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ホラー総合スレッド 2
0001創る名無しに見る名無し
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2011/01/04(火) 22:02:40ID:XcB0hOlg
都市伝説、怪奇現象、得体の知れないナニカ……
そんな背筋が凍るような話・絵を創作してみませんか?
話の流れでグロい描写がある場合は、前文に注意書きを

怖い話カモン!


【過去ログ】
ホラー総合スレッド
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220093448/

【避難所】
ホラー総合スレッドin避難所
http://jbbs.livedoor.jp+internet/test/read.cgi/3274/1294141046/
0141創る名無しに見る名無し
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2012/02/16(木) 21:24:41.31ID:/3wHTOXU
学校にあったわそうゆう鏡
0144創る名無しに見る名無し
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2012/03/20(火) 21:13:32.94ID:KsUeqJRx
上がってなかったw
0145創る名無しに見る名無し
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2012/05/20(日) 00:08:21.93ID:bew20Kwl
あげ
0146タモーレ ◆8esMS.OL2k
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2012/05/20(日) 05:37:25.70ID:ySsEu0y8
さっちゃんは交通事故で両足を無くしていました。
さっちゃんは無い足を見ていつも泣いていました。
ある日名医が現れて、さっちゃんに高性能の義足をプレゼントしました。
でもさっちゃんはあまり喜んでいない様子…
たまり兼ねた名医が尋ねました。
これを付ければ歩けるようになるんだよ。嬉しくないのかい?

すると、さっちゃんが一言…
「私が欲しいのは命だよ」


ここには携帯で読めるホラー漫画を置いてます。
内容は稚拙ですが、良かったら読んでみて下さい。
http://id35.fm-p.jp/69/brynoehkjr/
0147創る名無しに見る名無し
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2012/05/20(日) 10:17:35.96ID:xB2AkhZ6
          __ノ)-'´ ̄ ̄`ー- 、_
        , '´  _. -‐'''"二ニニ=-`ヽ、
      /   /:::::; -‐''"        `ーノ
     /   /:::::/           \
     /    /::::::/          | | |  |
     |   |:::::/ /     |  | | | |  |
      |   |::/ / / |  | ||  | | ,ハ .| ,ハ|
      |   |/ / / /| ,ハノ| /|ノレ,ニ|ル' 
     |   |  | / / レ',二、レ′ ,ィイ|゙/   私は只の数ヲタなんかとは付き合わないわ。
.     |   \ ∠イ  ,イイ|    ,`-' |      頭が良くて数学が出来てかっこいい人。それが必要条件よ。
     |     l^,人|  ` `-'     ゝ  |        さらに Ann.of Math に論文書けば十分条件にもなるわよ。
      |      ` -'\       ー'  人          一番嫌いなのは論文数を増やすためにくだらない論文を書いて
    |        /(l     __/  ヽ、           良い論文の出版を遅らせるお馬鹿な人。
     |       (:::::`‐-、__  |::::`、     ヒニニヽ、         あなたの論文が Ann of Math に accept される確率は?
    |      / `‐-、::::::::::`‐-、::::\   /,ニニ、\            それとも最近は Inv. Math. の方が上かしら?
   |      |::::::::::::::::::|` -、:::::::,ヘ ̄|'、  ヒニ二、 \
.   |      /::::::::::::::::::|::::::::\/:::O`、::\   | '、   \
   |      /:::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::'、::::\ノ  ヽ、  |
  |      |:::::/:::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::'、',::::'、  /:\__/‐、
  |      |/:::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::O::| '、::| く::::::::::::: ̄|
   |     /_..-'´ ̄`ー-、:::::::::::::::::::::::::::::::::::|/:/`‐'::\;;;;;;;_|
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0148タモーレ ◆8esMS.OL2k
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2012/05/28(月) 07:29:22.03ID:xz+ZsKpw

A(男)は最近、引っ越したばかり。

引っ越しを手伝ってくれたB(男)と、新居にて軽い夕食を取っていました。
B「それにしてもCちゃんがあんな事をするなんて…」
A「俺が第一発見者だったからな…。押入れを開けた瞬間は死ぬほどビックリしたぜ」

C(女)とは…Aの元彼女。
前に住んでいたAの部屋の押入れで遺体として発見された。
死因は頸動脈をカッターで切っての出血死…

B「でもよ、お前に整形がバレたぐらいで自殺するなんてな…。ちょっと衝動的というか何というか…」
A「それだけショックだったんだろうな」
B「………」
B「なんかCちゃんのこと話してたら怖くなってきたな。テレビでも見ようぜ」

テレビを付けると運の悪い事に心霊番組をやっていました。
B「なんだよ!よけい怖くなるじゃねえか」
すると2人は、すぐにある事に気づきました。

B「あれ…ちょっとA…この場所って…」
2人は度肝を抜かれました。取材場所はなんとAの前の部屋…
B「嗅ぎつけるの早いなアハハハ…」
A「ていうか心霊現象なんて起こるかよ、バカバカしい」
2人はあまりに突然の事で動揺し、強がる形で盛り上がっていました。

B「お、いよいよ例の押入れですよ。旦那」
A「オチはどうするんだろうな(笑)」

レポーターが息を飲みながら、一気にバンッと押入れを開けました。
Aは気を失うほどビックリしました。
そこには見覚えのない女がCと同じ体育座りの姿勢で座っていました。

A「い…いや、まてまて。これは仕込みだろ。こんなにはっきり霊が出るわけない!」
A「てか番組スタッフはCの顔も知らねーのか?アハハハ…」
するとBが怪訝そうな顔でAを見て、

B「お前、さっきから何言ってんの?押入れには何もなかっただろ」
A「え…?」
A「いるじゃん。知らない女がCの服装まで真似て…」

Aは呆れ半分、もう一度テレビの画面を見ました。
すると押入れの女がこちらを睨みつけて一言…




「犯人しか見えないよ」
 
0150創る名無しに見る名無し
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2012/06/01(金) 19:42:21.76ID:GYf4ZkZ+
最近、小説投稿サイトで連載をし始めました。
http://ncode.syosetu.com/n4078be/
天正10年六月二日、京都・本能寺で起こった明智光秀による謀反。
歴史の教科書には一行に満たない文字数で記されているが、その夜、
信長を含む”変”当事者達に起きた奇妙な出来事の数々…。

すいません…文芸書籍サロンの自作を晒すスレが集スト?に占拠されて
チャット状態で使い物になってないので、こちらに貼らせてもらいますね?
0151創る名無しに見る名無し
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2012/06/01(金) 22:48:45.99ID:us6DU6FH
オカルト超常現象@2ch掲示板   オカルト太郎
http://toro.2ch.net/occult/

オカ板の方が読んでくれるかも
0154創る名無しに見る名無し
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2012/07/05(木) 17:09:31.98ID:XN1IzApz
男は今日も歩いていた。電車を降りて会社に向かう道だ。
いやあ今日も暑くなりそうだ。見上げると太陽がギラギラと輝いている。ふと、ビルの上の階
から何か点が落ちてくるのに気付いた。
その瞬間、男の時間はひどくゆっくりと流れているように感じた。その点はだんたんと大きく
なっていった。
小さい子供だ。ニ、三歳だろうか。
男は思い出した。ビルの手すりから幼児が身を乗り出し、落ちた。それを通行人が見事に
キャッチした。そんなニュースがあった。
そうだ、俺も英雄になるんだ、と男は思った。
男の頭は通常の何倍もの速さで回転した。両腕を前に出し、落下地点を計算し、足を動かす。
大丈夫だ。俺が抱きとめてやる。
次の瞬間、男の目の前でベシャッという音がした。
ゆっくりと血の海が広がってきた。
0155創る名無しに見る名無し
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2012/07/09(月) 01:50:03.42ID:B9aQUSD1
猫の妹


 妹が猫病になりました。猫病というのはあまり知られていない病気ですが、猫ひげが生えて
瞳孔が細くなります。性格的にはすごくおとなしくなります。
 妹は高校生で、私は大学生です。姉妹の場合妹は生意気と相場が決まっているらしく、私
の妹も例外ではありませんでした。それが、猫病になると、私が「おいで」と言うと来て、膝を
ぽんぽんと叩くと乗るのです。私だけになついて、父や母にはなつきません。私は妹を抱っこ
している時が幸せでたまりませんでした。
 このまま妹の猫病が治らなければいいのに、と思っていました。
 猫病になった妹はほとんどしゃべらず、「うん」の代わりに首を縦に振り、「んーん」の代わり
に横に振ります。
 ご近所さんからは美人姉妹だなどとはやしたてられますが、妹は本当に、昔の奥菜恵の
ようにかわいいのです。
 そんなある日、妹がキッチンで四つん這いになっていました。妹は芳子と言います。
「よっちゃん、何してるの?」
 次の瞬間、私は悲鳴をあげました。
 妹はねずみをバリバリと噛み砕いていました。
0156創る名無しに見る名無し
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2012/07/09(月) 11:41:56.10ID:2jdIGg1/
そこまで怖いオチじゃなかったw
かわいい
0158創る名無しに見る名無し
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2012/07/10(火) 00:53:42.94ID:nDw/UjP5
十分怖いだろw
0159創る名無しに見る名無し
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2012/07/29(日) 17:01:03.13ID:iXU2uaKt
君、気をつけたまへ。
電車がトンネルの中に入ると、レールの継ぎ目の音がうるさく響くわけだが、よく耳をすまして
みると、それに合わせて天井からトトン、トトンと誰かがノックする音が聞こえる。だが、決して
「誰だっ?」などと呼びかけてはいけなひ。そんなことをしたら、君、君のすぐそばの窓からゆっ
くりと長い黒髪が下りて来て、もしトンネルが長過ぎたりしたら、君はもう二度と正気で日の光
のもとへ出られなくなるのだから。
0160創る名無しに見る名無し
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2012/07/31(火) 19:50:30.64ID:/I6uNOhA
ほんとうは作り話の怖い話


 平川夢冥、といえばご存知の方もいるのではないだろうか。恐怖体験談を収集し、出版する。
それが私の仕事である。その類の本を読んで「著者の作り話じゃないの?」と思う人も多い
だろうが、少なくとも私の場合は違う。
 多くの場合、私の方から取材を申し込むのだが、私の名前を知っていて、向こうから話を
聞いてくださいと頼んでくることもある。今日訪ねる大山氏もその一人である。

 大山氏は小太りの紳士といった感じの人物で、お決まりの挨拶をしていよいよ怖い話を聞く
ことになったのだが、彼が放った最初の一言に私は仰天した。
「これは作り話なのですが」
「え!?」
「ええ、ですから作り話なのですが、東京の千代田区でですね」
 まあいい。これは珍しい人だ。聞くと案外おもしろいかもしれない。
「サラリーマンなんですが、深夜一人で残業をしていましてね。背後に人の気配を感じて、
振り返ると小学生くらいの女の子が立っていたんですよ。『お嬢ちゃん、どうしたの?』って
聞いても笑顔のまま答えない。その女の子、すーっと歩いていっちゃったんですね。その方
もふらふらーっとついていっちゃったんですね」
 なんだか話し方が稲川淳二のようになってきた。
「屋上に出て、女の子がおいでおいでをするんですね。で、その方その子の方に近づいていく
んですけど、逃げ水のように遠のいていってしまうんですね。それでまた近寄っていく。それを
繰り返していって、ふと気がつくと足元に地面がなかったんですよ」

 翌日、ニュースを見て驚いた。東京都千代田区で大手電機メーカーに勤める男性が深夜に
会社の屋上から飛び降り自殺したというのだ。
 これは単なる偶然だろうか? 真相を確かめるべく再度大山氏を訪ねた。ところが彼はその
ことには触れようとせず、またもこう切り出した。
「これも作り話なんですけどね。天田翔子という方なんですけど」
 その人物なら知っている。前に取材に協力していただいた女性だ。
「温泉旅館に来ていて、ひとだまを見たんですね。その人、後を追いかけてっちゃった。ひと
だまは森の中にすーっと入ってっちゃたんですね。どんどん奥に行っちゃう。正気にかえると、
その人湖の中に首までつかってたんですよ。その方助からなかったそうですよ」

 二ヶ月後、T温泉近くの湖畔で女性が溺死したというニュースが流れた。画面隅に映った
写真を見て思わず「あっ」と声を上げてしまった。天田翔子だ。
 私は今度こそ真相を聞き出そうと大山氏を訪ねた。
「ですから、私のは作り話なのです」と彼は言った。「まあ、単なる偶然ならいいのですが」
「これを偶然で片づけるのですか! ではもう一つ話をしてください。それで当たったら、これは
もうまったく新しいタイプの怖い話です」
「いいでしょう。これも作り話なのですが、大岩剛三という方がですね」
 私の叔父だ!
 彼の話を要約するとこうなる。叔父は幽霊を見るようになった。ベッドの脇に、赤いワンピース
の、髪の長い女性が現れるという。何度も何度も出てくるので、叔父は眠れなくなって、とうとう
最後には気がふれてしまったという。

 三週間後、私の携帯に連絡が入った。叔父が重度の統合失調症で隔離病棟に入院したと
いうのだ。
 なんということだ。私はもう一度大山氏を訪ねた。
「これは、予知能力ではないですか?」
「いえ、違います。予知能力の場合は、これは未来に起こることだと確信していると思うんです
ね。私はただ思いつきでしゃべっているだけです」
「そんなことが……私にはまだ信じられません」
「ではもう一つお話をしましょう。平川さん、あなたについてです」
 私は口を開いたまま、大山氏を凝視した。
「これは作り話なのですが……」
0161創る名無しに見る名無し
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2012/08/03(金) 13:26:49.12ID:BnlZZEMg
A(兄)とB(弟)は一卵性の双子。
唯一の違いはBの耳の裏にホクロがあるくらい…
AとBはともに漫画家を目指していた。
Aはわずか数ヶ月で受賞デビュー、トントン拍子で売れっ子漫画家になっていった。
一方Bの方は受賞すら出来ずに万年志望者のまま…

A「絵柄は全く見分けがつかないのに、なんでこうも違うんだろうな?」
B「兄さんの漫画は派手で勢いがあるからね。万人受けするタイプだよ」
B「それに比べて僕の漫画は暗くてバッドエンドばかりだから…」
B「それに……兄さんはパクるのも上手いし…」
A「パクりが上手いか…」
A「さすが実の弟だな。売れっ子漫画家にも気兼ねがない。ハハハ」

A「なぁなぁ、もしも俺が死んだら、お前どうする?」
B「え?」
A「俺に成り変わって売れっ子漫画家に…」
B「バカバカしい…いくら絵柄が同じでも僕に兄さんの漫画が描けるわけないだろ」
A「真面目だな、Bは」
A「でもよ、ここだけの話、成り変わってもいいぜ。面白そうじゃん」
B「いいかげんにしてくれよ!」
A「わかったわかった。謝るよ」


数日後、双子の一人が心臓発作で急死した。
駆けつけた救急隊は双子と言うことで少々驚き、
慎重に第一発見者の双子の片割れに尋ねた。
「この方は…?」
双子の片割れは少し間を置いて答えた。
「兄のAです」

つづく
0162創る名無しに見る名無し
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2012/08/03(金) 13:27:59.94ID:BnlZZEMg
その後Aの漫画は打ち切られ、多くの読者は悲しんだ。
暫くしてBがAの元編集部を訪れて、こう言った。
B「僕が兄の遺志を受け継ぎます」
B「これ新作なんですが兄を思って描きました。一読お願い出来ますか?」
編集部は真摯に対処しつつも内心では売れない弟を早く厄介払いしたかった。

…のはずだったのだが、この漫画が思いのほか面白い。
相変わらず暗くてバッドエンドのストーリーなのだが、何故か面白かった。

Bは売れっ子漫画家Aの遺志を受け継ぐ弟として話題を呼び、瞬く間に売れた。

編集部もBを絶賛。まるでAが乗り移ったかような快進撃と持ち上げた。

B「そんなに誉めないで下さい。僕は兄の作った道をただ歩いてるだけですから」
B「それにしても駆け上がるのはやっぱり楽しいですね。ワクワクしますよ」

そう言うとBは照れくさそうに耳の裏をかいた。
…何かが落ちた気がした…

【END】
0163創る名無しに見る名無し
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2012/08/09(木) 22:12:11.54ID:a4ZZimL9
狂気

気が付くと私はそこにいた。波の音が聞こえる。どうやら海の近くらしい。
ここは何処であろうか。
残業帰りに何者かに腕を引っ張られ、無理矢理車に乗せられた。
車には 見た事もない若者数人が乗っていた。
顔面を二、三発殴られた後、財布を取られた。
ここからの記憶がない。
今は早朝であろうか、
まだ空はそれほど明るくはなかった。
ふと、足元に何かが転がっているのに気が付く。
空が明るくなってくるにつれ、それが酷く変形した人型である事に気付く。
私だった。
私は、私を見下ろしていたのだ。
理解する事に少し時間がかかったが、結論は一つしかなかった。
私は死んだのだ。

0164創る名無しに見る名無し
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2012/08/09(木) 22:33:55.33ID:a4ZZimL9
狂気2
考えられる結論は一つ。
地面によじれた躯を晒しているのは、私の亡きがらであり、見下ろす私はその肉体から抜け出た魂であると。
つまる所、幽霊である。
眼下の抜け殻は相当に傷ついており、中でも頭部は腐ったジャガ芋のように潰れており、恐らくはこれが致命傷となったのであろう。
気休めに壊れた肉体と重なって見たが、やはり
「生き帰る」
などという事はなかった。
取りあえず、誰かに死体位は見つけて欲しかったが、何故だろう、ここは誰もいない。
未練なのか、私は私の死体から離れる事は出来なかった。
ここで何日も何日も誰かが来るまで死体と共に過ごすのであった。
0165創る名無しに見る名無し
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2012/08/09(木) 22:51:17.38ID:a4ZZimL9
狂気3
あれからどの位経ったであろうか。
徐々に肉体は腐っていく。
蛆が。
鳥が。
微生物が。
容赦なく私の躯だったモノを食い漁る。
周囲には蝿が無数に飛び回り、腐った肉体は水分となり、土に溶け出し、やがて骨だけになっていた。
私はそれを見ていた。
と、言うよりもただ傍観するしかなかったのだ。
モノに触れる事さえ出来ない、ただの幽霊に何が出来ようか。

やがて周囲が騒がしくなって来た。
何だろうか、トラック数台が私のすぐ近くに止まり、数人の男達が測量を始めたのだ。
チャンスだった。
0166創る名無しに見る名無し
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2012/08/09(木) 23:13:12.15ID:a4ZZimL9
狂気4
男達は私(とその骨)のすぐ近くに来ていた。
思わず手を振りながら、

おい、ここだ!ここに私がいる!

と叫んだ。

誰も気が付きはしない。
当然だ。誰にも私の声など聞こえないし、見えもしないのだ。
しかし思わぬ偶然が起こった。これは幸運なのか。一人の男が私の正面から向かって来る。
男はズボンのチャックを下げながら近づいて来る。恐らくは用足しであろう。その時やっと気付いてくれたのか、男は物凄い悲鳴をあげた。
男の視線のその先の、私の骨に。
男は腰が抜けつつも仲間の方にむかって四肢を駆使して這う。まるで犬のような姿勢で仲間達に叫んだ。
「大変だ骨が、人間の骨が転がってる!!」

今晩はこれにて。
0168創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/10(金) 16:41:39.05ID:fFsDjhrl
狂気5
しばらくすると車が二台、白と黒の色に××県警の文字がある。その中から制服姿の男達が降りてくる。先程私の前で腰を抜かした男と二、三言話し、私の元に近づいて来る。
一人の警官が、私の骨を少し観察した後大きな溜息をついて
「あぁ、この仏さん、他殺だなあ。」と呟いた。

他殺?
私は殺されたのか?
もう一人の警官がうん、うんと頷く。
「頭蓋骨が陥没してる。
なんか棒状のエモノで殴られたんだなあ、それにほら、首も折れている。」
警官達は私の骸を見下ろし、拝む。
その後は私の骨を丁寧に、徹底的に拾い集め、
第一発見者に事情聴取。
そのまま骨を車に乗せて
帰っていった。
0169創る名無しに見る名無し
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2012/08/10(金) 17:11:31.15ID:fFsDjhrl
狂気6

この頃になると私はこの辺り周辺を退屈しのぎに散歩するようになっていた。
いつの間にかプレハブ小屋が出来、その横に立て看板で
「国土交通省九十村道路計画」
ああ、ここに道路が出来るのか、などと考えつつ、ぶらぶらと歩く。
気になる事はいつかの警官の発した「他殺」の二文字だ。私は殺された。
恐らく私を殺した奴らは
あの時の若者達だ。
悔しい。
私には家族がいた。妻と娘が。
きっと心配している事だろう。私を殺した奴らは今ものうのうと生きているのだろう。
その理不尽さに怒りが込み上げる。

その時だった。
海だ。海の方から異様な気配を感じた。
黒い海。その中で何十何百という人影とも獣とも形容しがたい黒い物体がうごめいていた。
奴らは海の下から頭と腕を延ばし、まるで波の用にユラユラと揺れていた。まるで私に手招きをすりように。

おぉーおぉー

彼らの叫びとも泣き声とも付かぬ声が、私の中を貫いて行く。
恐怖が私を包みこむ。駄目だ!止めてくれ!!
思わず叫ぶと海はまた平静を取り戻すのであった
0170創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/10(金) 17:36:32.88ID:fFsDjhrl
狂気7
道路の工事は進み、じょじょに現場関係者と思われる人間が増え随分と賑やかになった。
私は今、人の形ではなくなりつつある。恐らく、
遠い記憶が時が経つにつれ朧げになるのと同じ用に、人であった頃の記憶
〜自分の生前の姿を忘れつつあるのだ。
この場所を離れようと思ったが、なぜかある所まで行くと透明な壁に付き当たり、そこから先にはどうしても進む事が出来ないのだ。
帰り道に妙な建築物を見つける。
石で出来た鳥居のような、昔何かの図鑑で見たストーンヘンジのような物だ。この物体の先へは、
やはり例の「透明な壁」
があって先に進む事は出来ない。
しかたないので、自分の居場所、かつて私の骸があった所に帰ろうとしたその時、何処からか私に向けての視線に気が付く。
振り向くと男が私を見ていた。
0171創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/10(金) 18:00:35.02ID:fFsDjhrl
狂気8
この男は私を見る事が出来るのか!!
しかし男は青ざめた顔で
目を反らし、何事もないようにプレハブ小屋の方に歩いて行く。心なしか少し小走りだ。
私は彼に着いて行く。
やっと私に気付いてくれた人間を見つけたのだ。
この機は逃さない。
男の脚はどんどん速くなって行く。こちらがついて来る事に気付いているのだろう。一言だけでもいい。何か言葉を交わしたい。もう孤独はうんざりだ。

なぜか私は彼の背中のすぐ前に瞬間的に移動していた。私の霊体の一部は
彼の身体の一部に食い込むような形になった。
何故私を無視するのだ。
大丈夫だ、何もしやしない。ただ言葉のやり取りをしたいだけなんだ。
私は彼の耳元で囁く。



俺の事、見えてるんだろう....?


男は悲鳴を上げてプレハブ小屋に走って逃げてしまった。

脅かすつもりではなかったのだが。
0172創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/10(金) 18:34:36.34ID:fFsDjhrl
狂気9
この件が妙な事態を巻き起こす。
現場にまことしやかに囁かれる幽霊遭遇事件。
どうやら彼の他にも私に気付いていた関係者はいたらしい。

そしてついに私を成仏させる為の「おはらい」が敢行される事になったらしい。

もうこの頃の私は人の姿であったろうか?
もはや生前の姿などとうに忘れてしまった。

今の私は人の形をした黒い影のような存在になっていた。寧ろいろいろと面倒な人間の姿よりも動き易く快適であった。

ああ、今日もあの黒い海から心地よい風の音が聞こえる。呪詛の念、この現世への冒涜的な言葉..彼らは私を誘うのだ。
同情し、時には蠱惑的に誘惑し、あの石の門を開けて彼らをこっちの世界へと連れ出してほしいと
...待っていてくれ、もうすぐだよ...私が君達を開放してあげよう。

君達が奏でる忌まわしい音楽が私を少しづつ黒に染め上げていく。
なんとも言えない高揚感そう、「この世」などは
何の意味もない..
ただの言葉にすぎない。
0175創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/10(金) 19:05:24.59ID:fFsDjhrl
狂気10
今日は...目がなくなったよ。

現場の作業員達が私の死体が遺棄された場所で黙祷している。

その前で宮司がありがたい経典なんかを物々唱えてる。
炎が炊かれる。
宮司は相変わらずお経を詠み上げている。

わざと宮司の前に立って見る。
こっちに気が付いてないみたい。お経に夢中?
それとも本当は幽霊なんか見た事ないインチキ宮司?
さあ、その有り難い説経とやらで俺を成仏させて見ろ!!
もはや俺は現世を怨む化け物だ、この程度の力で俺を昇天させる事なんか出来やしない。


全ての行事が済んだ後、
俺は作業員の前で、
宮司の首を跳ねてやった。
そりゃあもう大騒ぎだ。
泣き叫ぶ奴、発狂した奴もいた。いい気味だ。
海の中の友人達も喜んでくれた。

やがてここに人間はいなくなった。プレハブ小屋の立て看板には誰が貼ったのか「着工日未定」と書かれた紙があった。

さあ、友よ、もうすぐだ。君達を閉じ込めているあの石の門を開け、狂気に満ちた漆黒のケガレの風を吹かせよう。

所詮、この世は欺瞞と矛盾に満ちた歪んだ闇だ。


0178創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/11(土) 09:15:35.81ID:t4ZCPpYd
>>176
どーもです。
小説書くの初めてだったんでいろいろと酷い部分もありますが...
でもここは書き込み規制ユルくていいですね。
0179創る名無しに見る名無し
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2012/08/13(月) 18:12:12.86ID:TgE3Zv+5
狂気 その後

以下、S県捜査一課丸山信吾巡査部長の手記より抜粋

×月×日S市某賃貸住宅にて変死体を発見との通報あり。死亡者の氏名は林勝広
通報したのは死亡者と恋人関係にあったK
殺人の可能性もあった為
死亡者の部屋を捜索。

その結果死亡者の机の引き出しより、
「小野寺順一」の物と見られる自動車免許証と財布を発見。
「小野寺順一」は三年前、行方不明となりさらに二年前に九十村にて白骨死体となり発見されている。
(歯の治療跡と右足部の骨折治療跡により本人と断定)
0180創る名無しに見る名無し
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2012/08/13(月) 18:27:13.79ID:TgE3Zv+5
狂気 その後

死亡者、林勝広は私が個人的に調べていた
「白木丈一」と当時交遊関係があり、小野寺順一死体遺棄事件の主犯の一人として現在調査中。
奇妙な事に死亡者の死因は溺死。しかも黒い海水を多量に飲んでいた
×月×日
やはり白木丈一と交遊関係にあった、「相沢ほなみ」が勤め先のT都K町の風俗店のトイレにて変死との連絡が警視庁より有り。こちらは管轄が違うので詳しい情報はまだ不明。死因は溺死との事。
0181創る名無しに見る名無し
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2012/08/13(月) 18:50:15.87ID:TgE3Zv+5
狂気その後

白木丈一は九十村出身であり、死体遺棄現場にも土地勘がある。
後日、九十村に足を運んでみる事にする。何か嫌な予感がする。

依荏子山
ケガレの風

(別の人物の筆跡で
小塚早苗###‐####‐####)

×月×日
小野寺順一死体遺棄事件の主犯としてやはり白木丈一と当時交遊関係にあった「堀川保」を緊急氏名手配。どうやら林勝広に免許証と財布をネタに金を恐喝されていたらしい。(恐喝の件は捜査二課で調査中)

×月×日
S市某ホテルにて、堀川保が変死体で発見される。
死因は溺死。例の黒い海水−−−。
犯人死亡のまま逮捕。

この日の夜、九十村で見た少女の幽霊に遭遇。
「あなたも気をつけて」
.....警告か?
0182創る名無しに見る名無し
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2012/08/13(月) 19:03:05.30ID:TgE3Zv+5
狂気その後

小塚早苗嬢よりTellあり。

彼女の話に寄れば、自宅にて女の幽霊に遭遇し、
気を失ったとの事。

気が付いた後、フローリングに大量の泥の付いた足跡と黒い「くし」を発見したとの事。

今日の夜落ち合う予定。

※例の九十村出身の警官とやっと連絡が取れた。
結城優


0185辿り着かないタクシー
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2012/08/14(火) 23:45:48.91ID:ZAICLv59

終電を逃してしまった。
調子に乗って、もう一杯頼んだのが、いけなかった。
自宅までは、3回乗り換えがある。その2つ目の駅で、乗るはずだった電車を見送った。

どうする。
仕方が無いので、ここからタクシーで帰ることにしよう。
高くつくが、やむを得ない。明日も仕事がある。

こういう時に限って、タクシープールは行列がものすごい。
ったく、終電があるうちに帰れよな……
自分を棚上げし、毒づく。

少し歩いて駅から離れれば、流しのタクシーを拾えるかもしれない。
そう考えて、歩き出す。
しかし、そうそう捕まるものでもない。
通りすぎるのは「賃走」か「回送」の表示ばかり。
運良く「空車」を見つけても、あからさまに知らんぷりだ。

ふざけんな、嫌がらせしやがって……
夜道をとぼとぼ歩きながら、惨めな気持ちになりながら、走りゆく黒い車を目で追う。
経験したことはないが、砂漠でオアシスを求めて彷徨うのは、こんな感じなのだろうか。

半ば諦めかけたその時。
一台のタクシーが、一時停止をしてからゆっくりと路地から出てきた。
慌てて手を上げ、通せんぼをするように立ちふさがる。
逃してたまるか、そういう気持ちに近かった。
タクシーは、後部席のドアを開けた。

やれやれだ。
体をシートに滑り込ませ、溜息をつく。

「どちらまで」
「〇〇団地なんだけど、いいかな」
「あぁ……あそこね。いいけどお客さん、つかれちゃうかもな」
「はは、もう十分疲れてるよ」
「あ、そうですか。なら大丈夫かな」

運転手が車をスタートさせた。
0186辿り着かないタクシー
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2012/08/14(火) 23:48:04.05ID:ZAICLv59

しばらく目をつぶり、じっとしていた。
タクシーはほとんど停車せずに走っている。
あの駅から自宅までの距離を考える。
大体、5千円くらいだろうか。深夜割増も考えると、7千円位を覚悟した方が良いか。

カーブが多い気がする。抜け道なのか。
見たところ、ベテランの運転手のようだし、道をよく知っているようだから、遠回りすることも無いだろう。
目を開けて、窓から周囲を見る。
さっきまでは住宅街だったが、両脇に木が生い茂っている。林か山の中かを走っているのか。
団地までの道のりに、そういった場所が無いわけではない。信号に引っかからないような、抜け道なのかも知れない。

しかし……

時計を見る。
もう1時間近く乗っている。

メーターは1万を超えている。
びっくりして、たまらず声を掛ける。

「ちょっと、ここどこ? どこ走ってんの」
「いや……」
「あの駅から〇〇団地なんて、そんな遠くないでしょ」
「そうなんですけどね」
「遠回りしたって、金は払えないよ」
「お金ですか」

そういうと運転手はメーターを倒した。
「お代は結構です……自分でも分からないんですよ……どこを走っているのか」
「はぁ!?」

「途中まではいい感じに来てたんですけどねぇ……やっぱ今日は日が悪かったかな」
「何言ってんだ、早く戻ってよ、分かるトコまで」
「いや、もちろんそのつもりで走ってますよ……でもねぇ」
「じゃあいいや、とにかくここで停まってよ。ここがどこか、地図で調べりゃいいじゃない」

「停まる? 嫌です。そんなおそろしいこと、できません」
「何言ってんだよ……」
「止まったら、つかれちゃいますよ」
「は? いやもうとっくに相当、疲れてるんだけど」
「そうですか……じゃあ、後ろのは何なんでしょうね」

振り向くと
0188辿り着かないタクシー
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2012/08/14(火) 23:50:17.98ID:ZAICLv59

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0190止まない音
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2012/08/14(火) 23:52:54.52ID:ZAICLv59

まただ。
いったい、いつまでそうしてるつもりなんだ。

駅のトイレの個室の中で蹲り、さっきまで暴れまっていた腹を宥めながら、ぼんやり思う。

慌てて入ってきたので時間は覚えていないが、たぶん10分は経っている。
ここへ入る前から、隣の個室は人が入っていた。
奥に一つだけ空きがあるのを見つけて、やれ幸い、と思ったのだ。

自分の腹が落ち着くと、周りの音が聞こえ始める。
それまでに隣の奴が水を流す音も出て行く音も聞かなかった。

聞こえたのは、トイレットペーパーを引き出す、あのカラカラという音だけだ。

それが聞こえると、大抵の場合次に水を流す音が聞こえて、衣服を直す音に続いて隣人が出て行く。
そうして隣人がトイレから出て行くまで待ってから、出るようにしている。
なぜだかよく分からないけど、顔を合わせると気まずいので、そうやってやり過ごすのが常だった。

しかるに、隣の奴。
さっきから、間断的にトイレットペーパーを引き出す音が聞こえている。
もう何度目だ?
そんなに拭きたりないのか? 潔癖症で、いくら拭いても気持ち悪いのか?

だいいち、ペーパー無くなっちゃうんじゃないか。

それとも、床にでもこぼしたのか。
ここは洋式だが、隣は和式なんだろうか。

カラカラ音が聞こえたあと、何かを拭いている音はする。
その後しばらく無音が続き、再びカラカラ音。

いったい、何をしているんだ……
終わったなら、さっさと出ていって欲しい。
0191止まない音
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2012/08/14(火) 23:54:37.92ID:ZAICLv59

腹は、どうにか落ち着きを取り戻したようだ。
やはり昼に牛乳を飲み過ぎたのが悪かった。

隣の奴は出る気配ないし、顔を合わせないよう今のうちに出よう。
そうして自分もペーパーに手を掛けたとき、隣の奴が個室を出た。

なんだ。
ちょっと待つか……

洗面台で、水を流す音が聞こえる。
手を洗ったら、さっさと出ていけよ。

ところがだ。
一向に、水を流す音が止まない。
ただ流しているわけではなくて、手を洗っているような音だが、それがずっと続いている。

なんだよ、今度は手洗いか?
勘弁してくれよ。

そこへ、別の足音がした。新たな利用者が入ってきたらしい。
なんだよ、タイミング悪いな……




「うわあああぁぁぁぁ!!」


.
0192止まない音
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2012/08/14(火) 23:56:14.57ID:ZAICLv59

突然、叫び声がした。
走り去る足音もした。

なんだ? 
いったい、なんなんだ?

何かを見て逃げた?
何を?

もしかして、ずっと手を洗っている奴か?
耳を澄ますと、水音は止んでいる。

なんだ。
いったい、奴は何者なんだ。
なんで、叫び声をあげて逃げたんだ。


そのまま息を詰めて様子を伺う。
何の音もしない。


もう、無人のようだ……

そう思った矢先、

「う、うわあぁぁ!!」

別の叫び声がした。

おい、ちょっと待て……
まだ、いるのか?


耳を澄ます。



個室のドアが、ゆっくりノックされた……


.

0193止まない音
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2012/08/14(火) 23:57:17.74ID:ZAICLv59

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    \ ./ィ彡i!i!i!i!i!i!i!i((・))!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!ヾミヽi
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      i彡;;:'i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!iミミミi
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     i i 、i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!ii´ `i
     ',.',( l!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!ilノ^i l
      ',ヽヽ!i!i!i((・))!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!il )//
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            ∧!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!ii!i!i!i!i!i!/
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         ヽ     \       /     i
         ヽ      `ーt--t‐'´    /
           ヽ      / ◎ヽ、    /
             ヽ     /i    iヽ   /
0196創る名無しに見る名無し
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2012/08/15(水) 15:03:35.20ID:KxnQ/FjA
泥と櫛1

ようやくS市に着いた。
お昼にバスに乗って着いたのは夜の7時。

とっくに日は落ち、駅前はネオンの光に照らされていた。
九十村のレポートを今日中に終わらせたかったけど、明日にしよう。
自宅への帰り道、S県警の前で止まった。
(丸山さん、ここで働いてるんだ。)
朝のニュースで流れてたっけ。二年前の九十村での死体遺棄事件の容疑者を緊急指名手配..。

とりあえず疲れた。早く部屋に帰ってシャワー浴びたい。
私の住んでる部屋は駅からちょっと遠い。だから家賃も安いんだけど。

いつもの曲がり角。暗くてちょっと怖い曲がり角。電灯が壊れてていつもチカチカしてる。
この角を曲がれば部屋へは5分と掛からない。

そこで私は後の気配に気付く。
0197創る名無しに見る名無し
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2012/08/15(水) 15:32:25.37ID:KxnQ/FjA
泥と櫛2

どうしよう。後を見る勇気がなかった。
人?違う。
猫?違う。
もっと何か、奇妙な物。

私は歩くスピードを早める。

それは私にずっと着いてくる。

後で、ホウキでゴミを払う時のような音がする。

ざっざっざっざ

アパートはすぐ目の前だもう視界に入っている。

恐怖。

今まであった事のない悪寒。

見ちゃ駄目だ見ちゃ駄目だ見ちゃ駄目だ。私は頭の中で繰り返す。

アパートの門をくぐり抜け、階段を上ろうとした時、

見えてしまった。

地面から生える黒い髪の毛。

それが私を目指して

ざっざっざっざ。

近いてくる。
もう脇目も振らず階段を駆け上がる。

右奥の角部屋が私の部屋だ。
ドアの前で急いで鍵を開けて、部屋に入ってドアを閉じ、鍵を閉め、ついでにチェーンロックを掛ける。

呼吸が荒い。思わず玄関でへたり込む。
0198創る名無しに見る名無し
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2012/08/15(水) 15:58:30.77ID:KxnQ/FjA
泥と櫛3

何よ、何だったのあれは??
とりあえず部屋に入って少し落ち着く。
電気を付ける
いつもの部屋だ。
何も変わらない私の部屋だ。
荷物をベッドの上に放り投げ、着替えようと振り向く。

い た。

あの髪の毛が私の部屋にいた。

恐怖で口を塞ぐ。

なぜか髪の毛から目を話せない。よく見ると、

髪の毛の下に

顔があった。

おでこから鼻の上位まで。
まるでフローリングに埋まっているようだ。

それは二つの眼で私を凝視する。女性のようだった。
真っ赤に血走った目。

フローリングから右手が延びる。左手も延びて来る。
べちゃっ
フローリングに両手を着けて、力を込める

ず ず ず ずっ

徐々に彼女の半身がはい上がる。

次に左太ももからひざが。
右太ももからひざが。

まるで土下座をしてるような姿勢になる。

もう駄目だ。助けて!!
叫ぼうとしても声がでない。
0199創る名無しに見る名無し
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2012/08/15(水) 16:18:56.13ID:KxnQ/FjA
泥と櫛4

そして彼女はゆっくりと立ち上がる。

朱い着物、額に十字の印

そして泥だらけだった。

まさか?ジンチュウ様?

彼女は急にがたがたと震え始める。

その亀の甲のような干からびた泥がこびりつくその口で
私を見て
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ−−−−−−−!!!!!!!!」

この世の物とは思えない、まるで地の底から響き渡るような声で絶叫したのだ。
その響き渡る苦悶にみちた悲鳴を聞きながら、私は気を失った。



モウマニアワナイノカモシレナイ....

そんな声が聞こえた気がした。

0200創る名無しに見る名無し
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2012/08/15(水) 16:27:33.05ID:KxnQ/FjA
泥と櫛5

気が付いたは朝の6時。

どうやらあのまま眠ってしまったらしい。

昨夜の余りに現実離れした体験に、

ひょっとして夢でも見てたのかな、と思ったが

フローリングの床を見て絶句する。

昨夜、彼女が立っていた周辺に泥の付いた足跡を大量に発見したのだ。

その中央部分になぜか
「櫛」があった。
泥の付いた櫛だった。

0201創る名無しに見る名無し
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2012/08/15(水) 18:47:55.03ID:KxnQ/FjA
小塚早苗帰宅と同時刻
(以下同時刻1)

俺は本当に自首するつもりだった。そのつもりで警察に連絡したんだ。

だけど出来なかった。

あいつに見つかったからだ。

あいつに捕まったら殺される。
多分、白木も林もほなみも皆奴に殺されたんだ。

あの化け物に。

とにかく今朝、奴から逃げるために、このビジネスホテルにチェックインした。
..早く警察来てくれ。
俺を守ってくれ。
0202創る名無しに見る名無し
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2012/08/15(水) 19:08:39.09ID:KxnQ/FjA
同時刻2
携帯を取り出して
「警察か、俺、堀川保だよ、事情があってここから出られない。早く来てくれ。助けてくれ!。」
プライドを棄てて懇願する
死ぬ位なら刑務所にいったほうがマシだ。
「堀川か今どこにいるんだ!!」
「S市のホテル※※だよ、302号室だ、頼む、早く来てくれ!」

..じじじ...じじじ
...
奴の笑い声だ、もうすぐここまで来ている!!
「お前自首するんじゃなかったのか!?そこから出られないってどういう事....」
おれは電話を切った。

とにかく、この部屋で隠れる場所を探す。ユニットバスか、収納か、ベッド、ベッドの下!!

ここなら奥に入れば見つからないかもしれない。

ベッドと床の隙間はかなり狭かったがなんとか入る込む事が出来た。

じじじ.....
じじじじじ.....
(足音)

近くにいる!!部屋のドアのすぐ近くに....!!
0203創る名無しに見る名無し
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2012/08/15(水) 19:24:01.90ID:KxnQ/FjA
同時刻3
(ドアノブを捻る音)
(ドアが開く音)
(足音が続く)
なんで!!なんでロックがかかってるドアが開くんだよ!?..警察が来てくれたのか...

じじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじじ

違う!警察じゃない!!
やっぱり奴だ!!

(何やらアチコチを探す音。ユニットバスのドアが開く音、収納の開く音)
(足音、部屋の中を言ったり来たりの足音)
頼むっ!!来るな!!
こっちへ来るな!!
(ベッドの近くを歩く足音)
...奴の足が俺の方から見える。早く行けっ!!行っちまえ!!
(足音が止まる)
.....いなくなった?
(ベッドの上に上がる音、ベッドが軋む音)
上、俺のすぐ上に!!
0204創る名無しに見る名無し
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2012/08/15(水) 19:36:30.69ID:KxnQ/FjA
同時刻4
(何やらしゃべる声#※≫≡+..聞き取れない)
早く....早く....もう行ってくれ..
(ベッドから下りる音)
(沈黙)
(沈黙)
(沈黙)
(沈黙)
そうだ!!もう諦めろ!!諦めろ!!


ベッドの隙間から、床に膝を付くのが見える。



シーツをめくりあげる
そこからベッドの隙間を覗く
あの
黒い目と
歯も
舌もない、
あの悍ましい顔が、
今俺の目の前にある。
終わった。
俺は死ぬ。
0205創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/15(水) 20:00:01.63ID:KxnQ/FjA
同時刻5

(勢いよく水の中へ投げ込まれる音。)

気がつくと海にいた

真っ黒な海水が俺を包む。
息が出来ない。たまらず海面へと勢い良く顔を出す。空気、呼吸、呼吸をしなくては。
太陽はもうない
あるのは月の光
そこには、いつか見た、
あの石で出来た、鳥居の出来損ないみたいな妙な建築物。
あそこだ。あの場所だ。

海面で何かが揺らめく。
一つや二つではない。何十、何百と月明かりの中ぼんやりと見える

腕。

いくつもの腕が

まるでミミズの群体のように犇めきあっている。

その多くの腕が

俺の足を、腕を、顔を、
押さえ付け、再び海に引きずり込む。

闇。
闇だ。
引きずり込まれた、その先は死という名の漆黒.........
オマエハ 「ニエ」ダ。

誰かが俺の耳元で囁く。




0206創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/18(土) 21:57:57.72ID:fNxO5Uc0
人生手品


「では、最後の魔術です」
 マジシャンは宣言した。
 星川氏は観客の一人として、彼を見ていた。
「ここに一人の赤ん坊がいます」
 なるほど、テーブルの上に赤ちゃんが寝かされている。
「よく見て下さい。この子は生きた人間です。ちゃんと動いていますね?」
 星川氏は赤ん坊を見つめた。マジシャンの言う通り、手も、足も、動いている。
「これから彼の人生をお見せしましょう。0歳から20歳までです。そして私は、20歳になった
時点で、彼を殺します」
 星川氏は舞台をじっと観察した。何も怪しいところはない。
「5歳になりました」
 台の上には男の子が、しばりつけられ、猿轡をかまされ、いやいやをしていた。赤ん坊の
時は裸だったが、今はちゃんと服を着ている。「やめてくれ」と目が訴えていた。
 普通のマジックと違い、布がかけられることはなかった。
「10歳になりました」
 少年は「うーうー」とうなっている。少年は一度も隠されることなく、大きくなったのだ。
「15歳になりました」
 彼はうぐうぐ言っている。自分の死期が迫っているのを悟り、「助けてくれ」と懇願している
のだろうか。
「20歳になりました」
 青年は涙を流し、首を横に振り続けた。
「皆様の中には疑っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。精巧な人形、ロボット、
はたまた霊ではないか」マジシャンは剣を取り出した。「彼が生きた人間であることを証明
するために、殺してみせましょう」
 冷酷にも剣が心臓に突き刺さり、青年はかっと目を開いた。そして、ぐったりとなった。
胸からは血の洪水が噴き出し、テーブルから滴っている。もはや生きた人間である、いや、
あったことは疑いようもない。
 いやあ、驚くべきマジックだった、と星川氏は思った。食事もとらず、トイレにもいかず、
風呂にも入らず、服もサイズに合わせて変化していき、台にしばりつけられたまま人生を
送ったのだ。いったいどんなトリックを使ったのだろう。
 20年にも渡る長い長いマジックを見終わった後、星川氏も、他の観客達も、手品師も
−−霊達は、死体を残して、すーっと消えていった。
0207創る名無しに見る名無し
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2012/08/19(日) 10:45:42.36ID:aXXyraMB
結城優1

「おい、結城巡査」
僕は自転車でのパトロールを終えて、ペットボトルのお茶を飲んで、一息付いた所で、先輩に呼び付けられた。
「刑事一課の丸山巡査部長は知っているか。」
知らない。聞いた事もない。第一、殺人課とは、今の所なんの関わりを持つ身分ではない。
「知りません」
一言言うと再びお茶を飲む。
「お前と会いたがっている。」
「はあ」
「何か心当たりはあるか?」
こっちが聞きたい。
僕はまだ、一年前警察学校を卒業したばかりで県警に知り合いなどほとんどいない。
「用件は知りませんが、あちらが会いたいと言うのならば、後日。」

先輩はその丸山巡査部長と言う方の情報を持っていた。県警の方ではかなり有名人らしい。
「検挙率はずば抜けているが、かつて上層部の人間と捜査のやり方で大喧嘩したらしく、出世コースから外れて、今も巡査部長止まり。本来ならば今頃は警視正位にはなっていたはずの人なんだ」

0208創る名無しに見る名無し
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2012/08/19(日) 11:00:16.33ID:aXXyraMB
結城優2

僕は故郷が嫌いだった。

あの古い風習、閉鎖的な風土、何よりあの村独特の宗教。
だから高校卒業後すぐに村を出て、警察学校に入学したのだ。
父の葬儀から一度も帰っていない。もう戻る気もない。将来的には母をS市に連れて、一緒に暮らす予定だ。
その為にあえて寮ではなく、賃貸アパートで暮らしている。

今日も一日、何事もなく、引き継ぎを済ませて帰路につく。

あの夢を見たのはその日の晩だった。
0209創る名無しに見る名無し
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2012/08/19(日) 11:19:59.38ID:aXXyraMB
結城優3

「優兄様、優兄様。」

誰かが僕を呼ぶ。声に聞き覚えがある。

彼女が遠くで手招きしている。
あれは...留美さん。
長谷川家の留美さんだ。

「こっちに、こっちにいらして。」
僕は彼女に近付くと、彼女はまた遠くに行く。
「こっち、こっちに。」
行けども行けども、彼女には一向に近づけない。

その内にいつの間にか暗い洞窟へと入って行く。
「兄様、こっちよ」
声を頼りに洞窟の奥深くまで突き進んだ。

しばらくすると、大きな、開けた場所に辿り付く。
その場所には、地面から天井まで突き刺さる泥の柱が何十とあった。
僕は遠い記憶の中から村の儀式を思い出す
「ジンチュウ様の間だ」
0210創る名無しに見る名無し
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2012/08/19(日) 11:40:33.86ID:aXXyraMB
結城優4

「優兄様、こっち」
柱の中から声が聞こえる。
いくつもの柱の中から、
留美さんの声を頼りに、
一つの柱に目を付ける。
「ここ、私はここよ、」

僕は柱を掘る。指の皮が破けても、爪が剥がれても血だらけになったその手で一心不乱に掘り続ける。

そして、泥な中から生々しい感触を探り当て、そこを目指し、優しく、彼女を傷付けないように手の平で泥を退かしていく。やがて顔が浮かび揚がる。
「留美さん..」僕は優しく問い掛ける。
「ああ、優兄様。」

掘り当てた、留美さんの顔に絶句する。

干からびていた。
まるで干物のように。
干からびている皮膚とは
違い、目は爛々と輝いていて、僕を見つめる。
「ああ、優兄様!!!」
「ああ、優兄様!!!」
「ああ、優兄様!!!」

干からびた口が僕を呼び続ける。
変わり果てた留美さんの姿に、思わず顔を背ける。
そこで夢は終わった。
0211創る名無しに見る名無し
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2012/08/19(日) 11:58:29.52ID:aXXyraMB
結城優5

目が覚めて、体が動かない事に気付く。金縛りにあっている。
子供の頃から何度も経験しているので、冷静だ。

しかし
今回は自分の回りのその異様な光景に恐怖する。

何十人と言う女が僕の布団の回りを取り囲む。
朱い着物に、額の十字の印。顔はどれも蒼白で、
全員が僕を見ていた。

その中の一人がしゃがみ込み、僕の顔を睨む。
僕と彼女の顔の間には1センチも隙間がなかった。

女がその姿勢のまま僕にぼそぼそ囁く。
(トキガナイ イソゲ)

僕はもう一度目を覚ます。
もう布団の回りには誰もいない。

落ち着いて明かりを付けると、畳にもの凄い量の泥の付いた足跡があった

0213創る名無しに見る名無し
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2012/08/20(月) 18:48:41.32ID:EFGiPzkE
やっと第一部終了の予感です。
第二部もこのスレのお世話になると思いますのでよろしく。
0214創る名無しに見る名無し
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2012/08/21(火) 10:10:06.54ID:ntZmiZZb
井塚光次1

私の家は先祖代々、九十神社を護る役目にある。

名士会筆頭としてもっとも重要な名誉ある役職である。

本日の朝早く、九十巫女の長谷川家の留美が我が家を尋ねて来た。

留美は霊感が極端なほど強く、世が世なら、ジンチュウ様選びの筆頭となっていただろう。
普段は余り顔に表情を見せないあの娘が、珍しく不安げな顔で私に会いに来たのだ。
「おじ殿、今朝恐ろしい事が。」
何かと聞くと
「今朝、水占いをしましたの」
水占いとは九十巫女独特の占いで、我が村の依荏子山の清らかな霊水を桶に入れ、その水に巫女の血を垂らし吉凶を占う物である
0215創る名無しに見る名無し
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2012/08/21(火) 10:28:06.85ID:ntZmiZZb
井塚光次2

「結果が全て「凶」と出ましたの。」

留美の手を見ると十の指全てに絆創膏が貼ってあった。
「十占い、その全てが凶であったと申すか。」
何か言い知れぬ不安が過ぎる。

「それと、近々優兄様が帰って来られます。」
なんと、結城家の優が。
この村を嫌い、出て行ったあの男が。
「あの方、色々とすっきりしたようですわ。」

優か、奴も留美に勝るとも劣らずの霊力の主。
しかし、その力を忌み、自ら封印した。
世継ぎのいない私が、養子縁を申し入れたが、受け入れなかった。

0216創る名無しに見る名無し
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2012/08/21(火) 10:48:09.90ID:ntZmiZZb
井塚光次3

私は九十村を三期努めている。
もっとも、選挙など名ばかりで、名士三家の中から家長の一人を選び、たらい回しにしてその任に付かせる。たまたま三期努めているだけだ。

ただし、やはり小さな村であっても村長の仕事は多く、名士会筆頭の任もあいまって、その忙しさに忙殺されるのだが。

今日も居間にて書類の整理の最中である。

そんな時の事であった。

居間の中心に娘が立っていた。

青白い顔で朱い着物、額に十字の印。

「ジンチュウ様。」

その場に座し、頭を下げる。

そのお方はゆらゆらと立ち、私を見下げる。

0217創る名無しに見る名無し
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2012/08/21(火) 11:05:21.21ID:ntZmiZZb
井塚光次4

私にはいくらかの霊感があるが、ジンチュウ様の霊を見るのは六十と三の人生の中で初めてであった。
いかにジンチュウ様とは言え、その恨めしげな姿はやはり恐ろしい。

頭を下げたまま、恐ろしくて顔を見る事も出来ない。

サ ン ニ ン ニ モ ン ヲタ ク セ

その姿は徐々に明滅していく。

サ ン ニ ン ニ モ ン ヲタ ク セ....

もう一度なにか電波信号のような声で囁き、完全に消えた。

後に残ったのは泥の付いた足跡だけであった。

それを見て私はもう一度土下座する。

お告げであった。

「三人に門を託せ?」

門とは首無し牛の岬の辺りにある、ケガレの門の事であろう。

気になるのはその三人が誰かと言う事であった。

0218創る名無しに見る名無し
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2012/08/24(金) 00:46:47.89ID:XcYSsh7d
この世には半妖なる者がいる。いわゆる半分人間半分妖怪の存在である。
世界は冷たい。半妖達はまともな仕事にも就けずその日暮らしを強いられていた。
そんな時、とあるコンテストが開かれる事になった。
優勝賞金300万円…しかもそのコンテストは半妖達らにとても有利ものだった。

大会当日、参加者が全国から集まって来た。
鴉天狗人間、鵺人間、朱雀人間、ジュウシマツ住職etc…
コンテスト主催者は青ざめていた。
「青ざめるのも分かります。
普段見慣れない半妖の我々がこんなに集まっているのですからね」
するとため息まじりで主催者がこう言った。

「このコンテストは距離を競うんだよ…」

0220わたし那女固ちゃん。今、あなたの顔にいるの。1/1
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2012/08/26(日) 02:31:39.87ID:o+6f0rJT

ある朝、目を覚ますと、桃花はなめこに寄生されていた。


起きざまの違和感。
やおら顔に手を伸ばすと、ほの痒い感触と共に、
やわらかで華奢でぬるつるっとしたものがほろりと墜ちた。
「またあの女の仕業ね……」

寝ている間に誰かが悪戯したのだろう。
そう、誰かが。
たぶん胸がないやつが。
他愛もない悪戯だった。

白いシーツにぱら、とひとつふたつ散るなめこ。
シーツに粘液がつくのも嫌なものと、洗面所へ行って落とすことにした。

食べられないこともないかもしれない。
毒キノコではないのだろうし。


鏡に映ったほの白いシルエットを、なめこが縁取る。
落とそうとした桃花はしかし。



「!!!!!!!」


戦慄の叫びが大気を引き裂いた。
耳からなめこをもぎ落とした刹那、おぞ気が走るようなものを、彼女は目にしていた。
そう、もぎ落としたその耳に、新たななめこが2株、ちょこと顔を覗かせたのだ。

視線を落とし、ばらばらとなめこを掻き落とす。
恐る恐る顔を上げると、幸い、なめこは減ってくれていた――かに見えた。


もちろんそれは錯覚で。
今こうしている間にも、ほら、かわいいなめこがまぶたの裏から愛らしい顔を見せ始めている。
落とさなくては。
剥がさなくては。
やや感覚がにぶってきたかのように思ったが、実際には神経は過敏に反応し続けていた。


頭蓋骨の裏は脳。
そして、その骨にはいくつか通路が開いている……。





そして、桃花を見たものはいない。
0221創る名無しに見る名無し
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2012/08/26(日) 03:13:15.31ID:IjDKz9Xb
ほんとに書いたwww
0222創発4周年記念投下作品1/7 ◆ea7yQ8aPFFUd
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2012/08/27(月) 00:27:29.21ID:Wuz0JA35
今思えば、あの物語のきっかけは母の一言であった。

「ネズミの天ぷらが食べたい・・・。」

私が知っている上で病気・・・どころかケガひとつも負ったことの無い、まるでスーパーマンのような母。
そんな母が珍しく夏風邪を引き、数日ほど寝込んだことがあった。
ちょうど夏休みに突入していた私は、母親を知り合いの病院に連れて行ったり、お粥を作ってあげたりと母の看病に徹していたが、
母の病状は良くなるどころか日に日に悪くなっていった。
そんなある日のこと、母はつらそうな顔を見せながら、私に先程のセリフを言い放ったのであった。
「ネズミの・・・天ぷら・・・?」
私が困惑したのは言うまでも無い。

ネズミと言えば、ゴキブリレベルで台所の食品を荒らす、ドブなどの汚い場所に生息する・・・など、
簡潔に言えば汚らわしき害獣であり、スキ好んで食べるような代物では無い。
そんな動物の・・・しかも夏風邪で胃腸が弱っている状態での天ぷら・・・。

しかし、この時の私は『ついに夏風邪で妄言まで言いだす状態に・・・』と思ってしまい、したことと言えば、
母のおでこに置かれた濡れタオルをこの日から冷却材に変えた程度であった。

そして、悪夢はこの日から始まった・・・。

母への看病生活が一週間を過ぎようとしたある日の夜、私は変な胸騒ぎがし、台所へと向かった。
目的は自分を落ち着かせるために麦茶を飲みに行く・・・というのであったが、その目的は突如として打ち破られた。
台所の一部から漏れる光・・・その光源は冷蔵庫であり、その前には何かを探す母の姿があった。
「・・・うん?お母さん、体の調子はどうなの?」
寝ぼけ眼で母に声をかける私。

・・・だが、私の眼に飛び込んできたのは『母』では無かった。

「・・・!」
一瞬にして目が覚める私・・・と同時に、その体は恐怖感に包まれていた。

私の眼の前に居る存在・・・それは、体の半分は母、そしてもう半分は獣と化し、口には明日の朝食に使う予定であった油揚げが、
まるで捕えられた動物の死体のようにダラリとぶら下がっていた。
「・・・え・・・え・・・。」
声を出そうにも『え』の一言しか出ず、そのままへたり込む私。
一方の母・・・いや、獣人は私に構うことなく油揚げを丸飲みし、そして後ろの勝手口から外へと飛び出すのであった。
0223創発4周年記念投下作品2/7 ◆ea7yQ8aPFFUd
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2012/08/27(月) 00:30:04.10ID:Wuz0JA35
「・・・!ま・・・待て!!」
平静を取り戻し、扉の開いた勝手口に掛け込む私。
だが、眼の前に広がっていたのは夜の闇のみであり、耳に入ってくるのは風の不気味な笑い声、
そして獣が遠吠えするような鳴き声だけであった。

次の日、病状が若干落ち着いた母を確認すると、私は図書館へと急いだ。
昨日の夜の出来事は夢じゃない・・・現に冷蔵庫から全ての油揚げが消え、
そして母の手足にはまるで四つん這いになったかのような泥汚れが付いていた・・・。

母のあれは病気じゃない・・・何かが取り憑いている!

私は図書館の中にあるいくつかの本を漁るように読んだ。
『病気』、『妄言』、『獣』、『油揚げ』・・・母の病状から思いつく限りのワードから検索をかけ、
母の病気の正体・・・いや、母に取り憑いた存在の正体を探る私。
そして数時間後、私はその正体を『妖怪辞典』と記された本から知るのであった。

「狐憑き・・・。」

本にはこう記されていた。

狐憑き・・・それは人間の体に狐の魂が宿り、その者の体や心を蝕むだけでなく周囲の人間をも混乱させ、
一族その物をこの世から抹消する怪奇現象のひとつである。
この現象を除去する方法として、取り憑いた狐の魂を一時的に外へと排出させる必要があるが、
狐は妖力を多分に含んでいるため、人間の体から切り離すのは容易ではない。
だが、狐の大好物であるネズミの天ぷら(もしくは小豆飯)を取り憑かれた人間に捧げることで狐の魂の注意は食べ物にのみ集中され、
除霊が幾分か容易となることを付け加えておく。

「ネズミの天ぷら・・・。」
私はハッとした。

あの時の母の言葉・・・それは、自身が狐憑きに取り憑かれていることへの意志表示であり、ネズミの天ぷらが解決策の提示であった。
だが・・・私はそれにまったく気付かず・・・そして・・・。

私は泣いた。
静寂な図書館の中で、大声で泣いた。
周囲に人が集まり、「どうした?」だの「静かにしろ」だの言っていたが、私は無視して泣き続け、
その涙で私の前には水たまりのような物が形成されつつあった。

・・・だが、泣いていては始まらない。
0224創発4周年記念投下作品3/7 ◆ea7yQ8aPFFUd
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2012/08/27(月) 00:33:10.27ID:Wuz0JA35
まるでスイッチが入ったかのように泣き止む私。
そして、本を机の上に置きっぱなしにしたまま図書館を後にすると、一直線に近所のペットショップへと向かった。
私は知っていた。
そのペットショップではハ虫類も扱っており、その餌用として冷凍されたハツカネズミが販売されていることを・・・。

数分後、霜が浮かんだハツカネズミ数匹の入った袋を片手に、私は帰宅した・・・が、玄関に立った瞬間、
得も言えぬ胸騒ぎに襲われた。
「・・・まさか!」
勢い良く扉を開ける私。
次の瞬間、私の眼に数多くの情報・・・しかも、それは悪い情報が飛び込んできた。
玄関に散らばった多量の靴、ひっくり返された靴箱、そして玄関から居間へと続く廊下にスタンプされた足跡のような泥汚れ、
さらにトドメを挿すかのように台所から聞こえてくるまるで何かが暴れているかのような物音、
そして・・・獣人と化した母の姿であった。
「お母さん!」
おもわず叫ぶ私。
対する母はその言葉に反応した・・・が、その反応は『母』としてではなく『恐怖に震えた獣を見つけたハンター』としての反応であった。
たくましい前足と後ろ脚で飛び上がり、私の体に覆いかぶさる母。
そして、獣人と化した母の顔からは溢れんばかりのヨダレと生臭い吐息があふれていた。

母は・・・いや、母に取り憑いた狐は私を捕食しようとしている!

母の重たい体に手足を抑えつけられ、もがきながらも打開策を考える私。
だが、この状況では何もアイディアが出ず、ただただ獣人に頭を齧られるのみしかなかった。
「・・・くそっ・・・もう・・・駄目だ!!」

私があきらめかけたその時だった。
突如、私の顔の上で鼻先をフンフンと動かす獣人。
その動きは私の顔から下へと降下し、最終的には手に握られたビニール袋へと移動した。
「・・・そうだ!やい、狐憑き!!そこには、お前の大好きなネズミが・・・冷凍物とはいえ、数匹入っている!!!それを食え!!!!」
叫ぶ私・・・よりも早く、私の手から袋を奪い去る獣人。
そこには、ペットショップから自宅までの間に解凍されてしまったネズミが数匹入っており、
獣人はその中から美味そうな個体を1匹取り出すのであった。
「さあ・・・食え!お前の大好きな・・・身も心も油断してしまうネズミだ!!」
獣人と距離を取り、叫ぶ私。
一方の獣人も、私の声に反応してか否かは分からないが、そのネズミを口元へと近付け、そして果物を食べるかのように飲み込むのであった。
0225創発4周年記念投下作品4/7 ◆ea7yQ8aPFFUd
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2012/08/27(月) 00:37:13.29ID:Wuz0JA35
その直後、母の体から獣人のような荒々しさが消え、そこにはいつもの母が気絶した形で倒れていた。

いつもの母を取り戻し、ホッとする私・・・であったが、もうひとつ仕事があった。
「・・・そうだ・・・これだ!」
そう言って、ズボンの後ろポケットに手を突っ込み、何かを取り出す私。

それは、冷凍ハツカネズミを買いに行った際にお寺の側を偶然通ったので、念のために買っておいた<妖怪封印のお札>であった。

「これをお母さんの額に貼って、狐憑き退治は終了だ・・・。」
そう言って立ち上がり、倒れた母の元へと近付く私。
そして、気絶した母の体を仰向けにし額を露わにさせると、お札を母の額に貼るのであった。
「さらばだ、狐憑き・・・。」
呟いた直後、光を放つお札。
その光は母の体を包み込むかのように徐々に広がっていき、そして母の体が光と化したかと思うと・・・

『母』を封印してしまった。

「・・・え?」

数分後、私は母が封印されたお札を片手にお寺に殴り込み、寺の住職の胸倉を掴んでいた。
「どういうことだ?!狐憑きではなくお母さんが封印されるなんて・・・貴様、どういうつもりであんなインチキお札を売りやがった?!?!」
「ま・・・待ってくれ・・・あのお札は・・・正真正銘、妖怪退治用のお札で・・・。」
「じゃあ、何でお母さんが?!お母さんが妖怪だとでも言うのか?!?!」
「・・・待てよ・・・お主・・・母の病状は・・・本当に狐憑き・・・なのか?」
「何を言う!貴様、俺のせいにして責任逃れするつもりか?!」
「ま・・・待て・・・お主の札の封印は・・・解除出来る・・・じゃが、その前に・・・試したいことが・・・ある・・・。」
「・・・試したいこと?」
その言葉を聞いて、住職を放す私。
「痛たたたた・・・何と乱暴な奴じゃ。ところで、お主の母は『ネズミの天ぷら』が欲しいと申していたんじゃな?」
「ああ、だからネズミをペットショップで・・・。」
考え込む住職。
そして、ひとつのアイディアを思いついたのか、私にこんな依頼をした。
「お主の手元にあるネズミ・・・それを全て天ぷらにして、また寺に来い。ワシらは封印解除の儀のための準備をしておく。」
「・・・?分かった。だが、また変なことしたら承知しないからな!」
0226創発4周年記念投下作品5/7 ◆ea7yQ8aPFFUd
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2012/08/27(月) 00:41:14.56ID:Wuz0JA35
住職に暴言を吐いた私はすぐ帰宅。
そして、台所にあった残りのネズミを使い、ネズミの天ぷらを作り上げると、それをタッパに包んでお寺に再び参上するのであった。

「・・・おお、意外と遅かったのう。」
本堂の前で私を待っていた住職。
そんな住職に声をかけようとした瞬間、私は言葉を失ってしまった。
「・・・!お母さん!!」
私の眼に飛び込んできた光景・・・それは、お寺なのにもかかわらず、
本堂の中にある十字架のような拘束具に張り付けられた状態で気絶する母の姿だった。

不謹慎ではあったが、その姿はまるでSM映画のようであった。

「おい、住職!お母さんは・・・お母さんは?!」
再び住職の胸倉を掴む私。
「ま・・・待て・・・とりあえず、その・・・ネズミの天ぷらを・・・お前の母さんの前にある・・・盆に・・・。」
「・・・分かった。」
住職を放して本堂へと入り、ネズミの天ぷらが入ったタッパを母の前にある盆の上に置く私。
タッパのフタを開けると、そこからは油の匂いと肉の香ばしい香りが一気に放たれた・・・次の瞬間であった。

私の頭上で響く、獣のうめき声。
「・・・?!」
声の方向を見ると、そこにいたのは母ではなく獣人であった。
「早く、本堂の外へ!」
そう言って、私の腕を引っ張って本堂の外へと連れ出す住職。
突然の事態に再び住職の胸倉を掴もうとする私であったが、住職はこう言い放った。
「若者よ・・・お主の母は狐憑きに憑かれたのではない・・・彼女自身が狐なのじゃ。」
「・・・え?」
その直後、本堂の中から聞こえてくる、何かを引きちぎるような音。
音の方向を見ると、獣人は己の手足に巻かれていた金具をとてつもない力で破壊して自由を手に入れ、
眼の前にあるネズミの天ぷらに喰らいつこうとしていた。
獣人の口元へ一匹ずつ消えていくネズミの天ぷら。
そして、獣人が全てのネズミの天ぷらを食べ終えた瞬間、獣人の体は熱を帯び始め、
そしてその熱を莫大なエネルギーに変えて放出するのであった。

吹き飛ぶ私と住職。
また、エネルギーの凄まじさに本堂は砕け散り、その爆心地には元の姿に戻った母が不思議な顔をしながら立つ・・・という
シュールな光景が展開していた。
0227創発4周年記念投下作品6/7 ◆ea7yQ8aPFFUd
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2012/08/27(月) 00:45:03.53ID:Wuz0JA35
「・・・お・・・お母さん!!」
爆発の凄さに泡を吹く住職を放置し、母の元へと駆けつける私。
そして、周りのことなど気にすること無く、母の体に抱きつき、そして胸元に顔をうずめた。
「いやねぇ・・・いつまで経っても甘えん坊さんなんだから。」
「・・・そうだ、教えてくれ。お母さん・・・あなたの正体を!」
「・・・本当は、あなたが独り立ちするまで黙っておこうと思ってたけど・・・私は人間じゃない・・・私は妖怪・・・『妖狐』なの。」
「妖・・・狐?」
「そう・・・でも、信じて。私は悪い存在じゃない・・・人間を愛しているから、あなたのお父さんと結婚し、あなたを授かったの・・・。」
「そんなこと・・・言わずもがなだよ、お母さん。僕を長い間育ててくれたお母さんに対して『悪い人間』だなんて・・・
 言えるワケ無いだろ?」
照れくさくなってしまい、ちょっとクールっぽくいう私。
そんな言葉に母はうっすらとうれし涙を浮かべていた。
「ところで・・・どうしてお母さんはあんな・・・暴走みたいなことに?」
「実は・・・どうもあれは夏風邪じゃなくて、妖怪の流行病らしくてね・・・原因はよく分からないけど、妖怪の理性を失わせ、
 闘争本能や欲望のみを活性化させるみたいなの。」
「闘争本能や欲望・・・。」
「私はあの時、油揚げや・・・あと、ちょっと恥ずかしいけど・・・野ネズミを食べて回復を図ろうとしたんだけど、
 衝動を抑えるまでは行っても治るまでには至らなくて・・・で、最終手段のネズミの天ぷらで治したってワケ。」
「つまり、ネズミの天ぷらは狐にとって『特効薬』みたいな物・・・ってこと?」
「そういうことでございます。」
「そうか・・・ははは・・・ははは・・・あっはっはっはっ!!」
おもわず笑ってしまった私。
『どんな感情か?』と言われると表現しにくいが、とりあえず言えることは、母が完治したことへの喜びであるのは確かであった。
「さあ、帰りましょう。長い間、迷惑かけちゃったし・・・今日は、あなたの大好きなハンバーグにでもしましょうか?」
「賛成!僕も手伝うよ!!」

こうして、私と母の不思議な物語は終わった・・・ハズだった。

「・・・ちょっと待てい!」
後ろから聞こえてくる叫び声・・・その声の主は住職であった。
「いくらお主の母が助かったとは言え・・・さすがに本堂の修理代は弁償してもらうぞ!!」
「・・・え?」
「・・・あ。」
0228創発4周年記念投下作品7/7 ◆ea7yQ8aPFFUd
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2012/08/27(月) 00:49:50.94ID:Wuz0JA35
粉々になった本堂を前にして青ざめる親子。
だが、住職の方はニヤリと笑うと、言葉を続けた。
「じゃが、ワシも鬼じゃない。そこでじゃ、お主にはちょっとしたアルバイトをしてもらうぞ。」
そう言って、私を見る住職。
「アルバイト・・・?」
「そこの妖孤の娘よ、さっき『妖怪の流行病』の話をしておったな?」
「え・・・ええ。」
「実は、ワシの寺では冠婚葬祭の他に妖怪ハンターを生業としててな・・・時々妖怪の封印や退治を行ったりするのじゃが、
 ここ最近凶暴な妖怪が増え続けておるのじゃ。」
「・・・!まさか、流行病のせいで?!」
「確信は出来んが、可能性も否定出来ん。そこで・・・。」
「・・・って、妖怪ハンターなんてアルバイト感覚でなれる物なんですか?」
「いや、いくつか厳しい修行が必要じゃ!だが・・・かつて、京の地を守っていた安倍清明が狐の血を引いていたように、
 妖孤の血を引くお主にも強力な力が眠っているかもしれんとワシは睨んだ。どうじゃ・・・やってみるか?」
「ひとつ聞いて良いですか?」
「何じゃ?」
「・・・修行ってお寺に泊まり込みですか?それとも、自宅から通っても良いですか?」
「・・・?別に自宅通いでも構わんが・・・何故?」
「だって・・・お母さんに会えないのはつらいから・・・。」
そう言って、母の手を握る私。
「やだ、この子ったら・・・本当に甘えん坊さんなんだから!」
一方の母も嬉しかったのか、私の体を引きよせ、顔を胸に押しつけて抱き締めるのであった。

「・・・こりゃ、妖怪ハンターとしての能力を鍛える前に、マザコンを治したほうが良さそうじゃな・・・。」

こうして、本当の物語が始まった。
マザコンな私が、息子LOVEな妖孤の母に支えられながら、妖怪ハンターとしての道を進んでいくという物語が・・・。

続く・・・もんか

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以上です、お目汚し失礼しました。
創発4周年&夏なのでホラー作品に初挑戦してみた・・・のですが、ちょいファンタジーよりになってしまってすみません。
0229創作大会で尻切れトンボな物を投下します。すみません
垢版 |
2012/08/28(火) 00:06:52.33ID:7/2Maax1
こんな真夏の暑い日は怪談話でもして涼まないか? と友人の森田から電話が掛かって来た。
どうやら俺を含めた数人を家に招いて、怪談大会だのなんだので騒ぎたいらしい。最初は正直面倒臭いなと思った。
しかし大学は夏休みだし、バイトもやってないからどうせ暇だろ? と図星を突かれてしまった為、行かざるおえない。
まぁ、どうせ夜になってもある程度暑さは続いているだろうし、時間だけは有り余ってるから行ってやろうと考えなおす。

森田に指定された時間帯は夕方六時ごろ。築何年か分からないボロアパートの軋む階段をよっこらせと一歩づつ昇っていく。
少しだけ廊下を歩き、あいつが待っている部屋のドアノブを握る。緩々としていて今にも落ちそうなドアノブを回す。
ドアは開いていて、奥の四畳半から森田がおー待ってたぞと気さくに声を掛けてきた。森田の周囲には、既に先客がいる。
大学でいつも一緒にいるお馴染みの面子だ。新鮮味もなにも無い。お前らも暇だな。

靴を脱いでお世辞にも綺麗とは言えない玄関から廊下を抜けて居間へと着く。

「遅かったな。どこで道草食ってたんだ」

よっこいしょと座って胡坐を掻いた俺に、森田が興味深々といった表情で尋ねてきた。
俺は頭をポリポリ掻きながら誤魔化す事も無く淡々と答える。

「何となく遅れただけだ。別に理由はねえよ」
「そうか。まぁ良いや。ちゃんと怖い話持って来てんだろうな?」

正直そんなの持ってきてない。精々時間が潰せたら良いな程度で来たからな。
ま、もし俺の番が回ってきたらよくある都市伝説なり幽霊話なり適当に取り繕えば良いか。
特に深く考える事無く、俺は適当な相槌を打ちつつ答える。

「あぁ。それなりのを」
「それなりにか。楽しみにしてるぜ。じゃあ最初誰が話す?」

森田がそう言いながら周りの面子をキョロキョロと見回す。
別に期待してないがそれなりに長いのを頼むぜ。田辺、岸田、南……ん?

あれ? 俺は一寸目を擦る。あれ、顔馴染みの面子が揃っている筈だが、一人。
一人、見慣れない奴がいる。こんな夜だってのにクソ暑い中真っ黒な長袖の服を着ていて、顔が髪の毛で隠れて見れない。
誰だコイツ。森田も田辺も他二人もこいつがいるのを当り前の様にしてるが、俺、コイツを大学内で見た事も話した事も無いぞ。

「おいおい、お前ら黙ってないでトップバッター飾れよ。何の為に集まったんだよ」

何故だか怖い話を話そうとせずに田辺達は黙ったまま俯いている。
そんな田辺達にへらへらと笑い掛けている森田。んで、森田の方を向いている無言の貞子ヘアの誰か。
つうか本当に誰だよコイツ。俺はどうしても気になってしまい、森田に聞いてみる事にする。
もし本当の所会っていて俺が忘れているだけなら、謝ってすむのだが。

0230創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/28(火) 00:07:26.90ID:PXpgkd/t
「なぁ森田。話の腰折って悪いんだけど、この長袖着てる人を紹介し……」
「しょうがねえな。じゃあ俺から先に話してやるか」

俺の質問を遮る様に、森田が自ら率先して、怖い話を話始めようとする。
おい、ちょっと待て。お前の話を聞かない訳じゃないが、どうしても気になって参るんだよ。
悪いなと思いつつも、俺は強引に貞子ヘアが誰なのかを聞こうと声を掛ける。

「森田悪い、その話の前にこの人を紹介してくれないか?」
「数日前、俺は田辺達と一緒に肝試しに行ったんだよ。肝試しに」

な……何だお前? 森田は俺の話を遮るどころか、聞こうともせずに勝手に話し出した。
お前そんな失礼な奴だったか? 暑さのせいか俺の頭はイライラで沸騰しそうになる。
まぁ良い。良いさ。そんなに話したい内容なら話せばいいさ。俺は黙って聞いてやるよ。
だけど最後まで聞いたらちゃんと俺の質問に答えろよこの野郎。俺は両腕を組んで、不本意ながらも森田の話を聞く事にする。
つうか肝試しってお前ら俺の事誘わなかったよな。クソッ、誘えよ馬鹿野郎。

「それで心霊スポット行って、何か出るかなぁと思ったんだけど全然出てこなくてな。
 何だつまんねえって事で適当に遊べるところ行こうぜって事でその場を後にしたんだよ」

あれ、もう帰っちゃうのか? 普通そこで何か起こってるから怖い話が始まるんじゃないのか?
拍子抜けしつつも、若干先が気になる。にしてもさっきから田辺達の様子が妙だ。変に額にタラタラ汗掻いてる。
暑いは暑いけど汗掻く程じゃないだろ。俺全然汗掻いてないぞ。どうでも良いけど。

「んで、街へと向かってる最中に妙な奴を見掛けてさ。暗闇の中に紛れるみたいに真っ黒な服着てる変な奴でさ。
 気味わりいなと思いながらも通り過ぎたんだよ。それで、早く街に行きてえなと思いながら車飛ばしてたらさ」

まさかそいつがいたとか陳腐な事言うなよ。分かりやす過ぎるだろ。

「またそいつがいたんだよ。うわっ、マジかよと思いながらまた通り過ぎたんだよ」

麦茶吹いた。麦茶飲んでないけど。で、いつになったら怖い話になるんだよ森田。

「疲れてるんだろうなぁ、俺と思いつつゾーッとしてさっきに増して車飛ばしたんだよ。
 でも何度通り過ぎてもいるんだよ、そいつ。まるで俺達を待ち構えてるみたいに」

ん? 何となく空気が冷たくなってきた。茹だる様な暑さだったのに、急に空気がヒヤヒヤとしてくる。
奇妙な肌寒さに俺の全身の毛が僅かに逆立っている。一体何なんだ、この冷たさは。ふと、視線が貞子ヘアへと向く。
……奴を見た途端、俺の毛が一気に逆立った。奴は、笑っている。髪の毛の中から見える、紅い唇がニタリと笑っている。

「俺は気でもおかしくなったのかと思ったよ。隣とか後ろに座ってる田辺達も顔が青ざめててさ」

気が付けば、俺は森田の話にじっと耳を傾けている。身動きが取れないというか、身体が勝手に固まって、森田の話を聞こうとしているみたいだ。
頭の片隅でほんのりと、目の前の鬼太郎ヘアの正体が何なのかが分かって来た気がする。つまり奴の正体は……。

「もうそこからは覚えてないんだ。とにかく夢中になって全速力で家に帰ったよ。んであいつの事を忘れようとした」


0231創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/28(火) 00:09:42.14ID:jSHGyCmA
そうして森田は数秒ほど俯いて黙する。森田が今、どんな事を考えているのかは分からない。
分からないし、俺の中でこれ以上知ってはいけないとシグナルを出しているもう一人の自分がいる。
しかし、しかしだ。ここまで来て話の真相を聞かない訳にはいかない。もしここでストップを掛けたら、一生後悔する気がする。
だから俺は聞く。最後まで森田の話を、聞く。

「だけど忘れよう忘れようとしても頭ん中にこびり付いて離れないんだ。いつもいつも、そいつが近くにいる気がしてな。
 俺がこんな事になってるから田辺達はどうなのかと思って連絡入れたら、やっぱり俺と同じく、あいつらも奴の事が忘れられないらしくてな」

そりゃあそうだよな……何たって、肝試しに参加して無い俺でさえ、こんなにはっきりそいつの姿が見えるんだぜ。
お前らがどれだけ怖い思いしてるかひしひし分かるよ。あまりにもはっきり見え過ぎて幽霊に見えない位ハッキリ見えてるし。
もしかしたら、いや、やっぱりお前ら……憑かれてるよな。つうか俺も巻き添え食らってる気がするけど。

「でだ、ここからが本題なんだが……」

身構える。何となく、森田が俺にどんな事を聞いてくるかが予想できる。出来てしまう。
本当の事を言えば逃げ出したい。逃げ出したいが、もし今逃げ出したら、俺はある種森田達を見捨てる事になってしまうのではないか。
そう思うと、どうしても逃げ出す気になれない。こいつらは正直馬鹿だと思う。肝試しなんて事するから、こんな目に遭っちゃうんだろうがと。
だけど曲りなりにも、俺はこいつらの友達だ。もしこのニタニタ笑っている貞子ヘアが悪霊だとしても、どうにかこいつらを救いだす方法を探さなきゃいけない。

「今日、何でお前をこの怪談大会に誘ったか分かるか?」

いきなり何を言い出すんだ? 俺は首を軽く傾けつつ、答える。

「そりゃあお前、今日暑いからだろ?」
「それもあるがその、何だ……お前を誘った本当の理由を話すとな……」

そうして、森田は俺の顔をじっと見据える。見据えて、一字一句しっかりとした言葉でこう、聞いてきた。

「お前にも見えてるかってのを確認させたくてな……俺達が連れて来ちゃった何かを」

やっぱりそうか……。俺はある種安心する。ある程度覚悟していたから、ショックを受ける事は無かった。
真面目な事を言うと、何で俺を巻き込むんだという怒りの気持ちもある。こんなにハッキリと見えてる幽霊、どう考えてもヤバいに決まってるだろと。
でも何だろう、こう、不謹慎だけどワクワクしてる自分もいる。何たって目に見えてる悪霊と戦う事になるんだぜ? 普通の体験じゃないよな。

「あぁ……見えてる」
「やっぱりな……。俺や田辺達に見えてるから、お前にも見えちゃうほどヤバい奴なんだよ」
「そうだな……」

俺は再び覚悟を決める。きっと森田は指を指すなり顔を向けるなりするだろう。この貞子ヘアに。


そして森田は、人差し指を立てるとそのヤバい幽霊を指差した。
0232創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/28(火) 00:10:49.99ID:jSHGyCmA
「そこの窓から見てる真っ黒い人影がいるだろ? そいつが俺達についてきちまった奴でな……」




えっ!? じゃあこの貞子ヘアは何なの!?







0233創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/28(火) 00:11:55.70ID:jSHGyCmA
色々と失礼しました
後途中鬼太郎ヘアとなってるのを貞子ヘアに脳内変換して頂けると助かります
0234創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/29(水) 23:40:17.91ID:jVaGnksa
質問を振り切って怪談話が始まるあたりが強引。
ここは怪談話が始まってから、見慣れない人がひとり居ることに気付いたほうがスムーズ。

また「きっと○○だろう」と書いてしまうと、「○○じゃない可能性」に気付かれてしまうので、
「俺」に余計な思考をさせずに、さらっと流したほうがオチを守れる。
最後の一行はないほうがいい。
0235創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/08/30(木) 09:48:39.47ID:1P3xmdJt
ttp://toro.2ch.net/test/read.cgi/occult/1344389978/

おい、オカ板のほんのりスレに物凄い創作話が
投下されたんだが?
507に登場、明らかに精神病持ちだと思わせる内容だ。

メンヘラボダ女の創作話 こえーよ。
0236サーバーの呪い(1)
垢版 |
2012/09/09(日) 23:12:37.79ID:wHy9NjkV
サーバーの呪い


 遺書

 私が死を決意した理由は、腕にできた人面瘡にある。私はこの件について、二人の霊能
者に相談した。一人目の霊媒師は、腕を切り落とすしかないと言った。恥ずべきことなの
で人面瘡ができた理由は書けないが、二人目の霊能師はその根源はWebサーバーにあり、
取り除くことは不可能だと言った。
 私には腕を切断してその後の人生を送る勇気がない。よって自ら命を絶つこととする。

                                    流川慶介

 私の右腕にはほくろがある。手の甲の側、手首と肘の中間くらいの場所だ。それがここ
最近、急激に大きくなってきたのだ。直径は2センチ近くになる。しかしもっと恐ろしい
のは、徐々に浮かび上がってきた模様である。人の顔に見えるのだ。もっとも、目を見開
いたり、口を動かしてしゃべるというものではない。一昔前に火星の人面石が話題になっ
たが、あれを彷彿とさせる。
 ネットで検索すると、左右非対称でいびつであり、境界のはっきりしないものは癌であ
るという。私は真っ青になった。まさに私のそれと一致する。恐ろしくてそれ以上調べら
れない。しかし、悪性腫瘍であれば痛みを感じるとも書いてある。私は感じない。
 癌なのか、違うのか。私は悩んだ。ほくろであれば、医者に診察してもらう必要はない。
しかし早期に診てもらった方がいいのも事実だ。
 私は小心者であり、病院に行くことができなかった。あちこちに極太の針を突き刺して
検査をし、何度もメスで切り刻み、転移しているとなれば、体中管だらけとなって死に至
る。それが私の癌に対するイメージである。ならば、いっそのこと放っておいてもらいた
い。
 さらに恐ろしいのは、それが人面の形をしているということだ。これは医者に見せる類
のものではないのではないか。私は「祈祷」や「除霊」をキーワードにして検索した。
 参考料金
 73,500円〜105,000円(交通費別途)
 ……高いな。私はいろいろなサイトを見た。
 霊視鑑定 10,000円
 除霊・浄霊 30,000円より
 これがよさそうだ。だが私は迷った。祈祷なんて、馬鹿馬鹿しい。しかし、この顔をな
んと説明するのか。やはりただごとではない。決意するのに数日かかった。

「人面瘡です」
 霊媒師の老婆――佐山さんは言った。
 私は一人暮らしだ。製薬会社に勤めており休日は少ないが、ある日曜日、申し込んでお
いた霊媒師が家にやってきたのだ。
「あの、癌なのでしょうか」
 佐山さんは少し首を傾げた。
「そういうものとは違うと思います。人面瘡は、医学的な病気ではありません」
「すると病院に行っても治らないのでしょうか」
 途端に佐山さんは怒ったような顔になった。
「医者に診せてどうなるというのです。皮膚に見えているのはほんの表層に過ぎません。
けがれは奥深くにまで浸透しています。病院に行って治すのであれば、腕を切り落とすし
かありませんよ?」
「そ、そんな。私はどうすれば……」
「なにか呪われるような心当たりがありますか?」
「いえ、特には……」
 私は小心者で、おとなしくしている。私のような人間が人に恨みを買うはずがないじゃ
ないか。
「そんなはずはありません。これは非常に悪い霊です。このままでは近いうちに大変な不
幸に見舞われますよ。大病を患ったり、大事故にあったり」
 するとどっちみち癌のような恐ろしい病気になるということか。
 一つだけ、心当たりがある。だがとてもじゃないが人には言えない。
「今表情に表れましたね。私には隠さないでください。打ち明けていただけなければ、流
川さんを助けることはできません」
0237サーバーの呪い(2)
垢版 |
2012/09/09(日) 23:14:28.63ID:wHy9NjkV
「実は、その、とても言いにくいことなのですが」私の顔はそれこそくしゃくしゃになっ
ていただろう。「私にはリョナという性癖があるのです」
「それは何ですか?」
 猟奇的オナニーの略だが、そんな直接的表現では言えなかった。
「女性が痛めつけられる様を見て性的に興奮するのです」
「SMですか?」
「いえ、少女が腹パンチされたり、女戦士が怪物にプロレス技をかけられるのです」
「それです!」佐山さんはさらに怖い顔になった。「そんな不浄な性欲を、神仏がお許し
になるはずがありません」
「あの、私はどうすれば……」
「それはどのようにして見るのですか?」
「パソコンです。画像や、動画です」
「では、これから私がお祓いをします。それが済んだら、即刻パソコンから消してしまい
なさい」
 佐山さんは香炉の線香に火をつけた。
「アビラウンケン ソワカ」
 除霊が始まった。
「リン ビョウ トウ シャ カイ ヂン レツ ザイ ゼン」
 佐山さんは呪文を唱えながら、指を素早く動かし続けた。その行為はしばらく続いた。
「オンケンバヤ ケンバヤソワカ」佐山さんの表情がふいに柔らかくなった。「これにて
除霊を終わります。一ヶ月後にまたご連絡ください。おそらく良くなっていると思います」
 その後、私はリョナ画像や動画を全部削除した。もう二度と手に入らないものも多いだ
ろうなあ、と思いながら。

 一ヶ月後、やってきた佐山さんに私は文句を言った。少しも良くなっていなかったのだ。
すると、彼女は自分には解決できないと詫びた。なんと、パソコンに詳しい霊能者がいる
と言うのだ。佐山さんの紹介で、私は峰岸さんという霊能師を訪ねた。
「ファイルを削除したつもりでも、残っているのですよ」
 恵比須顔の男は、にこやかに言った。歳は50代だろうか。
「ハードディスクのファイルシステムから情報を消しているだけで、実データが記録され
ているクラスタはそのままの状態なのです」
「ずいぶんとお詳しいのですね」
「最近、そういうお悩みの方が多くてねえ。勉強しました」
「ではどうすれば……」
「残念ながら、あなたのパソコンはけがれに満ちています。廃棄処分するしかありません」
 え? 20万もしたのに。
「それは、メーカーに引き取ってもらえばいいのでしょうか」
「取扱い説明書に方法が載っていると思いますよ。乱数でハードディスクの内容を上書き
してしまうのです。それと、メーカーに引き取ってもらうのや、ハードオフに売るのはも
ってのほかです。部品が再利用されてしまいます。つまり、呪いが人に移ってしまうとい
うことですね」
 峰岸さんによる除霊を受けた後、私はさっそく家に帰り、彼に言われた通りにした。説
明書を読み、ハードディスクのデータを乱数で満たす。真っ青な画面に白い英語でなにや
ら書いてある。10%、20%、……。
 ああ、これからパソコンなしの生活が始まるのか。
 バーが100%になるのに、2時間ほどかかった。だが峰岸さんの指示はもっと完ぺき
を期すものだった。
 私は風呂に水を張り、ノートPCから電源ケーブルやプリンタケーブル等をすべて抜き、
水没させた。これで私のノートは完全に使い物にならなくなった。
 2時間ほど漬けた後、ボストンバッグに入れ、車をとばして山の奥深くに入っていった。
 ここなら誰にも知られることはないだろう。私はパソコンを雑木林の中に放り込んだ。

 さらに一ヶ月待った。私は再び峰岸さんの家を訪れた。精神的には憔悴しきっていた。
「パソコンは廃棄しました。周辺機器も燃えないゴミに出しました。ですが、人面瘡は消
えません。何か、他の原因があるのではないですか? 例えば、知らないうちに心霊スポ
ットを通り、憑かれてしまったとか」
「そういうふうには感じませんねえ。原因はリョナで間違いないと思います。あなた、他
の場所にアップしたのではないですか?」
 それだけは言いたくなかった。だが、大きな病気や大事故でもがき苦しみながら死ぬの
は嫌だ。背に腹はかえられない。
0238サーバーの呪い(3)
垢版 |
2012/09/09(日) 23:16:37.82ID:wHy9NjkV
「リョナ小説を書いて、自分のサイトに載せました」
 それ専用に作ったサイトだ。他の、まともなコンテンツは、真面目なサイトとして作っ
てある。そうやってジキルを演じていると、ハイドもやってみたくなるものだ。
「そのサイトを消しても無駄です。前にも教えましたが……」
「クラスタに残っているんですよね! ええ分かっていますよ!」
 私は飛んで帰り、パソコンショップに行き、10万のノートPCを買い、光回線を契約
した。
 ネットにアクセスできる日が待ち遠しかった。各種IDやパスワードはUSBメモリに
取ってある。もちろんリョナのコンテンツは入っていない。
 工事が済んで、急いでFFFTPを起動し、自分の作ったリョナサイトを消去した。無
駄だろうとは思いながら。それでも、けがれに満ちたものを消さずにはおられなかったの
だ。

「どうしたんですか。顔が真っ青ですよ」
 と峰岸さんは言った。
 私は袖をまくり、人面瘡を見せた。
「どうしたらいいんですか」 
 私は泣きそうになりながら言った。
「うーん、サーバーに残っているんじゃ、消しようがないですね。まさか、他のサイトに
もアップしたんじゃないでしょうね」
 私ははっとした。
「2ちゃんに書きました」
「それこそどうしようもない。ですが、あきらめてはいけません。もう一度除霊をしてあ
げましょうね」
 こうして私は峰岸さんによる最後の除霊を受けた。
 家に帰り、壁に背をつけてへたりこんだ。そうしているうちに、2ちゃんでよく「あぼ
ーん」という文字を見かけることに気が付いた。
 そうだ。あれはどうやってやるんだろう。さっそく検索してみる。「荒らし」投稿や個
人情報などの不適切な投稿を「ひろゆき@どうやら管理人」「削除人」「削除屋」の判断
で削除した痕跡なのだそうだ。どうやら「自分の書き込みを消してください」という目的
では使えないらしい。
 私は絶望した。もう、手は残っていないのか。
 その日以来、私は会社に行かなくなった。電話が鳴っても出なかった。壁によりかかっ
てずっとぼんやりとしていた。時々腕を見つめ、目の前が真っ暗になった。腹が減ったら
コンビニに行き、適当なものを買って帰るだけの日々が続いた。

 遺体安置所から白衣を着た爺さんが出てきた。首つり死体を見てきたところだ。自殺な
ので、検死は行われない。だが、遺書の内容が気になるので、特別に呼ばれた皮膚科医だ。
「で、どうでした?」
 と刑事は問うた。
「ああ、人面瘡ね」爺さんは不謹慎なことに笑った。「面白い模様だが、ただのほくろで
間違いないです」


<了>
0239創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/09/14(金) 19:43:10.39ID:oq5v2r36
とりあえず上げてみる
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