これはもしかしてまずい状況だったりするんじゃないのか?

「あ、あ、あのっ……姉川先生。わたし……」
 サーッと、熱が冷めていく。頭が急速に冷静になっていく。
 これはどういう状況なんだろう。僕はやっぱり、かなりまずいことをしてしまったんじゃないだろうか。自覚があったにせ
よなかったにせよ、彼女は自分が端から見てどういう声を上げていたのかを、僕の再現率100%の名演技によって見せつけられ
てしまった。いや、自覚があったなら確信犯だ。それはそれで春人に食べられたい女の子だというだけのことかもしれない。
いや十分ダメだけど。ダメだけどこの場合はまだマシだ。

 問題は自覚がなかった場合だ。自覚なく上げていた声が、実はアレな感じになっていて、しかも第三者に聞かれていた、と。
 ……最悪じゃないか。みすみす僕がそれをバラしてしまったということになるじゃないか。なんという迂闊。なんという
残念。なんというドジっ子。な僕。

 彼女はきっとそれに気付いてしまったから、あんなに顔を真っ赤にして、あんな震える声でようやく言葉を絞り出したんだ。
やらかしてしまった者として、何かフォローをしてあげたい。けど、こんな時僕は一体どうしていいのやら、まるで思いつか
ない。
0234小角診療所の診察日誌 ◆Warlock/sw
垢版 |
2012/06/21(木) 23:34:20.12ID:V7t/ejrS
 ああ、情けないな……医者が患者に嫌な思いをさせて、そのくせ何のフォローもできないなんて……そこまで思考を巡らせ
た時、目の前の男がさっと動いた。

「山崎さん、あのいかにも頭悪そうな男の気持ち悪い迷言集はさっさと忘れようね」
「で、でも……さっきわたし、あの人と同じこと」
「同じじゃない。全然違うよ。君は何か聞き間違えてるよ」
「でも……」
「眠い時に眠いって言う。美味しいものを食べたら美味しいって言う。気持ちよかったら気持ちいいって言う。そんなの普通だ。
誰だってそうだよ。俺だってそうだ。そうじゃなきゃ、人生なんて途端につまらなくなっちゃうからね」

 ……かっこいい。春人のやつ、かっこいいよ。そりゃメロメロになるよ。

「……姉川先生。ありがとう」
「うん。さ、笑ってバイバイしよう。そして次もまた、笑ってここに来るんだよ」
「うんっ。次で最後ですけど、よろしくお願いしますっ」

 ぺこりとお辞儀をして。上げた顔は満開の笑顔で。泣きそうな顔で俯いていたさっきの子とはまるで別人の女の子は、がらが
らと引き戸を閉じて、姿を消した。
 姉川春人。白昼の情事事件を帳消しにする、100点満点のフォロー。

「はあ。さすが春人。手慣れてる」
「人聞き悪いこと言うな。雲雀お前、ちょっと師匠と花蓮にお説教喰らったほうがいいな」
「え? いやちょっとそれは勘弁してくれ……ってああぁっ!」
「うるさい! なんだよいきなり大声出して!」
「調薬……すっかり放置しちゃった……」

 調薬作業には時間制限がある。そんなに急ぐ必要はないが、かといってタラタラやっていていいものでもない。でもどうだ
ろう。だいぶタラタラしてしまった気がする。

「なんだかんだで15分経ってるぜ。15分……ああ、無理だな。残念雲雀。ますます説教の種が増えるぞ」

 ……言い訳はできなさそうだ。割と全体的に僕が悪いような気はしてる。春人の白昼の情事もバラしてやりたいけど、僕の
想像力の豊かさを開帳するだけになりそうな気もしてる。ああ、久しぶりだよこんなに失敗したの。今日の診察日誌、書くこ
と多そうだなー…
0235 ◆Warlock/sw
垢版 |
2012/06/21(木) 23:35:23.75ID:V7t/ejrS
今回の投下は以上です。
ちょくちょく投下したいと思いますので、よろしくお願いします。
0236創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/22(金) 00:45:25.46ID:edjQi6Nf

どう異形世界の設定と絡んでいくのか期待
0239 ◆Warlock/sw
垢版 |
2012/06/24(日) 00:36:23.09ID:FBmZXnCG
>>234の続きを投下します。
0240小角診療所の診察日誌 ◆Warlock/sw
垢版 |
2012/06/24(日) 00:37:34.16ID:FBmZXnCG
『第二話 小角診療所は今日も平和です』


 奈良圏。実際には京都以上に古い歴史を持つにもかかわらず、いつも京都の陰に隠れてその後塵を拝し続けていたこの
不遇の土地。そのまたはしっこの地域の、だいぶうら寂れかけた小さな町の一角に、「小角診療所」はどしんと建っている。
 
「小角診療所」は通称であって、行政区に上げた公的な文書上の登録名称は「小角魔素医療研究所付属病院」となって
いるんだがねと、大先生はどうでもよさげに教えてくれた。まあ、実際正式名称なんてどうでもいいものだ。
「小角診療所」だけで十分、「小角先生」がやってる「診療所」だということは誰にでも伝わるのだから。

「小角先生」というのが、僕が言うところの大先生であり、僕の師匠でもある人だ。現代魔法体系の基礎を作り上げた五の
氏族のひとつ「小角」に名を連ねる、それはそれは立派な人。僕の命の恩人で、僕の憧れ、僕の目標だ。本人は「自分は
所詮ボウリュウ(どんな漢字かわからない。従って実は意味もわかってない。えへ)だよ」なんて言っていたけど、ボウ
リュウだろうが亜流だろうが主流だろうが、大先生のやってることはとても立派だ。

 真面目な話、今現在のこの国の医療、特に都市部からちょいとでも離れた地域の医療は危機的状況にある。先時代、高度
に発達していた日本の医療は、各種のハイテク機器によって立っている面が大きかった。でも十数年前の災害によってそれ
らの大半は失われてしまった。それだけならまだなんとかなったのかもしれないが、さらにその後に発生した異形とかいう
ものの出現によって、医療物資の確保はさらに難しくなってしまった。……と、この辺は全部大先生からの受け売り。だって
僕まだガキだしね。この辺の事情はよくは知らないんだ。

 電気もまともに通ってなかったりするから、当然ハイテク機器なんて仮に残っていたとしても使えない。ガンなんかの重
病は、治療はおろか発見さえ困難。風邪薬なんかの基本的な薬品類さえ、他国との国交が途絶えた今の日本では貴重品。
でも貴重品だからって出し惜しみはできないし、いずれ枯渇するのがものの道理。

 そこをなんとかできないか。医療の整備は、荒れ果てた国を再興するためには最も優先して行うべきことではないのか。
何より、異形などという物騒な生物まで湧いてきて、人間はまるで作り話のようにバカげた窮屈な生活を強いられること
になった。異形が媒介する未知の病なんてものだってあるかもしれない。ないなんて誰が言い切れると言うのだ。むしろ
それがあったなら、異形に襲われるうんぬん以前の問題で、人間はなんの抵抗もできずに死滅するかもしれない。
 させない。そんなことには絶対にさせない。
 変えて見せる。私が。この小角氏真(おづのうじざね)が。この国に新しい医療をもたらして見せる――

 大先生の中でこんな男前な葛藤があったのかどうかは、僕はまったく知らない。以上はまったくもって100%僕の妄想だ。
妄想であり、願望なんだ。これぐらいの理想を抱いて、大先生は「未知の物質魔素を医学に応用する研究」を始めたんだと、
僕は勝手にそう思っている。これぐらいの意思がなければきっと務まらないことだと思う。根気が必要だし、その根気を折
られるほどの失敗だってしょっちゅうする。うまくいくことの方が珍しい、それを思うと到底割には合わない。

 まさに今だってそうだ。
0241小角診療所の診察日誌 ◆Warlock/sw
垢版 |
2012/06/24(日) 00:39:01.66ID:FBmZXnCG
「う、ううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」
 前回の恥ずかしい失敗を取り返すべく、せっせと調薬作業に勤しんでいた僕の耳に届く、呪詛でもこめられたようなうめき声。
背後からいきなりこんな声が聞こえてきてしまっては、やれついにゾンビタイプの異形でも現れたのかと身構えるのが最適解
かもだけど、今回に限ってはその必要はないとわかっている。

 振り返って見れば、青白い……というのも生易しく、もはやすでに紫がかっているという形容がしっくりくる、それはもう
10人に聞けば8人が「ゾンビ!」と力強く解答してくれそうなほどにゾンビ然とした血色の長身痩躯の男が、これまたゾンビ然
とした焦点の合わない虚ろな目をしてゆらゆらと立ちつくしていた。
 実際のところ、これが知り合いでなければ僕は間違いなく自警組織を呼び、ゾンビタイプの異形として全力で排除をお願い
すると思う。そうじゃないことはわかってるし、なぜそうなっているのかも知ってるから、僕はそのゾンビライクな男性に
努めて普通に声をかける。

「お疲れ様です大先生。またトイレ行ってたんですか? 何回目?」
 そう、初登場がゾンビライクな姿なんていうかなり可哀想なこの人こそ、我らが大先生小角氏真(おづのうじざね)さん。
顔色が少し悪いのとやせ気味な体型はもともとだからいいとして、この危ないクスリキメたみたいな目つき。大先生の今後の
ためにも、せめてモザイク処理くらいは施してあげたいと思ってしまう……なんて考えてる間、大先生はぷるぷると震える手
を胸ぐらいの高さに掲げ、
「いち、にぃ……」
 と紫色の指を折りながら、霊魂吐きだしてるんじゃないかというおぞましい声で数を数えはじめた。ほどなく右手が一杯に
なり、左手の力も借りる。

「はち、きゅう……」
 あ、飛んだ! ろくとななが飛んだ! これは思っていたより重症だ。思考能力までゾンビ並みになってるじゃないか。
いや、笑いごとじゃないな。新薬の効きすぎか、副作用か……どっちにしたって流石に心配……

「ああぁ、すまん雲雀。もう何回トイレに行ったかも覚えとらん」
 今や限りなくゾンビに近づいていると思しき大先生は、そう言って薄く笑った。その声はさっきまでほどには不気味じゃ
なく、また目つきもモザイクの助けはいらなさそうだった。安定期に入ったのか。よろよろのそのそとやっぱり人間離れした
足取りで、僕の向かいの席に腰掛ける。落ち着いたのか、ふうっと大きく息をついた。

「大先生、昼前に見た時よりさらに干からびてるっす。ちゃんと飯食いました?」
「飯なんて食ったら……ますます元気に出ちゃうだろうが」
「そりゃそうかもだけど……じゃあちゃんと水分取ってます?」
「水分なんて取ったら……ますます元気に出ちゃうだろうが」

 うう〜んまるでオウムのごとき単調な会話のバリエーション。知的でウィットに富んだいつもの大先生、早く帰ってきてく
ださい。小角診療所がアホの寄せ集めだと思われるのも時間の問題ですよ。
 しかし「医者の不養生」とはよく言ったもの。お腹ピーピーが続く時はまずしっかり水分を補給しないといけないって、
腹痛の患者さんが来たら必ず念を押せって言ったのは他でもない、このゾンビな人だってのに。
0242小角診療所の診察日誌 ◆Warlock/sw
垢版 |
2012/06/24(日) 00:39:54.80ID:FBmZXnCG
「とりあえず、はいお水。置いときますから。飲んでください。つーか飲め」
「うぐぅ。腹壊してる人間に水飲ますとか……とんだ鬼畜野郎だ」
「大先生がそうしろって言ったんでしょう!」
「……腹を壊してる時でも水分を取らなくても大丈夫になる薬を作ろうか。売れるぞ」
「ニッチすぎる!」

 ゾンビ化した大先生との不毛なやりとりは続く。大先生の言うことはわからんでもない。確かに僕自身も、カキの食当たり
で数日腹を下したことあったけど、水分を取るのが嫌だった。「どうせすぐに出てくじゃん!」という感じで。だがそうは
言ってもやっぱり喉も乾いてくるし、なんか頭痛くなってくるしで、結局水分は取るんだけど。

 しかしまあ、今回の大先生のは食当たりでもなく、まして昨夜腹丸出しで寝ていたなんていう自業自得でダサダサの不注意に
よるものではまったくない(ちなみに僕は週一のペースでやらかしてる)。それに今回のは腹下しという形で表れているが、大先
生にこういった異変が表れるのはとくに珍しいことでもなかったりする。こういう大先生の姿を見るにつけて、この人の情熱も
理想も意思も、間違いなく本物なんだということを僕は実感させられたりするのだ。

「大先生、今回の便秘薬って、ちゃんと動物実験はしてましたよね」
「もちろんしたさ。結果も良好だった。モルモットでは快腸だった。プリプリ出てたよ」
「で、大先生が飲んでみたら……」
「ご覧の有様だよ」
 
 大先生の腹がギュルと鳴る。また発作か? と思ったが、大先生は特に動じていない。どうやらちょっと慣れつつあり、
トイレに行くべき時と行かなくてもいい時の区別がつけられるようになってるらしい。すごいな人間の適応力。

 基礎的な薬さえ枯渇の一途をたどる今、それをなんとかするには自前で薬を調合するしかない。もはやこの国は何時代に突入
したんだって話だけど、この大先生は真面目にそう考えた。そう考えて本当にそれをやってしまえるのだから、意思あるところ
に力も宿るというのは本当かもしれない。

 それでもどうしようもないのは、目的の薬を調合するための途方もないトライ&エラーを繰り返す過程と、調合に成功した薬
を使って効果を試すという実験だ。もう言わなくてもいいかもだけど、大先生はこの試薬の実験を自分の体を使って行っている。
 初めて知った時は真剣に止めた。今回みたいに腹痛で済めばかわいいもので、下手をすれば死ぬ危険だってあるんだから当然だ。
それでも僕がそれを知った時には、すでにいくつかの薬は完成していた。それまでに廃棄されたものも含めて、大先生には
すでにいくつもの「前科」があったわけだ。

 僕は二人の兄弟弟子と一緒に、みんなで大先生に詰め寄った。頼むからやめてくれ。師匠に何かあったら、魔素医学はどう
なる。その時、大先生はこんなことを言った。

『もし私に何かあったら、その時は弟子たちが助けてくれる。そうだろう?』

 いつもと変わらない無表情で言ったその言葉を、今でもはっきりと思い出せる。それきり僕たちは何も言えなくなった。
大先生はかなり勝手なことを言ってると思う。きっと冗談のつもりなのかもしれなかった。それでも、少しでも真面目にそう
思ってるんだとしたら、それに応えたかった。だからあれ以来、僕はそれまで以上にがんばるようになった……回想終わり。
0243小角診療所の診察日誌 ◆Warlock/sw
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2012/06/24(日) 00:40:37.78ID:FBmZXnCG
「やっぱり難しいんですね、薬品の調合って」
「ああ、本当にな」

 短くそう言って、大先生は机に視線を落とした。僕が絶賛作業中、やいのやいのと騒ぎながらもなんとか練り上げた風邪薬
の結晶が、今ようやく仕上げの時を待っていた。いや、僕前回失敗しちゃったからね、今回は何が何でもがんばらなきゃと思って。

「大先生みたいに、酒と何を組み合わせたらどんな薬が作れそうかって、僕は全然思いつかないんですよ」
「ふふん、そうか」
「そうか、じゃないですよ。何かすごい薬作れないかなって、考えてはいるんですけど」

 いつもそう考えている。これまでに大先生は、風邪薬、傷口に塗る外用薬、目薬、喉薬、点滴液、疲れたあなたの栄養ドリ
ンクといったものを、魔素を用いた調薬術によって完成させた。そして今回便秘薬に挑み、あえなく激しく腹を下し、半ゾンビ
化の憂き目を見た。

 魔素を用いた調薬術は、大先生の開拓した医療魔法のほんの一部分にすぎないけど、調薬術ですごい薬を作れれば、それ
が一番なんじゃないかと思ったりしてしまう。何せまだほとんどわからないことだらけの「魔素」を取りいれた薬なんだ。
これまでの常識や理解を越えた効果が発揮されても、何も不思議じゃないって思うんだ。でも……

「雲雀。この薬の主成分の3分の2は既存の物質なんだ。魔素にどれだけ秘められた力があったとしても、『すごい薬』なんて
のはできっこない」

 いつも大先生にはこう言われてしまう。そしてそれはもっともだ。さらに大先生はこの後、必ずもう一文付け加える。

「それにな。面白くないだろう。仮にそんな『すごい薬』なんてのができてしまって、どんな病気もそれさえ飲めばコロリと
治せるなんてことになったら。そこで私たちの研究はお終いだ」

 決まり文句だ。そして、これもまたもっともだ。もしかしたら本当は作れるのかもしれない『すごい薬』は、こうして僕た
ちの中では夢の存在、理想の中にしかないものになっていく。たぶんそれでいいんだろう。どこかでそう納得しているから、
僕は今日もこうしてちまちまと、風邪にしか効かない風邪薬を汗水たらして調合しているのだから。その薬で、少しでも早く
風邪が治る人たちが確かにいるのだから。

「……便秘薬、早く完成するといいですね。でも何が悪かったんでしょうね?」
「効果の方向性は間違っていない。ただ、少し効果が出すぎているんだな……」
0244小角診療所の診察日誌 ◆Warlock/sw
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2012/06/24(日) 00:41:12.62ID:FBmZXnCG
 情けないけど、僕には何ひとつ意見を出せないし、改善案も出せない。調薬術を修得こそしているものの、その原理はまる
で理解できていないから。だからその辺は今はもう、大先生に任せてしまっている。その分、大先生が調薬に成功した薬に
ついては、せめて失敗することなく量産していこうと思う。ちょうど今まさに完成しそうな、この風邪薬みたいに。
よかった、今回はちゃんと成功しそう。やったねひばりん、汚名返上! 名誉ば

 バンッ! と、本来聞こえるはずの蝶番が軋む音もかき消す勢いで、前回白昼の秘め事の舞台となった隣室第一施術室の扉が
乱暴に開く。ほぼ同時に
「雲雀手伝って! 急病人! ちょっとあたしだけやときついわ」
 と、これまたドアの音に負けじの大音量、でも耳には心地いいちょっと低めの女声。大声張り上げても耳障りに聞こえない
声って素敵だよね……と落ち着いてる場合じゃない。急病人なんて久しぶりだし、彼女に助けに呼ばれるなんてのもかなり珍
しい。こりゃただ事じゃないって。

「すぐ行く!」
 それだけ言って支度をする。扉のほうにチラッと目を向けると、珍しくほんとに余裕なさそうな顔が見えた。
 こりゃ相当だ。僕で足りるのか? そう思っても、行くしかない。それが僕の仕事だ。薬を作るだけが能じゃないし、それ
で許されるはずもない。それで満足するわけもない。むしろこの時こそ、この仕事の本領だと思ってる。
 ……あ。でも待て。待ちなさいひばりん。大事なこと忘れてないか? あ、調薬……今ここで調薬を放置したら……

「また風邪薬の調薬失敗するぅぅぅぅっ!」
 おいおいマジかよ。勘弁してくれよ雲雀。お前風邪薬の調薬もロクにできないのかよ。あのイケメン色情魔はきっとこう
言って僕をなじる。
 ほんま、こんな基本的な薬作んのに2回も失敗するやなんて……ほんまに使えへん愚図やね雲雀は。僕に助けを求めてきた
彼女はきっとこう言って僕を責める。……なんだろう、少し胸が躍るような気もする。なんだこの気持ちは。

 いずれにしても、調薬連続失敗とか僕自身が嫌だ。まあ今回のは仕方ない、間が悪かったと言えなくはないけど、それでも
やっぱり釈然としない。どうにかしたい、どうにかできないか。どう、にか……あ。なんだ、簡単じゃないか。
「大先生! 僕は花蓮さんの手伝いに行きますんで、調薬の仕上げお願いし大先生!?」

 厳島雲雀一生のお願いをしようとした矢先、大先生は腹を抱えて通路側のドアへ一目散にダッシュ!
「す、すまん雲雀。さっきの花蓮のでかい声で、胃腸がびっくりしたらしい」
 なんて丁寧に言い捨てて、大先生はトイレへと消えていった。こうして、僕の風邪薬調薬はまたしても失敗する線が濃厚と
なった。もう、漏らしてしまえばいいのに。
0245 ◆Warlock/sw
垢版 |
2012/06/24(日) 00:42:53.94ID:FBmZXnCG
今回の投下は以上です。
設定さらしもちょくちょくしていこうと思います。
0246創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/24(日) 15:01:38.29ID:DwXNWqoC
乙おつ

>なんだこの気持ちは。
ドMですねわかります
0247創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/24(日) 23:51:57.38ID:212Q2yG+
書ける人とか設定を作り込める人だけしか、参加できないのでしょうか。

当方は、思いついた時にエクセルで設定を書いていくだけスタイルです。
0248創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/25(月) 00:02:23.99ID:XzfYME0Q
ttps://box.yahoo.co.jp/guest/viewer?sid=box-l-2zlooonvtuwycv67tp25d4sexi-1001&uniqid=7a9e8f8b-2d9f-4c39-a19f-b227d73b3041&viewtype=detail

YahooBoxから公開しました、自分のエクセルブック集です。
クリエイティブ・コモンズの画像を同封してあるので、著作権フリーです。

これを使ってシェアれますでしょうか。
0249創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/25(月) 00:37:17.80ID:KXzuiMoZ
ストーリーの設定ならいいけど
新しい世界を作る最初の段階以外で世界観に関わる設定をどんどん言ってくるっていうのは避けた方がいいと思う
完全に設定だけで進むってスレもあって
↓の上の方は個人で、下の方は皆で作るスレだからご参考に

設定を紹介するスレ
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1283869805/

異世界設定つくらない?2
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1294583646/



とりあえず>>248を見てもエメスという人物についてしか書かれてない上に
関係無い二次創作のメモが混じっててどういう世界観か全く分からない
0252創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/25(月) 13:32:25.02ID:XzfYME0Q
注意:「並び替え」をするときは、「並び替え」用にブックをコピーしてください。
   参照先のシートは、先頭行しか自動的には値が並び替えられません!

それと、複数人分のブック集を一つに統合するとき、やっぱり人力でやるのが無難です。
自分にとっては、カイジではありませんが「至福の雑用」です。
誤字脱字は、フォントの色や形が他と変わりない限り勝手に修正させていただきます。
0254創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/25(月) 14:21:19.03ID:XzfYME0Q
ttps://box.yahoo.co.jp/guest/viewer?sid=box-l-7wlsbrgm4vbtt4elo2sfjj33za-1001&uniqid=68d36b14-e5d9-4ce0-b44d-16af927234f3&viewtype=detail

URL変わりました。

>>253
いろいろな設定を、エクセルで管理していこうぜ、ってなもんです。
管理ついでに、共有して行けたらな、と。
0255創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/25(月) 15:50:00.69ID:cCOB4HRP
ああ、なんだこいつマルチだ
0256創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/06/25(月) 23:17:16.59ID:XzfYME0Q
はい、いろんなスレでお仲間を募ってます!

塵みたいな実力(才能・知識量・経験・使える余暇などの総合結果)を、出し合って。
俺ら延べ1,000人でプロ1人分みたいになれたら、サイコーだと思います。
0259創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/04(水) 08:06:51.68ID:3QQ1CTCt
0260創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/04(水) 22:50:08.26ID:mEmvqpth
白狐さん、完結してたんだね……
見事としか言いようがない!
皆いなくなって自分だけはいなくならないと思っていたのに
身の回りが忙しくなると結局来なくなってた
だけど白狐さんは変わらずずっと書き続けていたんだなぁ……
本当にお疲れ様。そして素晴らしい作品をありがとう
0262 ◆mGG62PYCNk
垢版 |
2012/07/05(木) 00:42:45.58ID:bvuAav2y
>>260
ありがとうございます
なんとか完結できまして、ありがたいことに時間が経っても感想をもらえています
これほど嬉しいこともなかなかないです

>>261
小ネタも長編も続きも、全部楽しみにしています
0263創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/05(木) 01:23:33.70ID:48hCvBf/
第14話 回想〜セオドール・バロウズ

ハロー、ヘロー、読み手のみなさんこんにちは。ブルー・スカイハイのヴォーカル、みんなの人気者(笑)、セオドール・バロウズだ。
さて、『白狐と青年』、相も変わらずに更新速度が速いね、俺たちなんて半年ぶりだぜチクショウ。ときに気になってんだけどさ、この『白狐』って
ビャッコ、って読むのかそれともシロキツネ、って読むのかずっと気になってたんだよな。まあ、そんなのは作者さんに聞けばいいことなんだけどよ。
まあ、クズハちゃんもいろいろ思うところがあるようで、やっぱこの辺は人間と同じように年頃女の子らしい繊細さが伴ってさ、
扱いが結構難しいんだよな。たとえるならドミノ倒し。一つ一つ少しずつ関係をドミノのピースのように並べていくんだけどさ、ちょっと失敗しただけで
すべてが台無しになっちまうよな。匠くんなんて正にその典型だよな。これまでいい関係だよなって見守って来たのにある日突然このザマさ。

けど、倒れたドミノはまた並べればいいだけの話で、これからも注目させてもらうよ。実をいうと俺とクズハちゃんってある意味似た者同士なんだよな。
まあ、こんな感じでこれから毎話ごとに俺たちが他の話に感想をつけようって話になった。なに?メタ発言じゃないかって?細かいことを気にすると女にもてない、以上。
あと、もう一つ変更点な。今までは俺らの周りの誰かさんからの視点で物語が進んでたと思うんだけど、これからは俺たちの目線で話が進むようになった。
その目線っつーのも話ごとに違ってくるわけで、各話ごとに違った価値観や解釈が生まれると思うんだけど、その辺はまあ気にしないで大目に見てやってほしいわけ。
で、今回その記念すべき第一回目がこの俺、セオドール・バロウズの担当に大決定したぜイエイ!…すまん、一人で勝手に盛り上がっちまったな。

んで今回俺が話すのは、俺の昔話さ。昔話っつーか、生まれてから今までの俺の回顧みたいなもんかな。もともとは、ついおととい行ったモニカちゃんとの
昼食の席で話そうかと思ったんだけど、予想だにしないアクシデントのせいで話せなくなっちまったんだよな。まあ、考えてみれば昼飯の席で
話す様な類の内容でもないし、結果的にこれでよかったんだろうけどな。それじゃ、閉鎖都市昔話〜セオドール・バロウズ〜のはじまりはじまり〜

今俺がいるのは、閉鎖都市のライブハウス。一週間に一度ここでライブをやって、CIケールズのお偉いさんに助けてもらってほとんど無料に近い料金で
やれてるんだってことは前にも話したと思う。まあ、いい機会なんでここで俺たちブルー・スカイハイのメンバーを紹介しよう。
ヴォーカルの俺、セオドール・バロウズ、ベースのマイケル・ジャスティン。歳は俺と同じ21で、まあ寡黙な男さ。感情をほとんど表に出さない。
表情もまあ無表情。こいつの笑った顔とか見たことねえもん。ただ、このバンドに対する情熱は紛れもなく本物で、ここをこうしようとか的確な提案を
毎回のようにミーティングでぶつけてくれる男さ。次にギターのジェイソン・ローレンツ。こいつはいっこ下の20歳。幼い時に顔に大やけどを負ってそれ以来
いろんな有名人の顔を模したパーティーグッズのマスクをつけてるから今の素顔は俺たちもわからない。だけどすげえいい奴で、ライヴでも圧倒的な演奏力で
観客のみんなを魅了してくれる、まさにエンターテイナーさ。次はドラムの佐伯小夜子。歳は19歳だったかな。なんつーか、すごいおっとりした口調で話すんけど
ドラムのステッィク捌きはそれとは正反対で、そのギャップに萌えるファンもいるくらい。ステージ衣装もゴスロリだしな。

お次はキーボードの馬場聡也。俺たちの中じゃ最年少で18歳だったっけ。学生時代はピアノのコンクールで優勝するくらいで、将来を嘱望されてたんだけど
どういう風の吹き回しか俺たちと一緒にバンドがやりたいって言い出して、こいつのために本来無かったキーボードのポジションを作ったんだよな。
ま、結果的にそれで表現の幅が広がったから俺は大いに満足してるんだけどさ。そして裏方の霧島沙希とフレディ・スターク。
沙希ちゃんは俺たちのマネージャーで歳は最年長の23歳。スケジュール管理や、廃民街の外でのライブの交渉に回ってくれる敏腕マネージャーだよ。
一方のフレディは、俺たちの楽器の整備、調律を担当してくれてる。なにせ絶対音感の持ち主だからな。歳は俺と同じ21歳。
あ、絶対音感っていうのは、簡単に言うと、ドレミファソラシドとその半音を一つ聞いただけでどの音階かを判別できる能力のことだよ。
0264創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/05(木) 01:24:57.90ID:48hCvBf/
でも、極端に無口で滅多に言葉を発さないのがたまに傷なんだよな。とまあ、これでメンバー紹介は以上だが、今俺たちが何をしてるかっていうと
ライヴの後の打ち上げさ。成人してるメンバーは酒を口にするけどそうじゃない聡也と小夜子はソフトドリンク。
まあ、楽屋でスナック菓子やら惣菜やら並べてみんなでお疲れ様って盛り上がる楽しみなイベントだよ。

「セオドール、今日も最高の歌声だったわよ、次もこの調子でお願いね」
「おう、任せとけよ」
「頼りにしてます。それはそうと、俺の演奏方法なんですが、もうちょっと激しい方がいいですか?ピアノを弾いてたときの癖がどうにも抜けなくて」
「いいんじゃないか、無理にフォームを変えて演奏に支障を来すよりは余程マシだ。お前はただお前らしくあればいいんだよ、聡也」
「私もそう思います〜」
「俺も右に同じく」

てな感じで他愛もない雑談を繰り広げるこの何ともないような時間がたまらなく幸せなんだよな。ちなみに上の会話の順番は、
沙希、俺、聡也、マイケル、小夜子、ジェイソンの通り。実はジェイソンの後にフレディも頷いてたんだけどさ。
そんなこんなで話は進み、酔いも回ってきたところで唐突に各々の来歴を語ることになった。来歴っつっても俺ら全員幼馴染なんだから語るまでもないと思うんだが、
酒も回ってるせいか、語り上戸になってべらべら話し出す周りのメンバー(フレディ除く。こいつは蟒蛇だ)。
ま、そんなこんなで連中が自分の生い立ちから今までに至るまでを語って、そして最後に俺の番がやってきた。じゃあ、語ろうか。俺の過去の話をさ。

まず、俺は捨て子だった。前にクラウスたちが道端に捨てられてた赤ちゃんを拾ったことがあっただろ。あんな感じで俺も捨てられてたんだよ。
もちろんそん時の記憶はない。俺を拾って育ててくれた恩人から聞かされた。まずはその恩人の話から始めようか。
その人の名前はクリーシェ・バロウズ。今はこの廃民街の娼館の女将をやってる人だよ。と同時に俺の名付け親でもあるわけで。
当時クリーシェさんはなんと12歳。その時すでに娼館で働いてたっていうんだから驚くしかないよな。つってももちろん男の相手をするわけじゃなくて、
娼館の掃除だとか、娼婦さんたちの身の回りの世話をしたりして生計を立ててたらしい。でもさ、普通に考えて12歳の娘をよりによって娼館で働かせるかねえ。
親は何を考えてんだろうな。まあいい。話を続けよう。それで娼館での仕事が終わったある日の帰り道、クリーシェさんは道端に捨てられた俺を見つけた。
クリーシェさん曰く、その時は本当に捨てられたばかりの状態でまだ健康状態もなんら問題はなかったそうだ。不幸中の幸いってやつだな。
0265創る名無しに見る名無し
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2012/07/05(木) 01:25:58.19ID:48hCvBf/
そんで、俺を拾ったクリーシェさんはどうするか迷ったそうな。このまま家に帰っても親にまた捨ててこいって言われるのは目に見えてる。
まるで子供が野良犬や野良猫を拾ってきたときのようにな。常人ならあり得ないことなんだけど生憎ここは廃民街。常識が通用しないことなんざ多々あるのさ。
悩んだ末にクリーシェさんが取った行動は、俺を拾い元来た道を引き返すことだった。たどり着いた先は、勤め先の娼館さ。
そこでクリーシェさんがなにをしたかは語るまでもないことだとは思うけど、一応話しとくよ。

「面倒は全部私が見ます、だからこの子をここに匿ってください」

って当時の娼館の女将さんに頼み込んだんだよ。12歳とはとても思えない行動力だよな。その時の女将さん、キセルをくわえて目をつむって
いかにもそれらしく悩んでたってさ。で、女将さんは俺を匿うのを許してくれた。こうして考えるとこの女将さんも恩人といえるんだろうな。
恩人と言えば、この当時娼館で働いてた娼婦さん全員が該当するんだけどな。どういうことかって?
12歳の娘に赤子のお守りは荷が重いって娼婦さんたちが代わる代わる俺の面倒を見てくれたんだよ。もちろんその最中にクリーシェさんに子育ての仕方を伝授しながらさ。
やっぱ娼婦さんたちも職業柄こういうのに憧れたたんじゃないかって思うんだよ。だってそうだろ、どこの男のものともわからない子供を身籠るわけにゃいかない。

だから娼婦さんたちは全員ピルを毎日服用してたんだ。ピルっていうのは、簡単に言うと避妊薬。膣内に放たれた精子を殺すための薬だよ。
でもそれが原因で好きな男ができてもその男との間に子を授かることができない。娼館をやめればいいって思うかもしれないけど、やめてまた食い扶持が
稼げるほどこの廃民街は甘くないんだよな。だから結局食い扶持を稼ぐために娼婦を続けるしかないわけで、普通の女のような付き合いはとうの昔に諦めてるって
当時の娼婦さんたちは語ってたそうだぜ。でもそこにある日突然下働きの娘が赤ん坊を連れてきた。多分その時の娼婦さんたちはこう思ったんじゃないかな。
この子をみんなで育てることでその瞬間だけは全うな一人の女性でいられるって。そんなこんなで俺は娼婦さんたちみんなに育てられることになったんだけど、
名前は拾ってきたクリーシェさんが決めろってことになったらしくて、クリーシェさんが俺に付けた名前がセオドール・バロウズって訳さ。

そんでクリーシェさんと娼婦さんたちの愛情を一身に受けて育った俺は7歳になった。小学校入学の時期になったんだけど、俺も物心がついて
周りの環境がどんなものかってのを幼心に理解してたんだよ。それで、みんなに迷惑をかけたくないってんで小学校入学を諦めたんだけど、
それを女将さんに話したら、まあ笑う笑う。

「ガキが変な気を回すもんじゃないよ。アンタはアタシたちのようにはしない。全うな人間に育ててみせるさ」

って女将さんが自腹を切って小学校に入れてくれたんだよ。在学中のいろんなお金も娼婦さんたちがみんなカンパしてくれたんだよな。
で、小学校に通学した俺だけど、娼婦に育てられてるって知られた途端、いじめられ…はしなかったな。いや、そうなりかけたんだけどさ、言ってやったんだよ。
お前たちの親は、娼婦を見下せるほど誇らしい生き方をしているのかって。そしたら連中、ぐうの音も出ないでやんの。
そりゃそうだよな、下手すりゃ犯罪に手を染めなきゃ生きてけないこの廃民街で誇れる生き方を送ってる人間が果たしてどれほどいるのかってことだよ。
そんなこんなで小学生の時の俺は娼婦さんたちと関わる中で身に着けた社交性を武器に多くの仲間を作ったんだよ、学年を問わずな。
0266創る名無しに見る名無し
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2012/07/05(木) 01:26:35.51ID:48hCvBf/
そう、ブルー・スカイハイのメンバーと出会ったのもこの小学生の時で、放課後にもなると日が暮れるまで校庭で遊んだもんさ。
で、俺の小学校は、1年〜6年、要するに全学年でクラブがあってさ、俺たちは全員音楽クラブに入ったんだよ。で、俺たちでチームを組んで、音楽室の備品の楽器を
使ってバンドの真似事をやったりしたものさ、ここにブルー・スカイハイのルーツがあるのは間違いないね。
余談だけど、俺のいっこ下にすごい可愛くてブロンドの髪が印象的なバイオリンのうまい女の子がいたんだよ。
まあ、誰の事かは言わなくてもわかるだろうし、俺自身当時はまだその子と話したこともなかったし、ましてや今みたいにお近づきになるなんて
夢にも思わなかった訳なんだけどな。話を戻そうか。そんなこんなで小学校の6年間を無事に過ごした俺だが、事件は俺が中学2年の時に起こった。

中二病を患ったとかそういうんじゃねえからさ。今でこそこの街は『王朝』が完全統治してるけど、当時は『王朝』の支配体系を転覆させてやろうと
いろんなマフィアやギャングが抗争を繰り広げてたんだよ。それと俺の言う事件っていうのがどんな関係かっていうのを今から説明しよう。
その抗争の煽りを受けて俺を育ててくれた娼館がマフィアの襲撃に合ったんだよ。襲撃っていうか、その襲撃したマフィアのアジトを増やすのにその娼館の場所が
ピッタリだったらしいんだ。それである日突然マフィアの連中が乗り込んできやがって、一方的な明け渡しを要求してきやがったんだが、
女将さんは当然二つ返事で拒否したもんだから、逆上したマフィアたちが手当り次第に壁やら備品やら扉やらを壊し始めたんだよ。
娼婦さんたちも必死に抵抗したんだけど勝てるわけもなし、みんな殴られたりして気を失ってたよ。俺がその場面に出くわしたのは中学の帰りだったっけ。
目の前の光景が信じられずにただ感情に任せてマフィアの連中に向かっていったのは覚えているけど、マフィアなら当然銃くらい持っている訳で。

掴みかかれもせずに銃弾を何発も浴びて、俺の意識は一度そこで途切れた。でも、死ななかった。そりゃそうさ、そこで死んだら今こうしてその出来事を
語ってる俺はなんだってことになるからな。この出来事を聞いて、なんで娼婦さんには銃を撃たなかったのか疑問に思うだろうけど、
男と違って女にはいろいろと利用価値があるものだろ?ましてや娼婦となりゃなおさらだ。もちろん俺自身がこう思ってる訳じゃないぜ。
そこんとこ誤解しないでくれよな。ただ、いかにもマフィアなら考えそうなことな訳で、大方娼婦さんたちはあとでまとめて売り飛ばすつもりだったんだろうな。
…話を戻そうか。銃弾を浴びて意識が途切れた俺だけど、次に目が覚めたのは、病院だった。目が覚めるとそこには医者と看護師の他に、
クリーシェさんと、見たことない爺さんと黒い長髪のお姉さんと、銀髪でボブカットのお姉さん、俺とそんなに歳の変わらなさそうな女の子と男の子がいたな。
要するに、ケビン爺さんとアリーヤ、シオン、アスナ、クラウスのことだけど。

ケビン爺さんがアリーヤに何か耳打ちをした後、部屋から出てってな。聴いたところだとCIケールズの役員会の時間が迫っていたそうだぜ。
だから事後処理、もとい俺を告死天使(センテンストゥ・デス・エンジェル、俺が勝手に命名したが、仲間からの評判はいまいちよろしくない)に
引き入れるかどうかを任せたんだろうな。クリーシェさんの話だと、俺が意識を失った直後に騒ぎを聞きつけたケビン爺さんたちが駆けつけて、
マフィアたちをバッタバッタとなぎ倒していったそうだ。ケビン爺さんはのちにフィオの手に渡ることになる二丁拳銃、グレイス・グローリーを駆使してマフィアどもの
獲物、要するに拳銃のことな。を次々とピンポイントに弾き落としたそうだ。で、弾き落としたところをアリーヤ、シオンたちが取り押さえて駆け付けた自警団に
身柄を引き渡したそうだぜ。幸い死者は出てなかったから、マフィアたちもアズバック刑務所に5年間くらい服役するくらいで済んだそうだぜ。
0267創る名無しに見る名無し
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2012/07/05(木) 01:27:16.84ID:48hCvBf/
尤も、その一件で急速に勢力を後退させたそのマフィアは事実上消滅したわけだけど。というのも、構成員のほとんどが服役して、幹部級のメンバーしか
残らなかったそのマフィアは、後日王朝にその残った幹部連を次々と暗殺されたそうだぜ。エグイことをするなとも思ったが、俺からしたら完全な自業自得なわけで。

話を戻そうか。寝覚めで目の焦点がいまいち合ってなかった俺の目を、アリーヤの澄んだ瞳が見つめていたよ。そして、その口からこう語りだされたんだ。

「そこのクリーシェさんから話は聞いた。聞けば随分と無茶なことをしたようだな。命が惜しくなかったのか?…まあいい。少なくとも、お前のその勇気は
称賛に値するものであることは素直に認めよう。そこで提案なのだが、セオドール・バロウズよ、私達の仲間にならないか?」

聞けばアリーヤもシオンもクラウスもアスナもそれぞれ違う理由で告死天使に加わったっていうしな。その理由は本人たちのプライベートに関わるから伏せておくけどよ。
俺の場合は…そうだな。何も考えずにがむしゃらにマフィアに向かってって銃で撃たれてあっけなく意識不明。無様ったらないよな。
アリーヤは勇敢だと評したが、無謀なことをすれば勇気の証明になると思っているのか、ガキめ!と叱責される展開も大いにあり得たんだよな。
実際そのあと女将さんにそう言われてへこんだ記憶があるからな。そこで、こいつらと組めば鍛えてもらえる、強くなれる、大事な人を守れるようになる。
何より、無様な自分の姿を晒さなくて済む。そこには俺の弱さを隠したいというチキンな部分もあったわけだけどさ。俺は首を縦に振ったよ。
その時はまだ撃たれたショックで満足に言葉を発せられる状態じゃなかったからな。それを見て満足そうに頷いたアリーヤは自己紹介を始めたよ。

「そうか。ならばこれからその傷を癒すことから始めなければいけないな。まずはゆっくりと休むことだ。そういえば、自己紹介がまだだったな。
私の名はアリーヤ・シュトラッサ―(Aaliyah Strasser)という。これからよろしく頼む。それでこの銀髪が」
「シオン・エスタルク(Sion Estalk)だ。アリーヤさんは少々性格が厳しいが、私はそうでもない。口調は堅いがね。それでこの黒髪の少年が」
「初めまして、僕はクラウス・ブライト(Claus Bright)。よろしくね。君の一個下になるのかな。そういえば、小学校の時に音楽クラブで見た気がするよ、いや、奇遇だね。
まあ、その話はさておいて、このポニーテールが似合う女の子が」
「アスナ・オブライエン(Asuna O'Brien)だよ、よろしく。今年中学3年生だから君の一つ先輩ってことになるのかな。にはは…じゃあ、私たちはこれで帰るから
ゆっくり休みなよ」

そうして、5人は出て行った。でも、クリーシェさんの同意を得ずに俺がそんなことを一人で決めてよかったのかっていうのもあるね、
なんやかんやでクリーシェさんは俺にとって絶対的な存在だしさ(育て親としてな)、クリーシェさんにかすれた声で問うてみたのさ。

「…なあ、さっきの彼女の問いに勝手に答えちまったけど、あれでよかったのかな?」

そんな俺の問いにクリーシェさんは

「きみも一人の男なら自分の生きる道くらい自分で決めてみろ。さっきのアリーヤさん。の問いに答えた時もきみはいろんなことを考えたはずさ。
きみが考えて出した結論なんだから最終的にはきみが責任を負うものだし、私もきみのその決断は正しかったと思ってるよ」

って、やや突き放し気味ではあったけど俺の結論を認めてくれたよ。そしてクリーシェさんも娼館のみんなの見舞いに行くってんでその後すぐに席を外したっけな。
後に残ったのは医者と看護師だけだったな。その医者から驚きの発言が飛び出してきたのさ。
0268創る名無しに見る名無し
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2012/07/05(木) 01:27:55.34ID:48hCvBf/
「ああ、セオドールくん。銃で撃たれたそうなんだけど、不思議なことに手術の執刀直後にその傷がみるみる内に塞がって行ってね。我々医師たちも長年手術に
携わってきたけどこんな経験は初めてだよ。一応君の体内に残った銃弾を摘出しなければいけないからメスを入れさせてもらったんだけど、
そのメスの傷も銃弾を摘出し終えた後、すぐに塞がってしまってね。奇跡としかいいようがないよ。あまりにも興味深かったから勝手だけど君の血液を採取して成分を調べさせているところだよ」

医師の言葉に驚いた俺は、パジャマをめくって腹のあたりをまじまじと見つめる。するとそこには手術直後で本来あるはずの手術痕が綺麗になくなっていたのさ。
それに…俺の血液?普通の人間となんら変わらない俺の血に特別な力なんてあるわけないさ。その時はそう思っていたんだよ。
けど、退院してしばらくしてその医師から連絡があってね。驚愕の真実を知らされたよ。その話はまた後日にしてやるさ。
ケビン爺さんのもとで積んだ修行の話も含めてな。さて、そのあとから2年前の貴族たちの粛清していくわけだが…って俺がその武勇伝を悠々と語ろうとしたとき、
ライブハウスのドアをノックする音が聞こえたのさ。まるで、クラウスたちがジョセフさん暗殺犯を探しに俺たちを訪ねてきたあの時のようにな。
あの言いだしっぺは神谷さんだったってな。まあ、あのおっさんならそんな発想もできなくはないよな。寧ろそうじゃなきゃ探偵なんざ勤まらないだろうし。

と、俺は仲間を待たせて入り口に向かい、あの時と同じように扉を開けて、

「誰だい?準備中の札がかかってるはずだけど」

と、明るい(っていっても曇りだけどな)外に出ると、そこにいたのは、見たこともない女の子だったよ。およそ廃民街には似つかわしくない綺麗な服をきて
それを完璧に着こなしてる長身の女の子。歳は10代後半ってとこかな。顔もすごくかわいくてさ、思わず見とれちまったよ。ハッとなって、要件を聞いたんだ。

「それで、何のようだい?ライブなら週末だからまた来週にならないとやらないぜ」

すると女の子は慌てて要件を口にしたのさ。

「あの、すいません。実は『神谷探偵事務所』という場所を探してて、手当り次第に声を掛けてみたんですけど誰も教えてくれなくて…」

そりゃあ、見ず知らずのヤツ、しかもどう見ても廃民街の住人じゃないこの女の子においそれと道を教える住人はこの街にはそういないだろうな。
むしろ、手当り次第に声を掛けて無傷でここまでたどり着けたってのがまず奇跡に等しい訳で。まあ、大方外にボディーガードでも待機させてるんだろうよ。

「お嬢ちゃん、名前は?この街じゃ名前も先に名乗らないようなのに教えることなんざ何もないぜ」
「はっ、これは申し遅れました。私はベアトリーチェ・チェンチと言います。齢18になります」
「ふうん…まあいいさ。探偵事務所なんて別にこの街じゃなくてもいくらでもあるだろうけど、わざわざここに来たってことはかなりのわけありなんだろうしな」

と言って、俺はあの日神谷さんから渡された名刺をベアトリーチェと名乗った眼前の少女に手渡した。

「ここが神谷探偵事務所の住所だよ。ただ一つ忠告だ。道中黒いコートを被った大男に出会ったら絶対目を合わせないようにそのまますれ違うことだぜ」
「はあ…取り敢えずご忠告感謝します。それでは」

とだけ言ってベアトリーチェは去っていったよ。だけど、どうにも不穏な雰囲気をその少女から感じ取った俺は、神谷さんに連絡を取ってみた。

「ああ、神谷さん。セオドールだよ。今からベアトリーチェっつう可愛い女の子が難しそうな案件抱えてそっちに向かうから対応してやってくれ。
但し、警戒は怠らないでくれよ?まあ、アンタなら大丈夫かもしれないけどさ」

ってな。まあ、「トランスポーター」としての顔も持つあのおっさんならうまいこと立ち回るだろうさ。
0269創る名無しに見る名無し
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2012/07/05(木) 01:31:09.24ID:48hCvBf/
という訳で、本当久しぶりの投下になりますか。
さて、いよいよ次回から動乱が幕を開けますよ。今度は神谷さん視点から描かれる
ことになりますか
0272創る名無しに見る名無し
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2012/07/06(金) 23:55:57.57ID:VkfVjh9O
いや、本当に久々ですよね。僕も私生活が多忙なのと、なかなかアイデアが湧かないのとで
遅筆なんですが、一日にWord1ページ進めるってことで少しずつ進めて行きますよ
0273創る名無しに見る名無し
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2012/07/07(土) 21:11:23.45ID:dvcXBfST
乙です
神谷さんは各所で大活躍ですが、今回はどんな働きをしてくれるのだろうか


余談ですが、白狐の読みはびゃっこです
0275 ◆dmfu//97yw
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2012/07/17(火) 22:29:02.13ID:apTlUb6W
避難所に投下した新規です。設定的な奴をちょいとばかし。

・『事務所』
バイエニアル傘下の何でも屋。オーナーはユリウス・カエサリオン。
元々は宗教地区殲滅戦で人員不足になったバイエニアル側が設立した殺し屋。
当時は十九名が在籍していたが、今は当時のメンバーは“チームリーダー”のみ。

・バイエニアル
有名な香港マフィアを襲撃し、勢力を伸ばしたイタリアマフィア。
閉鎖都市西部では最大勢力だが、宗教地区殲滅戦前に比べて衰退している。
ちなみにバイエニアルとは英語で「2年周期」を指す美術鑑賞会のこと。

・宗教地区殲滅戦
バイエニアルの構成員が宗教地区の教会にて破壊したことが発端で発生した事件。
報復行動により両者による殲滅が決行された。そのため、情報規制が行われている。
王朝側が参戦したことやアンク側が宗教地区に武器を横流したため事態は泥沼化。
宗教地区とバイエニアル側がほぼ強制的に停戦協定を組む形で終結した。

・宗教地区
閉鎖都市最大のキリスト教教会がある町。
南部は廃墟の町で地雷原となっており、殲滅戦の反対派により今も尚、戦場と化している。

・鉄道保安部隊
鉄道局側が地下鉄建設の際に結成された私兵部隊。精鋭守備部隊として知られる。
宗教地区殲滅戦により計画は中止となり、一度も戦わないまま、部隊は解散した。

・コーサ・ノストラ
閉鎖都市最西部にある町。一番街から四番街まである。
裕福な二番街以外は、貧しく層が多く治安が悪い地域の一つとして有名。


こんな感じで中二っぽい設定。
出来たら今月中に一本投下して、来月に二本投下したいな。
0276創る名無しに見る名無し
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2012/07/18(水) 21:46:54.59ID:/1ECbnWs
「アイデア・ツイーティ」で、投下してください。

こんなスレで小出しにしてても、勿体無いよ。
0277創る名無しに見る名無し
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2012/07/19(木) 10:01:05.37ID:Aw6kLPFz
こんなスレとか言うぐらいならわざわざ見にこなくていいのに
時間の無駄でしょ
0279創る名無しに見る名無し
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2012/07/20(金) 14:10:08.60ID:oJJ+tooa
て言うかここが荒らされるのって、新しくなってから三回目
なんでこうも、マルチと荒らしが湧くのかぎ分からないな
0282創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/21(土) 15:09:20.69ID:oqTkRl0P
正義の定義、ゴミ箱の中の子供達、NEMESIS辺りかな?
と言っても、このスレは良作が多いので、全部と言ってもいいよね
0288創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/04(土) 17:59:17.50ID:GhyqQIf9
ひらめいた、閉鎖「都市」だけに閉鎖都市の都市伝説を解明していく夕闇通り探検隊ばりの
三人組の中学生の話を作ろうか。

いつぞや誰かが描いた王朝に殺された家族の話とか、シェアードワールドらしくネタにできそうなものも多々あるし
0289創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/06(月) 22:10:48.62ID:X/cGdo46
貧民街でそれをやるとなんか三人組こそが都市伝説の一部に組み込まれてしまいそうだw
0290創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/07(火) 12:16:08.78ID:zSxZShMT
富裕層出身の三人組が謎を追ううちに貧民街に関わってアジャパーとなる!
みたいな!
0291創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/08(水) 22:05:15.94ID:Lw8MA5uB
三人組って珍しいよね。白狐も二人か四人だったし
0297創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/09/01(土) 09:36:45.15ID:nWdfAZDL
各作品の書き手さんに許可を取りたいのですが、みんつくのキャラクターを犯人役にした
古畑任三郎や刑事コロンボのような作品を考えているのですが、使用許可はいただけますでしょうか?
0298 ◆mGG62PYCNk
垢版 |
2012/09/01(土) 17:33:01.91ID:H4BpZEG1
どこの世界か言ってくれれば反応も返しやすいのではないかと思う

うちの子たちならだれでもいいのよ
0302創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/09/23(日) 00:33:25.51ID:uIoiJelO
そうだageておこう
0305創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/09/27(木) 23:10:28.20ID:c7++6LYX
宇宙を題材にした世界をシェアワしたいってわけね
ってきり攻殻みたいな世界だと思ってたが、カウビとかコブラみたいな世界なのか
個人的には面白いと思うんですが、他の住人さんはどうなのかな?
0306創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/09/28(金) 02:59:36.11ID:Ls2YOiif
>>305
斬新でいいと思うよ、今までの3つの世界になかったのってSF(サイエンス・フィクション)だし。
0308創る名無しに見る名無し
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2012/10/07(日) 00:11:49.15ID:amEX0m+c
あれ、レスしたつもりになって放置してた

>>305-307
皆さんありがとうございます
とりあえず上のスレが落ちてるのでwikiにまとめてきます
0310創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/09(水) 23:41:22.90ID:L8nw/+dP
あげ
0311創る名無しに見る名無し
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2013/01/15(火) 00:42:45.11ID:WnMPUozE
ここに限った話じゃないけど寂しくなっちゃったな
0313 ◆mGG62PYCNk
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2013/02/13(水) 14:29:56.62ID:BOCfDiUn
『ばれんたいんの一日』

「ばれんたいん……ですか?」
 みたらし団子を食べ終えたクズハが、銀髪を揺らして小首を傾げる。
「異形が出ててくる前はわりと国中で有名なイベントだったんだぜ。な?」
 バレンタインなるイベントについてクズハに語って聞かせていた彰彦が周囲に同意を求めるように言う。
 ちょうど甘味処『鬼が島』内にいた桃太郎と門谷が応じた。
「ああ、チョコを渡して相手に日頃の感謝や敬愛の気持ちを伝えたりするイベントだな。俺はあまり縁がなかったが」
「隊長なら部下の男共にモてるんじゃないか? ――おっとそんな目をしちゃいけねえ、俺は落とせねえぜ?」
 団子の串が飛んで桃太郎がそれを避ける。
「あれだな。明日はそんなイベントなわけだ。クズハちゃんもうちの厨房使ってチョコ作ってみるか?」
「え、いいんですか?」
「おう、今の時代、チョコレートはちょっと珍しい代物だが、
栄養補給しやすくて配れば現地人からも喜ばれやすいから今でも軍隊では大量に持ってんじゃねえの?
 な、隊長さん?」
「そうだな。支給された俺の分のチョコレートが余ってる。そいつをやろう」
「お、さっすが門谷さん。話が分かる」
 膝を打つ彰彦にクズハはおずおずと問う。
「何から何まで用意してもらって、すみません」
「ああ気にするなそれを見て俺たちも楽しむから」
 あっけらかんと言う桃太郎に門谷はもう一本串を飛ばす。
「せっかくだから手作りさせてもらいな。
愛を込めて表現する本命チョコが手作りなら男ってのは喜ぶもんだ」
「そうだな。匠の奴に改めて愛を伝えるにはいいイベントだと思うぞ。
たまにはこういうイベントをやっておくのも刺激になるだろうしな」
 それぞれに言って盛り上がっている男たちをよそに、クズハは今教えられたばかりのイベントについて反芻し、
「気持ちを……伝える。……愛」
 頬を赤く染めた。
0314 ◆mGG62PYCNk
垢版 |
2013/02/13(水) 14:30:45.54ID:BOCfDiUn
     ●

 和泉の道場の敷地内にある離れの自分の部屋の入り口。
 そこで匠は突然の訪問者が目の前に差し出したチョコレートを見て、面食らっていた。
「…………」
 どう反応したものかと迷うような沈黙の後、匠は目の前の異形の少女に訊く。
「えーと……これは……?」
「ばれんたいんの贈り物です」
 笑顔で言って両手に捧げ持ったチョコレートを再度差し出す銀髪の少女。
 匠はそうか、と頷いてそんなイベントもあったな、となんとはなしに思う。
「で、そのチョコを、俺に?」
「はい! 本命ですよ?」
 透明なラップに包まれたチョコレートを見る。
両手で持ってなお手に余る大きさのチョコは手作りなのだろう、少し形がくずれたハートの形をしていた。
 匠はそのチョコレートを確認して、再びその持ち主を見て、相手の意を取りかねたように問いかけた。
「いったい何が目的だ?」
「え? 何のことですか?」
 首を傾げる少女に匠は短く問う。
「言えないのか?」
 呆れたように言う匠に訴えるように少女は言葉を続ける。
「えっと、だから……これはばれんたいんっていう日の贈り物で。好きな人にちょこれーとを渡したくて……」
 言葉は尻すぼみになり、少女は不安そうに目を潤ませた。
「あの……私の気持ち、受け取ってもらえませんか?」
 銀毛に覆われた耳も尻尾も少女の表情を反映するようにぺたんと下がる。
「……う」
 哀れな様子に、匠はひきつった顔を手で覆って呻いた。
「頼むからクズハそっくりの顔と声でそんなことを言わないでくれ」
0315 ◆mGG62PYCNk
垢版 |
2013/02/13(水) 14:31:38.37ID:BOCfDiUn
 弱った匠に、目を潤ませていた少女は一転して意地の悪そうな強気の笑みを浮かべてみせる。
「――ふむ」
 満足そうに一つ頷いて顔を上げると、少女の瞳は金色に変わっており、手を払う動きと共に銀髪の色も金へと一瞬で変わった。
 手の動きで払い落とされたように≪魔素≫の光が散る。
 尻尾も一振りで金毛のそれに変化させると、少女は金瞳を実に楽しそうに細めて匠に詰め寄った。
「我の変化では騙せぬか。うむ、重畳重畳」
「それくらいの年齢にも変化できたんだな、キッコ」
 名を呼ばれた金髪の狐娘は「おおよ」と応じる。
「この年恰好では裸でもどことなく窮屈に感じるのであまりならぬがな」
 匠を胸の辺りから見上げる形になったキッコは、匠の腰に腕を回して体を押し付ける。
「どうだの? 欲情するか?」
「いやまったく」
 即答に、キッコは「動じぬな」と呟く。
「幼ければいいというわけではないのだの」
「なんかものすごい失礼なことを言われてるよな」
「なに、気にするな。このような見目愛らしい童女を見ても欲情せんのならお前は本物ではないことになる。
 好きになった子がたまたま幼かっただけだもん――と平賀が言っておった」
 キッコは身を離すと匠に見せつけるように体を一回転させる。
「その服、クズハのだな」
「分かるかの」
「ああ、さっき近づかれた時クズハの匂いがした」
「……おぉ」
 キッコが唸り、何故か少し目を逸らす。
「そ、そうか……その、なんだの……だいぶん、極まってきたの」
「そう褒めるな」
 匠は穏やかに言ってキッコの眼前に葛の葉の先端を向けた。
「――で、その着物、今日クズハが着てた奴だな?」
「うむ、その通りだの」
「なんでお前が着てるんだ?」
「ふふふ、そんなもの剥いだからにきまっとろ」
 片目をつぶってのたまう女狐に匠は魔装の先端を気持ち押し付け、
「クズハをどうした?」
 キッコは≪魔素≫が流されていない魔装の側面を艶めかしい手つきで撫でる。
「意気地がない仔には少し反省してもらおうと思っての、今ごろ平賀謹製の緊縛符で抑えられとるよ――」
 言葉が終わる直前、部屋の戸が勢いよく開け放たれた。
「キッコさん! 何をするんですか?」
0316 ◆mGG62PYCNk
垢版 |
2013/02/13(水) 14:33:00.32ID:BOCfDiUn
「もう抜け出したのか、やりおる」
 襦袢姿のクズハを気軽に迎えたキッコは懐に収めていたチョコレートをクズハに渡した。
「ほれ」
「わっ――」
 チョコを受け止めたクズハは、手の中のチョコと状況に取り残され気味の匠を交互に見て、
顔を赤く染めるとチョコを不安げに差し出した。
「あの、私、こういうものを作るの、初めてで……ちょっと形がおかしいかもしれませんけど、よろしかったらどうぞ」
「ん、ああ……」
 匠は葛の葉を壁に立てかけ、差し出されたチョコを両手で受け取ると、
なんと反応したらいいか迷うように口をもごつかせ、
やがて片手でチョコを持つと、空いた手でクズハの頭をなでた。
「ありがとう。嬉しいよ」
「――はいっ!」
 クズハは心底嬉しそうな顔で尻尾を振って匠に抱き着く。
 それを受け止めて口元を緩めている匠を眺めて、キッコはおもむろにクズハの襦袢を尻尾の生え際辺りまでまくり上げた。
「――ひゃッ?!」
 驚いて振り向くクズハをキッコは正面から抱き寄せる。
「ほらの? そんなに気にせんでも匠は喜んで受け取っただろう?」
「そうでした。御迷惑をおかけしました」
「うむうむ、気にするな」
 そのままキッコ主導でくるくる回り始める二人を見て匠は途方に暮れた顔で呟く。
「あー、どういうことだ?」
「うむ、匠よ。クズハはの、昨夜ずっとあの甘味処で菓子を作っておっての。
結果として用意ができたのはいいが、いざ渡す段になっていきなり恥ずかしいからやっぱり渡すのはいいと言いおっての」
「だって、愛を表現するお菓子って……難しいんです」
「難しく考えすぎだの。芸術品でもあるまいし」
「うーん、いつも飯作ってもらってるんだ。それと大して違わないって」
 そう言うと、キッコは温度の低い目で匠を見やる。
「こういう儀礼と普段を同じと考えるあたりがダメなのだの」
「……す、すまん」
「あ、いいんですよ、匠さん。私も楽しかったですし」
「クズハは甘いの。この甲斐性なしのどこがいいのやら」
0317 ◆mGG62PYCNk
垢版 |
2013/02/13(水) 14:38:44.35ID:BOCfDiUn
 キッコは包み紙を取り出して匠に放り投げた。
「ほれ」
「え?」
 包みを見て疑問の表情を浮かべる匠にキッコは指さし説明する。
「義理ちょこ、だ。知らぬ仲ではないからの」
 クズハが疑問する。
「義理……ですか?」
「うむ、他にも友ちょこやら世話ちょこやらホモちょこやら……なんぞいろんなちょこがあるらしいの。
クズハは本命しか知らぬのだな」
「誰も他の種類のチョコを教えてくれませんでした……」
「それでよい。最初は一番好きな者に渡すたった一つでよい。その方が男は嬉しかろ?」
「そうなんですか?」
 まっすぐ見つめられ、匠は頭を掻きつつ頷いた。
「あー……まあ」
 クズハは花が咲くような笑みを浮かべた。
 キッコも莞爾と笑い、では、と言ってチョコレートの包みを次々と取り出す。
「さて、それはそれとして、我はちょこをたくさん持っておる。クズハよ、一緒に配って回らぬか?」
「はい」
 どこから取り出したのか疑問になる量のチョコの山を見て、匠は慌てて問う。
「おいまて、そのチョコはいったいどこから持ってきた?」
 キッコは昂然とのたまう。
「考えるでない――むさい男共に配られるより我らが配った方が幸せだろう」
 そのままクズハの手を引いて外に出て行こうとするキッコに手を伸ばす。
「あ、まて! あとクズハは服着ろ」
「では我のものを」
 一動作で着物を脱ぎ捨てるキッコに匠は指を突き付ける。
「お前は脱ぐな!」
「欲情せんのだろ? なら問題なかろ?」
「人には公序良俗ってもんがあるんだよ!」
 クズハはキッコの体を見て、その上で匠に言う。
「私の体型ではだめですか?」
「いや、そうでなく――」
「育ちたいなら揉んでもらうといいと聞くぞ。ちょこを刷り込んでもらうとええ」
「変なことを教えない!」
 妙な疲労を感じながら、狐二人に振り回される一日は流れる。
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