シャープなフロントマスクとロー&ワイドなプロポーションがS660の特徴。全体的なフォルムとしては、ミッドシップ・2シーター
でありながらフロントタイヤをできるだけ前方に配置したディメンションと、リアのキャノピー風リッドを備えたことでFRクーペの
ような印象を受けるが、ドアの下にビルトインされたエアインテークがミッドシップカーであることを主張している。
ボディパネルはすべて専用設計。ただし軽量化を目指したとはいえ、バンパー以外に樹脂パネルは使われていない。衝突安
全性能、歩行者保護などの要件を備えるべく、スチールパネルを採用した。フロントフードの見切り位置をドアのプレスライン
に合わせたり、前後フェンダーにアウトレット/インテークダクトを設置するなど、パネルの多くは複雑な造形をしているが技術
力の高さで商品化を果たした。
フロントマスクは最近のホンダテイストで、薄型のヘッドライトが特徴。スポーツカーらしい低いノーズを実現するために、ツリ目
や三角形ではなく、薄型を採用。水平基調のグリルデザインと相まって、シャープではあるものの、どちらかというと親しみやす
く優しい顔つきといえるかもしれない。
リアにまわり込んでみると、迫力のワイド感と踏ん張り感のあるテールビューが目に入る。規格寸法を最大限有効活用する軽自
動車の世界では、、リアバンパーは限りなくスクエアに近い形状に設計され、タイヤはコーナー部に追いやられるのが通例。しか
し、S660ではエンジンの後ろに荷室を設けなかったため、デザインの自由度が無限大に広がった。
横長のテールランプは相対的に中心に寄っているような視覚的効果を生み存在感を高めているほか、エクステリアデザイナーが
「撫でたくなるテール」と呼んだ微妙な傾斜角をもつバンパーコーナー部の造形により、軽自動車らしからぬスタイリッシュな仕上
がりになった。エキゾーストパイプがセンター出しというところもS660ならではのアイコンといえるだろう。

車高の低さはエアロダイナミクスの面でも有利だが、さらにS660はタルガトップを採用したことで、オープン時の空気抵抗の増大を
最小限に抑えることができるようになった。ルーフの面積が小さいため、オープン/クローズの空気抵抗の差が小さいのだ。
また、通常、オープンカーではキャビンの後方で走行風を巻き込み乱気流を発生させるなどして空気抵抗を増大させるが、エンジン
フードをキャノピーカウル形状にすることで、これを軽減している。タルガトップは本来は転倒時の乗員保護と軽量化のために採用
された構造であったが、空気抵抗の低減にもひと役買っているというわけだ。
ミッドシップのスポーツカーということで、ボディ各部にダクトが設けられているのもS660の特徴だ。スポーツイメージを高めるという
意味合いはもちろんあるが、目に見えるダクト類はほとんど機能している。重量配分を適正化するべくラジエターをフロントに配置
しているため、フロントグリルはもちろんラジエター冷却用に使われており、フロントフェンダー後方のアウトレットも機能している。
 リアフェンダー前のインテークダクトはエンジンルームおよびインタークーラーを冷やすためのもので、さらにエンジンルームの熱気
を抜くためにエンジンフードにもアウトレットダクトを設けている。
さすがに、「本格派ではなく本気のスポーツカー」と開発スタッフが自負するだけのことはある。