教員免許更新廃止は愚の愚の愚の骨頂
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教員免許の更新制廃止へ 人手不足や負担増の一因と不評
8/23(月) 16:56配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/36ab48f9f02a0bfd82f0724e6c386fe5a434fd48
学校教員の免許
教員免許に10年の期限を設け、更新前に講習を受けないと失効する「教員免許更新制」について、萩生田光一文部科学相は23日、早ければ2023年度から廃止する方針を表明した。教員の資質確保を目的に第1次安倍政権時代に法改正され09年度に始まったが、教員不足や負担増の一因と指摘されていた。
文科省は来年の通常国会で廃止に必要な法改正をし、23年度にも新たな研修制度を始める。それまでに期限を迎える免許は更新の必要がある。
【チャートでわかる】学校教員の免許、そもそもどんな種類があるの? https://www.asahi.com/articles/photo/AS20210529001577.html
文科相の諮問機関・中央教育審議会の委員会が23日、「新たな教師の学びの姿の実現に向け、更新制を発展的に解消することを文科省が検討することが適当」と結論づけたのを受け、萩生田氏が会見。廃止という言葉は使わず、「一定の成果はあったが、多忙を極める先生にとって、
講習の中身が十分伴っていなかったことが問題だった」と話した。文科省は更新制の代わりに、都道府県教育委員会が行う教員研修やオンライン研修の拡充のほか、研修履歴の記録管理の義務化を検討している。
更新制は、無期限だった幼稚園や小中高校などの教員免許に10年の有効期限を設け、期限が切れる前の2年間で最新の知識や技能などを学ぶ講習を30時間以上受け、修了認定されなければ失効する仕組み。中教審が提言し、第1次安倍政権の教育再生会議が「不適格教員に厳しく対応を」と厳格な修了認定を求め、
07年に教育職員免許法が改正されて09年度に始まった。
しかし導入前から、教員の身分が不安定になり、人材不足や多忙化を招くと懸念されていた。実際、学校側が育休や産休をとる教員の代わりを探しても、免許が未更新のため、すぐに任用できないなど、なり手不足の一因となっている。現職教員が更新を忘れる「うっかり失効」も相次ぎ、免許を管理する都道府県教委や学校長からも制度廃止を求める声が高まっていた。
萩生田氏は3月、中教審に更新制の「抜本的な見直し」を諮問し、早期に結論を出すよう要望していた。(伊藤和行) ■■教員免許更新制をめぐる経緯
2000年 森喜朗首相の私的諮問機関「教育改革国民会議」が導入を求める
02年 中教審が「更新時に教員の適格性を判断する仕組みは制度上とり得ない」と見送り
04年 「教員の資質向上のため」と中教審に再び諮問され、06年に導入が答申される
07年 第1次安倍政権の「教育再生会議」が導入を提言。講習の修了認定を厳しくするよう求める
教育職員免許法の改正で導入決定。学校教育法などと合わせて「教育3法」の改正と呼ばれる
09年 制度開始
21年 萩生田光一文科相が中教審に「制度の抜本的な見直し」を諮問
朝日新聞社
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最終更新:8/24(火) 6:20
朝日新聞デジタル 教員免許更新制の「廃止」は「発展的解消」でしかない。「発展的」には辛い未来しかないかもしれない
前屋毅|フリージャーナリスト
8/25(水) 7:05
https://news.yahoo.co.jp/byline/maeyatsuyoshi/20210825-00254890
(写真:つのだよしお/アフロ)
教員免許の期限を10年として更新時に講習の受講を義務づける「教員免許更新制」を「廃止」する方針を、萩生田光一文科相が23日に表明したと報じられている。休みを使い、しかも受講費も教員負担の制度は、教員にとって大きな負担であることから、不満も大きい。
それが「廃止」とあって、歓迎する声も大きい。しかし文科相が言っているのは「完全廃止」でなく「発展的解消」であり、この「発展的」がクセモノだ。それに気づいている教員も少なくないようだが、あらためて確認しておきたい。
|「廃止」ではなく「発展的解消」である
萩生田文科相の方針表明は、23日に行われた中央教育審議会(中教審)の教員免許更新小委員会が、文科省が同委員会に示した「審議まとめ(案)」(以下、「まとめ」)を了承したことを受けて行われたものだ。その「まとめ」の最後には、「教員免許更新制の発展的解消」と記され、以下のように述べられている。
「『新たな教師の学びの姿』の実現に向けて、教員免許更新制を発展的に解消することを文部科学省において検討することが適当であると考える」
これまでの教員免許更新制は廃止するが、「新たな教師の学びの姿」を実現するための新たな制度をつくっていくということだ。「発展的解消」とは、そういう意味でしかない。
「新たな教師の学びの姿」について「まとめ」は、「学び続ける教師」であるとしている。そのためには「主体的な姿勢」が必要であり、これまでの教員免許更新時の講習における一律的なものではなく、「個別最適」なものでなくてはならないとしている。
しかも、具体的な目標に向かって、体系的・計画的に学びが行われるために「適切な目標設定・現状把握、積極的な『対話』」が必要だともしている。さらに、オンデマンド型だけでなく同時双方型もふくめて「質の高い有意義な学習コンテンツ」が必要であり、それらをオンラインで小刻みに学ぶことが必要だとしている。
10年に1度の更新時にまとめて受講するのではなく、小刻みに受講するスタイルにしようというのだ。
そして、「学びの成果の可視化と組織的共有」が必要ともしている。可視化することで任命権者や服務監督権者・学校管理職等は、特定の事項に秀でた教師の発掘や、人事配置や校務分掌の決定その他の取扱に積極的に活用することができるようになる」というのだが、「管理強化」でしかない。 それには「デジタル技術の活用」によって、「教師の学びを把握し、教師の研修受講履歴を記録・管理していく」ことも盛り込まれている。主体的に小刻みな質の高い学びをすることを求められ、進捗状況は管理職や教育委員会などに逐一把握されることになるのだろう。
|「指導上の措置」にまで言及
管理強化ではないかと疑問に思うのは、「処分」にまで言及されているからである。「まとめ」には、「任命権者等は当該履歴を記録管理する過程で、特定の教師が任命権者や服務監督権者・学校管理職等の期待する水準の研修を受けているとは到底認められない場合は、
服務監督権者又は学校管理職等の職務命令に基づき研修を受講させることが必要となることもありえる」と書かれている。また、「事案に応じて、任命権者は適切な人事上又は指導上の措置を講じることが考えられる」とも述べている。「上」の意に沿わない教員には強制的に研修を受講させ、「指導上の措置」も講じるようにすると言っているわけだ。
2009年4月に導入された現行の教員免許更新制の設立過程では、「不適格教員の排除に利用しようとしているのではないか」との批判も強かった。そのために現在、教員免許更新制を説明する文科省のホームページでは、「目的」の項で、わざわざ「不適格教員の排除を目的としたものではありません」と注意書きがある。
しかし教員免許更新制に代わる新しい制度では、「上」の意に沿わない教員、「不適格教員」の「排除」を明確にしているようにも思えるのだ。
10年ごとの受講だったものを「小刻み」な受講にし、しかも管理を厳しくし、「排除」さえも可能にしているとも受け取れる。それが、「発展的」の意味なのかもしれない。それは教員のため、教育のためになることなのだろうか。
中教審の小委員会が「まとめ」を了承したことで、それを実現するために文科省は来年の通常国会に関連法案を提出し、2023年度にも現行の教員免許更新制を「廃止」し、新制度をスタートさせるために動きだした。
問題のある現行の教員免許更新制が廃止されるのは望ましいことには違いないけれど、それに代わって導入される新制度が教員と教育のためになるものなのかどうか、冷静に対応していく必要があるように思える。単純な「廃止」を文科省は考えてはいない。「廃止」の文字だけに喜んでいると、教員にとっては辛い未来を押し付けられることになるかもしれない。
前屋毅
フリージャーナリスト
1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)
、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。 ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン) 教員免許更新制、23年度にも廃止 指導力の向上なお課題
大学フォローする
2021年8月23日 13:00 (2021年8月23日 19:45更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE039R80T00C21A8000000/
教員免許更新制について取材に応じる萩生田光一文科相(23日、東京都千代田区)
文部科学省は23日の中央教育審議会の小委員会で、小中高校などの教員免許の期限を10年とし講習の受講を義務付ける「教員免許更新制」を廃止する審議まとめ案を示した。多忙化する教員の負担になる上、内容が実践的でないなどの指摘が相次いでいた。
同省は2022年の通常国会に同制度を廃止するための教育職員免許法改正案を提出する方針。最速で23年度に更新制は廃止される見通し。同省は自治体や大学などと連携し、教員が資質向上のために学び続けられる制度を検討する。
ICT(情報通信技術)の発達やアクティブラーニング(能動型学習)の導入、小学校英語の必修化などで、教員には多様な能力が求められるようになっている。新型コロナウイルス禍での遠隔授業への備えや、深刻化する不登校やいじめへの対応などもある。国や自治体による教員の学びを支援する仕組みが重要になる。
まとめ案は制度の現状について「更新しなければ職位を失う状況下で学びが形式的なものとなり、学習効果を低下させてしまいかねない。制度の発展的な解消を検討することが適当だ」とした。
萩生田光一文科相が3月、中教審に「抜本的な見直し」を諮問していた。萩生田氏は23日、「(制度がなくなっても)教員の研修の必要性は何ら変わらない。抜本的に見直し研修の充実を目指す」と話した。
同制度は第1次安倍晋三政権などで議論され、09年度に始まった。免許に10年の期限を設け、期限前の2年間に大学などで30時間以上の講習受講を更新の条件とした。
費用約3万円は自己負担で夏休みなどに受講する必要があり、不満の声が上がっていた。コロナ禍による教員の負担増も廃止を求める声に拍車をかけた。期限を忘れる「うっかり失効」で現職教員が教壇に立てなくなる事態も相次いでいた。
教員の指導力向上は各国も取り組んでいる。
文科省によると、米国では全ての州で教員免許の更新制が導入されている。州ごとに5年間などの有効期限を設定し、大学で数十時間の研修の受講を義務付ける。
フランスや英国、ドイツなどは更新制を設けない一方、国主導で研修を充実させている。フランスは約400種類のオンライン研修を受けられるウェブサイトを国が整備し、毎年25万人以上が受講。英国も教員がスキルアップに使える映像教材を政府が用意している。
中教審は更新制廃止後の教員研修のあり方を議論する。都道府県が実施する教員研修をオンライン化して受けやすくするなどの案が上がっている。現場の教員が抱える課題の参考になる実践的な内容を充実させられるかなど、課題は多い。
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有料会員に登録する無料会員に登録するログインする 2021/08/26 11:00
「ようやく廃止になったが…」教員免許更新制にも疑問をもたない文科省は酷すぎる
https://president.jp/articles/-/49265?page=1
これでは教育現場は悪くなるばかり
PRESIDENT Online
島沢 優子
島沢 優子ジャーナリスト
8月23日、萩生田光一文部科学相は教員免許更新制度について早ければ2023年度から廃止する方針を表明した。ジャーナリストの島沢優子さんは「教員の指導力を高めるために定期的に研修を実施する制度だが、講習時間や受講料に不満を感じる教員は8割を超えていた。現場の負担を増やすだけの制度を推進してきた文科省はもっと現場の声を聞くべきだ」という――。
文部科学省、文化庁、スポーツ庁(2020年5月1日、東京都千代田区霞が関)
写真=時事通信フォト
文部科学省、文化庁、スポーツ庁(2020年5月1日、東京都千代田区霞が関)
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研修で夏休みがつぶれてしまう教員たち
首都圏で市立中学校に勤務する40代のAさんは、指を折って数え始めた。
「7月に2回、8月はこの日と、ここと……」
みるみる片手の指が埋まるのは、Aさんがこの夏休みに参加する研修の数である。短縮傾向の夏休みはひと月ほどなのに、研修だけで6日間つぶれてしまう。その研修、役に立ちますか? と尋ねれば、「う〜ん」と苦笑い。
「でも、コロナ禍だからか、今年は(研修の数が)少ないほうです。先生たち、この状態で、免許更新時の研修が入ってきたら地獄ですよ。僕はこの研修をやりたくないがために、みんながやりたがらない主幹になりました」
主幹、副校長、校長といった役職に就けば回避できるからだ。Aさんは数年前に主幹になった。
現場から不満の声が上がる「免許更新制」
更新前に講習を受けないと失効する教員免許更新制について、萩生田光一文部科学相は8月23日、早ければ2023年度から廃止する方針を示した。
2009年度に教員の質の向上などを目的に導入された免許更新制は、10年ごとに期限前2年のうちに大学などで30時間以上の講習を受けることを義務付けられている。
文部科学省が5日に公表した調査結果によると、講習時間や受講料に負担を感じると回答した教員は8割を超えた。受講が学校での授業がない夏休みに集中するうえ、約3万円の受講料はすべて自己負担。以前より学校現場から不満が出ていたという。
教師に不人気だという主幹になってまでして免許更新時研修を回避したAさんは、その理由をこう語ってくれた。
「一番の理由は、自分で申し込みをする手間です。30時間を埋めるべく研修を探してみても、内容はとても概念的でつまらない。
実践的でいいなと思うものがあっても、定員があってすぐに埋まってしまし、正直言って聴講したいものはほぼなかった。それを3万数千円も自腹を切って、興味のない話を聞くわけです。お金と時間の無駄でしかない」
次ページ 「内容が実践的ではなく、本当につまらない」
しかも、最初の10年目、つまり多くの教員が30代前半から中盤に受ける免許更新時研修は「中堅教諭等資質向上研修」も受けなくてはならない。Aさんによると、こちらは無料ではあるが、かなりの量だ。
「校内で30時間、校外で18時間あって全部受けなくてはいけません。一般企業に3日間通う課題別研修というのもあります。僕は食品関係の企業でしたが、中身はホームページを見ればわかる程度のもの。学校教育や子どもの生活と何ら関係ない。外の空気を感じられるいい経験にはなりましたが」
ちなみに、Aさんが同じ学校ですでに研修を受けた同僚に尋ねたところ、質問した4人全員が免許更新制に反対だった。
「他にもいっぱい研修を受けている」
「内容が実践的ではなく、本当につまらない」
「家庭を犠牲にして通った。本当にしんどい」
不満の声ばかりだったという。
「すさまじい研修疲れですよ。みんな夏休(夏休み)が5日間取れない状況が、ここ数年続いている。ICT(教育)対応など、仕事は増えるばかりです」とAさんは顔をゆがめる。
授業のない夏休みでも、実は先生たちは忙しい。コロナ禍の今年は地域によってはなくなったがプール当番、日直、部活動の指導や大会引率などさまざま業務がある。
ハードな教員生活でスキルアップをする暇がない
茨城県の市立中学校で教壇に立ち、少年サッカークラブで指導もしている40代のBさんは、Aさんとは少し違う意見だ。
「泊まりがけの講座で、全国の方々と情報共有もでき、楽しく実りある時間を過ごせました。車の運転やサッカーの審判資格も適正があるかを毎年確認されます。審判はクーパー走や筆記テストがあり、ルールブックを読み返し、上級審判員の方から話を聞ける。知識だけでなく、サッカーのとらえ方などすごく勉強になりました」
しかしながら、30代までは「目の前のことに追われるばかりだった」と、Bさんは言う。朝6時過ぎに学校へ行き、放課後は部活動や生徒指導、保護者対応で学校を出るのは夜10時を回った。
窓辺で頭を抱える男性
写真=iStock.com/taa22
※写真はイメージです
土日祝日は、試合や大会。子育ては妻に任せきりというなかで、自分の時間を確保して何かを追究する気になれなかった。年齢を重ね、部活動の主顧問を引き受けずにすむようになってから、さまざまな分野へ目が向くようになった。
「教員の世界は、身銭をきってスキルアップしたり、見識を広げよう! という方は少ないように感じます。そうならないのは、やはりハードすぎる教員生活だと思う」とBさんは嘆息する。
次ページ 激務に苦しむ教員の背景にある「不登校問題」
Aさんも過酷な20代、30代を過ごした。朝6時に学校へ。まず、黒板への落書き、トイレの状態など学校の見回りをする。子育てをしている教員ができないことを買って出た。そこから授業準備をし、部活動が終わると夜7時。
そこから提出物や、生徒が授業の感想などを書いた学習カードをチェックする。ただ単に判子を押せばいいわけじゃないので、一枚一枚40人分を読んで評価をしていくと2時間くらいはあっという間だ。
体育祭、文化祭など行事の準備がある期間であれば、帰宅は11時。食事と入浴を手早くやって就寝するのは12時過ぎ。睡眠時間は4〜5時間だった。
先生たちの多忙さの背景に、児童生徒の不登校がある。文部科学省が昨年10月に公表した「問題行動・不登校調査」によると、2019年度に不登校が理由で小中学校を30日以上欠席した児童生徒は18万1272人で過去最多を更新した。
増加は7年連続で、内訳は小学校が5万3350人、中学校が12万7922人。全体の児童生徒に占める割合は、小学校で0.8%、中学校で3.9%だった。
ひとりで座り込む小学生男児
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです
この割合が、Aさんの学校は約6%。各クラスにひとり以上存在する。Aさんは「その子たちへの支援も僕らの重要な仕事。午後から登校する子に別室対応もする。安全管理上ひとりにはしておけません」と明かす。
学校に行けないというデリケートな問題に、教員は神経をすり減らす。校長や管理職は「学校全体で生徒を見ています」と保護者に説明するが、実際は担任が責任を負うことになる。
「不登校の生徒への対応を他の先生にお願いして、研修に行くこともあります。行ったはいいけど居眠りしそうになるような何ら意味のない研修のほうが断然多い。俺は何をしているんだろうと落ち込みます」(Aさん)。
人手不足に加えて「研修疲れ」で疲弊
「教員の質を上げたいのなら、研修よりも、教師を増やしてほしい。圧倒的に人手が足らない」
そう訴えるAさんの学校の平均年齢は35歳。今年は女性教員3人が産休に入ったため、20代の代替え教員が加わった。キャリア3年以内の若手が十数人もいる。Aさんが「ママになる女性教員は当然応援されるべき存在です」と話すように、現場は現状に対応しようと必死だ。
過労死ラインと言われる多忙な教員生活に、「研修疲れ」が拍車をかけている。子どもの詰め込み教育が問題視されるなか、教員に対しても長年同じやり方を通しているように映る。本人が興味を持てない情報を充填するだけでは、指導力アップに直結するとは思えない。
2020年度にスタートした新・学習指導要領で「主体的な学び」が強調されているにかかわらず、教師に対しては受動的な学びに終始していないだろうか。児童生徒も、教師も実は同じ問題を抱えているのだ。
次ページ いまの研修内容は需要と供給が合致していない
そんな問題点を、より具体的に解き明かしてもらおうと、2022年4月に開校するオルタナティブスクール「ヒロック初等部」(東京都世田谷区)のスクールディレクターに就任する蓑手章吾みのて しょうごさん(37)を訪ねた。
21年3月まで都内の公立小学校教員を14年務め、『自由進度学習のはじめかた』など授業実践の著書が多い蓑手さんは、SNSなどで多くの教員に支持されている。
更新時研修については、「研修内容は大学が中心にやっていることが多いので、最新の情報だろうと思う。そういった新しい教育理論を聞きたい人も一部いるかもしれないが、多くの教員は現場の話を聞きたい。つまり、需要と供給が合致していない」と問題を指摘。
続けて「研修も動画配信などにして、自由な時間に見られるようにすればいいのではないか」と提案する。さらにいえば、根本的な問題は、教員という仕事のビジョンにありそうだ。
「学級崩壊、保護者のクレーム、不登校。そういった問題があるから予防しましょう、対策立てましょうと言われて、教員は多忙になる。マイナスをゼロにすることばかりやらされるので、教師という仕事に希望がない。
明日の授業はこうやって、子どもが自ら動くような時間にしよう、みたいにゼロをプラスにする取り組みを軸にすれば、先生ぞれぞれの中に希望が生まれ、自ら学びを掴むようになると思います」(蓑手さん)
教員が抱える多忙感の正体は「希望のなさ」
蓑手さんが言うように、多忙感の正体は「希望のなさ」。ビジョンを転換すれば、先生たちも学びに主体的になれるのだ。
「実際、自ら学んでいる先生は多忙感が少ない。指導動画など、ネットで検索しただけでも有益な学びはザクザク出てきます」 研修を強いるのではなく、学びの楽しさや必要性に気づいてもらう設計をすべきだろう。
希望を持たせるには、Aさんが訴えるように人を増やすことも重要だ。しかし、目下私たちの国では教育含めどの業界も人手不足に悩まされている。各種業界で人材争奪戦ともいえる状況のなか、例えば2021年度教員採用試験の倍率は、東京都で小学校3.1倍、中学校は1.2倍とダウン傾向は変わらない。
地方も同様で、比較的待遇がよいとされる政令都市の福岡市でさえ、小学校は2.3倍(前年度2.5倍)、中学校3.6倍(前年度4.1倍)と教員人気は下降している。本格的に多忙感をなくす対策を考えるべきだろう。
「研修をやらないと質が下がると文科省は言うけれど、実施した研修の成果についてエビデンスをとっていますか? と問いたい。どれだけ質が上がったのか、良かったのか、指導スキルの向上に役立ったのか。そのためには、現場に耳を傾ける姿勢が大事だと思います」と蓑手さん。
子どもに対し傾聴しましょう。文科省は教員たちにそう促している。通達ばかりではなく、ぜひ現場の声を吸い上げ協働してほしい。
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「学校は午前中だけで十分だ」教育の専門家がそう力説する納得の理由 https://president.jp/articles/-/48474 教員免許更新制廃止の背景 退職者教員の供給に問題か 多忙な現場の負担を軽減へ (1/2ページ)
高橋洋一 日本の解き方
2021.8.28
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/210828/dom2108280004-n1.html
文部科学省は、教員免許更新制を廃止することを決めた。更新制のあり方を議論する中央教育審議会の小委員会に同省が「発展的に解消する」との審議まとめ案を提示し、更新制で行われた講習を踏まえ、時代の変化に対応できる新たな教員の学びの場を構築していくという。
教員免許更新制については、第1次安倍晋三政権時に検討され、2007年6月の改正教育職員免許法の成立により、09年4月から導入された。教員免許を10年の期限とし、期限前の2年間に大学などで30時間以上の講習受講を更新の条件としている。その背景として、教員の質の向上を図ることがあった。
他の先進国をみると、米国では全ての州で教員免許の更新制が導入され、州ごとに5年間などの有効期限を設定し大学で数十時間の研修の受講が義務化されている。フランスや英国、ドイツなどは更新制を設けていないが、国主導による各種の研修制度が充実している。
日本でも米国を例として教員免許更新制が導入されたが、今になって廃止になったのはなぜだろうか。
現場の教員から「廃止すべきだ。意義を感じない」と感じる意見が多く上がっていた。
そうした声のほか、切実になったのが教員不足だった。新規採用教員では人数不足なので、退職者教員を活用してやり繰りしているところが多い。
ところが、教員免許更新制度があると、更新対象となる退職者の教員免許の多くが失効していくという現実問題に直面している。つまり、非常勤教員の需要はかなりあるものの、その主要な供給源は退職者教員に依存しており、それが失われるわけだ。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています