>>561
レース中はエネルギー収支をバランスさせるのが基本である。
つまり、使った分は回生する。
ところが、MGU-Kの出力が小さいため、真っ当に制御したのでは使った分を回収できない。
レギュレーションでは1周あたり2MJ回生できることになっているが、とても回生できないのが実状。
十分に回収できないと、次の周に使えるエネルギーが少なくなってしまい、戦闘力が著しく落ちてしまう。

WECのLMP1-Hのように、300〜400kWクラスのMGUを搭載することができれば、
減速時の回生だけで十分なエネルギーを回生できただろう。
ところが、そうはなっていない。

では、どうしているかというと、パーシャルスロットル時に
エンジンの出力を利用してMGU-Kで回生を行い、足りない分を補っているのだ。
部分的ではあるが、エンジンを発電機代わりに使っているようなものである。
全開運転時にこれをやると、クルマを前に押し出すはずの出力が
発電に使われてしまうので、パフォーマンスに悪影響をおよぼしてしまう。
だから、そうならないようにパーシャルスロットル時にMGU-Kの回生を行うのだ。

ドライバーが要求するトルクを発生させながら、余分に出力を発生させ、その余剰分で発電を行っているのである。
パーシャルスロットル領域でMGU-K回生を行うことで燃費は悪くなるが、
それよりも、電気エネルギーとして蓄えておいた方が、
パフォーマンスに向上に効くということだ。
予選は基本的に1周でアタックを終えるので、
エネルギー収支に気を遣う必要はなく、
パーシャル領域のエネルギー回生は行わない。
排気が持つ熱エネルギーを電気エネルギーに変換するMGU-HもF1ならではの使い方をする。
メインの使い方は回生で、エンジンが全開の領域は、
排気エネルギーの余剰分を利用してMGU-Hも全開で回生する。
MGU-Kと違って出力に制限はなく、
パッケージング上やエネルギーマネージメント上の制約から、
最大120kWに定められたMGU-Kの半分強の出力で設計しているようだ。
https://www.zf.com/japan/ja_jp/corporate/motorsports_1/tech_seminar/techseminar_vol6/techseminar_vol6.html