本拠地、日本GPで迎えたF1レース
自身はホンダエンジンが3周目で故障しリタイア、バンドーンも勢いを見せず17位だった
サーキットに響くファンのため息、どこからか聞こえる「今年限りでホンダは撤退だな」の声
無言で帰り始めるスタッフ達の中、05年、06年のチャンピオン・アロンソは独りピットで泣いていた
ルノーで手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるエンジン・・・
それを今のマクラーレン・ホンダで得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」アロンソは悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、アロンソははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいピットガレージの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってトレーニングをしなくちゃな」アロンソは苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、アロンソはふと気付いた

「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
ピットから飛び出したアロンソが目にしたのは、サーキット全体まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのようにV6ターボの音が響いていた
どういうことか分からずに呆然とするアロンソの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「フェルナンド、いよいよスタートだ、早く行くぞ」声の方に振り返ったアロンソは目を疑った
「そ・・・宗一郎さん?」  「なんだ眉毛、居眠りでもしてたのか?」
「プ、プロスト代表・・・?」  「なんだフェルナンド、かってにアランを引退させやがって」
「ロンさん・・・」  アロンソは半分パニックになりながらスターティンググリッドを見上げた
PP:アロンソ 2位:プロスト 3位:ベルガー 4位:カペリ 5位:ピケ 6位:内川 7番:ワーウィック 8位:マンセル 9位:アルボレート 10位:ブーツェン
暫時、唖然としていたアロンソだったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
桜井からステアリングを受け取り、マシンへ全力疾走するアロンソ、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、コース脇で日光浴をしているアロンソが発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った