賭博者は単純に面白い小説だがギャンブラーが読んで注意を引くのは
おそらくは、彼自身が目撃したであろう、ある風景である

その描写はドストエフスキーの想像とは思えない
なぜなら彼が描いたそういう人は、今日のカジノのどこにでも1人はいるからである

その若い女性のカジノ客はホテルに長く住み着いており
毎日午後決まった時間にルーレットをやりに部屋からおりてくる

彼女はいつも小人を従えていた
彼女は1時間か2時間ルーレット台のテーブルに座り
いつもかなり大き目のお金を賭けて勝ち
時間が来ると儲けがいくらかには関わらず、さっと部屋に戻っていくのであった

彼女の勝ち方をドストエフスキーは、ある程度理解していたと思われる
だが、借金まみれのドストは、カジノで大金を稼ぐしかなかった
だからおそらく無理をしたのだと思う

無理をしなかったら
あるいは、元手がもう少しあったら、あるいは時間がもう少しあったら
ドストはルーレットに勝てていたかもしれない

でも博打に勝てなかったから
ドストエフスキーは世界ナンバーワンの文豪として
世界の文学史に名を残したのだろう

「賭博者」はギャンブラーなら一度は読んで損はない作品だ