なぜエヴァは楽しまれなくなってしまったのかpart27
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
・ここは、なぜエヴァは楽しまれなくなってしまったのか?
または、なぜエヴァは楽しまれてるのか?について、その理由を述べたり、議論したり、追究したり、語ったりするスレです。
思ったこと、思うことを書いてみましょう!
・雑談は基本OKだけど程々に。
・節度ある態度で楽しく!
・ここはアンチスレではないので、エヴァや他のアニメを叩きたい人は各アンチスレへ行きましょう。
前スレ&テンプレは>>2-18 男「名前。本当の名前など知っても意味がない。私にも、彼らにも、名前がない。
教えてもらいたい。
岩倉玲音。君はワイヤードのれいんと同一人物なのか?」
玲音「…」
男「君は誰だ?」
玲音「私は…私は…」
男「君の両親は本当の両親か?」
玲音「え?」
男「君の姉は本当の姉か?」
玲音「な、何、言ってるの?当たり、前…」
男「父親の誕生日はいつだ?」
玲音「お、お父さんは…」
男「じゃあ、母親の誕生日は?両親はいつ結婚した?恋愛か?見合いか?」
玲音「そ、それ、だから、それは…えっと…」
男「なぜ知らない?聞いたこともないのか?誕生日は家族で祝ったことがないのか?
小さいころからか?どうなんだ?
君はいつ、どこで生まれた?」
玲音「う…そんな、いいじゃない…そんな…」
男「分からないのか、すべて」 男「大丈夫かな。君は本当にまったく全てを」
れいん「ああ…うるさい奴。どうだっていいことばかり並べて、くだらない」
男「ほう!」
金髪の外国人「!」
アジア系の外国人「…っ」
男「ワイヤードのれいんなのか?」
れいん「だったら?」
男「デバイスがなくとも、ワイヤードとリアルワールドの境目がぐずぐずと崩れつつ事がある事を、君も知っているね」
れいん「だから?」
男「我々はそれを危険だと考えている」
れいん「面白いじゃん。ふん」
男「ふん」
れいん「どいて。何よ」
金髪の外国人「危険なのは、君自身だ」
男「カール!」
れいん「ふん」
男「ふん、彼女の言うとおりだ。面白いことが始まるのだよ。黙って見ていればいい」 主婦「ショウちゃん」
ショウ「なに、ママ?」
主婦「一緒にやろう!」
ショウ「お仕事終わったの?」
主婦「勿論!ママは優秀だもん!
さ、ショウちゃんをやっつけちゃうぞ!ほら、覚悟し!ほら! 」 車が走る道路下にねずみがNAVIのゴーグルをつけたまま息絶えている。 あなたも傷つきたいの?
心をゆすりにかけられるような思いがしたい?
だったら、絶対に目を背けないで タロウ「ええ?いるかどうかなんか誰にも分らないさ。ワイヤードに神様なんていようがいまいが、ユーザーには関係のないことだもの」
ん?ちょっと待って、れいん。あいつをやっちまってからだ」
れいん「何が面白いのさ。他のプレイヤーの殺してばっかり」
タロウ「何がどうして面白いかなんて誰にもわかりゃしないさ」
れいん「ふん」 『橘総研もの巨大企業が、非合法活動などするはずがない。しかし噂は聞いておるが』
れいん「噂?」
『ワイヤードで俺たちがこうやって情報をやり取り出来るのは、どうしてか知ってるか』
れいん「ふん、私をテストしてるって訳?IPのことを言ってるんだったら」
『はっはっは、すまん。そうだ。我々にとってプロトコルは、その存在を普段気にすることは無い。
しかし、今のプロトコル、6世代目のデータのスループットを筆頭に頭打ちになってきている』
れいん「第7の、プロトコル」
『そう、第7のプロトコル。それをインフラ化しようとしているのは企業だ。
プロトコルを支配することは、ワイヤードを実質的に経済面で支配できる、ということだからな。
それに対する妨害は必要らしい。で、その始末をしているのが』
れいん「橘総研」
『ふっふっふっふっふ』 玲音「あ…お姉ちゃん?」
美香「ぁ…ぅ…ぁぅ…」
玲音「…」
美香「ぁ…でぅ…」
玲音「…!」 一階に降りると、玲音の両親が虚ろに下を見ながらダイニングチェアに座っている。
玲音「あ…」
麦茶を注いで話しかける。
玲音「ママ、パパ、わ、私…この間、ね、ある人に聞かれたの。
お前は岩倉玲音か?お前の両親は本当の両親か?って。
おかしいでしょ?おかしい…よね?おかしなこと言うよね?ね?」
麦茶を飲み、そのコップを洗い物する。
もう一度両親の方へ視線を向ける。
すると、両親が睨みつけるように玲音を見ていた。 玲音「あ、ありす。おはよう」
ありす「…」
玲音「ど、どうしたの?」
麗華・樹莉「…」
ありす「私は、信じてないんだけど」
玲音「え。な、なに?」
ありす「玲音、違うよね?」
玲音「な、なに、が…?」
麗華「しらばっくれてんじゃないの!」
ありす「麗華、決めつけちゃ駄目」
樹莉「じゃあ、玲音。マジで違うの?」
玲音「あの、だから…何が?」
ありす「玲音、あなたワイヤードで…あ」
玲音「…」
ありす「うん、いいや。絶対玲音じゃないって」
玲音「…」
ありす「私、信じてる。ね?」
樹莉「ありす」
ありす「?」
樹莉が顎で視線を向けるように促す。
そこに校門から赤い車が入って来る。
その車内にいる一人の男性に、ありすは恍惚の表情を浮かべるのだった。
ありすは急いで校舎へと向かう。
おちょくるように麗華と樹莉も後をついていくのだった。
玲音「…」 顔のない声1『これは危ないみたいだぞ。出来れば避けて』
顔のない声2『だって信じられる?あんなに素敵なのにそんな趣味だなんて』
顔のない声3『プロトコル6には極めて重要なバグがあります。
この存在は、ワイヤードにとって甚大で』
顔のない声4『その子の部屋にはある赤と緑のしましまのセーターを着た子供みたいなやつが現われて』
顔のない声5『あのアイドルが高校生時代彼氏の車に乗ってて、人をひき逃げしてるって』
顔のない声6『それ本当なんでしょうね』
顔のない声7『私直接聞いたんだから』
顔のない声8『あのビルの屋上に立ってると』
顔のない声9『ナイツなんて本当はいない。あれはアメリカの学生のジョークみたいな…』
れいん「うるさい!何が面白いのよ!」
声『面白くないのかい?君は』
れいん「え、誰」
声『君は僕を探しているんだろ』
れいん「神様のご登場?」
声『神の定義は何かな。世界を創造し、いやあ違う。世界を司る万能の支配者。それは対極に過ぎない』
れいん「どこにいるのよ」
声『神の定義はその世界に普遍として存在するものとするなら、そうだ。僕はそう呼ばれても構わない。
僕はちょっとだけ世界の動きに干渉しているだけ』
れいん「誰なのよ!」
声『僕は君さ。君も気付いているだろう?もうひとりの君がこのワイヤードで以前からずっと存在している』
れいん「…」
声『君はそのホログラムに過ぎない。君はただの肉体』
れいん「そんなの信じろって方が…無理だよ。そんなの」
声『ふふふふ。しかし、リアルワールドの君と今の君、同じ人格だとは、君自身思えないだろ』
れいん「でも。私は、私」 気がつくと、教室のクラスメイトと先生が玲音をじっと見ている。
そこにメッセージが。
『玲音はのぞき屋』
誰が送ったか分からない。 急いで廊下に出る。
隣のクラス。
ロッカールーム。
調理場。
白い体操服。
みんなただ玲音を見つめるのだった。
玲音「ありす。ありす。どこ?どこにいるの?ありす」
ありすからのメッセージ
『うわさなんて気にしない!気にしない!』
玲音「ありす。ありすどこ…。ありす」
玲音「ありすどこ…。ありす」
れいん「……」 玲音「…私が何をしたの?ワイヤードで何を、私の知らない私が何をしてるの?…」
『うわさなんて気にしない!気にしない!』
そして、体育館が爆発し、火事になる。
Searching... ありす「あっ…あっ…あっ…ああ……」
赤い車に乗っていた男「先生とこんなことしていていいのかな?」
ありす「…よく、ない…」
赤い車に乗っていた男「よくないのに、どうしてするの?」
ありす「したいから…。!」
れいん「ふふふ、ははは」
ありすの頬に汗がつたい、股間につけていた指を急いで戻す。
れいん「ねえ、知ってる?瑞城ありすが誰を好きかって。
誰のことを想っていやらしいことをしてるかって。ふふ」
ありす「やっぱり、あんたが言いふらしてたの!?噂は本当だったの!?」
れいん「ふふふふ、ははは」
ありす「玲音!私のことそうやってじっと見てたの!?私が秘密にしてることとか、
私が絶対に見られたくない時とか!私が」
れいん「はははは、はははは」
ありす「嘘だよね!?玲音!玲音!あんたって…」 涙が頬を伝い、眠れない玲音。
電線。
ビルの屋上。
サイベリアのミラーボール。
点滅する青信号。
ケーブル。
体が浮く。
周りがストンと消える。 れいん「ふはははは。はははははは」
玲音「誰よあんた。あんたは私じゃない。私はあんたみたいなことはしない」
れいん「私」
玲音「やめてよ。私が自分で嫌いな私を、どうして真似するの?」
れいん「ふはは。はははは」
玲音「あんたは」
れいん「私、自殺しちゃうんだ。ははははは。ははははは」
玲音「どうして、どうして温かいの!どうして、どうしてあんたの体温を感じなきゃいけないの?」
れいん「だって、私は玲音じゃない?」
玲音「違う!違うよ!」
れいん「はははははは。はははははは」 玲音「何よ、これは」
声『みんな君さ。君はワイヤードにずっと存在していた』
玲音「え」
声『君は僕と同じさ。ワイヤードに存在している。
だから、どんなとこでも誰のとこでも、常に君は側にいた。
他人が人に見られたくないことを見つめていた。
それを君は人に伝えただけ。それは正しい事さ。
だって、ワイヤードの情報はシェアされるべきだからね』
玲音「あんたが、言ってること…全部、嘘だよ」
声『どうして』
玲音「ありす達は見ていたの!私がいないときワイヤードで私を見たって言っていたもの。
私が私自身を認識している限り、私の自我は私の中にある!
こんな不出来なデュープを私自身だと思えって?ふざけんじゃないわよ!
私が、私がもしあんたの言う通りだとしたら!」
声『だとしたら何だい?玲音』
玲音「みんながれいんに見られたという記憶。情報の消去だって出来るはず」
声『そうだね。やってみたらいい。君はそれだけの力を持って生まれた』
玲音「…」
Deleting... ありす「玲音!」
玲音「あ」
樹莉「玲音ってば!」
ありす・麗華・樹莉「はははははは」
玲音「(忘れてくれたの?)」
ありす「はははは、あはははは」
玲音「(ほんとに?)」
ありす・麗華・樹莉「玲音!」
玲音「(ほんとなんだね)ありす!な、な、何?」
その時、もうひとりの玲音が現われる。 もうひとりの玲音「ありすー」
ありす「ははははは」
もうひとりの玲音「ねえねえ、今日サイベリアに行きたいな。ねえ、行こう」
樹莉「賛成」
麗華「へえ、めずらしいじゃん」
ありす「いいよ。じゃあまた私ん家で着替えて行こう」
玲音「わーい」
ありす・麗華・樹莉「ははははは、あはははは」
もうひとりの玲音「ねえねえ、何着てこうかな」
玲音「やめて!私は私だよ!」
もうひとりの玲音・ありす・麗華・樹莉「ははははは、あはははは」
玲音「私はここだよ!」
樹莉「ほら、早くー」
麗華「待ってよ、もう」
もうひとりの玲音「そうだよ。玲音は玲音。私は私」
玲音「!」
もうひとりの玲音「ふふ」
玲音「あ」
そして、もうひとりの玲音が消えてしまう。
校舎から誰もいなくなる。
玲音自身も消えてしまう。 玲音「ハロー、NAVI」
『ハロー、lain』
玲音「私は私だよね?私以外の私なんて、いないよね」 何の罪も無いはずなのに
何らかの罰を受けてる
自分で蒔いた種でもないのに 咲き乱れた花摘まされる
知らないことともいえないが
片棒かついだ覚えは無い
自由を高く買わされた気もするが
心まで安く売った覚えは無い
Hey Hey くたばって おさらばするまで
Hey Hey 誰の手にもかからない
遠い夜をうろついてる知らないだろう永遠のならず者達を… もし、苦しみから逃れたいんだったら神様を信じることね
あなたが信じようと信じまいと、神様はすぐあなたの傍にいるのよ 『1947年7月4日、アメリカニューメキシコ州の砂漠に、奇妙な航空機が墜落した。
それがなんであったかは、いまだに証明されることのまま憶測が事実となり、噂が、歴史となっていった』 クマの着ぐるみを着てうつろな玲音。
不意に足音が聞こえる。
玲音「誰?」
そこにエイリアンのようなものを見た。
茫然とし、うずくまる。 『1984年、TVプロデューサーであったジェイム・シャンデラの自宅に、
匿名の人物から茶封筒に入った未現像のフィルムが届けられた。
そこに映されていたのが、いわゆるMJ-12文書と呼ばれるものである、
ロズウェル事件当時のCIA長官、ロスコー・ヒレンケッターを筆頭とする12人のメンバーが、
大統領直属の機関として、地球外生命体と密約を結んでいたというのが、その内容であった。
この文書に書かれたトルーマン大統領の署名は、他の文書からそっくりコピーされたものと認められている。
MJ-12のメンバーの一人として名指しされていたのが、MIT工学部部長であった、ヴァネヴァー・ブッシュである』 れいん「あったことを、無かったことにしてしまうなんて、どうやったらできるのよ」
耳「君の任務か」
目「そうかそうか」
れいん「私はあんたのことなんて知らない。なのにあんたは、私を知っている」
目「情報というのは常に双方向に流れるとは限らない。
君はこのワイヤードが生まれた時から、ずっとここにいる。ここでは君は自由な存在だ」
れいん「だから、それは私なんかじゃないんだって!」
耳「そうだな。では、我々はいつからここにいる」
れいん「…」
耳「確かにこの世界ができた最初の時からでは少なくともあるまい」
目「そんなことは関係ない!存在自体が記憶されていれば、それは既に記録なのだから」
手「それって乱暴じゃないかな。このれいんという子が一体いくつに見えるのよ。まだ子供じゃない」
れいん「私のことより今は!あ…くっ…」 『ヴァネヴァー・ブッシュが、1945年に発表したMEMEX、記憶の拡大構想は、
半透明スクリーンに、マイクロフィルム化された情報を映し出すシステムだった。
彼が構想したのは、情報の圧縮と、迅速なアクセス。
コンピュータが登場する以前に、ブッシュは原爆実験、マンハッタンプロジェクトの指揮をすると同時に、
現在のマルチメディアの基礎を生み出していたのだった』 《クラブ サイベリア》
J.J.「あ?(ピュゥ♪)」
玲音「…?」
J.J.「忘れもんだよ」
玲音「え」
J.J.「ほら、昨日あそこのフロアに忘れてったろ。いらねえんだったら捨てるけど」
玲音「私が忘れていったものなの?」
J.J.「そうだって言ってるじゃん」
茶封筒を渡される玲音。
中には基盤と、ナイツの刻印が刻まれていた。 『インディオの麻薬物質と、アイソレーションタンクによる感覚遮断実験によって人間の無意識を探ろうとした、、
ジョン・C・リリーは自らの実験中、宇宙的存在者とコミュニケーションネットワークを介して接続していると考えた。
彼を導く存在をリリーはECCO、地球暗号制御局と呼んだ。
後にリリーは、イルカとのコミュニケーションに転身する。
イルカは超音波により水中のかなり広範囲なネットワーキングを可能としている生物である』 マサユキ「ん?」
タロウ「何だよ。あ」
玲音「前に、約束したよね」
タロウ「はあ?何を?」
玲音「デートするって」
タロウ・ミューミュー「え?」
ミューミュー「な、何言ってんのよ。タロウ、ほんと?」
タロウ「したっけ?約束」
ミューミュー「ねえ、してないしてない」
タロウ「言ったとしても俺がデートしたかったのは、今のあんたじゃないんだよ。レイン」
ミューミュー「バカ、タロウ」
玲音「一緒なの。私は私。ひとりしかいない」
タロウ「…う」
タロウ・マサユキ・ミューミュー「え」
玲音「…」 《玲音の自宅》
タロウ「すっげー。よくこんなものつくったよな。
あんましスマートじゃないけどこのやり方なら、まだまだ拡張出来るもんな。何で冷却させてるの?」
玲音「タロウ君」
タロウ「これ、液体炭素?」
玲音「そこに座って」
タロウ「あ?ちっ」
玲音「これが、何だか知ってるでしょ」
タロウ「あ」
玲音「タロウ君だよね?」
レイン「ナイツなんだよね?」
タロウ「え。本当の、レインだ…」
レイン「ワイヤードの中に、私がもうひとりいるかどうか、それは私にはわからない。
でも、このリアルワールドに私がもう一人いるなんてことは、絶対に無い。
肉体を持つもう一人が姿を見せたのは、あのクラブだけ。
あそこにいた人の記憶だけを操作すればいいんだよね」
タロウ「俺、そんなこと…うわっ」
レイン「プレイ。トラック44」
タロウ「うわ…あ…」 一階で抱き合う康男と美穂。
康男「もうそろそろ、終わりですね。とうとう…」
美穂「だから、今のうち」
口づけを交わす康男と美穂。
美香「ぁ…で…ぁ…れ…い、ん…。
ぴーぴーぴー、了解。ぴーぴーぴー、ただいま交信中。ぴーぴー、がー。
ぴーぴー、がー。ぴーぴー…」 タロウ「ああ…う、ああ…」
レイン「ストップ」
タロウ「俺じゃないよ。でもJ.J.んとこに流されてくるデータに、そういうエフェクトがあるってのは知ってた」
レイン「このチップをインストールしたら私はどうなるところだったの?自殺?それとも正気を失うの?」
タロウ「知らないってば。俺みたいなガキが正規のナイツになれるわけないじゃん。俺はただの」
レイン「どうなっちゃうのかな」
タロウ「こ、これは不揮発性メモリーだよ。既にある記憶を上書きする」
レイン「どんな記憶?」
タロウ「し、知らない。はぁ…。ナイツはただのクラッカーじゃないんだぜ、レイン」
レインが玲音に戻っている。
タロウ「あ。はぁ…。あんたおかしいんだ、きっと。だからナイツが関心を持つ。
ナイツは、たった一つだけしかない真実を、事実とするために戦う行使者なんだ」
玲音「よくわからない。たった一つの真実って何?」
タロウ「だから俺は正規のナイツじゃないからさ。きちんと教えてもらってないんだ。
でもこれはマジだぜ。真実は真実だからこそ強いんだ。
真実だからこそ、それは正義なんだ。説得力あるだろ。そんな真実。欲しいと思わない?
俺、帰る。ミューミューがヤキモチ焼いてるからさ。あんたに」
玲音「タロウ君、ありがとう」
タロウ「あんたさ」
玲音「え」
玲音に口づけをするタロウ。
タロウ「デートだもんな。俺だって、男だからよ!」
何か口に入ってることに気付くことに玲音。
タロウは玲音にガムを口移ししていた。 『ヴァネヴァー・ブッシュ、そしてジョン・C・リリーという2人の異端の先駆者に学んだネルソンは、
軌道上に静止衛星の巨大な電子図書館を打ち上げ、電波と電話回線によって、
地球上のどこからでもどんな端末でもそれが利用できるデータベースを作る構想ザナドゥを発表する。
一切の文字文化が永遠になくなることが無いといわれる理想郷。
それがザナドゥである。
それをこの世界に具現しうる思想こそ、ハイパーテキストであり、
テッド・ネルソンはその考案者として歴史に名を残すだろう』 玲音「ハロー、NAVI。カチカチ、カチカチ。メモリーチェック。カチカチ、カチカチ、カチカチ」
玄関前。
誰かに背中を押される玲音。
玄関に康男、美穂、美香が立っている。
康男に連れられて二階へ登っていく玲音。
そこは普通の部屋かのように見えた。
すぐにパソコンだらけの部屋になる。
振り向くもうひとりの玲音。
もうひとりの玲音「それが、私?」
玲音「そう、これが私」
もうひとりの玲音「じゃあ、あの人たちは、誰?」
玲音「私はあなたなんだから、知らない」
もうひとりの玲音「嘘だよ、こんなの」
玲音「嘘だよ、全部。どうしてこんなことするの?」 『地球には地球自らが持つ固有の電磁波が存在する。
電磁層と地表との間で、ELF帯に8ヘルツの周波数で、常に共鳴が起こっている。
これをシューマン共鳴と呼ぶ。
この地球が常に放っている、いわば地球の脳波は、
人類にどれだけの影響を及ぼしているのか未だに分かってはいない。
地球の人口は、やがて脳内のニューロンと同じ数に達する。
ダグラス・ラシュコフは地球上の人間同士が、ネットワークで相互接続することにより、地球自身の意識をも覚醒されうると主張している。
確かににネットワークは、ニューロティックに進化を遂げており、人の脳内のシナプスに繋がれたそれと同じく、
地球そのものがニューラルネットワークと化しているといえる』 通学路。
玲音「たったひとつの真実。神様」
デウス『そう、僕だよ』 『橘総研の主任研究員だった英利政美は、地球を覆うニューラルネットワーク仮説をさらに進化させ、
地球上の人間は全て、デバイスすらも必要なく、
ワイヤレスネットワーク上に無意識化に配置されるという仮説を発表した。
さらに彼は、第7世代目のワイヤードプロドコルに、
シューマン共鳴ファクターを独断により暗号化し、書き加えていた。
事態を知った橘総研は英利を解雇。
その一週間後、英利政美は山の手線上で轢死体として発見された』 通学路の先に誰か立っている。
それは、英利政美だった。 玲音「たった一つの真実、神様」
英利「そう、僕だよ。ねぇ、玲音」 英利が玲音の心を読み取り話す。
英利「どうしてあなたなんかが神様なの。私分かんない」
玲音「…」
英利「あなたは。死んだんでしょ、ただの人間として。
そんな人が神様になんてなれるはずないじゃない」 今度は、玲音が英利の心を読み取り話す。
玲音「僕は肉体なんてものは不要だとわかったんだ。死というのは単に肉体を捨てただけのことさ」
英利「…!それは、千砂ちゃんのことよ」 玲音「それは、そうだな。僕はワイヤードを統べるプロトコルを進化させた」
英利「そうね、あなたはそうしたわ。でもプロトコルなんてただの取り決め」
玲音「そう、しかし僕がもっと高いフェイズで機能するコードを暗号化して書き込んでいた」
英利「それで?」
玲音「そのプロトコルには圧縮された情報が混入している」
英利「どんな情報かしら?」
玲音「人の記憶。この私、英利政美という男の思考、履歴、記録、情緒」
英利「それがどういうことを意味しているのかしら?」
玲音「ワイヤードのアノニマスな存在として永遠に生き続け、そこを情報によって支配しうる存在」
英利「そういう存在を何と言うと思う?」
玲音「神」
英利「神様なんていないわ」
玲音「そう、普遍の存在であって影響を及ぼすことができたとしても、崇める者がいなくては神足りえない」
英利「でもそれがいた。いえ、作ったのね」
玲音「ナイツ…」 英利「君には、肉体なんていらないんだよ、玲音」
レイン「そんなの、嘘だ」 学校に登校すると、ありすは玲音と目を合わせてくれなかった。
机と椅子がない。
玲音の席が無くなっている。
女性生徒A「起立!礼!」
先生「じゃあ、教科書をしまって」
先生がプリントを配りにくるが、玲音には手渡されない。
玲音「わ、私、私、リアルだよ。私、生きてるよ。私、ここにいるんだよ。
どうしてこんなことになっちゃったのかな。私が何かしちゃったのかな。
そういうことにならないようにって、いつも私気をつけてたのに。
変なこと言っちゃわないか、いつも気をつけてたのに。
そうなのかな、やっぱり。私が肉体を持ってちゃいけないのかな。…!」
ありす「そうよ玲音。あなたはリアルワールドには必要が無いんだよ」
玲音「…!」
クラスメイト達が無表情で色を失う。
玲音「…」 ひとり校門を出る玲音。
玲音「ただいま」
家に帰ると誰もいなかった。
荒れたリビング。
開けっ放しの冷蔵庫。
何もない両親のベッドルーム。
枯れた植物。
美香の声が聞こえる。
美香「ぴーぴーぴー、がー。ぴーぴーぴーぴー」
散らかった美香の部屋を片付けようとした時、康男が入って来る。
玲音「パパ?」 男「これでお別れです。玲音さん」
玲音「!」
男「もうご存知になったんでしょ。
私達の仕事は終わったんです。短い間でしたが、大したお世話もできずで。
あなたはこれからどうしようと自由です。
いや、最初からあなたは自由だったんだ。
お別れを言う許可は得ていないのですが、私はあなたが好きだった。
別に家族ごっこが楽しかった訳じゃない。
あなたという存在が私には羨ましかったのかもしれません。じゃあ」
玲音「待って!私をひとりにしないで!」
男「ひとり?ひとりじゃないですよ。あなたは」
玲音「え?」
男「ワイヤードにコネクトすれば誰もがあなたを迎えてくれる。そういう存在だったんです。あなたは」
玲音「…」 レイン「私はひとりじゃない」
声1「何がしたいの?玲音。ここはあなたの世界よ、玲音」
レイン「ナイツって誰なの?嘘の私をつくったのはそいつらなんでしょ」
声2「それはどうかな。いや、あるよ。統合算法騎士団の起源は、積分騎士団にまで遡ることが出来るらしい。
ワイヤードが出来る以前から、見えない人と人とのネットワーク、集合的無意識を彼らは利用してきたのだから」
声1「何がしたいの?玲音」
レイン「ナイツ。ナイツって誰なの?
声1「それが知りたいのね。玲音」
レイン「ワイヤードの神が神であるのは、それを崇めるものがいるから」 《クラブ サイベリア》
マサユキ「なあ、タロウよ。どっか別のところ行こうよ。ここつまんなくない?」
ミューミュー「そうだよ。ねえ、私んち来ない?マサユキあんたは来なくていい」
マサユキ「ああ?何だよそれよ」
ミューミュー「タロウはねえ、あんたみたいなガキは相手にしないんだって」
マサユキ「何だよ、それ。ミューミューだって十分子供じゃん」
ミューミュー「女の子はいいの。女の子は若いほうが良いに決まってんだから。ね、タロウ。
タロウ、どうしたの?ネットニューズが何か言ってるの?」
タロウ「リストだ」
ミューミュー「え、何のリスト?」
タロウ「ナイツのメンバーのリストが、どうしてネットニューズになって」
ミューミュー・マサユキ「ん?」 男「あっ、は、ああ!は、はい」
アジア系の外国人「声を出さないで下さい」
男「な、何だあんたら」
金髪の外国人「けじめをつけような」
男「な、なんの。うう」
金髪の外国人が男の首元に注射をする。
秘書「はっ!」
秘書が入ると、その男は息絶えていた。 ショウ「ママ、やられちゃったよ。ママってば。次ママの番だよ。
早くしないと僕が続けちゃうよ。ママ、いいの?ねえ、僕がやっつけちゃうよ」
主婦が口から血を流して、テーブルの上で息絶えている。 『本日、世界各国にて、連鎖自殺が続発しており、
各国の情報管理局、警察が、原因の究明に乗り出しています。
自殺したのは、いずれも、ネットワーク関連に従事している人達で、
消息筋によるとナイツと言う…』 アジア系の外国人「ふふふ」
金髪の外国人「…」
玲音「なんで、あんなこと…したの?」
金髪の外国人「これは私達のクライアントからの依頼です。あなたは、世界中のナイツを狩り出してくれた。
我々の仲間が現在、一斉に処理にまわっています」
玲音「そんな、こと…」
金髪の外国人「ワイヤードは特別な世界であってはならない。あくまでもリアルワールドを補強するサブシステムとして機能すべきフィールド」
玲音「だから、って」
アジア系の外国人「あんたもワイヤードの中じゃあってはならない存在なんだよ。でもあんたは無事じゃないか。ふふふはは。
どうやらあんたには神とやらのご加護というのがあるらしい。ふふふふふふ」
金髪の外国人「いずれ英利政美の残留思念プログラムもワイヤードからディスインペクトされます。
私達のクライアントはプロトコル7のコードを全面的に書き換える作業をしているところです」
玲音「…」
金髪の外国人「神など、必要無いのですよ」
アジア系の外国人「そう、ワイヤードでもリアルワールドでもね。ふふ」
金髪の外国人「私達はあなたが何なのかいまだに理解できていない。しかし、私はあなたが好きだ。
不思議な感情ですね、愛というのは」
アジア系の外国人「ふははははは」
玲音「…」 玲音「どうするの?」
英利「さてどうしようかな」
玲音「お祈りする人は、いなくなっちゃったよ」
英利「それじゃ、神じゃなくなっちゃうね。でも全員消えたわけじゃない。
1人でも信仰を持つものがいれば、僕は神でいられる」
玲音「誰?」
英利「いやだなあ、君のことさ、玲音。君が君でいられるのは、僕のおかげなんだ。
君はもともとワイヤードの中で生まれた存在なんだ。ワイヤードの中の伝説。ワイヤードの中のおとぎ話の主人公」
玲音「嘘…」
英利「リアルワールドの岩倉玲音は、そのホログラムに過ぎない。ホムンクルス。君の実態などもともとないんだよ」
玲音「嘘よ」
英利「嘘の家族、嘘の友達、そう、全部嘘だったんだ」
玲音「嘘だよ…嘘だよそんなの…」
英利「可哀想な玲音。もうひとりぼっち。でも僕がいる。愛しているこの僕がいる。
君をこの世界に送ってあげた僕を君は愛してくれるはずだ。
玲音「…」
英利「僕は、君の創造主なんだ。僕を愛して、ね、玲音」
玲音「もう一人の」
英利「え」
玲音「もう一人の私が」
英利「もう一人じゃない。本当の君さ」
玲音がレインに代わる。
レイン「どっちでもいいよ、そんなの」
英利「う…!」 記憶なんていうほど、
それほど 曖昧じゃないの・・・ 英利「疲れたかい?」
玲音「疲れた」
英利「すごいんだね、やっぱり君は。君自身の脳にあのNAVIのエミュレータをロードするなんて。
そんなに一度に情報を浴びたら危ないよ。君の今のキャパシティではオーバーフローしてしまう」
玲音「私って機械?私を機械みたいに、言わないで」
英利「そんなつもりはなかった。これはあくまでもソフトウェアの問題さ。
玲音、君はソフトウェアなんだよ。ハードウェアなんかじゃない」
玲音「ソフト…」
英利「そう。実行プログラムなんだ。肉体を持ったね」 夜の住宅街を歩く玲音。
玲音「うるさい。うるさい!
千砂ちゃん?千砂ちゃん、前に一度だけ一緒に帰ったことあったよね」
千砂「…」
玲音「私、やっとわかったよ。千砂ちゃんが言ってたこと」
千砂「玲音…」
千砂が首を横に振る。
玲音「え」
サイベリアで自殺した男「死ぬことなんて簡単なんだよ、玲音。そうだろ?」
玲音「…」
千砂「死ぬって簡単なことじゃ、ないよ」
玲音「え」
サイベリアで自殺した男「簡単さ、玲音。君はもうそのための道具を持っている」
玲音「何を?え。あ…」
サイベリアで自殺した男「セーフティは外してある。トリガーは重いからね。
両手でしっかり持って親指でひくんだ。女の子の力じゃね。
なに?まだリアルワールドにいたいの?ズルいなぁ。君が僕をこっちに呼んだんだぜ」
玲音「私、そんなこと」
サイベリアで自殺した男「肉体なんて無意味なんだ」
玲音「違うよ」
千砂「玲音」
玲音「え、あ。何、これ…」 樹莉『だから明日の放課後、その顔合わせってことで会おうって思うの。
結構かっこいいんだよ。その男子って。
で、その、先生との噂もさ。ありすが誰か彼氏つくれば嘘だって分かると思うんだよね、私』
じゃあ明日、詳しく話すから。バイビー』
ありす「(嘘じゃないから…)ん?!」
ありすの部屋に人形が入って来る。
ありす「だ、誰?誰よ…!」
それは小さなレインだった。 ありす「玲音…!?なんで、なんでそんな…だ、だって…」
レイン「私じゃ、ないよ」
ありす「え」
レイン「ありすの秘密を私は覗き見なんてしていなかったし、
ありすの秘密をワイヤードで広めるなんてこと、してない」
ありす「玲音よ。それは玲音がしたこと。だって私見たもの」
レイン「それは私じゃないの。私は、一人じゃないみたい。違う私がやったこと」
ありす「何言ってるのよ…」
レイン「ありすだって、一人じゃないかもしれない」
ありす「え」
レイン「でも、いくら私が違うって言ってもありすはそう信じてるんだよね。
だから。私はそれを無かったことにする。それができるように私頑張ったんだよ」
ありす「どういう意味?」
レイン「デバイスなんてもういらないの。
私、もうワイヤードとリアルワールドの境目壊しちゃったみたいだから。
私、行きたいところにいけるようになったんだよ。だから私今ここにいる。
あったことだって、なかったことにできるはずなの」
ありす「玲音…」
震えと涙が止まらないありす。
ありす「こ…怖いよ…怖いよ…」 麗華「ありす」
樹莉「ありす。おはよう」
ありす「え。あ、おはよう」
麗華「何、ありす。落ち込んじゃって」
樹莉「あーそういう日?もしかして」
麗華「デリカシーないなあ」
樹莉「だってえ」
ありす「あ、樹莉。私、やっぱり今日気が進まないっていうか」
樹莉「え、今日って何?」
ありす「やだ、昨日親友メールくれたじゃん」
樹莉「嘘、昨日は」
麗華「なんかありす今日変だよ。ありす」
樹莉「ん?ああ、あの先生かっこいいよね」
麗華「うん。でもさ、3年の子と実は付き合ってるって噂だよ」
樹莉「えーマジ?不潔」
ありす「あの、ね、ねえ」
麗華・樹莉「ん?どうしたの?」
ありす「あ、あの先生と、私のこと」
麗華・樹莉「はあ?」
麗華「あの先生と何か関係あんの?」
樹莉「もしかして、あの先生好きとか?」
麗華「だめだめ。遅すぎ」
樹莉「そうだよ。彼女いるんだから」
麗華「ありすらしくないな」
樹莉「ほんと。変だよ、今日は」
何かの気配に気づくありす。 そこには玲音が立っていた。
樹莉「あ、玲音。おっはよー」
麗華「早く来なよー」
樹莉「早く早く。玲音」
麗華「玲音」
ありす「(玲音…あんた…)」
学校に誰もいなくなる。
ありす「あ(玲音…笑った…)」 玲音「なーんだ、そうだったんだ。世界なんてこんなに簡単なものだったの。
私全然知らなかった。私にとって世界はただ怖くって、ただ広くって、
でもわかっちゃったら、何だかとっても楽」
『だから言ったでしょう?』 樹莉「ははははは、やだー、玲音ったら」
麗華「よく言うよ、玲音」
ありす「玲音…」
樹莉・麗華「ははははは。ははははは」
玲音「ええ、でもさ、ほんとだよ。ふふ」
樹莉「そんなの聞いたことない」
麗華「またもったいぶっちゃってさ。玲音ったら」
ありす「どういうことなのよ、全く」
麗華「でさ、樹莉」
樹莉「何?」
玲音「…」
ありす「…っ。?」
『いやな きろくなんて かきかえれば いいの 玲音』
ありす「そんなの…そんなの…!」
麗華「全く」
樹莉「だってえ」
玲音「…」
ありす「…っ」 玲音「人は人の記憶の中でしか実体なんてない。
だから、色んな私がいたの。
私がいっぱいいたんじゃなくって、色んな人の中に私がいただけ」 《クラブ サイベリア》
タロウ「そうか。そうなのか」
ミューミュー「ねえ、タロウってば。誰とお話してるの?」
タロウ「あはは、あは、あはは」
マサユキ「ど、どうしたんだよ」
タロウ「俺さ、天使とキスしたんだぜ」
ミューミュー・マサユキ「?」
ミューミュー「タロウ」 「玲音」
「れいん」
「レイン」
「lain」
「れいん」
「レイン」
「玲音」
「lain」
「レイン」 ネットニューズのキャスター
『このプロトコル7の採用により、ワイヤードとリアルワールドは、
シームレスに情報をシェアする環境になるものと、期待が持たれています。
では、次のメッセージです。
玲音を好きになりましょう。
れいんを好きになりましょう。
レインを好きになりましょう。
lainを、
れレ玲laれレ…』 英利「人の肉体はその機能のすべてを言語化し、唯物論の用語によって余すところなく記述することができる。
肉体も機関に過ぎない。その物理的な制約が人の進化を留めているのだとしたら、
それは人という種の終わりをいもしない神によって決定付けられているようなものだ。
人の中に刻まれた情報は、その固体が意識を得て受けたものだけではない。
人という種が連綿と繋がり続け、情報をその中に蓄積してきたものだ。
それは。共有されねば何の意味もない、ただのデータでしかない。
人は進化できるんだよ。自分の力で。
そのためにはまず自分の本当の姿を知らなくてはいけない。
君は自分を何だと思う?
人と人とは元々繋がっていたのさ。僕がしたことはそれを元に戻しただけに過ぎない。
君がそれを引き起こしたんだ、玲音。だから、君は好きなことをしていいんだ」 金髪の外国人「(プハァ)」
アジア系の外国人「チッ、やめたんじゃなかったのかよ。どうしてこんなことになっちまったんだ。
俺達はちゃんと仕事したじゃねえか」
金髪の外国人「計算機マニアの秘密結社ごっこが邪魔だったのは、クライアントだけじゃ、なかったっていうことだ」
アジア系の外国人「どういう意味だ?」
金髪の外国人「クライアントは、英利政美と通じていた。(フゥ)いや、その意思は英利のものだったのかも知らん」
アジア系の外国人「やめてくれよ。英利なんて。死んだ男じゃねえか」
金髪の外国人「(フゥ)死んでないんだよ」
アジア系の外国人「え?…っ」
金髪の外国人「肉体の有無なんて、関係なかったのさ。本当は」
アジア系の外国人「お前…」
金髪の外国人「ふっ」
アジア系の外国人「?」
金髪の外国人「?」
そこに橘総研の男がやってくる。 男はアタッシュケースを置く。
アジア系の外国人「これまでの報酬って訳か。俺たちはハメられたんだな」
男「どう解釈しようが構わない」
金髪の外国人「逃亡しろと? どこへ」
男「ふん、そうだね。電線もなくて、衛星がカヴァーしてないエリア」
アジア系の外国人「この地球にそんなところあるはずねぇだろ!」
男「逃げるんだとしたら、そういうところを探すしかない」
金髪の外国人「「何が起こるんだ?デバイスなしでワイヤードとリアルワールドを繋いでどうするつもりなんだ?」
男「ふん、素敵なことが起こるんだ。楽しみじゃないか」
アジア系の外国人「う…な、何が!う、うわあ!」
金髪の外国人「どうした?」
アジア系の外国人「ひええ!!」
金髪の外国人「何を見てるんだ!おい!」
そこに玲音の姿が映る。
アジア系の外国人は死んでしまう。
金髪の外国人も玲音の姿を見つける。
金髪の外国人「う…う、うわあああああああ!!!!!」 玲音の家にやって来たありす。
荒れ放題の様子を見て動けなくなる。
ありす「れ、いん…。うっ、げほげほ」
美香「ぴーぴーぴー、がー」
ありす「うう…いや、もう!うう…」
恐る恐る先に進んでいく。 ありす「(これが、玲音の部屋?)」
玲音「うぅ…」
ありす「玲音?あ!れ、玲音!」
玲音「あ、り、す」
ありす「何を、したの?」
玲音「何も。ただ見てただけ」
ありす「何を?」
玲音「…」
ありす「…っ。私、私、自分がおかしくなったって思ってた。でも、やっぱり違うのよ。
玲音、どうして私だけ残したの?どうして、私だけ元の記憶を残してるの?
どうして私だけ辛いことをいつまでも思い出にしてなきゃいけないの?
そんなに、私のことが憎いの?玲音。こんな、こんなのって耐えられないよ…」
玲音「違うんだよ、ありす。私、ありすを悲しませたくなかったから」
ありす「嘘!こんなことして!」
玲音「ありすは、大丈夫だったじゃない」
ありす「え」
玲音「ありすは、私が繋げなくっても、私の友達になってくれた」
ありす「何のこと言ってるの?」 玲音「ありすだけは私の友達。繋がってなくても」
ありす「つ、繋げるってなんのこと?」
玲音「私とみんなと」
ありす「やめ…っ」
玲音「私、ありすが好き」
ありす「何を言ってるのか、分かってるの?玲音」
玲音「もともと人間は無意識で繋がってる存在なんだよ。それを繋げ直しただけ」
ありす「玲音が?」
玲音「ん?私は何もしないよ。あっちとこっち側とどっちが本物とかじゃなく、私はいたの。
私の存在自体が、ワイヤードとリアルワールドの領域を崩すプログラムだったの」
ありす「玲音がプログラム…?」
玲音「ありすだって、誰だって、みんなアプリケーションでしかないの。肉体なんていらないの、本当は」
ありす「…」
玲音の頬に手をあてるありす。 玲音「…っ」
ありす「違うよ」
玲音「え」
ありす「私、よくわかんないけど、玲音が言ってること、間違ってると思う。
こんなに冷たいけど、でも生きてるよ、玲音の体。私だって、ほら。
ね、ドキドキ」
玲音「ドキドキ」
玲音・ありす「ドキドキ。はは、はははは」
玲音「どうして?どうしてかな?」
ありす「怖いからだよ。怖いから、ドキドキしてる。」
玲音「だって、ありす笑ってる」
ありす「うん、そうだよね。でも怖いの。ずっと怖かったの。何でかな」
玲音「何でだろ」
英利「肉体を失うことが怖いのさ。感覚だって、脳の刺激でどうとだって得られる。
嫌な刺激なんか拒絶すればいい。楽しくて気持ちがいいことだけ選べばいいのさ」
玲音「そうなのかな?」
ありす「玲音、誰かと話してるの?」
英利「その子が好きだったら、どうして繋げてあげない」
玲音「わかんない」
ありす「玲音、誰と話してんのってば!玲音!」
英利「バグっているね、ふっ、いいよ。時間をかけてデバックしてあげるからね。さあ玲音、おいで」
ありす「ああ、きゃあ!」
白い手が見え、恐怖でありすは離れる。 玲音「分かんないの、あなたのこと、神様」
ありす「か、神様と話してんの?」
英利「分からないのは何だっていいんだよ。玲音」
玲音「あなたができたことはワイヤードからデバイスを解放すること。
電話とかテレビとかネットワークとか、そういうのがなくちゃ、あなたは何もできなかった」
英利「そうさ、それらは人間の進化に伴って生まれたものじゃないか。
最も進化した人間は、それにより高い機能を持たせる権利がある」
玲音「その権利、誰がくれたの?」
英利「う…!」
ありす「…っ」
玲音「地球の固有振動にシンクロさせるコードをプロトコル7に組み込むことで、集合的無意識を意識へと転移させるプログラム。
それ、本当にあなたが考え出したことなの?」
英利「何を言いたいのだ。まさか、まさか、本当に神がいるなどと!」
玲音「どっちにしろ、肉体を失ったあなたには、もうわからないこと」
英利「嘘だ。僕は、僕は万能なんだよ!僕が君をこのリアルワールドに肉体化させてあげたんだぞ。
ワイヤードに偏在していた君に自我を与え、それに!」
玲音「私がそうだとしたら、あなたは?」
英利「僕は、違う!僕は!」
玲音の部屋の物質を集めて、肉体を作ろうとする英利。 ありす「ひっ」
玲音「ワイヤードはリアルワールドの上位階層じゃない」
英利「どういう訳だ!」
玲音「あなたは、確かにワイヤードでは神様だった。じゃあ、ワイヤードができる前は?
あなたはワイヤードが今のようにできるまで待っていた、誰かさんの代理の神様」
英利「代理なんて嘘だー!」
ありす「きゃあああ!ああ!!」
玲音「ありす!あなたには、肉体なんて無意味なんでしょ?」
ありす「う、ああ、いやああー!ああ、ああ…」
玲音の力が勝り、英利は消える。 玲音「えっと、私またわかんなくなっちゃって。私がいるの、こっちなのか、そっち側なのか。
私、そっち側のどこにだっている。それは知ってるの。だって繋がってるんだもの。
でしょ?でも、私の、本当の私のいるところってどこ?
あ、本当の私なんて、いないんだっけ。私は私の存在を知っている人の中にだけいる。
けど、それだって今しゃべっている私は、私、だよね?この私って、私って、誰?」 玲音「ありす」
ありす「あ…あ…ああ…あ…あ…はっ、あああ!!うわあ!!いやああああ!!!!」
(パァン!)
玲音「…」
ありす「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、ひい、いやあ、ああ…」
玲音「私がありすのためにすることって、いつも間違えちゃうね。本当に私って」
ありす「あ…あ…ああ…ああ…」
玲音「ありす。ありす。ごめんね。ごめんね。ありす、ごめんね」 いつもの朝の食卓。
牛乳を一口飲む美香。
美香「ごちそうさま」
康男「おいおい、まだ残ってるじゃないか」
みそ汁を置きながら美穂は言う。
美穂「ダイエット中なんですって」
美香「言わなくていいよ、そんなこと」
康男「ふうん」
米を頬張る美穂。
納豆を置いて康男は言う。
康男「ああ、荷物来るかも知れない。着払いなんだ。来たら払っといてくれ」
美穂「また計算機のパーツ?」
康男「なあ」
美穂「はい?」
康男はもうひとつ空いた席を眺める。
康男「いや、何でもない」 電車内。
玲音がいつも立つその場所には誰もいなかった。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています