チャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」はそれまで黒人の音楽だったR&Bを白人にも受けるように考えられた音楽です。エルヴィス・プレスリーが白人からの黒人音楽へのアプローチだとすると、その反対のことをしたのがチャック・ベリーです。シャッフルなハネたリズムを縦ノリの8ビートにして、不倫や間男の歌じゃなく、白人のティーンエイジャーが興味あるもの、車、女性、学校、成功物語を歌えば、“俺はマディ・ウォータースより大成功して、白人のアーティストがやるような劇場でコンサートがやれるんじゃないか”と思ったのです。







ピストルズのストゥージズのカヴァー「ノー・ファン」はオリジナルよりもっと機械的です。ストゥージズのヴォーカルのイギー・ポップは元々ドラマーで、生まれ育ったデトロイトを捨て、黒人音楽本場のシカゴで人肌あげようと頑張ったのですが、「俺はいつまでたっても黒人のように叩けない、奴らのレベルには到達出来ない、俺は俺のビートを産まないとならないのだ」と、川にドラム・スティックを投げ捨て、地元デトロイトに戻ってストゥージズを結成するのです。そうやって生まれたプロト・パンクのストゥージズの「ノー・ファン」よりピストルズの「ノー・ファン」はもっと機械的なハンマー・ビートです。